刹那の願い











あの時差し伸べれた手を、拒まれずにいたら

きっと今とは違っていた、そう思う



だけど、もう戻れない

その分かれ道の選択のやり直しは出来ない






だから今は───………






















『いつまでこんな関係続けるの?』


突然の問いに、答える事が出来ない。
けれど応えずにいても、少年は怒ることはしない。

応えを聞く事は出来ないと知っているから。
応えを聞く事は許されないと判っているから。


けれどその都度。
腕の中の少年は、悲しそうな顔をする。

応える事は出来ないから。
答えを聞かせる事は出来ないから。
いつも誤魔化すように口付けて。

そのまま、今だけに許される行為に屑折れる。


許される時間は、ほんの僅か。



この想いを抱き続けた刻は。
己にとって、永遠に相応しい刻だったのに───……




「ん……ぁ、ほ…むら……」




口付けから解放してみれば。
銀の糸が、名残惜しそうに光っていた。

実際、悟空はまるで強請るように見上げてくる。
焔はほんの少し笑って、また口付けた。
息苦しくても、悟空は抵抗を見せる事は無い。


草むらに小さな身体を横たえる。
小さな草の棘が、悟空の背中に痛みを刺す。




「痛いか?」
「…別に、平気」




甘えないよ、と。
悟空は何処となく、冷えた瞳で見つめてきた。

自分を戒めるために、そんな顔をして。
けれどすぐに、それは崩れるのだと知っている。
だから、好きにさせておいた。

喉の根元に、ゆっくりと舌を這わして。
悟空の身体が、ひくりと震えた。


服をたくしあげると、恨めしげに見つめられて。




「……焔、寒い」
「背中が痛いのは平気なんだろ?」
「……それとこれとは、別」




視線を逸らして、そう言われた。


露になる肌に、吸い寄せられるように。
焔はゆったりとした動きで、手を悟空の胸に置いて。
まるで生き物のように、滑らせる。


胸の果実を、きゅっと摘まんだ。

悟空が声を押し殺しているのがすぐ判って。
焔は小さく笑って、もう一度摘み上げた。
素直に身体は反応を返してくる。

小さな身体が快楽で震えていた。

コリコリと弱い刺激を与えていれば。
耐え切れなかった声が、少しずつ漏れてくる。
悟空の身体は、既に羞恥に染まっていて。

けれど同時に、快楽を求め始めていて。




「っは……ぁ……や、っ……」




もぞもぞと身体を動かして。
弱い刺激に、足りない、と言うように。

もう一度、首に舌を這わせてみれば。
悟空は今度は、キスを強請るようになる。
胸を弄っていた手を離して、頭を抱きこんで。
深く、深く口付けていく。


舌を割り込ませれば、それに必至に応えてきて。
拙い動きの舌を、焔は絡め取った。




「……ん…ぅ………ふ…」




そうやって息苦しさに悶える姿さえ。
愛しいのだと、思う。


ズボンの上から、下肢に手を添えた。
其処は僅かながら、立ち上がっていた。

唇を離して、ほんの少し笑みを零せば。
子供扱いされているのだと、悟空は顔を赤くした。
しかし、焔の方は。




「もう大人じゃないか? こんな事をしていれば」
「…あ、やっ!!」




ファスナーを下ろして、ズボンを下着ごとはぎとって。
悟空の小さな剣が、存在を主張する。

ふる、と悟空の身体が震える。
焔はその剣に、ゆっくりと舌を這わした。




「はっ……あ、や…ひぁ…ん………」
「ほら、少し漏れてるぞ……」




零れた蜜を、指でなぞり取って。
その指についた愛液を、悟空に見せるように舐め取った。




「お前も舐めてみるか?」
「ばっ……あ…ぅ……っ」




抗議の声を上げようとした悟空の口に。
焔は愛液と、自分の唾液のついた指を入れた。
されるがままに、悟空はその指を口内に入れて。

我が物顔で口内を動き回る指に、悟空は成す術もなくて。
目の前の指の持ち主に、熱の篭った視線を向ける。

それでようやく、解放された。




「どうだった? 自分の味は」
「……苦い……だけ…」
「俺は甘いと思うんだがな」
「あ、ひゃっ…あ!」




焔の長くて形のいい指が、今度は秘部に埋め込まれた。


くちゅ、と卑猥な音が聞こえて。
悟空はいやいやをするように、首を横に振る。

けれど、焔が止める筈も無くて。
小さく「可愛い」とまで呟いて。
ますます、指を秘部の中で動かすのだ。




「あ、やだっ! やぁ……は、ひぁっ!!」
「ほら…奥は欲しがってるようだが?」
「いや…いわな……あ、はふっ……!」




長い指が奥へと誘い込まれるように。
悟空の狭い内壁は、熱を持っていく。




「あぅっ、あ……んぁ…はぁん…!」




無意識のうちに悟空の腰が揺らめいて。
もっと欲しいのだと、そう言っているから。
焔は、指の動きを激しくさせる。

それでも、悟空には指では足りなくて。




「た…んな…い………ほむらぁ……!!」




足りないんだと。
そう言う悟空に、焔は指を一度引き抜いて。

今度は、二本の指を突き入れた。
悟空の身体が跳ねる。
それでも、それだけで足りる筈が無くて。




「ちが…そ……あ、やっ! ひぁ…はふ、やぁんっ!」




焔がそれを判らない訳では無くて。
必至になって伝えようとする悟空の姿が可愛いから。



(──……苛めたくなるんだよ)



痴態を曝す悟空に、言葉にせずに囁いた。

悟空はただ顔を赤くして。
目の前の男に、ただ身を任せきっていた。

欲しいものを与えてくれるのは。
今、目の前の男、たった一人だ。




「ひ……っあ、やぁん…ふぁ……あ…!」
「ほら……これだけでいいのか?」




焔が囁いてみれば。
悟空はゆるゆると首を横に振って。




「ほむらの……が……いぃ……!」




震える声で、そう告げられて。
焔は、小さく笑みを零した。
この存在が、自分に全てを委ねている事に。



他の誰より、焔自身を求めている事に。
500年の昔、傍にいた存在よりも。
同じ魂を持つ、今も悟空の傍にいる存在よりも。

何よりも、焔を求めている。


穿たれた凶器に、小さな身体は歓喜に震えて。
もっと、と奥へと男を誘い込んでいく。




「はっ…ほむらぁ……あ、ひぁんっ!!」
「随分……誘うのが上手くなったな…」
「うあっ…! もっと…ほむらぁ…! もっと、ほしぃの…!」




焔の首に、悟空の腕が回される。
そうやって、自分で奥へと誘い込んで。




「は…あ……あつ…ぃ……あっ…!」
「お前の方がよっぽど熱いさ…」




繋がったままで、口付けを降らせて。
その度に、熱い肉壁が締め付けて離さない。



このまま息の根が止まってしまえばいい。
そうすれば、永遠に繋がり合ったままだから。



───そう。
このまま、生を終えたら。

この関係は、永遠に続く事になる。
果ての無い刻の中で、たった二人だけで。


刃を交える事も無いまま、終わる事が出来るのに。




「ほむらっ…は、ぁあっ!!」
「ああ……そろそろ、つらいんだな」




膨張した悟空の幼い剣に触れる。
既に蜜が、溢れ出しているのが判る。




「ほむらぁ……や…あぅ……!!」




─────このまま、息の根を止めてしまえたら。
















腕の中で、悟空が身動ぎする。

先刻までは他愛も無い話を繰り返して。
気付けば、幼い少年は眠ってしまって。


目覚めれば、また。
刃を交えるしかない関係に戻るのに。


そう思うと。
焔は、ゆっくりと悟空の首に手をかける。

何度となく、悟空から問われた言葉を思い出す。
そしてその都度、思った言葉を繰り返す。



『いつまでこんな関係続けるの?』



こんな風に、誰にも認められないままで。

出来る事なら、誰に認められないままでもいい。
他の誰も知らない場所で、たった二人で暮らしたい。
そんな事に、気を取られないでいいように。



どうして、あの青年でなければならないのだろう。
どうして、彼らでなければならないのだろう。
何故自分は、この少年の太陽になれなかったのだろう。

500年の昔から、今も、ずっと。
自分は、この少年に出逢う事を望んで、生きてきたのに。


神でありながら人間である。
少しずつ、死を感じさせている、己の時間。

どうして、自分は神と人間の間に生まれたのだろう。
どうして、彼らは神を終え、人間になったのだろう。
どうして、この子供と同じ時間を歩めないのだろう。



神なんていない。

結局───自分は、この子供を置いて逝く………



このまま息の根を止めてしまえたら。
彼らの元へ、返さなければ。
この少年は、ずっと自分の隣で笑っている筈なのに。



───そっと、手を離した。
出来る筈が無いのだ。
この少年の命まで、自分が奪う事なんて。


それでも、いつも思う。
いっそこの関係のまま、命を断ち切れたら。
永遠の刻を、たった二人で過ごしていける。

もう神なんて薄汚いものに、操られる事も無く。



けれど、自分には出来ない。
だからせめて、この少年が自分を忘れる事の無いように。



この命を絶つ刻が来たら───………その時は…………

















何処かで違う道を選んでいたら

こんな苦痛は抱かなかった




これで……終わらせようと思う

お前に身体も心も、そして命も捧げて、そして







選び取った、全ての刻を……終わらせよう………─────












FIN.


後書
また悲恋書いちゃったー……(泣)
表じゃ今日この頃の焔兄さん、幸せなのに…
なんで裏だと、こんなにも悲恋になるんだろうか………


これが外だという事は伏せておきましょう(言ってるし!!)



作成中BGM

宇多田ヒカル・・・・【SAKURAドロップス】

私的にずっと聞いていたい曲なんです。
あんまり女性ボーカルに興味を持ってない私ですが、宇多田ヒカルは昔から好きです。


2003/02/18