腕の中の仔猫
外伝オールキャラ






珍しく、金蝉が悟空を好きに甘やかしていた。




元々金蝉は悟空に対して甘い所が多分にある。
言えば本人は否定するけれども。

それでも、此処まで判り易く甘やかす事は少なく、悟空もそれは実感しているらしい。
嬉しそうに膝上でにこにこ笑い、保護者を見上げる悟空は、今の内に目一杯甘えるつもりのようだった。
金蝉は髪を引っ張られると顔を顰めるが、軽く叩いてやる程度で、怒ることはしない。


それを見て、いいな、と那托は呟いた。






「那托?」
「いいな、それ」






歩み寄って繰り返す那托に、悟空は首を傾げる。


金蝉は、那托の言葉が示すものが判ったらしい。
子供が子供でいる為に、必要な環境がこの子供にはないのだ。
こうして甘える相手も。

同じく、言葉の意味を察したのが、捲簾と天蓬だ。






「なんだ、お前も案外甘えん坊だな」
「そんなのじゃねーよ」
「無理すんな」
「してねえってば!」






がしがしと捲簾の手が那托の頭を乱暴に撫でる。
那托は眉を寄せて嫌がっている素振りを見せたが、撫でる手を払おうとはしなかった。






「よし。那托、こっち来い」






床に腰を下ろして、捲簾が言った。
那托は不思議そうに首を傾げたが、言われた通り、捲簾の方に歩み寄る。

目の前まで来て腕を引っ張られて、引っ繰り返った声が上がった。
それから収まったのが胡坐を掻いた捲簾の膝の上で、しばらく、那托はぽかんとしていた。







「那托、オレと一緒!」






悟空の言葉に、はっとしたように那托は顔をあげた。

正面に、保護者に甘えて膝上に乗せて貰っている悟空がいる。
頭を持ち上げて後ろを向けば、にっと笑う捲簾がいて。







「折角ですから、二人に何か読んであげましょうか」
「あんぱん! あんぱんの奴がいい!」
「悟空はこの話が好きなんですよね」







リクエストの本を探して、天蓬が本棚を廻る。

程無くして目当ての本を見付けて、金蝉と捲簾と天蓬、三人で三角形になる。
金蝉と捲簾の腕の中には、それぞれ、悟空と那托が収まっていて。
悟空と那托が顔を合わせて、どちらともなく、笑みを浮かべた。












数分後。

子供達は、自分達を守ってくれる優しい腕の中で、夢の中に旅立った。














(可愛い10のお題 / 10.腕の中の仔猫)


子供は皆に甘えて、皆に守られてるのが良いよ。
愛されてるのがいいんだよ。



お題元 Cosmos