Loki








たまにはフザけた悪戯だってしてみたい

赤い顔してるくせに、どうせ本気で拒む事なんざ無理だろう?





なら何処まで我慢できるか試してやる



























「さんぞー!! なんだよ、コレ───!!!」




聞こえてきた怒号に、三蔵は顔を上げる。

其処には、短い大地色の髪を水に濡らした悟空がいて。
風呂上りの彼の身体は、ほんのりと桜色だった。
そして悟空の顔は、茹ったように真っ赤で。




「頭はちゃんと拭いて来いっつってるだろ」
「じゃな───い!!」




悟空の言いたい事が判らない三蔵ではない。
それでも敢えて的外れな事を口にしてみれば。
再び甲高い怒号が室内に響く。

今悟空は、彼の身体サイズとは程遠いシャツを着ていて。
下半身は何も身につけていないままで。
シャツの裾を引っ張って、自分の脚股を隠していた。

悟空の着ているシャツは三蔵のもので。
当然、小柄な悟空のサイズに合う筈も無く。
華奢な細い肩が、シャツからはみ出ていた。

またすらりと脚がシャツから伸びていて。
よく走り回る割には、細い脚だと思う。


悟空は入ってきた時に開けっ放しだったドアを閉める。
しかも苛々してますと言わんばかりに、でかい音を立てて。




「静かに閉めろ」
「うっさいやいっ!!」




ずかずかと悟空が歩み寄ってきて。
けれど右手は、シャツの裾を伸ばしたまま。

顔が赤いのは、怒りの所為か、はたまた羞恥か。




「オレの服何処やったんだよ!!」
「知らんな」
「三蔵以外にいないだろ!」




毛を逆立てた猫のように悟空が言い切る。

確かに、現在悟浄は宿に不在で。
久しぶりに大きな街についたので、ぶらつく事にしたらしい。
八戒は服を隠すというような事はまずしないだろう。
ちなみに三蔵達以外の泊り客は、今日はいないそうだ。


となれば、行き着く人物は三蔵のみで。




「いいじゃねぇか、素っ裸じゃねぇんだから」
「この格好もヤダ!!」
「だったら脱げばいいだろうが」
「それももっとイヤ!!! って、そうじゃなく!」




悟空は顔を真っ赤にして、もう一度怒鳴る。




「オレの服返せ!!!!」




怒鳴り続けた悟空は肩で息をする。
金瞳から、興奮した所為か小さな雫が浮かんで。




「返せ! 返せったら返せ!!」




悟空が喚き散らしている間にも。
三蔵は気に止める事も無く、コーヒーを飲んでいて。
それに悟空が腹を立て無い訳も無く。

バンッ!! と大きな音と共にテーブルを叩く。
が、三蔵は相変わらず素っ気無い。




「この格好で部屋戻るの、恥ずかしかったんだぞ!」
「戻って来れたからいいじゃねぇか」
「結果論で全部終わらせるなぁっ!!」




三蔵の視線が下へと降りる。
悟空はそれを不満げに睨みつけていた。

ちなみに悟空の手は、今両手ともテーブルの上にある。


さっきまで悟空はシャツを引っ張っていた。
己の自身を隠す為に、目一杯。
その引っ張っていた手がテーブルにある。

しかも悟空は興奮してテーブルに乗り出して。
その拍子に、僅かにシャツも上へとずれる。




「……見えてるぞ」




三蔵の言葉に、悟空は何の事だと。
そう思いながら、三蔵の視線の先を辿ると。

自分の小さな剣が、シャツの裾から覗いていた。




「〜〜〜〜っ!!!!」




慌ててシャツを引っ張って、それを隠す。
顔を真っ赤にして、僅かに俯いて。
先刻までの覇気は、一体何処へ行ってしまったのか。

どうやら羞恥心の方が、怒りを勝ってしまったようだ。


そんな悟空の腕を引っ張って、抱き寄せて。
腕の中に閉じ込めると、耳元で囁く。




「誘ってんのか、お前は」




三蔵の言葉に、悟空の頭に血が上る。




「三蔵がオレの服隠すからだろっ!!」
「八戒の所にでも行けば良かっただろう」
「……んな恥ずかしい事出来るか!!」




何も服がなくなったのが三蔵だと判っているからと。
この格好のまま文句を言いに来る必要は無かっただろう。

八戒の所に行けば、服を貸してくれるだろうし。
彼の服も悟空には大きいが、今の格好よりマシだろう。
よほど頭に来て、怒りに考えが回らなかったらしい。


が、三蔵はそんな事はどうでもよくて。

折角悟空が誘うような格好をしているのだ。
例えそれが自分で仕組んだ所業であっても。
据え膳喰わぬはななんとやら、である。

モラルも何もぶち壊しな三蔵が、留まる筈も無いのだった。



食事量の割には軽い悟空の身体。
それをひょいと抱き上げて、ベッドに近寄って。
躊躇う事無く、シーツの波に縫い付ける。




「ちょっと待てっ! 三蔵、狙ってただろ!!」
「なんの事だか知らんな」
「嘘つけ! このエロぼーず!!」




腕は頭上に一纏めにされているから。
自由な脚を、じたばたと暴れさせて。
勿論、三蔵がそれで引き下がる訳が無く。

しかも悟空が暴れるお陰で、シャツが捲れてしまう。


悟空があまりにも脚をばたつかせるから。
捲れたシャツの裾から、小さな剣が見えてしまって。

そこに手を滑らせると、悟空の身体がひくりと震えた。




「まさか触っただけで感じてんじゃねえだろ?」
「───うるさい!!」
「随分強気なもんだな………」




黙らせてやる、と低く囁いて。
悟空が何事か口にする前に、柔らかな唇を塞ぐ。
深く深く口付ける事によって。

しばらく暴れていた悟空だったのだが。
息苦しさからか、それとも口内を蠢く生温かいモノの所為か。
次第にその躯から力が抜けていく。


火照った頬に、掌を添えて。
角度を変えて、より一層深く口付けてやる。

ゆっくりと唇を解放すれば。
どちらのものとも判らない銀の糸が残る。

熱の篭った瞳を向けて。
首筋を強く吸い上げると、赤い華が咲いて。
滑らかな肌にそっと手を置いた。




「さ……んぞ…」
「結局感じてるようだな」




貪るような深いキスをして。
それだけで、悟空の小さな自身は立っていた。

シャツの下に掌を潜り込ませて。
ゆるゆると軽い愛撫を与えてみせる。
それだけで悟空の顔は羞恥に赤く染まって。




「やっ……さんぞ………」




ゆったりとした快楽の波。
艶の入った呼吸を繰り返して。
いつもの子供のような表情は、垣間見る事も出来ない。



与えられる快感から逃げる術を、この少年は知らない。
だからいつも、目の前の男に委ねるしかなくて。

三蔵が口元に笑みを零した。
目の前で惜し気もなく痴態を曝す少年の躯。
それは間違いなく、自分が育て上げたもので。


胸の果実を抓ってみれば。
素直な躯は、反応を返してくる。




「っは……あ、ん……!」




剥き出しの脚に手を滑らせて。
そっと撫でてやると、細い脚が震える。




「やぁ……やだ、さんぞぉ……っ…」




シャツ一枚のみ羽織っただけの格好で。
なのに三蔵は着衣の乱れも無いままに。
それがまた、悟空の羞恥心を煽り始める。


三蔵に縋り付いてしまいたい。
そうして彼の胸に顔を埋められたらいいのに。

でも両腕はまだ、三蔵の右手に拘束されたままで。
それがなんだかもどかしいのだけど。
自分の腕を拘束する手から伝わる温もりは、嫌じゃない。


三蔵の左手の指が、悟空の目の前にあって。
緩く口を開けると、其処に入り込んできた。




「ちゃんと濡らせよ」
「……んぅ……む…」




拙い下の動きで、必至に。
悟空の唾液が、三蔵の整った指に付いて。
悟空の金瞳から、少しずつ理性が消えて行く。


悟空の口内で、三蔵が指を動かす。
それまで動いていた、悟空の舌。
今度はされるがままになってしまって。




「……もういいだろ」




三蔵が悟空の口内から指を抜く。
悟空の熱の篭った瞳が向けられて。




「そろそろ我慢できねぇだろうからな」
「さんぞ…ぉ……」




キスと緩やかな愛撫を与えただけ。
それだけでも、悟空の雄は天を突いていて。

外気に晒された秘部は、欲しがっているから。
他の誰でもない、三蔵の熱を。
与えられる、強い快楽の波を。


悟空の視界が反転する。
頭をベッドに押さえつけたまま、膝を立たされて。
シャツしか羽織っていないから、秘部は丸見えで。

三蔵に尻を突き出す格好になっていて。




「やっ……はずかし……」
「いつも前からなんだ、たまにはいいだろ」
「やっ、やぁ……あっ!!」




悟空の形のいい尻を撫でた後に。
三蔵の長い指が、後ろから挿れられる。

悟空の唾液でしっかりと濡らされた長い指。
痛みを伴う事は無く、奥へと入っていって。
少し指が動くたび、悟空の躯が跳ねる。




「やっ、だめ、あんっ! ふぁあっ!」




くちゅくちゅと精液を弄る音がして。
その音がまた、羞恥を呼んで。




「はぅ、ひぁん……あ、はっ…ぁあ……っ!」
「奥まで欲しいんだろうが」
「あっあぅ! いやぁんっ!!」




悟空の狭い肉壁が、指を強く締め付ける。

それでも、次第に羞恥は消えて。


身に纏っていたシャツは乱れきっていて。
零れ落ちる白濁の液が、シャツとシーツに染みを作る。




「は、ぁっ…おくっ……もっとぉ……!」
「……焦るんじゃねぇよ……」
「だってぇ……あっ、ふぁっ!!」




箇所を掠めた時に上がった、一際高い声。
其処を集中的に攻めてやれば。
悟空の躯ががくがくと震えて、強い快楽に浚われる。




「はっ、あ! あぅんっ……! あぁっっ! や、出ちゃうぅっ!!」
「早ぇんだよ、お前は………」
「や、ああぅっ! イイっ……さんぞぉっ…!!」




三蔵の指の動きに合わせるようにして。
悟空も無我夢中で腰を振ってくる。


悟空の手がシーツを強く握り締めて。
快楽に耐え切れない躯は震えて。




「ああっ…あ、も……ダメぇ……っ!!」
「……ちっ………」




三蔵の舌打ちの後に。
指の動きが、激しくなって行って。
悟空はされるがまま、躯を投げ出す。

はちきれんばかりの悟空の幼い剣。
其処を少しだけ、擦ってやれば。




「あ……やぁああんっ!!」




高い嬌声を上げて、悟空が果てる。

ぱたりと力無く、腕が落ちて。
金色の瞳は、閉じられてしまっていた。




「……寝ていいなんざ言ってねぇぞ、バカ猿…」




怒りを押し殺す言葉が呟かれた。




「服返せ───っ!!」
「煩ぇ、途中で寝やがっただろうが。今日はそのままでいろ」
「絶───っ対ヤダ!!」




翌日、昼になってから悟空はようやく目覚めて。
しかし自分の格好は昨晩のままで。
大きなシャツを一枚、羽織っているだけだった。

朝(昼?)一番に三蔵へと文句を言ったら。
返ってきた言葉は、あまりにも自分勝手で。




「返せ! 八戒と悟浄が来たらどうすんだよ!!」
「誘うんじゃねーぞ、俺以外の奴を」
「誰が誘うかぁっ! じゃなくて! 服返せ───っ!!!」
「いちいち煩い……────泣かす!!」




………第二ラウンド?










たまにはこういうのもいいだろう?

多少フザけてやったって、お前は俺を拒まないんだ








文句があるなら言えばいい

その後の事は、俺は責任持つ気は無いな









煽って来るのは、お前の方だ










FIN.


後書。

………三蔵様、何しとん(方便……すいません)。

三空記念日から一日遅れでアップです。
……そんで記念日になんでギャグなのよ。
いや、たまには裏も明るくね……(暗く書くのは自分)


たまにはギャグエロも〜なんて考えてたんですが……
いつもと何の変わりも無かったですね(爆)。
あと「裏らしい裏」書こうと思ったんですよ…

エロオンリー書いてやろうと思ったら、玉砕。


ちなみにタイトルの「Loki」は北欧神話の神。
悪戯を司る神だという話があります。




2003/03/10