神様からの贈り物











願いごとは別にないし
神頼みなんて柄じゃないし

本当に叶えてくれるかどうかなんて怪しいんだけど
……っつーか目の前の人がなんか怪しいんだけど
なんでか、ちっとも危ない感じはしなかったんだ


こんなこと三蔵に言ったら「バカ猿」って言われそうだけど






なんでも叶えてくれるんだって
なんでもいいんだって

でもオレのコレじゃやっぱり無理じゃないかなって思ったら













了解、すぐに叶えてやるよ



ったく、いつまで経ってもお前ら見てて飽きねぇな


































































本当に、何故こんなことになったのだろう。
頭脳労働は分野ではないのだが、一所懸命に考える。
何せ頼れる人物がいないのだから仕方がない。

室内はなんとも静かで、それは良い事なのだろうが。
漂う空気は、何処か緊迫したものがある。


睨み合いがずっと続いているのだ。
本来、自分の保護者であるだろう金糸の持ち主と。
いつも自分に笑顔を向けてくれていた翡翠の持ち主が。

なんて珍しい光景だろう。
二人があからさまに対立するなんて、滅多な事ではない。



ついでに言うなら、今の自分の状況も珍しい。
全体を見渡しての事ではなくて、だ。

自分の背中に張り付いている存在。
睨み合う二人から隠れるようにして、其処にいついてしまい。
なんだか振り払うのも可哀想なので、そのままなのだ。






いつから自分は、保父の位置に立ってしまったんだろう。







睨み合いはかれこれ20分程続いている。
何が原因でこうなったのか、悟空は知らない。

ほんのちょっと、トイレに行っている隙に。
何かいざこざがあったのだろう。
戻ってきた時には、既にこの状態になっていた。


部屋の隅にいた悟浄に何があったのか聞いてみたけれど。
聞かれた方はよく判らないと首を振っただけだ。

睨み合う二人をいさめようとしたものの。
なんと言っていいか判らず、言葉に詰まってしまい。
その間に二人はまた向き合ってしまった。




ほんの少し、八戒の気持ちが判る気がした。
何が原因でなのか知らないが、ケンカを止めると言うのは思っている以上に疲れる行為だったようだ。

もとに戻れたら、少しぐらい気をつけよう。
相手が気を付けてくれるかどうかは知らないけど。




それにしても。
変われば変わるものなんだ、と思った。

悟浄は妙に大人しいし、悟能は無口で無表情。
江流は面影はあるものの、やはり表情がよく変わる。
出逢った時でさえ、今と殆ど同じだったのに。


幼い頃にはやっぱり、こんな一面もあったのだ。



知らない事を知る事が出来て、少し嬉しくなった。



(でも、これはなんとかしなきゃ……)



居心地は悪いし、悟浄は怯えているようだし。

そもそも、言葉で止めようとしたのが無理だったのだ。
不本意ではあるが、ボキャブラリーには貧困している。





「二人とも、ケンカしない!!」





言いながら近寄れば、じろりと睨まれたが。
生憎、それは悟空には効果を発揮しなかった。

子供同士や慣れない人物なら竦み上がるだろうが。
悟空が三蔵に睨まれたりするのはいつもの事だったし。
八戒の“あの”笑顔の方が何倍も恐いのだ。


毅然として二人の間に立つ。



「悟浄が困ってるだろ、ケンカは駄目」
「……どうしてあなたが割り込むんですか?」
「一々でしゃばるな、猿」



こんな時まで猿呼ばわり。
今なら怒っても良いかな、と思いつつ我慢する。
個人的な怒りをぶちまけるよりも、ケンカを止めるのが先。

悟浄がまた、悟空の背中に張り付いた。
どうやら悟浄だけは、懐いてくれたようだ。



「とにかく、なんでケンカしてるの?」
「……何故あなたに言わなきゃいけないんです?」



刺々しい悟能の台詞に言葉を詰まらせたが。
反対側―――江流は溜息を吐いて。



「こいつがお師匠様を馬鹿にしたからだ」



忌々しげに呟かれたその言葉に。
悟空は三蔵が師だと言っていた人物の事柄を思い浮かべる。

あまり詳しく聞いたことはないのだけれど。
三蔵が失いたくないと思うほどに大切な人だったと。
それだけは、しっかりと記憶している。


大切な人を貶されたのでは、流石に三蔵も怒るだろう。
自分が三蔵の悪口を聞く度、腹が立つのと同じように。



「じゃあ、悟能が悪い。ほら、謝らなきゃ」
「……どうして」
「大事な人の事馬鹿にされたら、悟能だって嫌だろ?」



どういう経緯でそんな事になったかは一先ず置いておいて。
この居心地の悪い空気をなんとかしなければ。
その為には先ず、江流の怒りを解いてもらわねばなるまい。


謝れと言うと、悟能は無言で、こちらを見上げてきた。
無表情なその瞳に、悟空は僅かに気圧される。

それでも、此処で自分が引き下がってはいけない。

冷たい翡翠には、どうにも慣れないのだが。
これ以上嫌な雰囲気に包まれるのは御免である。


じっと睨み返していると、悟能は溜息を吐いた。
それの意図する所はよく判らなかったが。
悟能は江流に向き直ると、小さく「ごめんなさい」と言った。

未だに少々の刺が残っていたけれど。
謝ったから良しとして、頭を撫でてやる。



「………なぁ、悟空」



背中の方から、服裾を引っ張られた。
振り向いてみると、随分下の方に悟浄の顔がある。



「なに?」
「………やっぱ、なんでもない」
「さっきもそんな事言ってたじゃん」



言いたいことがあるなら言え、と。
存外に言ってみるが、果たして伝わるだろうか。

悟浄は口を噤んでしまったが。
服裾を掴んでいる小さな手は、そのままになっていて。





ああ、と一つ思い立った。





くしゃくしゃと紅色の撫ぜまわす。
悟浄が驚いたように、引っ繰り返った声を上げる。

しかし、自分の頭に悟空の手が触れていると気付くと。
少しの間呆然とそれを見上げて来て。
途端に赤い顔をして、悟空の手を振り払った。


てっきり、自分も撫でて欲しいのかと思ったのだが。
勘違いだったのだろうかと悟浄を見ていたら。
振り払われた手が、僅かに痛みを発しているのに気付いた。

けれど、それを言う事はしない。
多分、言わない方が良いんだと思う。


突然だったから、驚いたんだと片付けた。



「………ガキ」
「なんだと!」



聞こえた声に、悟浄が声を張り上げた。



「撫でて欲しいなんて、ガキじゃねぇか」
「な……んなこと考えてない!」



今度は江流と悟浄が剣呑な空気になる。
今度はどっちを注意するべきなのだろうか。

と、そんな事を考えていたら。
江流の方が興味を失ったように悟浄から目を逸らし。
三人の中心に立っていた悟空の方を見上げた。


何故だか江流は眉根を寄せて見上げてきていて。
けれど、不機嫌、と言う表情ではなくて。

どうしたのかと思って見詰め合う姿勢になっていたら。



「お前はお師匠様を知っているのか?」
「え?」
「……知っているような口振りだったぞ」
「…あ……えっと……」



見上げてくる紫闇に、返答に窮してしまう。

知っている事は、確かに知っているのだが。
三蔵から聞いただけで、それも断片的なものだったから。



「まぁ…その……別に…」
「なんで目を逸らす」



名前は知らないが、三蔵法師だったと聞いた。
三蔵に名前を与えたのもその人物だと。

多分、有名な人だとは思うのだが。
そうでないとしたら、余計怪しく見えてしまいそうで。
かと言って黙っているのも可笑しいし。



「知っているなら、教えろ。今あの人はどうしてるんだ?」
「え………と、えっと……」



どうしているのか。
話にだけは、聞いているけど。

答えない悟空に、三蔵は焦れたように眉根を寄せる。
するとそれまで悟空の背にいた悟浄が離れて。
まるで悟空を庇うようにして、三蔵の前に立った。



「困らせんなよ。知らないのかも知れないだろ」
「引っ込んでろ、ガキ」
「ガキじゃねぇ!!」
「だ、だからケンカしないでってば!」



声を荒げた悟浄を抑えて、悟空が叫ぶと。
思いのほか悟浄は、あっさりと身体の力を抜いた。



「……騒がしい人たちだな……」



ぽつりと呟いたのは悟能。
悟空はかちん、という音を聞いたような気がした。

江流は無言になり。
悟浄は悟空の腕の中で苦虫を噛み潰したような顔をして。
元凶である悟能は興味のないとばかりの表情。








保護者って大変だったんだ。

本当に、もうちょっとワガママを減らそうと思った。








































………そう言えば。





ふとした事に、悟空は気付いた。

あまりにもドタバタしていて気付かなかったけれど。
気付かないぐらいに、自然にしていた事。



いつも見上げている自分が、見下ろしていると言う事。
相手が皆小さくなっているのだから当然だが。
常日頃を思うと、随分変な感覚である。

一番背の高かった悟浄でさえ、自分の腰ぐらいまでで。
“見下ろす”という感覚がなんだか新鮮に思える。


三蔵は出会った頃から見上げていたし。
悟浄や八戒とは、出会った時から背が高かった。
小柄な自分が見上げるのは、自然の成り行きだった。

悟空が三人を見下ろす時と言ったら。
自分が立っていて、相手が座っている、そんな時ぐらいだ。




なんだか、それが新鮮で。
とても楽しくて。
嬉しくて。

大変な事は大変なのだけど。
もう少しこのままでもいいかも、と思ってしまう。





三人は相変わらず、歩み寄ろうとしない。
大人の時より、警戒心が強くなってないだろうか。
信じていない、と言った方が正しいかも知れない。

しかし悟浄だけは、悟空の後をついてきていて。
まるで仔犬みたいだと思ったその後で。
小さい頃の自分も、こんな風に見えたのかと思う。


自分の思った事に小さく笑った後で。
何気なく時計を見ると、既に時刻は10時を回っていた。



「……風呂、入ろっかな」
「風呂?」



悟空の呟きに反応したのは、やはり悟浄。
未だに背中にくっついて離れてくれない。
結構甘えん坊だったんだなと勝手に思う。


きっともとに戻って今の話をしたりしたら。
怒られるか、若しくは夢なんだろうと流されるだろう。

だから、今のことはきっとずっと言わない。
彼らがもとに戻って、この出来事を覚えているかは判らない。
それでも、話題に上らせるのはやめて置こう。



「一緒に入る?」
「………一緒に?」



確認するように鸚鵡返しをされて。
頷いてやると、悟浄はしばし考え込む。





………そうだ。





不意の思いつきに、悟空は手を打った。
そしてまだ考えている悟浄の手を引っ張っる。

突然の行動に、悟浄は目を白黒させたが。
悟空はそれを気に止めることなどなく。
ずっと沈黙を守っている江流と悟能に近付いて。



「一緒にお風呂入るよ!」
「………あ?」
「……は?」



悟空の言葉に、二人はきょとんとした顔をする。
この二人のこんな顔を見たのは、これが初めてだ。
今朝から今までずっと不機嫌だったから。

それがやっぱり、なんとなく嬉しくて。
呆けた顔の江流を片腕で抱き、繋いでいた悟浄の手を離し。
それによって解放された片腕で抱き上げた。



「なっ……てめぇ猿! 何すんだ!」
「だから一緒にお風呂入んの」
「下ろして下さい!」
「やだ。悟浄、行こう」



じたばたと暴れる二人を意に介さず。
悟空は悟浄を促して、風呂場へ向かった。








嫌がる二人の服を、手間取りながら脱がして。
悟浄はその横で、大人しく自分で脱衣して。
三人を風呂場に入れて、自分もすぐに脱いだ。

中に入れば、三人とも既に身体を洗い始めていて。
しっかりしてるなぁ、などと感心した。


悟空もざっと洗うと、湯船に入ろうとした。
が、その前に、悟浄がシャンプーを取ったのを見つけ。

自分が拾われたばかりの頃は、三蔵に洗って貰っていた。
上手く出来なかったし、三蔵に甘えたくて。
それと彼を一緒にする必要はないと思うけど。



「悟浄、洗ったげよっか?」
「…え……い、いい!」
「えー、いいじゃん。ね、やらせて」



湯船に入るのを止めて、悟浄の傍に座って。
シャンプーを取り上げると、自分の手に押し出す。
其処までしたのを見て、悟浄も大人しくなった。

どうやら、世話をされるのには慣れているようだ。
腹違いの兄がいると言っていたから、その関係なのか。





「随分熱心だな、お前」





横から聞こえた声に振り向いてみれば。
身体を洗い終えた江流がこちらを見ていた。


ガキがそんなに好きか、と聞かれ。
自分でもよく判らないことに気付いた。

ただなんとなく、やりたくなっただけなのだ。



「そうだ、江流も洗ってあげよっか?」
「なっ……必要ない、もう終わった!」



身体を洗うのに使ったスポンジを投げつけて。
江流はさっさと湯船に浸かってしまった。

ちぇ、と少し残念に思ったその後で。
ふと頭を洗っている悟能に視線が向いた。



「………何してんだ?」
「え? あ、いや、なんでもない。流すよ」
「……ん」



シャワーの湯でシャンプーの泡を流す。
悟浄は軽く頭を振ると、湯船に入った。

悟空もとっくに洗い終わっているのだが。
湯船には入らずに、悟能の方に歩み寄る。



悟空が近付いてくるのが判ったのだろう。
いぶかしげな翡翠が、こちらに向けられた。
流石に一日見たので、そろそろこれにも慣れた。

いつもと違う、少し冷えた翡翠も。
見下ろし、見上げられるという事も。


何か用? と聞きながら。
悟能は湯の入った桶に手を伸ばした。

それを先に悟空が取る。
一体何がしたいんだとばかりに向けられる翡翠に。



「流すから目閉じてろよ」



桶を取り上げられている状況もあるのか。
悟能は大人しく下を向いた。

ざ、と泡を流して、悟空はシャワーを出した。
一回で流しきれなかった泡を、もう一度流す。



「……変わり者ですね」
「ん? 何が?」



聞こえるか聞こえないかの声だったのだろうが。
標準仕様ではない悟空の鼓膜には、しっかり届いていた。

まさか聞かれるとは思っていなかったのだろう。
悟能は少し驚いたような顔をしたが。
結局なんでもないとだけ言って、湯船に向かった。

悟空もその後について湯船に入った。







温泉以外で四人一緒に風呂に入ったのは、初めてだ。






























思いの他、長風呂をしてしまったが。
三人とも、それについて特に何も言わなかった。



風呂に入っている間、悟空はそこそこ楽しんでいた。

以前は悟浄に教えて貰った水鉄砲を、自分が悟浄に教え。
撃った水が江流の顔に直撃して、江流が怒り。
その巻き添えを食らった悟能が、沈黙のまま怒って。

疲れたと言えば確かなのだが、それも楽しくて。
悟能が逆上せかかって、ようやく上がったのである。


真っ赤な顔をした悟能の足元が覚束なくて。
仕方なく悟空が、悟能の体を拭いてやった。

拾われたばかりの頃は、自分がして貰っていた。
と言うか、思い返せば、いつも自分はして貰うばかりで。
彼らも自分の世話は自分で見ていたから当たり前か。



(今だから、こんなこと出来るんだ)



悟空が、三人の面倒を見る。
こんな事は普段であったら絶対に出来ない。


そんな事を思いながら、悟能を負ぶって部屋に戻り。
昨晩八戒が使っていたベッドに、悟能を下ろした。

江流も、昨晩三蔵が使ったベッドに横になっている。
しかし、まだ眠ってはいないようで。
寧ろ居心地悪そうに何度も身動ぎしている。



時間も時間だし、もう自分も寝るとしようか。
今日一日が常と違っていて、随分疲れた気もするし。
楽しかったが、それとこれとは別なのだ。

明日になった元に戻ってくれるかな、と思いつつ。
もうちょっとこのままでもいいかと思う自分に笑った。



と。

悟浄がまた、悟空の服裾を引っ張った。



「どしたの、悟浄? もう寝るよ? 眠くねぇの?」



服裾を引っ張ってくる仕草が、なんとも幼い。

自分もそうやって三蔵の気を引いた。
掴み易いし、すぐに気付いて貰えるから。



「いや……えっと……」



言っていいものかどうか、迷っているらしい。
悟浄は朝からずっとこんな調子だった。
何かを言おうとして、すぐに口を噤む。

そんな悟浄をじっと見下ろしながら。
ああ、と思い立った事が一つ。




なんとなく、悟浄の気持ちが判るというのは自惚れか。




あの悟浄が、と思うと笑ってしまうが。
気持ちが判らないでもない。

一緒に寝たい、と言いたいのだ。
記憶が戻ってしまって、此処が何処かなど判らなくて。
幼心には少々不安が生まれたのだろう。


くしゃくしゃと悟浄の髪を撫でてやる。
もとに戻ったら、もうこんな事は出来やしない。
今のうちに目一杯やらせて貰うと心に決める。

そうだ、折角なんだから皆一緒の方がいい。
江流が眠れないのも、それが原因かも知れない。



「江流、江流」
「……なんだよ?」
「あと、悟能もこっち来て」
「…なんです、こんな時に……」



逆上せた所為で頭が痛むのだろうか。
悟能が頭を抑えながら、ゆっくり起き上がり。
それを見た江流も、面倒臭そうに起き上がった。

悟空は傍にいた悟浄を抱き上げて、ベッドに座る。
二人がベッドの傍らに来ると、にっこり笑って。








「今日は皆一緒に寝よう」









悟空の言葉に、悟浄が少し安心したように笑った。
子供の頃は、こんなに素直だったのか。
何処をどうしたら、あんな大人に育ったのだろう。

まぁ、彼だって色々あったのだろう。
それだけに片付け、悟空は他の二人をベッドに上げた。



「なんで笑ってんだ、そこのガキは」
「ガキって言うなっつってんだろ!」
「こんな時間にまでケンカしないの」



食って掛かる悟浄を腕の中に引き止める。

納得行かないとばかりに悟浄が睨み上げてくるが。
やはり悟空にはちっとも効果がない。



「……例えば一緒に寝るとして、どうやって寝るんです?」



悟能の言葉に、悟空はきょとんとしたが。
どういう意味かと考えて、ベッドを見ると。

流石に子供が三人寝るには、シングルベッドは狭かった。
悟空が抜ければ、問題無いが。
一緒に寝たいと思うのは、悟空とて同じだった。


四人揃って。
折角だから、寝る時もそれがいい。



「シーツ下ろして、床に敷けばいいだろ」



言い出したのは江流だった。
絶対に御免だと言うだろう彼が、提案したと言う事は。
どうやら彼も一緒に寝る事に付き合ってくれるらしい。

嫌なら嫌と言いそうな悟能も。
悟空を見て、仕方なさそうに溜息を吐いただけ。



嬉々として悟空が床にシーツを敷き始めると。
悟浄も一緒になって、それを手伝った。

江流と悟能はしばらく傍観していたが。
どちらともなく、手伝い始めた。


布団を敷き終わって、悟空が真ん中に横になると。
右側に悟浄が寝転がり、左側に江流が横になり。
悟能は悟浄を挟んで端に横になった。

灯りが消えてしばらくすると、寝息が聞こえてきて。
なんだか変な状態だよな、と思いながら。


まぁいいか、と片付けて。











でもやっぱり。

いつもの皆の方が良いな。









































菩薩、また何かしましたな



ああ、面白そうだったんでな



何故三人を若返らせるなんて事を仕出かしたんですか



たまには変わったシチュエーションの方がいい
それに、あいつのお願いを叶えてやっただけだ



………お願いですか?



おう
今日はあいつが生まれた日だぜ



そうでしたか?



正しく言えば、あのチビが俺の甥っ子と会った日だ



ああ、そう言えばそんな日ですなぁ……
ところで、あの子供のお願いとはなんですか?





たまには、あいつらの世話をしたいってさ
いつも世話になってるからだと

……ま、こんな日もあっていいんじゃねぇの?

















誕生日おめでとさん、チビスケ






















FIN.


後書き