歩く
悟空









進むごとに、増える軌跡。

願わくば、連なるそれが一つきりではないように。












歩く。

走る。

追いつく。


また、歩く。




歩幅が違う所為で、いつも置いていかれそうになる。
置いていかないのは判っているけど、でも、置いていかれそうになる。
隣に並んでいたいのに。


まだ子供だから、まだ小さいから。
判っていても、すぐに置いて行かれそうになって。

置いて行かれないように、走って、追いついて、また歩く。




昨日は雨が降った。
今日は晴れた。
地面はまだ柔らかい。

歩くと跡が残る。
大きなのが三対、小さなのが一対、残る。





思い出す。
雪の日、初めて外に出た時。

初めて雪の中につけた足跡は、沢山の中の一つになった。


あの足跡は、降る雪の中にまた埋もれて見えなくなったけど。
春になったら雪は溶けて、もう誰も判らなくなったけど。

沢山の中の一つになった足跡を、今でもまだ、覚えてる。



この足跡も、きっといつかは消えるけど。
雨が降れば、流され埋もれてしまうけど。
人が歩けば、どれが誰のか判らなくなってしまうけど。





歩く。

走る。

追いつく。


また、歩く。


隣に並んで、手を繋いで、歩いて行く。







手を繋いだまま、振り返る。
進む足は、止めないで。










柔らかい地面の上。
大きな足跡が三対、小さなのが一対、残っている。














願わくば。

この足跡が、一つでも欠けてしまわないように。




皆で並んで、ずっと歩いていけますように。















(一日で10のお題/4.歩く)


散歩帰りの夕暮れ時かな。



お題元 Cosmos