GUARDIAN -ZERO-
表で四部作と相成っていました。
『GUARDIAN』の続編です。

二人に幸福になって欲しい。
そう思う癖に、やけに悲恋ばっか書いてましたね……
そのリベンジと言う事で。


一緒になるには時間がかかったけど、幸福な時間を送る二人。
ようやく掴めた幸せの時を……











長い長い刻を越えて




随分と待たせたと思うよ

たった一人で、待ち続けてくれたお前が愛しいよ










今度こそ……約束を果たすから……もう一度契りを────












再会を果たし、知らず互いを求めるようになった。

最初こそ、悟空に躊躇いがあった。
けれど焔が触れても、嫌がる仕草は無く。
次第に行為に答えるようになる。


今までの乾いた刻が嘘のように。
今までの孤独な刻が嘘のように。
───遥か遠い昔の痛みが…嘘のように。


優しい刻が二人を浚う。
あの頃みたいに、冷たい刻はもう無いから。

繋がり合った手を、もう離したりなどしないから。



これが夢だと思わない。
だってこんなに優しい想いは……




夢の中じゃ……抱けない。








夜の帳が下りて。
焔は高くて近い空を見上げていた。

遠い昔は、夜の道標だった月の光。
かくも人間は、その恩恵を遠く思って。
己の手で、闇の街を照らし出すようになった。




「……また難しい事考えてるの?」




耳に届いたボーイソプラノ。
振り返れば、何より輝く金色が其処にある。




「また、というのは?」
「…焔は昔から、難しい事言ってたから」
「そうだったかな」
「オレには難しい事だったけど」




寝室のベッドに座っている焔の隣。
いつも悟空は、其処に腰を落ち着ける。

自分だけの居場所だと言うように。


焔がもう一度、空へと視線を移すと。
傍らの悟空も、それに習うように空を見た。




「空が……遠いね」
「……そうだな……」




マンションの9階。
大分、高い場所に自分たちはいるのに。
こんなにも空が遠いのは、どうしてだろう。

電気をつけない、暗いままの部屋。
それでも、二人の金色ははっきりとしていて。
闇の中だから、反映されるのだと。




「……月…優しいね………」




淡い光が、部屋を照らし出して。
その輝きだけで十分な程、互いの表情がよく判る。

悟空も焔も、穏やかな顔をしていて。
それは遥か昔は、交わす事の出来なかった微笑。




「…こっち向いてよ」




空をずっと眺めていた焔の頬に、手が添えられて。
甘えるような声で呼ばれた。

そんな悟空に、小さく笑みを象れば。
月の光が、それをしっかりと捕らえていて。
気付いた悟空が、子供のように頬を膨らませた。


あやすように、柔らかい唇にそっとキスをして。
悟空の瞳が、ゆっくりと閉じられた。




「月より……お前を見ていたい」
「……そういうキザな台詞、よく言えるよね……」
「事実だからな……月に妬く必要はないぞ」




じゃあ、ずっと自分を見てろ、と。
開き直ったように、囁かれた。








月明かりに照らされる身体が妖艶に見えて。

一体どれだけ、この身体を求めて擦れ違っただろう。
遥か遠い記憶を呼び起こしても、はっきりとしない。


露になった肌を吸い上げれば。
薄い鬱血の色が、其処に華を咲かせていて。




「ん……ほむら………」
「……悟空………」




名前を呼び合うことすら。
遠い昔は、叶わなかった願いだった。

だけど、今は。
こんなにも距離が近くて。



手を伸ばせば、指を絡めて。
呼吸が出来ないくらい、深い口付けの筈なのに。
それは、ほんの少しの時間の筈なのに。



ほんの少し、悟空の身体が震えたのが伝わるけれど。
脅えからではないと、よく判っているから。

ただ、悟空はいつも羞恥を抱いている。


全てを取り払うと、生まれたままの姿が其処にある。
大地に慈しまれ、光に育まれた子供がいる。


首筋に舌を這わせば。
小さな身体がふるりと震えていた。




「……っは………」




熱の篭った呼吸があって。
焔の身体も、直ぐに熱を持ち始める。




「焔……ぁう……ん…」
「もう少し声を出してもいいぞ……」
「ばかぁ……は…ずかし…」




そうは言っても、一度漏れてしまえば。
それ以上、悟空は声を抑える事が出来なくて。




「あ……そ…なとこ…」




悟空がそう呟いたのは。
焔が胸の果実に、舌を転がした時。

これだけで顔を赤くしてしまう。
この後どうするかが判らない訳でもないのに。
未だに悟空は、羞恥を感じてしまっていて。

そうする事で焔を誘っているなどと。
純粋な少年は知る由も無いのだろうけど。




「あっ……やん…っ」
「いつまでも慣れないんだな……」
「…ん……ふぁん……」




きゅ、と胸の突起を摘まんでみれば。
素直に、艶を含んだ声が漏れてきて。




「ふぅ…ん……あっぅ……!」




まるで遊ぶようにして、弄られて。
悟空の身体が耐え切れないように震えて。

焔の手が下肢へと下りる。
悟空が一瞬顔を赤くした。

既に立ちかけていたソレに、小さく笑えば。
それが悟空に伝わったらしく。




「笑うなっ!!」
「ああ、悪いな」




おざなりな謝罪を口にする。
そんな焔に、悟空が何事か言おうとして。
走り抜けた快感に、言葉が引っ込んでしまう。

ぴちゃ、と水の音が聞こえて。
焔の舌が、ゆるゆると悟空の秘部を濡らしていく。




「はぅ……あ、んぁ……っ」
「ほら……もうこんなに濡れてるぞ」
「や……だめ…あっ………!」




少しずつ蜜が零れ始めていく。
それを焔がゆったりと舌で掬い上げて、飲み下した。




「…ほ…むらぁ……!」




呼ぶ声に、子供を相手にするように。
焔が優しい瞳を、悟空に向けると。
まだ羞恥を僅かに残している瞳とぶつかって。

けれど、その羞恥の色はすぐ消えて。




「焔の……が…欲しぃ……!」




その言葉に、いつも背筋がぞくりとする。




一体どれだけの時間、求めていたのか。
どれだけ長い刻を擦れ違っていたのだろうか。

何度も何度も求めていた躯。
ずっと昔から、欲しいと思っていた心。
ようやく手に入れることの出来た、全て。



今度は、その存在が自分を求めている。



繋がり合うまま、口付けて。
そうする事で、より深くなる。

一つになっているのだと、判るから。




「…っ……」
「……気持ちいいか?」
「…そ……ゆ事…聞くな……ぁ!」




一度強く打ち付けると。
悟空の身体が、びくりと跳ねた。




「あ、ひぁん……!! ふ…ぅん…!」




最奥まで貫けば、躯が震えて。
このままでいる事など、出来なくて。
もっと快楽が欲しいのだと。

自然と、悟空の腰が揺らめいてくる。




「腰……動いてるぞ」
「はっ…や、いわな……あぅっ……!!」
「もっと欲しいんだろう?」
「はふ……あ、はぅ…あぁん……っ!」




絶頂を迎えつつある躯を、抱き締める。

何度も求めて、手を伸ばした躯。
今はそれが、自分の腕の中にすっぽりと収まって。
対になる瞳が交わりあって。




「あ……やん…はっ……ふ、ひぁんっ!」
「……悟空は限界が早いな……」
「あっ、あぅ……ん…ふぅん……っ…!」




既にはちきれんばかりに肥大した小さな雄。

顔を真っ赤にした悟空の頬に口付けて。




互いにずっと。





今度こそ……────離れることの無いように……














傍らで眠る悟空の髪を梳いて。
穏やかな寝顔に、そっとキスを落とした。


遠い昔に何度も望んだ、その存在。
望む代わりに、すり抜けて行った。
最後まで掴む事が出来なかった、声。

幾度となく呼んだけど、届かなかった。
誰より輝きを宿した少年の傍にいるのは、いつも金糸の男。
自分はその隣を、誰より望んでいた筈なのに。




「やっと…傍に……────」




宝物を扱う子供のように。
焔が悟空の身体を抱き寄せた。




月明かりに照らされた彼の表情は……───

何処か……幼子のようにも、見えた。

















もう二度と離さないと誓うから

神ではなくて、お前自身に誓うから










何度も言うよ………傍にいると









俺がお前を護るから……────











FIN.

後書
前回「刹那の願い」リベンジ編(え)。
最近の焔兄さんは幸せな環境が多い気がしますね……
いつも悲恋だからこんなのも良いですね。


前置きにも書きましたが、「GUARDIAN」の続編。
こうしないと焔兄さんに本編経由で幸せに出来なかった(爆)。
己の未熟さを実感しました、ハイ……

一番書たかったのは最後の焔。
なんとなく焔兄さんが子供みたいだなーなんて。


この二人には、ずっと幸せでいて欲しいです。