遊ぶ
悟空&ジープ






何かに頬を突かれているような気がして、目が覚めた。
瞼を開けて、思った通り、頬を突かれていたんだと知る。

白い小さな生き物に。







「……おはよ、ジープ」






言うと、ピィ、と高い鳴き声。
眠気眼を擦っていたら、小さな舌が頬を舐める。
くすぐったくて笑った。



此処は悟浄の家だ。
三蔵が仕事で遠方に出たので、此処に預けられた。

さて、その家主と、この小竜の主人は何処へ行ったのだろう。
横になっていたソファから起き上がって、テーブルの方を見る。
置手紙を見つけた。


買い物に行ってきます。


八戒の綺麗な字だった。
多分、悟浄は荷物持ちに連れて行かれたのだろう。
オレは寝ているしと、ジープが留守を預かったのだ。



肩に乗ったジープの喉を撫でると、クルクル鳴いた。
猫のゴロゴロと同じである。

ふぁあと欠伸が漏れて、もうちょっと眠いなぁ、と思った。
そうしたら、また頬を突かれた。
肩の上を見ると、紅い瞳が遊ぼう遊ぼう、と言っていた。








「鬼ごっこしよ」







家を出てそう言うと、ピィ、と嬉しそうな鳴き声がした。
パタパタ羽ばたいて、取り敢えずオレの方が鬼役らしい。

手を伸ばして届く、ギリギリの高さ。
其処で上昇したり下降したりするジープを追い駆ける。



しばらくして、捕まえた。
鬼の交代。





本気で走って逃げる訳じゃなく、触れようとする羽や足を避ける。





避けた途端、滑った。
尻餅をついたら、ジープが心配そうに降りて来た。


大丈夫?
赤い瞳が言っていた。

大丈夫。
答えてまた立ち上がる。



ぺしっとジープの尻尾が額に当たった。
鬼の交代。






ジープが跳んだ。
手を伸ばす。
届きそうだったり、届かなかったり。

尻尾を狙ったら、届かない高さにジープが跳んだ。
ずるいと言ったら、そんな事ないと言うようにピィと鳴いた。


尻尾を掴んだら、きっとジープは痛い。
オレも髪を掴まれたら痛いから、尻尾を掴まえるのは止めた。
仕切り直しでまたジープが飛んで、オレは手を伸ばす。








何回も繰り返して、気が着いたらもう日暮れ。
悟浄と八戒の帰りが遅くて、何をしているんだろうと思ったが、考えても判らなかった。

遊び疲れたジープを腕に抱いて、家の横に立ち、街へと続く道の向こうを眺めてみる。








「腹減ったな、ジープ」







ピィ。
うん。
そう言っている気がした。













一杯遊んで腹が減った。
早く帰って来ないかな。













(一日で10のお題/9.遊ぶ)


小動物二匹。
この子達が一緒に遊んでたら、和む。



お題元 Cosmos