なんだかなぁ・・・
そう思うのに現実はいつまでもただ混沌と
+ カオス +
ちっともアタリのこない釣りにダレてきたおれとルフィは竿を固定して甲板でムダにゴロゴロと転がっていた。引っ付いたり離れたりを繰り返しながら、ゴロゴロと転がっては端から海をのぞき込みまたゴロゴロと転がっては空を眺めたり時々釣り糸の先を見たり。そうして今、ポンとぶつかったままふたり怠惰に甲板に寝転んでいた。
身体がぶつかるより先におれの鼻がルフィのデコにコツンとぶつかったことに笑い声を上げながら、ルフィはおれにじゃれ付いてくる。
「ウソップのこの鼻はちょっとジャマだよな」
「鼻を掴むな、鼻を!」
ぺシッとその手を叩き落とすと、しししと笑ってルフィはさらに抱きついてくる。おれは抱きつかれたままルフィが転がった拍子に潰してしまったらしい首に引っ掛けたままの麦わら帽子を取ると、元通りに直して頭上に翳した。
すこし眩しいので日除けに。
・・・と、すこしばかりの目隠しに。
首元でルフィの髪がふわふわしている。あ、こいつこのまんま寝そうだ。
「でも面白いから好きだー。掴みやすいし」
トロンと眠たそうな目になったルフィが言う。掴みやすいは余計だ。だが。
(おもしろけりゃなんでもいいのかよオマエは)
思わず溜息を漏らすおれをルフィは不思議そうに見上げてきた。
こいつは、誰に向かって、何人に対して、同じことを言ってきたんだろう。
して、きたんだろう。
コイツが好きだと言うのに深い意味はないことぐらいわかるんだ。
でもな。
カンタンにぎゅって抱きついたりチュってしたり、そういのってどうなんだ?
サンジとかゾロとか、なんかそれだけじゃねぇんじゃねぇかなぁって感じるのは気のせいか?
貞操観念云々する気はねぇし、この広い海の上にあってはちっぽけなことなのかもしれねぇけど。
でもやっぱり危なっかしいと思うんだ。
もしかしたらつけ込まれてたりするんじゃねぇかなぁとか心配にならないでもないんだ。サンジやゾロはそんなのしねぇと信じてるけどよ。でもちょっとだけ、心配なんだ。
だってよ、たぶん、あいつらにはおれ以上にキいてる。
なのに無邪気に抱きついてくるこのスキンシップ過多な船長に、過ぎる友情を的確に説明する術をおれはまだ持たない。
出来ることはといえば、必要以上に波風を立てないように気をつけることだけだ。
おれの首に抱きついたままルフィは寝息を立て始めてしまった。
気のせいか帽子の向こうに誰かの視線が突き刺さっているような気がする。
帽子があるだけマシなような、あるだけムダなような。
なんだかなぁ・・・
なんだかねぇ・・・。
サンルとゾロルが微かに混入されたウソル。ですかね、これは・・・。