小さな手足、一生懸命な説明
外伝オールキャラ








おばけを見たんだ。
そんな事を言い出した二人の子供に、大人達は揃って顔を見合わせた。








「あっ、信じてないだろ、その顔!」
「ホントだぞ! ホントに見たんだぞ!!」







揃って主張する二人の言葉を、何も疑っている訳ではない。
子供達が口にする言葉は、どれも真実に沿ってのものであって、彼らは決して嘘を吐いていない。

ただし、其処に多分な勘違いが含まれている事を、大人達は知っていた。



嘘じゃない嘘じゃないと声を揃える二人に、天蓬がまぁまぁと宥めた。






「嘘だって言ってる訳じゃないんですけどね、俄かに信じ難いと言うか」
「やっぱり信じてないんじゃん!」
「ホントだよー!」






信じ難い=信じられない=信じていない。
強ち、間違っているとも言えない連想だった。






「二人が嘘を吐いているとは思ってません。でも、判らないんですよ」
「……判らない?」
「僕らも見た事はありませんからね。本当にいるのかなって」
「いた! いたよ、オレ達見たもん!」






はいはいと手を上げて主張する悟空。


既に金蝉が呆れた顔になっているが、此処は子供達に付き合うべきだ。
例え勘違いだろうが見間違いだろうが、彼らは見たと言っているのだから、彼らの気が済むまでは話を聞いてあげなければ。

ちなみに此処は天蓬の部屋で、金蝉が「下らない」と一声言って部屋を出て行く事は可能である。
……ドア前をさりげなく塞いでいる捲簾がいなければ。






「でしたら、どんなお化けだったのか教えてくれませんか?」






何せ僕らは見た事がないですから。
そう言う天蓬に、悟空と那托の目がきらきらと輝いた。

子供二人に比べれば、大人達は知識が広い。
天蓬などは、悟空から「天ちゃんってなんでも知ってんだ!」と言われる程である。
そんな彼らが知らないものを、自分達が教えられるとあって、嬉しいのだろう。







「あのな、こーんなでっかかったの!」
「ふわふわ揺れてて、ひゅーって声がして」
「オレ達遠くにいたんだけど、ひゅーって、すげーはっきり聞こえてて」
「そしたらガチャガチャって音したんだぜ」
「びっくりして近くに行ってみたら、なんかいなくなってて」
「変だなって言ってたら、こーんな近くにいて、がばーって出てきてさ!」
「遠くで見たら白いだけだったんだけど、目があったんだぜ!」
「そうそう! こんくらいの! それが一杯!」






手を一杯に伸ばして、大きさを表して。
身振りでそのお化けの動きを真似して見せて。

怖かったぁ、と言う二人に、こっそりと、やっぱり可愛いなぁと思った。


















「……何処かの部屋のカーテンじゃねえのか?」

「金蝉、それ絶対チビ達に言うなよ」

「夢は持たせてあげましょうよ」














(可愛い10のお題/9.小さな手足、一生懸命な説明)


その内擬音がどんどん増えて、大人達には理解不能になって来る(笑)。
でもぴょこぴょこ動いて一所懸命話すから、誰も文句言わずに聞いてる。

お父さん、判ってても今は言っちゃいけません。
…言ったら言ったで、子供達はそっちを信じないと思うけど(爆)



お題元 Cosmos