SWEET PERFORMER






──────夜半。



朝から好きなものを好きなだけ食べて、祭りにも行って。
遊びつかれたのだろう悟空は、月が高い位置に来る頃にはとっくに夢の中だった。
枕元では、ジープも一緒になって丸くなっている。

それらからまるで一線を引いたようにして、睨み合っている者が三名。


三蔵、悟浄、八戒。



「えらい遅かったじゃねーの、三蔵様」
「何処で何してらしたんでしょうねぇ」
「テメェらに言うような義理はない」



火花が飛び散って見えるのは、決して気の所為ではない。



「そういう河童、テメェ、買い物中に余計なもの買っただろ」
「あっらぁ? 俺にとっては“余計なもの”は買ってないけどな〜」
「いい度胸してますねぇ、ゴキブリの癖に」



ゴキブリ言うな、と。
突っ込む悟浄の声は、いつもの明朗としたものではない。



「八戒、テメェも甘やかすなっつっただろうが」
「僕にとっては日常の一つで、あれは甘やかしたうちに入りません」
「なーんかさり気なく腹立つ事言われた気がする」



つまり、八戒が悟空を甘やかすのはいつもの事。
悟空が八戒に甘えてかかるのも、いつもの事だ、と言うことだ。

確かに、悟空が総じて甘える率が高いのは八戒だ。
八戒ならば自分の幼いワガママを聞いてくれる。
悟浄では揶揄われるし、三蔵では一蹴されるのだから。



「……勝負は持ち越しだな」
「ですね」



勝負。
誰が悟空に一番好かれているか。

結果を導き出す子供は、今夜はもう夢の中だ。







「で、今日は誰がこっちの部屋で寝るんだ?」










争いが朝まで続いたのは、言うまでもない。




















【譲れないもの】



なんてものは






世の中、そうそう転がっている訳ではないだろう








だから余計に















容易く譲る事など出来ないのだ























FIN.




後書き