駆け回る犬
捲簾&那托&悟空








例えるなら、そう。
犬だ。








中庭を走り回り、転げ周り、きゃらきゃら笑う子供達。
ふざけあってじゃれあって、背中に飛びついたり、二人で地面に倒れたり。
その様は、仔犬二匹がじゃれあって遊んでいる姿とよく似ている。

そして小さいとは言え、やはり犬は犬。
全力で走れば、早いのだ。







「まてコラ、ガキ共っ!!」
「やだよー!」
「わーい!」







走る捲簾のずっと前の方で、きゃあきゃあ声を上げて逃げ回る子供が二人。
今回は悪戯をした訳でもなんでもなく、捲簾が子供二人の遊び相手を買って出たのだ。

いつも二人で遊んでいる、悟空と那托。
この天界に、他に同じ年頃の子供なんていないから、そうなるのは自然な事だった。
二人はそれについて不満を述べたことはなかったが、二人で出来る遊びなんてたかが知れている。
そして遊ぶ相手が同じである事も不満ではなかったが、もう少しバリエーションは欲しいのだ。


遊びにおいて、子供は何処までも貪欲なのである。



生憎、金蝉は子供二人に振り回されるような体力はないし、天蓬もどちらかと言えばインドアだ。
悟空と那托のパワフルな遊びに付き合える人物となると、おのずと捲簾にお鉢が回る。







「わっ!」
「よーし、悟空捕まえたぜ」
「ドジだなー、悟空」
「次は悟空が鬼な。10数えろよ」
「いちにさんしごろくしちはちきゅうじゅうっ、ケン兄ちゃんタッチ!」
「あっ、この!!」
「さっきケン兄ちゃんが先にしたもーん!」
「逃げろー!」
「ちゃんと数えなきゃ駄目だかんなー!」







言ってくれた悟空に、捲簾は早口で数えると、直ぐに追い駆けた。



悟空と那托は、中庭の池を飛び越えると、館と館を繋ぐ渡り廊下の柵を飛び越えた。
すぐに捲簾が追うと、既に向こう側────表の庭に続く柵を乗り越えている。
捲簾は柵から廊下に降りず、反対側に飛び移ると、子供達の距離を確認した。

と、二人が向かった先に、見慣れた面々を見つけて、







「お前等!」
「─────え? 捲簾大将?」
「何して……」
「そいつら捕まえろっ!!」

「あっ、ズリィ!」
「援軍なしー!!」







二人の行く先にいたのは、訓練中の第一小隊。
突然の上官からの命令に、一体何事かと全員の目が向けられる。

唐突な出来事に脳が処理に必至になっている間に、子供二人は大人達の隙間をスルスルと抜けて行ってしまった。


ああと嘆いている場合ではない、子供達はこれみよがしに此方にあかんべえなどして来る。









「絶対ぇ捕まえてやる! 覚悟しろ!!」
「「やだもーん!」」












言うなり、また仔犬達はきゃあきゃあ声を上げて走って行った。












(可愛い10のお題/8.駆け回る犬)


いるよね、すっげー高速で数える子(笑)。
そして遊びだろうがなんだろうが、捲簾は本気で追いかけます。
遊びは遊びで真剣にやる。寧ろ遊びの方が仕事よりよっぽど真剣にやる。


悟空と那托はマメ柴かポメラニアンで、捲簾はアフガンハウンドかゴールデンレトリバー。
……ようは、私の中で捲簾も半分犬扱いとゆー訳なのです(爆)。

未成年コンビ+でっかい子供は書いてて楽しいんだー。


第一小隊は友情出演(笑)でしたが、今度改めて書きたい。



お題元 Cosmos