C

ここまで読み進めて、やっとスクロールバーの底が見えました。この不快な文章も、残り僅か。
 寒い2月の深夜、眼球とマウスを握る指先だけ動かして私は読み続けました。
 皆さんもあと少しお付き合い下さい。



  聞いてください
  送信者:  星ぼうる
  日時:    2004年2月9日 04:28
  宛先:    katsura
  件名:    聞いてください


麻紀ちゃんはすもうとりのようなかっこでガニマタでお父さんの上で腰を振りはじめました。「あはんうふん。お父さん、ごめんね」ブラ一丁スカート姿の麻紀ちゃんは、僕にいわれてだけど当たり前のようにお父さんとセックスしてます。エロい姿に興奮はしたけどそこでやっと麻紀ちゃんが処女じゃないことに気づきました。ひどい事です。「麻紀、やめろー」まだお父さんは怒ってますが、麻紀ちゃんがそおじゃなかったことに怒るべきだと思います。スカートが揺れてブラおっぱいも柔らかそうに僕の真横真下で揺れてます。昨日まで窓から眺めてた麻紀ちゃんとは違う感じがしてきました。だって実のお父さんのチ○コの上であはんあはん腰をふってるんですよ?ガニマタでエーブイみたいに。そう考えるとどんどん悔しくなって、僕はついに麻紀ちゃんのブラを取りました。生おっぱいがゆさゆさ揺れてます。ナイフを持った手で触ってみましたが柔らかいけどいまいちなので、逆の手
(右左どっちだったか覚えてませんすいません)でモミモミしてみました。さすがによかったです。「どうだ麻紀ちゃんおっぱい触られて気持ちいいだろ」と聞きましたが「あんあん、お父さん」でも麻紀ちゃんはお父さんのことしかいいません「舐めろ僕のチ○コなめろなめないと殺す」といってあはんあはんいってる顔にこすり付けましたが、最初ちょっと僕の顔を見て怖がってちょとっと舐めただけですぐに今度はお父さんのからだに手をついて「あーパパ、パパどうしようパパー」ともっともっと腰を振りはじめました。旧に僕の話をきかなくなって変だと思いました。「ああんお父さん許してー麻紀を許してー」「麻紀麻紀ー。やめろダメだダメだー」声がどんどん大きくなっていきます。動きもどんどん大きくなって行きます目の前で麻紀ちゃんとお父さんがセックスしてます。「ああ麻紀麻紀ーああおお」「パパ、パパいいの、あん麻紀をゆるして、麻紀いいのー」なにがいいのかさっぱりわかりません。さっぱりわかりません。僕はしかたなく二人から離れました。チ○コももうボッキできません「トモキトモキトモキトモキーいいわいいわお母さんいいのー」お母さんの声です。「ママ、あうあうママー」トモキくんの声ですもううるさくって仕方がありません。

僕は部屋から出ました。最後に一瞬だけ麻紀ちゃんを見たら麻紀ちゃんは上からお父さんの顔にキスしてましたセックスしながらです。何度も何度も「お父さんお父さん」といいながらしてました。そのまま靴を履いてアパートに戻ってなんか着ている服にも腹が立ったので全部脱いで裸でフテネしました。疲れたのかすぐに寝ました。
朝起きていろんな物を隣に忘れた事に気がつきましたもちろんもう取りにはいけないので、しばらく窓からも外を見ないで3日間ぐらい部屋にいました。「警察が来る捕まるとか考えながらテレビニュース見たりしましたが全然なにも怒りません。やっとカーテンを開けて外を見た時には前と同じように麻紀ちゃんとトモキくんとパパが学校と会社にいってる姿を見ました。お母さんも普通にしています。僕にももちろんなにも捕まったりしてません。
逆になにもおこらないのが怖いです。いつ警察が「警察だ」とテレビみたいに入ってくるか気が気でなりません。自首したほうがいいのでしょうか。それとももう一度麻紀ちゃんちに入って謝ったほうがいいのでしょうか。でも入ると麻紀ちゃんを犯せなかったことが思い出しそうで怖いです。麻紀ちゃんにお父さんとセックスしたのはよかったかとか聞いてしまいそうです。桂さんなにかいいアドバイスはないでしょうか?



 

正直、読み終わってパソコンデスクに突っ伏しました。ネットを始めて数年、いや文章を読み始めて20数年、こんなに胃の痛くなる文章を読んだ事はありません。みっちりと隙間なく書かれた微かな隙間から、これを書いた人物の気味の悪い情熱が滲み出てくるようで、正直気持ち悪くなりました。

 普段は一応『見栄えのいい文章』という物に思いを巡らせている私には、星ぼうるなる人物の書いた「聞いて下さい」という文章に僅かながらもそれを見つけることはできませんでした。とりあえずその夜はすぐにメールを閉じ、ムカムカした胸を抱えながらベッドに入ったはずです。

 返事を出そうか出すまいか?っていうかそれ以前の問題でした。星ぼうるとやらは一体何が伝えたくて私にメールを送ってきたのでしょうか。当初思っていた「自分の文章を誰かに読ませたい」という可能性もまだ多くあります。しかし、この文章を一気に
(多分、いや間違いなく嘘八百にしろ)、一時も鼻白む事なくパソコンの前で打ち続け、桂大枝あてに送信した星ぼうると言う、男……。

「興味深い文章でした」とか「思うようになされてはいかがでしょうか?」とか1行分だけ打ってはみますが、やはりそれ以後続く文章は思い浮かばずメールソフトを閉じる、そういう日がしばらく続きました。やがて、返信を書こうという意欲さえ無くしてしまいました。いや正直「なるべくなら忘れたい」という気持ちがあったのです。星ぼうるから2通目のメールが来ない事を微かに祈りながら、私は自分の創作で気を紛らわす日々を再開しました。

 半年ほど、経ったでしょうか。

 それまで使っていたSTECパソコンの調子が怪しくなり、買い替えを検討し始めた時の事。当然文章やメールのバックアップをしなくちゃならない。CD-Rに録っておくものを選ばなければなりませんでした。完結した愛着のある文章、まだまだ書き足りなくて続いている文章、書きかけで見事に止まってしまった文章()……そして、メールも同様でした。再び『【件名】 聞いて下さい』を見つけてしまったのです。「ああ、こういうの届いてたなぁ……」くらいの気持ちで読み始めました。不快な文章だと分かっていたにも拘らず、また。

 気づいてしまったのです。文頭の部分。星ぼうるが私、桂大枝を知ったという、冒頭。



今までなんどもこの話をいろんな人にしてきたのですが



誰にも信じてもらえまいでいます。



でも現場であなたのホームページのことを知り



 現場……?

 ゾッとしました。彼はネットからではなく、『現場で聞いて』私のホームページに辿り着いたというのです。
 私が、職場である建設現場で、自分から周囲に宣伝していたのを聞いて……!

 どこかに星ぼうるという人物がいて、私の話を直に聞き、ああいう話を紡いで私に送りつけて来た。

 彼(?)の語る物語が、妄想ではなくもし事実だとしたら。

 そしてまたどこかの現場で、彼に会ったとしたら。

『……メール、読んでもらえましたか……?』

 そう声をかけられる事が、いつかあるとしたら。





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