眠る姿
大人組





通路で棒立ちになっている旧友を見つけた。
生真面目で文官としての仕事に追われている彼にしては、実に珍しい場面であったと言っていい。

だから、声をかけてみた。







「おはようございます、金蝉」
「……今は昼だ」






修正されたが、気にしなかった。






「こんなところでどうしたんです?」
「……別に」
「何もないのに、貴方がこんな所で暇を持て余しているとは思えないんですが」






何にも興味を持たない男である。
そんな友人が、何に興味を惹かれてこんな場所に立ち止まっているのか。
金蝉と言う人物を知っているなら尚更、気にならない訳がない。


何が見えるのだろうと、金蝉の隣に立ってみる。
眼前に広がるのは、見慣れた桜の舞い散る城の中庭だった。

見慣れた風景だ。
終わらぬ桜が永遠に咲き誇る、もう何百年も何千年も変わらない天界の風景。
不変を最良と言う天界に辟易する友人は、いつしかこんな景色に意識を留める事も忘れていた筈。
戯れに自ら変化を齎すこともせず、果てはきっと、景色がある事さえも忘れてしまうのではないかと。
─────そう思うほど、この男は、この見慣れた風景を厭うてはいなかっただろうか。



それが、どうして。







「おっ。お前等、何やってんだ?」






角を曲がってきた捲簾が、同じように、金蝉を真ん中に挟んで並んだ。
面白いものでも見えるのかと、右手で庇を作って中庭を見渡す。


金蝉の視線の先。
それを辿って。




見つけた可愛い子供達に、笑みが漏れる。








「遊び疲れたか?」
「そんなところでしょうね」







天蓬と捲簾は、互いの顔を見合わせて。
それから、何も言わずに、ただ真っ直ぐに子供達を見ている、不機嫌な男に視線をやって。
変わったものだ、とどちらともなく考えて、口元が笑みを象った。












木漏れ日の下。

手を繋いで眠る、子供達。



まもりたいと、思う。














(可愛い10のお題/7.眠る姿)


子供達が笑っていられる世界なら、
幸せな夢を見れる世界なら、

きっと其処は、至高の楽園。


外伝一巻の那托の部屋のシーン、思い出すだけで萌える。



お題元 Cosmos