INJURE



「やっぱり…やっ……!」



後ろの三蔵を押しのけようと手を浮かせる。
けれどそれは、三蔵に掴まれ、軽い拘束に阻まれた。

それほど強く捕まれた訳でもないのに、動かす事が出来ない。
そのまま背を向けたままで。



「飼い主がペットの治療を直々にやってんだぞ」
「……どーぶつじゃ…ない…っ……」



身体を震わせながら、悟空はそれだけの言葉を搾り出した。



「動物だろ」



喉の奥で笑いながら、また傷口を舐めた。



「四つん這いになれ」



そう命令されて、悟空は緩く批難の視線を向けた。
しかし三蔵は歪んだ笑みを浮かべただけで、掴んだ腕を引く。

途端にバランスを崩し、地面が近く見えた。
反射的に空いていた右手で、身体が地面と仲良しになるのを遮る。
腰をつかまれて引き寄せられ、尻を突き出す格好になった。



「や、やぁっ!」
「いい格好じゃねぇか。傷痛むか?」
「……さんぞ…が、…いた…させて……っ」
「よく言うぜ。痛いのが好きなんだろ? さっきから暴れやがって」



悟空のズボンを下ろして、後ろから秘部を舐められる。



「やだっ…よぉ……」



背中の傷から血が流れる。
流れ落ちた血を三蔵の長い指が拭って、悟空は背筋を強張らせる。



「潤滑油にはならんだろうが、少しは楽になるだろ……」



言って三蔵は、悟空の流血を指につけたまま、それを下腹部に埋めた。

クチュクチュという音がして、悟空は顔を真っ赤にする。



「あっ…やぁ…ん、ひぁン…」



先走りの液が流れ出して、地面に落ちる。



「あっ、や…さんぞぉ……あんっ……」
「なんだ? もっと欲しいか?」



三蔵の表情は、悟空には伺えない。
答えられないでいると、更にナカを掻き混ぜられた。
卑猥な音が耳に届く。



「あっ、イ…イっちゃ……あっ! だ、やめてぇっ!…!」



悟空の秘所は既に限界まで膨れている。
ともすれば直ぐに、白濁を吐き出しそうなほどで。

───しかし、射精は三蔵に妨げられた。



「本番は、これからだ。簡単にイくんじゃねえよ」
「あ、んぁっ! はんっ…さ…んぞぉっ……!」



抜き差しを繰り返せば、悟空は素直に喘ぐ。
先刻の血のお陰で、少しは痛みはなくなったらしい。



(まぁ、そうでなくても最終的にはよがるだろうな)



そんなことを考えながら、激しく貫いた。

悟空は既に何度も絶頂を迎える。
しかし三蔵の戒めの所為で、一度も精射していない。



「も…だめっ! おねがいぃ…い、イかせっ……」
「駄目だ。ここしばらくヤってなかったんだ。楽しませてもらうぞ」



言葉とともに、ぐちゅぐちゅと音がする。
悟空は前は少しも触れられていない。

それでも。



「いや、あんっ! あ、んぁあっ、はぁンっ!!」



前の町を出たのは、四日前。
その間は「屋外は絶対ヤダ!」と悟空が言うから、三蔵も堪えていた。
邪魔な二人もいるし、余計な事をされるのも癪だ。

だから三蔵も次の街まで我慢する事にした。


──が。

元来、我慢強さはほとんど無いに等しい三蔵だった。



「ああっ!! だ、だめぇっ…! んぁ、あんっ、はぁあんっ!」
「傷が痛ぇから動けねえだろう。後の処理も全部、俺がやっておいてやる」



ただし、楽しませてもらうがな。


悟空はもう既に、喘いで三蔵の名を呼ぶだけ。
三蔵は後ろから攻めると同時に、傷口を何度も舐める。

そして右手で胸の突起をコリコリと弄る。


卑猥な音。
反応する淫らな身体。
──全て、三蔵によって開発されたもの。



激しく突き上げられ、荒々しく扱われる。



「ひぁあんっ、やんぁあっ!」



無意識のうちに、悟空は脚を開いた。
その行動に気を良くしたのか、三蔵は喉の奥で笑う。
四つん這いの格好から悟空を起き上がらせる。



「…さ、さんぞ……?」



繋がったまま起され、悟空の身体が震えた。



「下手に寄りかかると、痛い思いするぞ」



そう告げてから。
悟空を支えていた手を離し、最奥まで貫いた。



「あ────っっ!!!」



悟空の秘所から赤い液体が流れ、背中の傷からも雫が滴り落ちた。


三蔵は早い律動を始め、悟空の表情からも痛みは消える。



「や、さんぞぉっ…はやいよおっ……! あんっ、あ、んぁあっ!」
「これぐらい激しくしねぇと、お前も満足しねぇだろう?」



正直、三蔵の言う通りでもあった。
宿に止まる時は毎日のように激しく抱かれる。
それが常にもなっていて。



「さんぞっ…! も、もっとぉっ……!!」
「もっと…なんだ?」



だから、普通にされるだけでは満足いかない。



「もっと…! もっと、おくっ……!」



悟空の淫らな言葉に、三蔵は笑う。
ぎりぎりまで引き抜いて、最奥を貫いた。
悟空の身体は痙攣し、さらに快楽を欲しがっている。

最奥をついたまま、三蔵は動こうとしない。
悟空が不安げに、三蔵を肩越しに振り返った。



「どうして欲しい?」



悟空が何を欲しがっているかは、三蔵は判っている。

それでも聞きたい。
悟空のこの、自分だけの口から。



「ほら、言わないのか? このままだぞ」
「やっ…やだぁ……」
「なら言えよ」



悟空は顔を真っ赤にするが、身体の疼きは耐えられない。
既に肉棒ははちきれんばかりだ。



「う…っ、うごいてぇ……」
「それだけか?」
「動いてっ…それで……オレ…なか……、メチャクチャに……してェ……っ」



淫らな誘う言葉。


傷口を舐めて、舌をその傷に捻じ込んだ。
それすらも快楽になるのか──悟空は震える。

三蔵の口内に血の味が広がる。



「はやくっ……さん…っ…」
「急かすな…今やってやるよ」



その言葉の後に。



「あっ、やんっ!! さんぞっ……イイっ…!!」



ぐちゃぐちゃと悟空の秘所から音がする。
空きっぱなしになった口から、唾液が落ちる。



「もっと…っ、もっとぉ……っ!」
「てめぇは我慢ってのはねえのか?」
「だって…さんぞぉがっ……き…よく、するっ…らぁ……っ…」
「……可愛い事言ってんじゃねぇよ」



くくっと笑い、激しい律動は止まない。
じゅぷっぐちゅっと音がして、繋がりは深くなっていく。


もっと、と悟空は急かす。
その度に激しく貫かれる。

四日間触れなかっただけで溜まった、情欲。
悟空も拒む事はしない。
大好きな、三蔵だから。



「はっ…あ……!」



イきたがる熱が、悟空の中を蝕む。
三蔵の肉を離すまいと絡みつくソレに、男は笑う。



「テメエに傷をつけていいのは、俺だけだ」



──それは、醜い独占欲。
妖怪がつけた傷痕ですら、彼には嫉妬の材料になる。


痣だろうとなんだろうと。
コイツの全ては、俺だけのものだ。



「あぅっ! さんぞっ…だめぇ…!…」



絶頂を迎える。



「イくか?」
「……いっしょ…が…いいっ…」



強く貫く。
それと同時に、イった。




















「なぁぁぁ〜〜〜んで傷口が開いてるんでしょぉねえ〜〜?」




笑顔を絶やさぬまま、けれどその翡翠の奥にあるのは、怒気。

悟空の背中の手当てをしつつ、悟浄は祈る。
俺にとばっちりがきませんよーに、と。



「何をやったか説明して貰えません?」
「説明なんかいらんだろうが」



いけしゃぁしゃぁと答える三蔵。

悟空の怪我を悪化させた本人は、詫びれる様子も無い。
今日一日が悟浄にとって平和でないことは、これで決定。



「説明してください」
「面倒くせぇ。見たまんまだ」



ぶちっっ!


悟浄はぎくりと肩を揺らす。
かと言って悟空の包帯を巻きなおす手は止めないで。



「痛くねーか?」
「うん。平気」



悟浄がさり気なく聞くと、悟空も答えた。
平気そうな傷でもないのだが、悟空がそう答えるなら何も言うまい。



「……脇腹はもう大丈夫だな。後は背中か……」



包帯を巻き直しながら呟いた。



「悟浄、ごめんな。自分で出来たらいいんだけど」
「バーカ、お前不器用だろ。出来るわきゃねーよ」



悟浄の言葉に、目の前の怪我人はいつものようにぷぅと膨れた。
その子供同様の仕草に笑いを隠せない。



(もーちょっとこの平和が続きますよーに……)



背後の殺気をひしひしと感じつつ……願うのだった。








FIN.





後書。

………のーこめんと。
何を言えばいいか判りません…エロいの目指しました。
如何でしたか?(不安…)