HEN 由来は諸説ありますが、とにもかくにも恋人たちの素敵な日。そんな、聖バレンタイン・デー。
よしよし、ここだここだ……ちょうど1年前だっけ。んふふー、なんだか懐かしいような気もするな。
去年もこんなふうに、このマットに座ってさ。んでんで、あいつを待ってたんだ。ドキドキしながら……。
まあ去年は、ちょっと慣れてない感じもあったから「今日の放課後、用具倉庫に来い!」とかちょっと強めに言ったりとか、まあちょっとだけ殴っちゃったりしたとか……そんなこともあったけどさ。考えて考えて、あんなチョコの渡し方になったんだけど。まああれから私とあいつはいろいろ愛を深めちゃってきたわけで。
ホワイトデーには、ここで、手で……キャーっ!
あんなに出るとは思わなかったもんなー。
んでんで、夏は海にもプールにも行かないで、街の陰でお互いに……おまけにテレビに映っちゃったり、募金集めちゃったりなんかしてさぁ。なんかもう、ボランティア精神爆発、って感じ!?
まー正直、ビキニ見せたかったんだけど。まあこれは、これからチャンスあるだろうし。んふふー。
それから……あ、そうそう!クリスマス!サンタコスプレ!めちゃめちゃ寒かったけど。
今度は口と口で。最後にはあいつのお母さんとも仲良くなれたし。
つーことで、今年もセント・バレンタイン・デー。そろそろ……ちゃんと……んふふー、しちゃったりしたいな。うん。うん。
んで、んで……遅いな。今日はだいぶ前から呼び出してたから来ないわけないし……でも、あいつが時間守らないって、あんまりないもんなぁ。ま、生徒会の用事か何かがあるんだろ……待ってりゃくるだろ。んふふ、チョコチョコー♪今回は普通に贈るつもりだけど……何度もあそこに入れられるかぁ。
来ねえ!
いくらなんでも遅すぎる!あんにゃろ、会ったら殴る。しこたま殴る。
おっかしーなー……なんで?なんでー?
もう暗くなっちゃったじゃん!こんなに遅くまで用事があるわけないじゃん!
こうなったら、生徒会室まで乗り込むか。うん、もう公認の仲なんだから大丈夫だよな。うん。
そうと決まれば、こんな狭くて暗いとこにいられないぞ。さっさと出ちゃって……ん?あれ、は……。
あ。
あ。
あ。
あ。
帰ろ。帰らなきゃ。
うん。帰らなきゃ。うん。うん。
ん……ベッドに寝てたら、いつの間にか寝てた。
ケータイ鳴ってる。着信音が……あいつのだ。
……知らね。
……。
……。
……。
……。
切れた。あ……何度も着信入ってんな。
……。
……。
……。
……。
また、寝よ。もう、いいや。
んー?何ー?今寝てるとこー。
「お客さんが来た」って……ミチとかヨッシじゃなくて?男の、子……?
ちょ、ちょっ、ちょっと待った!家に入れたらダメだかんね!
な、な、何でウチに……どうしよ、どうしよ!
……ん?んー?ちょっと待った。今私が慌てたってしょうがないじゃん。
逆に、あんなことして私にどんな顔で会おうとしてんのか気になるな。
……うし。窓開けて、っと……。ふん、玄関先で待ちぼうけ食らってるし。すました顔しやがって。絶対に、絶対に会わないんだかんな。
もう、会わないんだから、な。キライになったんだったら、こっちだって、考えが……あんだ、から……ぐすん。
……あーもう!全然私らしくないぞっ!くそー、全部あいつのせいだっ!
あ。こっち向いた。気づかれた!うわわわ!
な、な、なんだよ。何しに家まで来た!……帰れよ、お前なんかにゃもう用はなーいっ!
こ、こらあっ!家に入ろうとするなあっ!上がって来たら殴る、しこたま殴る!
っていうか殴るだけじゃすまない!ちちまわすっ!ちんなぐるっ!ちんなげるっ!
……って、聞けよっ!ママも何でカギあけちゃうかなー!
……。
……。
ん。
何だよ。何見てんだよ。
あ?「何を怒ってるかわからない」?ふん。
よくもまあそんなシラを切れるもんだ……ふん。あー?「やっぱりわからない」?
よーし。じゃあ言ってやろ。あなたはー、今日約束の時間に来なくてー、何をしてましたかー?
ほら黙った。やましい事してただろ。もう正直さー、殴る価値もなくなっちゃったわけよ、お前は。だからー……帰ってくれる?
いーや、聞かない。どーせいいわけだろうがよ。私という彼女がいながら、女からラブレター受け取って、そのあと女の子について行って、どういいわけしようって言うんだよ。
……もういいって。あんまりいられると、こっちがその……困る、わけだよねー。
だから、ハイさよなら。明日から声もかけなくっていいから。あ、そうそう……私どーせもうすぐ卒業だし、問題ないよな?
元々ムリがあったわけよ私とお前じゃあ。超優等生とプチヤンキーの私おまけに年上。バカだしさー。だから、いい機会!ハイおしまい!
あ?「そんなの嫌だ?」知らね。もういいから帰って。な?
うん、ハイさよならー。ささっと帰れって。はい、そうそう……んじゃなー。
……ふう。
……。
……。
……玄関ドア閉まったな。帰った、か。
うん。これでよし。いい機会だ。
ホント、ムリがあったんだ。しょーがないじゃん。
何が効いたかって、ラブレターの女が言ってた言葉。「○○くんとあの先輩は不釣合いだと思います!」。ま、そだわな。自分でも何となく思ってたし。
結局さー、あいつに強要してたわけじゃん。私と付き合う事をさ。ちょっとだけ、殴ったりして……それじゃ、ムリが来るの目に見えてるし。早くわかって正解だったってわけだ。あははー。
よし、忘れよ。きれいさっぱり。私の初恋さよーならー!
ぐすん。
ぐすん。ぐすんぐすん。ぐすんぐすんぐすんぐすんっ。
いや、だよぉ。これで終わるのなんか、いやだよぉ。
だってさ、こんなに好きなんだよ?これからも、ずっとずっと一緒にいられるって思ってたもん。
ぐすんっ。
すんっ。すんっ。
……考えるのやめたほうが楽なのかなぁ?あんまらしくないし。
あ?「そのほうがらしくていい」?ん、そーだな、そーしよ。
寝よ。寝よ寝よ。
……っておい!なーんーでーいーるーんーだーよー。
「お母さんに、入れてもらった」?なーんーでーなーのーママー。
ど、ど、どのへんから見られてたんだろっ……!?
と、とにかくっ!戻って来たって話なんか聞く気ないんだからな!帰れっ!帰れっ!帰らないと殴る!しこたま殴……
☆!
え。
叩かれ、ちゃった。全然痛くないけど。ぺちん、って感じの叩きかただったけど。
「話、聞いて」?う、うん……聞く。聞けば、いいんだろ。
「たしかに、あの子に告白された」。うん。
「それからあの子に「先輩と付き合うな」って言われた」うん。そこは、知ってる。
「そのあと「私のほうがあなたに合ってる」とも言われた」うん。
「違うよ、って言っても聞かなかった」へえ。ふうん。
「だから、納得するまで話した。ずっと、話した」……な、何を……?
え。
「僕が、どれくらい先輩のことが好きか、って」……。
……。
……。
……すんっ。
な、何だよ!ば、ばかっ、泣いてなんかねえよっ!ちくしょー!
明らかにバカにしてんなっ!私が珍しく弱いとこ見せたからって!
☆
!
☆
!
☆
!
今度バカにしてみろ、殴る!しこたま殴る!いろんなとこの形が変わるくらいまで殴ってやるうううううっ!
あ?何だよっ!「戻ってくれてうれしい」?何がっ!?
「僕の大好きな、いつもの先輩に戻ってくれて、よかった」……ふ、ふんっ、調子いいこと言いやがって。
ちょっ……「ずっと、ずっと一緒にいたいから」って……お前、ちょ、ちょっ……。
んっ。
ん、んんっ……。
んっ。
あ。なんか、すごい、キス。
今日は、なんか違うよぉ。
な、なんだ、よっ……じっと見んな、見んなよっ。
あ。
も、も一回、キスするわけ?
んっ、んん……ん、ちゅ、ん、んっ、んふーっ。
ん、は、あっ……ん、ん、んふ、あ、あっ……。
何だよ、このキス……あたまが、ぼーっとしてきちゃったし。
あ、そうなんだ……触る、んだ……なんか、超自然じゃん……。
……あ?「触っていいの」だって?い、いいよ。だってもう触ってんだろ……そのまま続けろ……続けて、い、イイ、からっ。
あ、あはっ、ん、んうう……んく、んふっ……ん、あっ、あ、は、あんっ!
おっぱい、服の上からなのに、なんか、こう……すごく気持ちイイ、気がする。
……おわっ!ちょ、ちょっ、そこももう……触っちゃう?
んあ、あ、はっ……はあ、あんっ……!
な、なんか今日、スゴイじゃん……あ、あんまり、激しくすんな、よ……っ。痛いの、苦手なんだから……。
「大丈夫」……?そ、それなら、いいんだけどな……っ。
あ、あくっ……うん、んふっ……あは、あはっ、はああ、ん……っ!
うわうわうわ、上着脱がされちゃってるよ?あそこも、いつの間にか下着の上からじゃなく直接触られちゃってるし。
でもまあ、いいけど……触られても、いいけど。だって、だって……。
はあ、んっ……は、あんんんっ……んっ、んっ、ん、は、ああっ。
あれ、あれ……下、脱がされちゃったよ?勉強や運動だけじゃなくって、こんなとこでも器用じゃん!
ちょ、あ、あっ……ダメだって、も、もう……はげし、すぎっ……あんっ、もう、だって、やっ、つよ、ふか、んんっ……もう、い、い、いっ……いっ、く……っ。
何でさっさと抜くかなあ!
あ?な、な、何だよ……もうすぐイキそうだったのに、お前が抜くから……。
マジメな顔したって、ごまかされない……ん?何だって?……はっきりしゃべれ。
聞こえないって、もっと大きな声で……え?「いれ、たい」……?
うわ。
いや、だって、その……いれちゃう?や、や……そりゃ、何となく準備は、できてるっぽい、けど……。
っていうか、心の準備が……何となく覚悟はしてたけど、その……痛い、よね?だってこいつのアレって……おっきいよ?
でも。
でも。
うん、うん。
えっと。
よし、聞け。
うん、よし。
なんか、照れるけど、言うぞ。けじめだからな。
うー。
えっと。
私は、あなたが、好きです。
これからも、ずっと、好きです。
だから、ずっと、好きでいて下さい。
……。
……。
……。
よし。
じゃあ……いい、ぞ。
んふふ。
でもアレだぁ。痛いの、ガマンしなくちゃいけないわけだし……うわ、うわ、うわ、うわわっ、やっぱりおっきいって!
でも、好きだしなー。コイツのこと、めちゃめちゃ好きだし。
あ?「本当にいいの?」も、もう決めたんだからな。い、いっちょこいっ!
はあっ、はああっ!……んっ、ん、んっ、くうう……っ!
大丈夫、だいじょう、ぶ……好きだもん、大好きだもんっ。
き、き、気にすんなっ……そのまま、も、もっと奥、まで……っ、くうっ、うんっ!
大丈夫だからっ、ちゃんと、ちゃんとっ!お前のこと……はうっ……う、受け入れ、てっ……みせる、からぁっ!
はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……。
入っ、た……?入っちゃった……?そ、そうか……うん。うん。
……お前が、はあっ……私の、中に……入ってる……いるんだよ、なっ……。
ちょ、ば、バカ……なんだよ、その顔っ。くそう、なんで笑うんだよっ!
見抜いてやがるな。でもいいもん。もう、見抜かれちゃってもいいもん。そうだよ?しあわせ、だもん。
あ?い、いいよ……動けよ。動かなくちゃ、したことになんない、だろっ。
だから、ちょっとだけゆっくり……ん、はああんっ!
ゆ、ゆっくりでもっ……い、い、痛い、なっ……や、やっ、でもっ……大丈夫、だか、らっ……ん、くうっ、んふ!
んっ、ああっ……そう、そうっ……うんっ、だいじょう、ぶ……もう、大丈夫……だから、ね……?も、もっと、お、く、にっ……。
あー。
なんか。
や、まだ痛いよ?しこたま殴りたくなるくらい、痛い!けど……。
分かってきた。なんか、こう……なんで、恋人同士がこうなるのか、って。
大好きなひとが、いちばん近くにいる。いちばん近くどころか……自分の中にいる。
それが、しあわせ、なのかな……?うん、きっとそう。
んっ、はああっ!い、いい、よ……うん、うんっ、もっと、ね……?あん、あ、あんっ!
……?え?え?な、に……?「気持ちいい」?そ、そりゃ、よかった……ふうん。
ん?んっ?「だから、もう」……もう、何だよ。え?えーっ?「もう、出る」う、うそっ!?
でも……まあ……。
い、い、よ……わたしも、いい感じ、だから……気持ち、イイから……いい、よっ……出して、いい、よっ。
いや、事実だよ?なんか、ぜんぶ、気持ちいい。いつのまにか、だけど。
ああ、いいなーって。気持ちいいなーって。こいつのこと好きだから、実感できる。
だから、ちゃんと、ね?ちゃんと、うん。
うん、うんっ……ね、来て……わたしも、来るよっ……ん、は、あはっ!ん、んーっ……。
キス。幸せなキスだぁ。
あん、んくっ……は、ああんっ!いこ?いこ?……一緒に、ね?……うんっ……はあ、んんん、んは、あっ……来る、来る、くる、よぉっ!
よく考えたらさー。今日バレンタインだったよな。
もちろんチョコ用意してたんだぜー?ふつうにさ、可愛く「はい、どうぞ♪」ってあげるつもりでさー?でもお前来なかったじゃん。くやしくって、さっき食べちゃった。
あ?「いいよ」ってなんだよ。オンナノコはなぁ、こーいうイベントを大事にすんだよ。バカ。
「来年も再来年もいらない?これからずっといらない?」……なんだそれ!どーいう意味だよっ!?
あ。
あ。
あ。
そーいうことね。ならいいや。んふふー。
ま、ともかく、将来まで決まっちゃったことだし。とりあえずはホワイトデーに期待だな。もっともっと、んふふっ。気持ちよくなりたいしな。それまで、研究研究!……いやん、研究だって!
あ?何だよ、その不満そうな顔は。私の壮大なるホワイトデーお返し計画になんか文句があんのか?
だーかーらー、聞こえねえって。せっかく男になったんだからさ、もっと大きな声でしゃべれよ。
あーもう!
☆
!
はっきりしゃべれ。おーきく口あけて、私に向かってちゃんとしゃべれ。
あ?
あー!
「明日も、したい」って?なんだよそれ、うふふっ。
……いいよー?明日も、あさっても、ずっとずっと、卒業まで……んにゃ、そのあともずっとずっと……な?
おしまい。
でもまあ、気まぐれでー。