あっちにうろうろ
こっちにうろうろ
のぞき込んだり、しゃがみ込んだり
かと思えば
ヨタヨタと地面をにらんだまま茂みの中へ入っていく。
小さな身体にちぐはぐな大きすぎる麦わら帽子が草に引っ掛かって頭から落ちる。
宝と公言してはばからず、いつも離さないクセにずいぶんと無頓着だ。
何かを追うのに夢中で周りなどすこしも見えていない。
やれやれと、エースは幼い弟が茂みに隠れてしまうまえにその襟元を掴んで引き上げた。
[散歩道]
マキノの店から我が家までふつうに歩けば子どもの足でも15分とかからない。
しかしいつもルフィは寄り道し放題で、ときには思わぬ事件を起こしたり巻き込まれたりもしてくれる。
そんな弟を見かねてエースがこまめに迎えに行くようになったのは、つい最近のことだ。
だがエースは、ルフィの腕をとって家路を急かしたりはしなかった。
「あまり奥へ入っていくと危ないぞ」
言いながら置いてけぼりになっていた帽子の紐を弟の首に掛けてやる。
みれば頬や腕に草で切ったらしい細かい切り傷がいくつもできていた。
「お、おれ痛くないぞ! だから薬は塗らなくていいんだぞ・・・っ」
「しみるのが嫌なだけだろ、しようがねぇな」
叢からルフィを引っ張り出すと、エースはその手を取って帰路に着く。
そうしてしばらくはルフィもおとなしくエースの手を握ってついていく。
だが前方をノラネコが通り過ぎると、すぐさまそちらへ走っていってしまった。
手をぎゅっと握っておとなしく付いてきたかと思えば
もう別のものを追いかけて離れていく。
今日はもう日が沈む前に家に辿りつけそうにないなと、暗くなり始めた空を見上げてエースは溜息をひとつ 吐いた。
世話の焼ける弟で。