しばらく、憎き忠吾は母上の乳首を舌で弄び続けた。私は相変わらず
力のこもらない体で、母上の抵抗が弱くなっていくのを見ている。
「……ふん、お凛どのの乳がわしに向かってそそり立ってしまったわ。
藩におる時に見かけたお凛どのは大層清楚だったと記憶しておるが、
なになに、とんだ淫乱女だったということか!」
強く吸った跡が残る乳の肉からやっと口を離した忠吾が、紅潮しきった
母上の顔に猥褻極まりない囁きを投げかける。
「だ、誰が……っ」
心が痛む。もはやそれは、夫のかたきを前にした妻の声では
なくなっていた。母上の声は、僅かに残った「武家の妻」という
意地に縋る弱々しい女のそれだった。
「さて……乳ばかり弄っておってはほかの場所が可哀相かの。
特に、わしのを押し付けられている『ホト』がの。ククッ……」
母上を舐めていたままの、唾液に光った口を、再び母上の耳元に
近づけて囁く。たまに足の間で見え隠れする、憎き男の汚らしくも
恐ろしい物。それが押し付けられている近くに、忠吾が求める『ホト』が
あるのだ。初めて聞いたはずなのに、その言葉は私の心を猥雑に掻き乱す。
母上の、『ホト』……。
忠吾の体がずり下がってゆく。首に舌を這わせ、乳房に舌を這わせ、
帯の上に僅かに覗いた臍にまで舌の濡れ筋をつけていく。小さく震えながら
母上は、固く目を閉じてそのおぞましい感触に耐えているようだった。
「ふむふむ、やはりこのあたりに来ると、お凛どのの女子の匂いが
強くなって来るのう。さては……わしに乳を弄られて心地ようなって
おったのか?」
「な、何を!」
「クックック……また嘘をつきよる。まあよいわ、調べてみれば
すぐ分かる事だからのう」
捩り合い続ける両腿の辺りで嘲る忠吾と、顔を紅潮させて否定する母上。
気のせいであろうが、間違いなく気のせいであろうが、森の中に吹く
ゆるい風に乗る嗅いだ事のない母の匂いを、私も感じていた。
「さて、股ぐらをもう一度開いてやるか……抵抗せぬほうが身のためだぞ。
おぬしが如何に力を入れたとて、わしは無理矢理脚を開いて、その奥の
ホトを味わってやる。怪我をしたくなければおとなしくせよ」
「いや、嫌……許して、くうううっ!」
母上の閉じられた脚。だが忠吾は膝に手をかけ、強い力でその両脚を
開いてゆく。
捲れる裾。震える肉。歪む眉。零れる寸前の涙。
そして。
気づいてしまった。あろうことか母上は、夫の、私の父上の憎き仇である
木嶋忠吾に、許しを乞うた。
「許さぬ、許さぬぞ……なにせ殺されかけたのじゃ、ここを存分に調べて
楽しまねば我が命の軽さを憂いなければならないからの……」
命の危険など、微塵も感じなかった筈だ。敵ながらそれほど鮮やかだった。
そもそも、忠吾は刀を抜かなかったのだから。
母上を嘲、辱めるためだけの言葉。そしてそれは、無理矢理両脚を
割り開かれる母上に、直に響く。
僅かに被った淡絹色の襦袢が脚と脚の間を覆っている。それだけが、
覆っている。
「さあて……お凛どのの観音さまを拝見しようかな。そおれ、そおれっ!」
「ひいいい……っ!」
吹いた。汚らしくぬるい息を吹きかけ忠吾が母上の股間を覆っていた
襦袢の端を煽る。何度か小さくはためいた襦袢。直接肌にかかる男の
息の感触に悶える母上。そしてその端は、はらりと。
「おおおお……これはこれは」
下卑た口調が、その時だけ止んだ。私からは忠吾の陰になって見えない場所。
そこに、忠吾すら感服する場所があるのか。先ほど「ホト」と呼んでいた場所が。
「……お凛どの、あんた本当に惣兵衛から情けをもらっておったのか?
わしは子を生んでここまで美しいホトを、今まで見たことがないぞ」
母上の顔の紅潮は際限なく。いや、白い肌すべてを真っ赤に染めている。
私の所からも伺える、無言でただ歯噛みして恥辱に耐える母上の表情が、
更に私の心を波立たす。
「しかし、やはり……濡れておるぞ、お凛どの」
濡れる、のか……?
「言う、な……ひっ、い、わない、で……」
久々に開いた唇からは、もうあの凛とした声は沸いてこない。ただひたすら、
男におののき許しを乞う弱々しい女の声。
「クックック、このしとどな濡れ方を、惣兵衛に見せてやりたかったのう
……まるで色に狂った商売女のようにぐちょぐちょになっておるぞ」
「ひ、い……っ!」
屈辱の囁きに、絶望のため息を漏らす母上の、その時反らせた汗ばんだ
白い喉。微かに開いて哀願する瞳。その瞳からついに流れた一筋の涙。
そして、ぐちょぐちょに濡れているという『ホト』。母上に関する全ての
事象に、私はあらぬ昂ぶりを覚えていた。痛みが残り、力が篭もらない
はずの体の一部分が、どうしようもないほどに。
そして、刹那。
「ひ、い、いいいいいいっ!」
これまでに聞いた事のない叫び。私は視線を母上の顔に、そしてすぐに
股間に向けた。
忠吾の頭が、ほんの少し小刻みに動いている。あれほど激しかった嘲りの
声はぴたりと止んだが、その代わりまるで蕎麦を下品に啜り上げるような音が
聞こえ始めていた。そして。
「あっ、い……く、くううっ!」
先程よりもさらに大きく、母上の首が左右に振られている。
「ひ、あっ、ん、ああっ!」
髪はますます乱れ、肌に浮き上がった汗の粒を飛び散らせるようにして、
母上は大きく濡れた声を間断なく上げ続けていた。
「あひっ、あふっ、くう、くううん……っ!」
舐めて、いるのだ。舐められて、いるのだ。
流れ出る液体を啜る淫猥な音。たまに混ざる、舌先の蠢く音。
『商売女のように濡れているホト』、その見た事のない隠された場所が、
母上の奇妙に上ずった声に乗って頭の中に駆け巡る。
どうなっているのか、どのように濡れているのか、どんなふうに舐めて
いるのか。ああ、母上……っ。
「あっ、い、あはあ……っ、い、やっ……、ん、んっ、あひいっ!」
股間に張り付く男を引き剥がそうとする脚先は、もはやまるで見当違いな
所を弱々しく蹴っていた。草履は外れ、林の枯葉が積み重なった土を起こし、
また白い肌を汚す。抗う力をほとんど失わせるほど、忠吾は舐め、母上は、
母上は。
「……さて」
久々に顔を上げた憎き仇。その顔は、濡れていた。
「いい蜜を存分に味わせてもらったが……おかげでもう辛抱ならんのでな」
母上の股間から離れ、体を起こす忠吾。はだけた前から覗く、あの禍々しい
物。いや、先程見た時よりさらにその物は変化していた。赤黒く勃立した
全体に、少し離れた場所から見ても血筋がはっきりと分かる。
ああ、そうであったか……だから、私のあの場所も。
「あ、あうう……っ」
母上は、もはや何も言わない。膝立ちした忠吾の姿をぼんやりと見つめ、
その躰を細かく震わせていた。顔も、乳房も、腹も、太腿も、その男の唾液に
汚れ、多分脚の間は他のあらぬ蜜に濡れているのであろう。
「だから、行くぞ……お凛どのも、もう辛抱堪らんのであろう……?
クックックッ」
久々に、敵の男は母上を淫らに嘲笑った。
母上、前のように凛と抗って下され!
辱めるなら殺せ!と激しく叫んで下され!
なぜ、忠吾を見ているだけなのです!
なぜ、脚を開いたまま閉じないのです!
ああ……なぜ、唇を開けたまま、男が覆いかぶさるのを待っているのです!
はは、うえっ!
続く
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