「うううううーっ……あああっ!」
 悠も、どうやら。
 顔は母さんの腕のあたりで見えなくなってるけど、尻を持ってる両手に力がぐっとこもったの、見えたし。
 悠もイッたし、俺もまたイッた。
 母さんの浮気セックスを、母さんと悠がイクのを見ながら、ち○ぽしごいて射精ー。
 あ。あらためて思うけど、母さんもイッたわけだ。そっかそっか。
 自宅の夫婦の寝室で、
 息子と同じ14歳 悠の上でぐいぐいエロく腰をふりながら、
 童貞真っ只中の俺が気づいちゃうくらい見事に、わかりやすくイッちゃったのね母さん。

「ゆう、くん……っ。は、ああ」
 めいっぱいトロけまくってる表情で悠を見つめキスをねだる。悠もめちゃめちゃ満足した顔で応えて、キス。
 ベロベロぬちょぬちょ、ちゅぱちゅぱなディープキス、っていうか舌のからませ合い。
 2人ともこの寒い冬に汗だくだくかいてセックス、してた。
 こっちは急にテンション下がって、ズルズル体を壁に沿って下ろしてった。
 当然2人の浮気セックス終了後ラブラブ姿も見えなくなる。いいんだか悪いんだか。
 それでもキスしてる濡れた音とうめきみたいなのは聞こえてたけどねー。
「はぁー……やばかったなーホント。ゆーこさんってばよすぎ」
「んっ……はあぁん」
 成立してないけど、成立してんだろう悠と母さんの会話。母さんはどんな顔を悠に向けてんだろ?
 笑ってるか、困ってるか……確かめたいけど、そんな元気もなけりゃ勇気もない。
 自分の精液で汚れたちんちんをもぞもぞとパンツ、ズボンにしまってるだけ。情けな。
 直したらちょっと落ち着いたな。ぼんやり聞き耳立ててるけど、しばらく室内のようすも変化なさげ。
 あの濡れ音&ささやきは小さくなってきてる。でも他の音が聞こえてきてるわけじゃない。
 そもそも、セックスのあと始末ってどーすんだ?……覗いて見よっと。
 慎重に、じわじわ頭を上げて、っと……お。あれは茶色いから悠の髪だな?
 むこう向いてベッドに座って、下のほうを見ながらなにやらごそごそ。母さんは、どこだ……?
 あ。あ。あ。
「ね。いっぱいでてるでしょ?」
「まあ、ね」
 母さん、いたー。ベッドに座る悠の前に座ってる。悠の顔見て、微笑んでるよ?飯田佑子35歳は。
「口のとこ、結べる?」
「そこまで出てるわけないよ、バカ」
 なんじゃこのバカップルな会話はっ!これが一番痛いぞっ!?コンドームの話ってのは分かるけど。
 いや正直な話。他のフツーのおばさんっぽくない母さんを、心ん中で自慢してた気がする。
 学校で「母親ウゼえ」とか「しゃべりたくもねえ」って聞くたびに「へっへー♪」とか。
 もちろん声には出さないけど。中学生で母親と楽しく会話できるって、なんか特別な感じするじゃん。
 でもさー……母さんってば、悠ともそーいう会話してるし。自分だけが特別ってわけじゃ、ない。
 それもこんな生々しいエロな話題で。浮気発覚の時とか、今生セックス見た時より、これがキツイ。
「あーあ」
「ん?」
「ホントはさ、つけずにしたかったんだけど。わざと持ってこなかったし」
「ダメよ、それは」
 少し笑いが少なくなった母さん。悠め、そんな魂胆だったとは!でも母さんはそうしなかったもんねー。
「佑子さんも」
 お?
「そうだったんでしょ?ホントは。最後だし、ナマでしたかった、でしょ?」
「……」
 だーまーるーなー。
 あーもうカンベンして!ただでさえ胃痛再発なのに、ここで母さんにヤバイこと口走られたら!
 たのむ神さま!なんでもしますから、ここは母さんを信じてる俺の願いを聞いてくださいっ!
 あああああああっ、母さん微笑み消滅!ゆっくり顔が悠のち○ぽに!うわ、うわ、うわ、再開っ!?
 ひゃー!キスしたー!また始まっちゃうんですか!うえっ、げほっ。コンドームなしのセックスがぁ!
「……これで、おしまい。ね?」
「ちぇっ」
 ……母さん、悠の股間から顔離す。ゆっくり立ち上がって、ティッシュを何枚か取り出して。
 あ。使用済コンドーム包むのね……うわー、今の流れキツかったーっ!そうなってたらショック死したかも。
 そのティッシュを持って、母さんは鏡台のほうに。あのちゃんちゃんこがかかってるとこね。
 ポイっとゴミ箱にそれを捨てて。母さんは鏡台の椅子に座った。あー、クシで髪をとかすのね。
 今度は手を後ろに回して髪をまとめだした。まだほぼ裸だけど、顔だけはいつもの母さんに戻るー。
 よくやったぞ飯田佑子、ってかさすが俺の母さん。セックスまで見せられて今さらだけど。
 悠はまだ母さんのほうを見てる。まだ次の展開を待ってるみたいだけど、残念、それはないぞ悠!うはは。
 ん?あきらめたのか悠も下向いてまたゴソゴソしてんな。あーはいはい、パンツ探してんのね。
 悠はさっさとパンツもジャージのズボンもはいちゃって元通り。母さん今度は立ち上がって洋服ダンス。
「あ……悠くん。退屈だったら、居間にいってていいよ?冷蔵庫にジュースとか、あるし」
 母さんが振り返って悠に。その時ぽよよんっておっぱい揺れ。ピクッとはきたけど、さすがにもう立たねぇ。
「え?人んちの冷蔵庫なんて勝手に開けられないよー?」
「なーにをいまさら……バカいってないで、さ。私もすぐいくから」
「あーい」
 ベッドから立ち上がって悠は部屋をでてった。母さんがいったとはいえ、俺んちをわが物顔に!くそうっ!
 んで、母さんは……あー、ブラを取り出したのね。今度は薄い青色の。右手にもなんか持ってて、たぶんパンツ。
下着はあそこに入ってんのか、へー。日記の入ってるタンスの……や、これはヤバい考えー。
「……いまさら、か」
 ん?母さんがいきなりつぶやいて。
 そのまま下向いて、なんか真剣に考えてるモード。いまさら……なにを悩んでんだー?
「はあぁ……っ」
 すごくすごく意味深な、ためいき。なんか、いろんなもんが混ざったカンジの、長く深いためいき。
 浮気したこと悩んでんのか、14歳とこういう関係になっちゃったこと悩んでんのか、それとも他の悩みか。
 しかしどんな悩みでも、それはぜーんぶ、悠のせいだ。うん。
 だって母さんは、悠がらみ以外の部分じゃ、前となーんにも変わってないし。飯田佑子のまんまだし。
 だから、決めた。あとで追っかけて、悠を追及する。んで、あやまらせる。母さんを悩ませてることをー。
 見ると、母さんはゆっくり顔を上げて、そのままブラをつけ始めた。おー、隠れちゃうじゃんおっぱいが!
 ……いや、いいんだそれで。なんかくねくねしながら、パンツ掴んだままブラ着用終了。
 うお。わきの所でちょっと食い込む肉ー。まだ惑わせるか飯田佑子っ。
 すぐにかがんで、手に持ったパンツ広げて。ブラとおんなじライトブルーの奴。
 おおーっ。右足通す時に一瞬だけえーっと、……毛が見えた。
 やっぱドキッとするねー。何回も精液出した直後なのに。

 とりあえず母さん、全裸じゃなくなった。でも……まだ母さん思いつめた表情。
 いたたまれんから、その悩み顔から逃げるように、俺は窓から離れる。
 実際内容なんてわかんないし、解決する責任は悠のほうにあるっしょ?絶対。

 でも実際、悠じゃないとダメだってこと、だよな?じゃあ、せっかくフツーに戻ったのに、また……?
 ゆっくりしてたけど急にまた怖くなって足を速めた。あいかわらずくたびれた庭を通って、玄関も慎重に。
 おや、なつかしのガスメーター……って、さっき気づかなかっただけだな。ここを過ぎると台所前。
 どーする?覗いたらまた半裸の母さんが悠に抱きついてたりとかしてたら。さすがに立ち直れんよ2連チャンは。
 でも、やっぱ覗く。さすがにもうオナるのはムリだけど、こうなったらとことん。あの表情も気になるし。
 ……うし。窓の下到着。たのむからラブラブ&エロエロなシーンはナシの方向でっ!そっと、そーっと……。

「……んだから、これで」
 ん?
 悠の声だ。言葉が聞こえたってことは母さんもここに戻ってきてるというわけか。
「そんな……だって」
「これでいいんだってば。んじゃ」
「ゆう、くんっ」
 なんかえらく険悪な雰囲気、だな。っていうか……なんで俺ドキドキ再発?
 慌てて覗く。キッチン、その向こうの居間……うわ、母さんが立ってる。
 青いブラ、んであのベージュのスカートっていう、寝室と同じカッコ。廊下に立って、玄関のほうを見てんな。
「ゆうくん、ってば!」
 母さん、叫ぶ。悠の姿が見えないから、たぶん玄関にいる。うわ、なんかかなーりのどが乾くぞ?
 玄関のほうからパタパタと。悠が靴をはいてる音だろうけど……それだけのことにその表情ですか母さんっ!
「さよなら、ゆーこさん」
 例の女みたいな高い声のすぐあとにドアが開いて、閉まった。母さん無言。そしてボーゼン。
 もう完全にドラマとかでよく見る「急に男にフラれた女」状態ー。っていうか……ひどくねぇ?

 ここまで母さんをその気にさせといて、突然ポイ捨てかよ!どー考えても許せんぞ、悠っ!
 立ったまま動かない母さんを見てるのつらいから、窓から離れる俺。一応息整えて、っと。
 次にすることっていったら、決まってるでしょ?追っかけて、怒って、とっちめてってライン。
 はー、ふー、はー、ふー……うし、落ち着いた、かな?あんまり間を置くと追跡できないし。
 母さん泣かせるような奴だ、絶対許せん……まあ、泣いたの見たわけじゃないけど、おんなじようなもんだぁ。
 ガスメーター、狭い庭、玄関ポーチっと……悠めどこいった!?あーもう姿が見えねぇ!
 どっちだー、どっち行ったー?電車基地のほうか?コンビニのほうか?
 ええいもう!来た方向がコンビニのほうだったからコンビニに決定!待ってろ悠!怒れる飯田佑子の息子を!

 あ。
 あっさりいたよ。角曲がったら15mくらい先を歩いてるし。フツーにあのジャージで。
 きょろきょろして、道路渡りそう。あの先があのコンビニ。あれ以上行かれると、声かけづらく状況。
 ちょっと、駆け足。悠まで距離10m……7m……5m。いいのか?声かけちゃうぞ俺!?

「お、おいっ」
 声裏返りかけたけど必死におさえて、背の低い茶髪ジャージ女声の悠を呼び止める。
 なんにもいわずに振り返る悠。きょとんとした顔で俺を見てる。まあ、そりゃそーだわな。
「だ……あぁ」
 誰?っていいかけたみたいだけど、悠はすぐに言葉を止めた。
 んで、どーしたと思う?よりによってあの顔で、ニコッと笑いやがった。
「『あっちゃん』、か」
 キーッ!お前にそんなふうに呼ばれる筋合いはねーよ!あらゆる面で腹が立つヤローだなコイツは!
「あ、あぁ」
 なのに俺ときたら、マヌケな返答。ってかさすがにこの状況で落ち着いていられる自信はないー。
「あー、もしかして」
 悠がまた笑う。んでそのまま2、3歩近寄ってきて。
「……今の、ずっと見てた?」
 やっぱり俺より何cmも背が低い。んで女みたいな顔。そんな奴が余裕の表情で目の前にー。
「……っ」
 どーにもこーにも返事できない。怒ってやろうとかわめいてやろうとか、経験不足な俺にはさっぱり。
「ど、い、な……」
 どーして。いつから。なんで。
 えーい!母さんと悠の関係のこと聞きたいのに、全然言葉になんねー!ぱくぱくと口開けてる俺を見て、悠は。
「……どっかいって、話すわ」
 ニヤニヤ顔のままくるっとあっちむいて歩き出す。まったく主導権にぎれねーよ、くそっ!

 子供の頃よく遊んだ「わんぱく広場」。
 コンビニから遠くなかったし、座れるベンチがあったから、なんとなくそこがはなしを聞く場所に決定。
 途中で買ったアクエリアス飲みながらさっさとベンチに座る悠。俺はコーラ買って少し離れたとこに座って、と。
 さっき覗いててやっぱノド渇いたし……お?じゃあ悠は「運動」したからか?うぬぬぬうっ。
 ……うーむ。座ったのはいいけど何はなしたらいーやら。悠のほうチラ見してもなんかムカつくし。
「最初は、さ」
 んおっ!突然勝手にしゃべりだしたぞ悠が!で、やっぱり俺はあいづちも打てずにそのまま、聞く。

「こっちの街に病院があるから、って出てきた。親戚のウチにムリヤリ転がりこんで」
「ま、ぶっちゃけ逃げてきたんだけど。「あの女」から」
「だからさ、当然病院も行かずに街ブラブラ。んである日、何を思ったか初体験のタバコ」
「バカだって自分でも思うよ?そもそもぜんそくだからってことでこっちにきたのにさ」
「知ってるだろうけど、コンパルホール裏の自転車置き場。病院のバス停も近かったし、あそこで吸った」
「まー当然ケホケホなる。でもなんかムキになって吸ってた。意地みたいなもんかな」
「そしたら、さ。いつの間にか誰か前に立ってたわけ」

 そこまで悠は一気に。なんか、ツレにはなすみたいに自然に。俺をおちょくってるわけでも、ないらしい。
「……聞いてる?」
「ああ、うん」
「そっか」
 悠はまた笑いやがる。ううー、怒るタイミングがますます……。

「それが佑子さん……キミのお母さんだった。見上げたら、笑ってんのよ」
「でもなぜか、ハラ立たなくてさ。でも一応怒ったっぽく「何?」って」
「したら指先でデコをこつんっ、てやられた。「ムリして吸っててもおいしくないでしょーに」って」
「ケホケホせきこんでる時から見られてたわけ。でもあとで聞いたら佑子さんも声かけるの怖かったって」
「でもエライもんで、佑子さんはずっと笑ってた。だから俺も笑って「ナンパですか?」って」
「したら佑子さん「んー」ってしばらく考えて「それでも、いいよ」だって。んでまた笑うんだよー」
「しょーじき、その笑顔でヤラれたかも。「あの女」と全然違うオトナの女の人の顔だったから」
「今みたいになんとなく歩いてさ。近くにあるじゃん、ファミレスが。あそこに入った」
「席についたとたん佑子さんの自己紹介開始。俺みたいな見ず知らずのガキに隠しごとなく」
「その時俺は名前とかまだいろいろ隠してて。とりあえずはなし合わせてた状態」
「佑子さんのほうは笑いながら、俺のことやんわり調べてたんだろーね。いろんな話題いっしょけんめいフッてた」
「ヤバい奴じゃないって分かったら、即タバコのこと怒ってきた。もう俺は楽な気分で「ゴメンなさい」」
「そしたらまた笑う。んで顔近づけてきて「なんか悩みごとがあったら、おばさんが相談に乗るよ?」だって」
「その日はジュースおごってもらって終わり。電話番号とか聞いた帰り、俺めちゃめちゃ楽しくなっててさー」
「夜すぐ電話した。「明日も遊んでください」って。ホントは困ったんだろうけど、「いいよ」って」
「またあのファミレスで。今度は一応俺が自己紹介。まあ、その時は下の名前だけだったかな?」
「それから、しばらくその調子。もちろん佑子さんに用事がある時は会えなかったよ。あたりまえか」
「初詣とかも誘おうと思って電話したらダメだって。「家族と行くから」って。ちょっとショックだったね」
「でも会えないぶん、会ったら写メで撮りまくり。佑子さんもいい顔してくれたし、その写真で……まあいいや」
「その頃から、なんていうのかな……マジ惚れ。でも、佑子さんの余裕もなんか悔しくて。だからこっちも」
「わざと連絡しないとか、たま会ったら「好き」とか遠慮なくいって。笑いつつ「キスしたいなー」とか」
「佑子さんが戸惑いだしたのもその頃。でも逆に、俺のことマジメに心配しだしたのもその頃だった」
「だから……いいたくなかったけど、なんでここにいるのか?とか「あの女」とのことも話したりして」
「ブルーな話だから、えっと……佑子さん泣いちゃってさ。その顔見て俺完落ち。フツーに「抱きたい」って」
「でもその日は、キス。佑子さんとは初めてだったけど自然に。でも佑子さん我に返って速攻で帰っちゃった」
「もう会えないかも、とか思ってたら。佑子さんから電話してきて。その日はマジ話とゲーセンの半々」
「「直接会って私からいったげようか?」っていう佑子さんの提案は意地で却下。だって「あの女」と会わせたくないし」
「でもその気持ちがめちゃめちゃ効いてさー。ゲーセンではしゃぐ佑子さんにまたキスした。そんな感じ」
「佑子さんも、もうちゃんとキスを返してくれたし。なんていうか……一歩手前の、キス」
「もう完全にゲスな感じになってた。好きだって思うのと同じくらい、したかった。だから押し倒した」
「あれは……カラオケいった時だったかな?もう冗談のキスは受け流されてたから、すぐにマジキスで」
「そしたら佑子さんが明らかに慌て始めて。帰っちゃいそうな勢いだったから、勢いに任せて迫った」
「もちろん佑子さんは「ダメ、ダメ」って。俺も意地でずっと同じ感じで押してた。すごく焦って」
「だから……交換条件みたいな感じで。「しないから、口で」、みたいな。悪いけど……気持ちよかった」
「次の日、えっと……マジ話だけになりそうで。前の日スイッチ入っちゃったから、佑子さんをムリヤリ」
「でもホテルでも佑子さんは「あの女」のこと聞いてきたから、それまで隠してたことも全部、いったね」
「でもそれは駆け引きとかじゃなくて。やっぱり「あの女」のことは俺のトラウマだからさ」
「ナマナマしい部分もはなしたら、佑子さんの力が抜けた感じになった。だから俺は「ありがと」って」
「それからしばらく、ずっと佑子さんを抱きしめてたかな。髪撫でたり、キスしたり。そしたら、さ」
「「……わたしでいいの?」ってマジ顔で。だから俺はまたやられちゃって、そのままベッドに」
「佑子さんはやっぱり、まだどっかで迷ってた。体も震えてたし。ここまでしてくれるなら、俺だってさ」
「「あの女」としてきたこと、全部佑子さんにぶつけた。年上の女がどうしたら喜んでくれるか?ってはなし」
「俺だって微妙に迷ったよ。たまに「あの女」の顔浮かぶし。でも、した。で、それはハズレじゃなかった」
「じっくり揉んだり舐めたり、じらしたり……佑子さんが少しだけど声を上げ始めて。写真撮ってたからよけいに」
「だから、したよ?遠慮なく。佑子さんもさ、ちゃんと応えてくれたし。覚悟のスイッチ、入れちゃったみたいで」
「途中から、佑子さんも本気だった……本気だったと、思うよ。聞かなきゃわかんないけど、たぶん」
「めいっぱい、した。でもやっぱり、した後は佑子さんつらそうだった。これは……俺のせいだよね」
「だから逆に「恋人同士っぽくしよ?」ってテンション上げて。あんまり押してたから、佑子さんもノッて」
「一緒にお風呂とか入って。はしゃぎながらまた抱き合ったり、キスしたり、いろいろしたり」
「佑子さん、ちゃんとノッてくれるし。心ん中ではどーかわかんないけど。だからやっぱり、また好きになって」
「でも……すごくマジメだからまたぶり返してくる。次会うと、またマジで心配してくれるし」
「実はさ、ちょうどその時くらいに「あの女」から親戚のウチに電話があって。俺も少し浮ついてて」
「なんかさー、「帰ってきて」みたいな内容。それも泣きながら。「絶対嫌だ」って突っぱねたけど」
「そんな時に佑子さんに会って「帰ったほうがいい」とかいわれるとさ。俺もどんどん意地になって」
「またムリヤリホテルに連れてっちゃった。で、また「あの女」とのテクニックを駆使して」
「始めちゃったら俺も、佑子さんも、めいっぱい乱れて。やりたいことやりまくって。やりまくって」
「でも、途中で気づいちゃったんだよなぁ……やっぱこれって「あの女」のためなんだって」
「だって小さい頃からずっと、させられてたから。淋しがり屋の「あの女」を喜ばせるために」
「そしたら急に、萎えちゃって。いや、めちゃめちゃ気持ちよかったんだけど……ダメになっちゃった」
「終わった後「俺、もうすぐ帰る」って佑子さんに。佑子さんは「いいことだね」って笑ってくれたけど」
「……今度は、佑子さんがヤバい感じになってて。俺のためにしてくれてたはずなのに、さ」
「だからこう……俺からムリヤリ離れるしかなくなって。だから今日、キミんちに行った」
「ホントは約束では明日だったけど、先だとお互いに未練が残りそうだったから。もうドッキリのつもりで」
「そりゃ佑子さんあわててた。でも、バカな俺にはそれしか考えつかなくって。で……した」
「迫れば断れなくなってるのを知ってるから、迫ったよ……あ、どっかから見てたんだっけ?」
「最後だから、佑子さんにも気持ちよくなってほしかったから、佑子さんが進んで動いてくれるようにしたつもり」
「最後、だからね。俺、今日中に荷物まとめて明日帰るし。なんかバカバカしいけど「あの女」のところへ」
「結局、離れられないんだよね。これは絶対。今までずっと一緒に生きてきたわけだし。だから、さ」
「……キミもさ、佑子さんを大事にしてあげて、よ。まー、俺がいうことじゃないけど」
「いい人だよー?佑子さんは。もー底抜けに。だから俺も、そーなるようにしないと」
「じゃあ」

 ……。
 ……。
 ……。

 悠は立ち上がって、歩いてって、見えなくなった。たぶん、二度と会うことないんだろーなぁ。
 うー。
 なんもいえなかった。怒るとか、それどころじゃなくて。
 悠の話があまりにも淡々としてたからかもしんないけど。や、それだけじゃないなー。
 いろいろ見えてたこと。たとえば何度もいってた「あの女」って言葉とか。
 よく、わかんない……んー。もしかしたら、ってのはある。でも、それは……悩み深くなるから却下。
 それから、やっぱり母さんと悠のこと。悠が全然隠さずはなすもんだから。細かくはなしてたわけじゃないけど。
 ヤベぇ、とか思いながら……俺やっぱり少し興奮してたもん。だからなにもいえなかったー。
 そのままベンチから立って、またコンビニでペットボトルのペプシ買った。んで、飲んだ。
 終わった、んだよな?悠はもうどっか知らない街に帰っていって、母さんと別れた。うん、そーだよな?

 俺も、帰ろう。なんかまだまだいろいろあるはずだけど、帰ってメシ食って風呂はいって寝よう。
 母さんにいろいろいわれても聞かれても、子供っぽいウソついてごまかそ。
 なにはともあれ、ぜーんぶおしまい。母さんの浮気も、俺の不必要な悩みもさよーならー!

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