オトナとコドモ









………きっと踏み越えてはいけなかった

いや、いけなかったんだと言い切れる




─────けれど耐え切れなかったんだ





















深い口付けを交わせば。
小さな子供は、それだけで熱を持って。
保護者である金蝉に、その瞳を向けてくる。

甘えるような仕草は、いつもの事で。
違うのは、自分を見つめてくる金瞳の色。




「ねぇ金蝉……なんか、変…」
「いつもの事だろ?」
「うん……」




言って金蝉は、もう一度子供の唇を塞ぐ。
舌を差し入れると、小さな身体が震えて。




「ん…っは……ふぁ…」




子供の舌に、自分の舌を絡ませて。
逃げようとするのを、いとも簡単に捕らえて。

角度を変えて、何度も何度も口付ける。
その都度、深くなって行って。
子供が小さな震えを持つ腕で、しがみ付いてきた。


幼い身体を寝具に組み敷いて。
衣服をたくし上げれば、白い肌が其処にある。

いつも外で駆け回っているのに。
日の当たる場所で見れば、適度に日焼けしているのに。
明かりの無い部屋の中では、それは判らない。




「金蝉、もっと……」




金糸を小さな手で掴んで。
それはキスを強請っている時の仕草で。




「………ん…………」




優しい口付けをしてやれば。
息苦しそうに頬が紅潮してくるけれど。
金糸を掴む小さな手が、首に回されて。

この子供はきっと、甘えているだけなのだろうけど。
目の前の男には、誘うようにしか見えなかった。







悟空の首の根元辺りを、強く吸い上げる。
痛みからか羞恥からか、子供躯が一瞬震えて。
解放すると、赤い華が其処にあった。




「……ねえ、金蝉」
「…あ?」
「オレもこれ、やってみたい」
「……ガキには無理だろ」




突然の悟空の申し出に。
金蝉は冷たく一蹴する言葉を向ける。


しかし、悟空は諦めた様子は無くて。




「出来るもん」
「やり方判ってんのか?」




そう告げると、悟空は素直に首を横に振った。
間違いなく、それは否定の意。

だから教えて、と言わんばかりに見つめられて。
金蝉はどうしたものかと、少しの間考える。


夜毎の情事は既に日常の一部にされてしまった事だったが。
こんな事を言われたのは、今日が初めてだった。

金蝉は悟空を自分の下に組み敷いたままで。
左手だけで自分の体重を支えて。
空いた右手で、金糸を少し掻き上げる。




「ねえ、オレもやりたい」
「……やってどうするんだ」
「だって前に、金蝉オレに言ったじゃんか」




肝心な部分の抜けた言葉。
金蝉は何を、と問い直す。




「オレに最初にこれ付けてくれた時、これでオレは金蝉のだって。そういう約束で、あかしなんだって。だからオレも、金蝉にこれやりたい」




……そう言えば、そんな事を言ったか。



衣服を脱いだ悟空の肌に点々とある、赤い華。
薄いのから、まだはっきりと残るものまで。
至る所に、それは散りばめられていて。

一番最初に咲かせたのは、何処だったろうか。




「……後で教えてやるよ」
「やだ、今がいい!」
「後で、だ。だから今はいい子にしてろ」




言葉を終えると同時に、深く深く口付けて。
しばらく、言葉にならない抗議の声が上がったが。
舌を絡め取ると、それも止んで。

解放すれば、名残惜しげに銀糸が光る。




「…ちゃんと教えてくれる…?」
「………ああ」




悟空の問いに、短く頷いて。
金蝉は小さな胸の突起に、舌を這した。

ゆっくりと舌を転がしていけば。
子供の躯は、素直すぎるほどに反応を返す。




「…っは……ぁぅ……」




発育途上の躯は、強い快楽の波には耐えられなくて。
何より悟空に取っては、相手が相手だ。

誰よりも信じている、自分の保護者。
誰より一番大好きな、一人の青年。
その事を考えるだけでも。




「ひっん……やん……」
「こっちももう反応してるようだな」
「ひゃっ!」




金蝉の大きな手が、悟空の下肢に触れて。
思わず素っ頓狂な声が上がる。

それを聞いた金蝉はと言えば。
何が可笑しいのか、僅かに笑っていて。
こういう時だけ、金蝉は時折笑うのだ。




「……わらっちゃ、やー」
「ああ、悪かった」




そう言った金蝉は、悪びれた様子も無く。




「……やっぱり金蝉、笑わない方がいい」
「なんだ、行き成り」
「……イジワルっぽいから」




金蝉を上目遣いで見つめてきて。
悟空は幾分ボソボソと呟く。




「だったらもっとイジワルしてやろうか?」
「うにゅ………」




耳元で息がかかる位に近くで。
そっと囁くと、悟空の躯がぴくっと反応する。

悟空の下肢に触れていた、金蝉の大きな手。
するりと下着の下へと入り込んでいって。
僅かに立ち上がった小さな雄に、触れる。


触れた雄を、ゆっくりと扱く。

下着ごとズボンを引き摺り下ろせば。
既に愛液の零れる幼い剣があって。




「ふぁっ、あ…! こ、んぜ……っ!」
「もう零れてるぞ……早いな」
「や……ひ、あぁっ……!」




トロトロと零れ落ちる白濁の液。

それを悟空が視界の端に捕らえて。
目を逸らすように、金蝉に抱きついた。
耳まで真っ赤になっているのが、判る。




「…あ…ひゃ……や、やぅっ……」
「今更だろうが、顔見せろ」
「やっ……あうっ!」




悟空の秘部に、長い指が埋められて。
痛みが悟空の下肢から広がり。
狭い秘部は、金蝉の指も強く締め付ける。

悟空の背を、金蝉が抱き込めば。
強張った躯から力が抜けて。
それを機に、埋め込んだ指を動かす。




「やっ……あ、ひぁっ…!」




過度に反応を示す、幼い躯。
金蝉にしっかりと縋りついたまま。

くちゅくちゅと卑猥な音が響いて。
けれどそんな音よりも。
金蝉には、目の前の子供の痴態の方が情欲をそそる。




「ふぇ……や、こんぜ……でちゃうぅ…っ」
「もう少し我慢してろ」




悟空の躯が戦慄いて。
けれど、金蝉が我慢しろと言うものだから。
小さな躯は、必至に快楽の波に耐えて。

勿論それも、熱い本流を与えられれば。
すぐに流されてしまうのだけど。


寛げた金蝉の下肢。
それは既に、大きく膨れ上がっていて。

けれど悟空が拒む事は無い。
誰より大好きな、金蝉なのだから。




「挿れるぞ………」




そう呟いて、優しく口付けて。
悟空の秘所に、怒張した自身を宛がい。
ゆっくりと、腰を進めていく。

繋がりが深くなっていく毎に。
悟空の小さな躯が、快楽に震えるのが判る。




「こ……んぜ………っ…」
「………っ……!」




幼い子供の中は、いつまでも狭くて。
互いの呼吸さえ、奪う事になってしまう。




「悟空……っ…息しろ……」




繋がったままで、そう告げる。


悟空は不規則に、呼吸を繰り返し始める。
詰めていた息は、ようやく抜けていって。
それは、金蝉も同様だった。

強い締め付けだった、悟空の内壁。
それがほんの少しずつ、緩み始める。




「……動くぞ」
「…ん………っあ……!」




短く要点だけを告げてから。
金蝉は幼子の躯を突き上げて。

その衝撃に、悟空が僅かに跳ねた。




「やっ…は、あぅっ……! も……もぉだめぇ……っ!」




先刻から堪えていた、限界点。
とっくに越えていたそれが、また溢れ出して。

────それ以上耐える事が、出来る筈も無かった。




「あれー…つかない……」




口付けた金蝉の首の辺りをしげしげと見つめて。
悟空が呟いたのは、情事前の約束事から。

一時夢の中へと旅立ってしまった悟空だが。
十分ほどで、その意識は覚醒した。
それから約束した事を、傍らにいた金蝉に言ったのである。




「弱いんだろ。やっぱりガキだな」
「ガキじゃないもん!」
「……まぁ、ガキはこういう事はしないな」




そう言って、金蝉は悟空の顔を上向かせて。
弾みで半開きになった口に、キスを落とす。




「ん……ぅ……」
「これで赤くなってたら、ガキだな」
「ガキじゃないってばぁ……」




子供でないことを主張する悟空だけれど。
その頬は、すっかり紅潮してしまって。
やはり子供だと、金蝉が呟くと。




「子供に手を出したらハンザイだって、天ちゃんが言ってた」
「……あの野郎……」




悟空の言葉に、金蝉は眉間に皺を寄せて。

確かに、こんな小さな子供に手を出して。
犯罪だと言われる旨は、否定できないが。
これでも大分、耐えてきていたのだ。

結局その我慢も崩壊したが。




「オレが子供じゃなかったら、金蝉ハンザイじゃないよ」
「お前、意味判ってねえだろう…」
「判るよ? 悪い事だって、ケン兄ちゃんが言った」




悪影響だ……金蝉は声に出さずに呟いた。




「でね、ケン兄ちゃんね」
「……まだ何かあるのか」




フザけた事だったら、ぶっ殺す。
お調子者の大将を思い出しながら、金蝉は思った。

しかし、悟空の口から出た言葉は。




「好きな人が出来たら、大人になれるんだって」




オレ、金蝉の事が大好きだから。
だからもう、子供じゃないんだと。
そう言って笑う無邪気さは、まだまだ子供のもので。


悟空の大地色の髪を優しく撫ぜて。
否定の言葉は口にしない事にした。














子供だからとか

大人じゃないからとか




下界の子供だからとか

金色の瞳を持っているとか


それは下らない言い訳にしかならなくて







理由は要らない────ただ、この魂が欲しかった














FIN.


後書。

日常にすんなや(←書いたのお前だ)。
金蝉の事だし、チビちゃんには無理させないとは思いますが…


ショタ万歳(爆)。
久し振りに金空書いたなぁ……
金蝉がなんか偽物ちっくだよ〜……

甘いの目指してみましたv
果たして達成できているかは疑問符浮かべますが。
キスをおねだりしてる悟空って可愛いなぁ〜とか思ったり。


観音にバレたら、さぞや揶揄われる事でしょう。
……もうされたか?


2003/05/23