キミだけの世界





手に入れたいから閉じ込めた

手に入れたいから壊した

手に入れたいから汚してやった




手に入れたいから優しくした

手に入れたいから抱き締めた

手に入れたいから包んでやった






どれもマイナス数値をはじき出す事はない







時間が流れていくごとに


子供は汚れていく代わりに









きれいなきれいな瞳に映し出されているのは自分だけ



















青臭い匂いが部屋中を満たしている。
それと同じくして、二人の熱っぽい呼吸。
絡み合った躯は、離れる様子はなかった。

口付けては蹂躙し、躯を弄っては快楽を与え。
繋がった秘所は、既にぐしょぐしょに濡れていた。



もう駄目、だとか。
もうやめて、だとか。

そんな台詞は、何度も聞いていて。
その言葉の最後にあるのは、拒絶ではなく。
誘い込んでいるものなのだ。


焦らして焦らして、嬲るようにして。
もっと奥に欲しいと言うのは十分判るけれど。
敢えてそれには答えずに、見当違いの場所に触れる。

柔らかい耳朶を舐めたり、噛んだり。
惜しげもなく曝される太腿に指を這わしたり。

ささやかな快楽にさえ、この躯は反応を示し。
その上でもっと欲しいと強請ってくる。
腕を絡めて、金糸を引っ張って、口付けて。






そういうふうに、


自分が、染めた。















腕を後ろ手で縛られた状態で。
悟空は足を広げて、三蔵を受け入れていた。

まざまざと悟空の肉壁が三蔵の雄に絡み付く。
二人の熱が溶け合って、互いに食いついて。
先に放すまいとしたのは、どちらだっただろう。




「あっ…あぁ…さん、ぞ……ぁあ……」




繋がり合ったまま、どれ程の時間が流れたか。
三蔵が奥を突かなくても、悟空の口からは嬌声が漏れて。
零れていた蜜が、白いベッドシーツを汚す。

悟空の長い髪は、シーツの波に散らばって。
熱の篭った金瞳に、既に理性はなかった。



「……どうした?」
「…っん……はぁ…あ…やぁ……」



まともな意味を持たない言の葉ばかりだ。
けれども、そんな悟空が愛おしかった。

染めたいように染めていって。
真っ白だった悟空は、三蔵の望んだように染まり。
まるで従順な子犬を思わせる。


ディープパープルの色をした首輪をつけて。
其処には、銀色に光る鎖がつけられており。
連なる先端は、三蔵がその手に持っていた。

滑らかな肌には、幾つもの赤い華が咲き。
開きっぱなしの口端から、飲み切れなかった唾液が流れる。



鎖を引っ張れば、悟空の上半身が僅かに浮く。
喉を仰け反らせ、苦しげな顔を見せるが。
それも一瞬のことだった。

首輪をつけたばかりの頃は、嫌がって泣いていたのに。
今では三蔵の言う事によく従っている。



「さ、んぞ…さんぞぉ……あぁあ……」
「ったく、だらしのねぇ猿だな……」



上も下も、欲望に塗れている。
それも全て、三蔵が躾けた通りの姿。

その事実に、優越を覚えずにいられようものか。



「まぁ、まだガキなんだからな……」



自分の後始末も出来ないのだから、と。
耳元で囁くと、悟空の躯がひくりと震えた。

実際、悟空は情事の後の後始末が出来ない。
それは三蔵がいつもやっているからで。
覚える必要もなく、覚えさせようとしないから。

全て、三蔵の手で行っている。




「俺がいなきゃ、何も出来やしねぇんだからな」









生きていくことさえ出来ない。












物を食べるのは自分でする。
けれど、それを運んで与えるのは三蔵。

服の着替えは自分で出来る。
けれど、情事の度にその時着ていた服は布切れになる。
だから、次の服を選んで与えるのは三蔵。

シャワーや風呂は自分で入れる。
けれど、其処に連れて行ってやるのはいつも三蔵だ。


三蔵がいなければ。
三蔵が何もしなければ。
三蔵が傍らにいなければ。

悟空は何も出来ないし、生きていけない。
暗い部屋の中で、繋がれているしかない。



悟空の全ては、三蔵が握っている。

勝手に死ぬ事は許されない。
自分の躯を、自分で傷つける事も許されない。



悟空を殺していいのは、三蔵だけ。
触れていいのは、三蔵だけ。
見ていいのは三蔵だけ。

汚していいのも。
犯していいのも。
清めるのも。




全て、三蔵だけに許された行為。





悟空に許されているのは。

三蔵の傍にいること。
三蔵を見ること。
三蔵に触れること。




部屋に閉じ込めたばかりの頃は。
暴れたり、喚いたり、泣いたりしたけれど。
あれから数年経った今、悟空にそんな意思はない。

その身を余すところなく三蔵に開発され。
心さえも侵食された今となっては。


三蔵が触れると、反応を返し。
その躯を貪れば、声を上げて。

舐めて、貫いて、犯して、懇願されても行為を続け。
気紛れに頭を撫でてやったり、優しいキスをして。
悟空は次第に、確実に酔い痴れて行っていた。







最早、美しい金瞳に映るのは。




それの虜となった、獣のような男のみ。










ずる、と三蔵が己を悟空のナカから抜くと。
幼い躯が震え、肉壁が絡み付こうとする。

名残惜しそうなそれに、三蔵は喉で笑い。
こちらを見上げる悟空を、正面から捉えれば。
金瞳までもが物足りないと訴えている。


手が縛られていなければ。
悟空は、三蔵に手を伸ばしてきただろう。

けれど、三蔵は腕を開放しようとはしなかった。



「…あっ……!」



グイ、と鎖を引っ張って。
その反動で起き上がった悟空の躯を引き寄せ。
顎を捉えて上向かせ、優しく口付けた。

躯は激しく犯して、口付ける時は優しくする。
矛盾した快楽の与え方。



「ふ……っん…は……んんぅ……」




その矛盾に、最初は悟空は困惑していた。
開いたばかりの頃は、貫く度に痛くて。
閉じ込められた事もあって、嫌われたのかと思ったらしい。

けれど、行為以外と口付けで触れる時は優しいから。
全く違う愛され方に、どう感じればいいのか判らずに。


それも、今は昔の話だ。

優しく触れる手と温もりに、嫌われていないと思ってから。
悟空が三蔵へと堕ちて行くのに、そう時間はかからなかった。



唇を離すと、細い銀の糸が引かれて。
悟空は甘えるように、三蔵に擦り寄る。

大地色の髪をくしゃ、と撫でてやり。
長い大地色の髪を一房拾い上げてキスを落とす。


見上げてくる悟空の瞳は、うっとりとしていた。

そんな悟空の頭を、予告もなく強く掴む。
悟空が一瞬悲鳴を上げたが、三蔵は構わない。





「たまには、奉仕もしてみろよ」





悟空の頭を、自分の股間に押し付ける。
金瞳の前には、勃起した三蔵の雄。

一度ナカに挿れていた所為だろうか。
纏わり突いた白い液体は、どちらのものなのか。
悟空には判らなかったが、おずおずと口が開かれる。



「噛んだりしたら、仕置きじゃすまねぇぞ」



鎖を後ろに引っ張り、制するように低い声音で言った。
悟空は小さく頷いて、三蔵の雄を頬張る。

しかし、雄は先端までしか咥えられず。
悟空はなんとか奥まで咥えようとするが。
それ以上は、先へ進みそうになかった。



「んっぅ…むぅ……」
「まだ先しかやってねぇだろうが」
「うぐ…うぅ……む、ふくっ……」



悟空が涙目になっているのが見えたが。
三蔵は行為をやめる気は、毛頭なかった。


腕を縛られている所為で。
動きは制限されるし、体勢も辛いのだろう。
悟空は苦しそうに呼吸を繰り返している。

汗ばんだ躯から流れる汗さえも。
今は妖艶さを醸し出す材料となっている。




「ちっ……おい、放せ」




鎖を引っ張り、悟空の顔を股間から離す。



「さんぞ…」
「ったく、下手糞だな……」
「…ごめ………」
「まぁ……一度もやった事がねぇんだからな」



上手ければ、また別に問題が浮上するだけ。
下手なら下手で、また楽しめる。

また一つ、染め上げていける。



「教えてやるから、言う通りにやれ」



いいな?と確認するように言うと。
悟空は小さく頷いて、身動ぎした。

どうしたのかと三蔵が見ていると。
悟空は僅かに俯いて、腰をもぞもぞと動かしている。
幼い躯は震え、何かを我慢しているようだった。


……イキそうなのだ。
三蔵の雄を口に含んだだけなのに。

先程まで飲み込んでいたのもあるだろうが。
たったこれだけで、絶頂を迎えるとは。



どうやら三蔵の好み通りに仕上がっているようだ。
イっていいと言うまで、達してはいけない。
達してしまったら、お仕置きだ。

それは最初の頃から何度も躾けて来た。
が、一番覚えられない事なのだ。
頭では判ってはいても、躯の方が耐えられない。



今はそれを必死に我慢している。

あとどれ位保つだろうか。
次に奉仕させている間に、出すかも知れない。




「………口開けろ」




そんな事をつらつらと考えながら、指示する。
悟空は恐る恐ると言った様子で、口を開いた。

悟空の頭を掴んで、股間へ持って行き。
怒張した自身を、咥え込ませて。
無理やり頭を押えつけ、奥まで含ませる。



「………………!!」
「離すんじゃねぇ」



息苦しさから逃れようともがく悟空だが。
三蔵の低い声音に、抵抗を止めた。



「舌で舐めろ。俺がいつもやってんだろ」



言うと、悟空の舌先が三蔵の雄に触れ。
熱い肉棒を、一心不乱に舐め始める。

なんとも幼稚な愛撫。
三蔵を昂めるには、全く足りていない。
足りていないけれど────……




(………ヤベェ……結構クるもんだな…)




愛撫は大したものではない。
勿論、技術なんて欠片もない。

けれど。
愛しいものが、必死に愛撫する様を見て。
何も感じないと言えば、確かな嘘になる。