狂宴
表の【狂咲】を読んでからじゃないと話が判らないです。
【狂咲】の続編が裏になっちゃったんで……
結構痛い…と、思うんですが。
良かったら読んで下さい。













今を失えば






何が残るのだろう















「孫悟空───俺と、行こう」



差し出される手を、悟空はじっと見つめている。
不安定に揺れる金色は、何を思っているんだろう。
ここは、幻想の夢の中。
けれど、現実でもある世界。



「おれ……は…」



焔も判っている。
この手を取れば、今まで傍にいたあの太陽を裏切る事になるのだと。

それでも───揺れる瞳に、期待を抱きそうで。


結果を、もしかしたら判っているかも知れない。
悟空がどちらを選ぶのか。
───五百年の昔から、ずっとそうだったから。

淡い期待が崩れ去る事に、不思議と抵抗を抱かない。


僅かに悟空が俯く。



「───ごめん……」



呟かれたその言葉は、拒否の言葉。
何故か、落胆はなかった。
慣れてしまっているのかもしれない。

自分が選ばれない事に───。



「……お前とは…行けない」
「そうだろうな」
「……ごめん…」
「いいさ」



責めたりなどしない。
悟空が本心を口に出し、それが拒否を示す事になっただけ。

それでも期待は、消えきっていないようで。
燻る諦めの悪さに、焔は自分を嘲るように笑う。



「封印が解けても、その想いは変わらないか?」



三蔵が、金蝉だと知っても。
面影を追っているだけなのだと、判っても。



「……だって…」


魂に惹かれているだけなのだと判っても。



「オレは…三蔵が───」



言葉を拒む。

不意に落とされた口付けに、悟空が抗う事など出来るわけも無く。
呼吸さえも奪われるような深い口付け。



(俺も大概、欲深くなってるな)



銀の糸を引いて、名残惜しそうに唇が離れる。


周囲の花弁が散る。
来ないと言うのなら、無理強いはしない。
現実でもあり、夢でもあるこの虚像の世界では。

──これが現実世界なら、強引に貰って行くんだろうな。





悟空の大切な、金色を血で染め上げて。





解かれつつある悟空の記憶。
金鈷に手をかけると、悟空の肩が僅かに震えた。



「怖がらなくていい。封印を強めるだけだ」



五百年昔の出来事を思い出すには、不安定すぎる。

金鈷に置かれた手が、今度は悟空の頬を滑る。
花畑の中に横たわって──覆い被さった。


これから何をされるかは。
きっと、判っているのだろう。



「お前の記憶を、もう一度封印する。心配するな。過去の記憶だけだ」



今のお前は、消さない。
彼らの傍にいたいと言うから。



「いいな?」
「……うん……」



優しく、抱き締めて。
口付けた。




























「んっあふっ……」



妖艶な声が空気に響き渡る。

悟空の脚の間に膝を割り込ませ、秘所を膝で刺激させる。
素直に反応する躯は、あの金色の太陽に教えられたもの。



「は…ぁん…ふぁ……」



胸の突起を弄られて、悟空は羞恥と快感で顔を赤く染める。

夢の中とはいえ、愛しい男以外に抱かれるのは、どんな思いをするのか。
焔には判らない。



「んはっ…ひぁん……」



ただ、五百年愛した存在を、他の男に奪われたという事だけは。



「孫悟空……」
「あっあっ…はぁ……」



零れる涙は、なんの為だろうか。


記憶をもう一度封じるため、抱く。
それは理由の半分にも満たない事だった。

──ただ抱きたい。

そう思う自分がいた。



「あう…焔ぁ……」



しがみ付いて、絡めてくる細い腕。
全て自分のものにしたいと願っても、無駄なんだと。



「んはっ…やっぁ…はふっ…」



自分だけを求める声も、唇も。
自分だけを見詰める、この金色の瞳も。
身体も、心も、全部自分だけのものにして、閉じ込めて。

無理なんだと、判っていても。



「焔ぁ…あぅ……はふっ、んぁあっ…ひ、ぁん…」



淫らに響く音も。
欲しがる熱も。

何もかも───



下着の下に手を滑らせると、悟空が脅えたように焔を見た。

例え夢の中、封印の為と言っても、抵抗はあるだろう。
あの太陽以外に躯を開くなど。



「やだぁ…そこ……いや…あぅっ!」



秘所に指が入り込む。
ひくひくと躯が震え、それは快感によるものだと。



「まだ一本だけだ」
「やぁっ……!」



二本目をゆっくりと差し込んだ。

ズボンを脱がせ、下着も剥ぎ取れば、秘所が露になる。
差し込まれた二本の指に、既に先走りの蜜が流れていた。



「焔っ…やだ…抜いてぇ……」
「慣らさないと辛いだけだ」
「あんっ!!」



三本目を埋める。

秘所の中で指をバラバラに動かす。



「あっ! んぁ、はふっ!」



痙攣する身体を抱き締めて、首元に下を這わせた。
嫌だと拒否の言葉を漏らして。
けれど悟空の小さな身体は、素直に反応を示して。



「あぅっ! ほっ…焔ぁ…いやぁ……!」
「嫌と言う割には…感じているな」
「やぁあ……っ!」



くりゅっと中を擦る。
膨張した剣が、既に熱を欲している。



「あんっ!! あっあっ、ひぁんっ…はぁ…んん……っ…」



悟空の細い腕が、焔の首へと絡みついた。



「どうした…?」



耳元で低く囁かれて。
悟空の身体が震え、縋りつくように。


今躯を巡る熱を収められるのは、目の前の敵である男だけで。



「ほむら…っあ…」
「うん……?」



優しく微笑んではいて。

けれど、それは悪魔の囁きで。



駄目なんだと。
委ねては、全て壊してしまうのだと。

───けれど。



「……もぅ…ダメぇ……」



唇が触れた。
ほんの一瞬だけだったが、それすらも今の悟空には快感で。



「どうして欲しい…?」



果てへと誘う、低い声。
腰を抱くその手に、全てを委ねてしまいたくて。







「……もう……いれ…て……」







躯の熱を収めてくれる、ただ一人の男に。

全て───








じゅぷじゅぷとそんな音がして。
耳を塞ぎたくても、それは許されなくて。



「はっあ…! んはぁっ…あんっ…!」



繋がったその場所から、白濁の蜜が零れて。
空を掴むその腕を、焔が掴みとる。
繰り返す律動を止めることなく、そのまま悟空の腕に舌を這わす。



「ほむらぁっ! やっ、んはぁん!!」
「悟空……」
「あっあっ、やんっ…あぅっ……はふっ!!」
「悟空、どうしたい? …もう解放して欲しいだろう?」



焔の囁きに、悟空は頷く。



「あぅっ!! んは、あんっ! ひ、ぁあんっ!!」



激しくなる愛撫と律動に、悟空はただ喘ぐだけで。


───嫌じゃない。

不意に蘇ってくる、想い。
怖いけど、嫌ではないという想い。



「悟空……───」



自分を見詰める色違いの一対の瞳。
何処か淋しそうに見えるのは、何故だろう。
孤独ばかりを映し出すその瞳に、その色を癒してやりたいとも思う。



「んん…んぁ……っほむらぁ……もぉ……」



縋りつく小さな身体を抱き締めて。

───きっともう、自分の腕には帰ってこないから。
目覚めれば───また敵同士になる。


五百年前と同じ関係は作れない………





「あっ…あ────っっ!!!」





幼き日の子供と、ただ守りたいとだけ願ったあの頃には。



帰れない─────…




















夢から目覚めたそこに、あの子供はいない。
つい先程まで彼を抱き締めていた腕は、虚を切るばかりで。

今度は、夢じゃなく。
この手で抱き締めてやりたい。





───遥か過ぎた思い出の日のように。










あの花畑で……───











FIN.



後書。

表の【狂咲】続。
ストーリー主で書いた為、あんまり裏っぽくないです……