天使のたわむれ 後編

< 登場人物 少女 真奈美・調律師 学 >

 二人が見つめ合ったあのリビングルームで、学と真奈美は全裸になっていた。  
 あのソファーに、真奈美が鹿の子供のようなみずみずしい躰を横たえている。  
 学は、ぼんやりと立って眺めている。ピアノのそばで見た張り始めた胸、バスルームの扉に透けた豊満なヒップが今目の前に存在している。学は今日何度目かの唾を呑んだ。  

「先生……?」  
「ん?」  
「やっぱり、痛いんですか……?」   

 真奈美が心配そうに、小さな声で聞いてくる。  

「うーん……」   

 学が答えられるはずがない。女ではないし、ましてや処女の女などとセックスしたことはない。そう考えると学はやはり、真奈美と躰をつなげることをためらわれた。  

「でも、いい」  
「ん?」  
「先生とだったら、痛くてもいい」  
「……」   

 いじらしい、学は思った。この少女に痛みを与えたくない、感動を与えてやりたい、と普通のセックスではとても考えないようなことが頭の中を駆け巡る。  

「それじゃあ……」   

 学は話し始めた。  

「まず、男の人がどんなふうに気持ちよくなるのか、やってみようか?」   

 真奈美は無言でうなずく。学はそれを聞いて、まず真奈美をソファーから起こした。そしてあの時からいきり立ったままのペニスを、真奈美の前にさし出した。真奈美はその異様な物体を好奇心あふれる瞳で眺める。  

「どう、真奈美ちゃん?」  
「すごい……ピクピクと脈打ってて、大きくて……」  
「触って、ごらん」  
「……うん」  

 おずおずと白く細い指が学のモノに伸びて来て、優しく触れた。  

「うあっ……」   

 学のため息を聞いて、真奈美はびっくりして指を離す。  

「あっ、いいんだ真奈美ちゃん。痛かったとか、そう言うのじゃなくて、ものすごく気持ちよかったから……」  
「ものすごく……?」  
「うん。だから、もう一度触ってごらん」   

 学の言葉に安心したか、真奈美はさっきよりちょっと大胆に学のペニスに触れた。  

「あ……熱い」   

 媚びのある瞳で、真奈美が感嘆する。  

「男の人はね、ここが大きくなるとこんなに熱くなるんだ」  
「へぇ……」  
「じゃあ、少し動かしてみようか」  
「動かす……?」  
「うん。指をこれにしっかりと添えて、ゆっくり優しくこすってごらん……」   

 真奈美は無言でうなずいて、やがてそれを実行した。  

「う……うあっ」   

 女にペニスをこすってもらったことなどなかった。ましてやこんな可愛い女の子にやってもらえると、全身から恐ろしいほどの快感が湧いてくる。さきほど寸前で放出を止められたペニスは、少女の指の愛撫によってすぐに限界を迎えた。  

「うあ、うあ、あああ……出る!」   

 真奈美の可憐な顔に、学の熱い溶岩が浴びせられた。一度、二度、三度……。  
 真奈美はそれもいやがらずにしっかりと受け止めた。  

「はあっ、はあっ……」  
「……これ、なんです?」   

 真奈美は、学のほとばしりを慎重に指で拭き取りながら質問した。  

「あ、あぁ、これ?これは男の人がイッたときに、それを知らせるために出るものなんだ。この中に、赤ちゃんの素が入ってるんだよ……」
「え、今ので赤ちゃんができちゃうんですか?」  
「いやいや、これじゃあ無理だよ。男と女が本当に躰をつなげることを『セックス』って言うんだ。そのセックスっていうことを何度かやって、初めて赤ちゃんができるんだ」  
「ふーん、そうなんですか……」  
「セックスって、聞いたことある?」  
「はい……何度か、クラスの同級生が言ってたような……」  
「それ、やってみる?」   

 学は、思いきって聞いてみた。ここまで来たら、挿入を果たさなければ終わることはできない。  

「……イイですよ、さっきも言った通り、先生なら痛くてもかまわないから……」   

 学は感動した。  

「可愛いよ、真奈美ちゃん……」   

 それ以上の言葉は浮かんでこなかった。真奈美を抱きしめると、優しくキスをした。  

「……レモン味」  
「ん?」  
「初めてのキス、レモン味でした」  
「そう……」   

 真奈美のあいかわらずの態度に、学はまた初々しさを覚えた。腕の中の少女に一層の愛しさを感じ、そのままソファーに横たえた。  

「真奈美ちゃんのココ、今どうなってる?」   

 学はそう言って、真奈美の未開発の三角地帯に手を伸ばし触れてみた。  

「……!」   

 真奈美の華奢な躰が、ピクンっと跳ねた。自分以外の人間に初めて触れられた、その感触に真奈美の感覚は研ぎ澄まされた。  

「まだ、濡れてないな……」   

 学は独り言のようにつぶやくと、やがて躰を下にずらしていき、その地帯を凝視してみた。  

「うわあ……キレイだ」  
「いやだ、恥ずかしい……」  
「いや、全然恥ずかしいことなんかじゃないよ。きれいなピンク色で、ほんとにキレイだ……」   

 本当に学は感動していた。まだ生毛すらしていない処女のその部分は、学の知識をはるかに越えた荘厳さだったからだ。  

「舐めてあげるよ、真奈美ちゃん」  
「舐めるって……ちょっと先生、そんなとこ舐めたら汚いよぉ!」  
「平気平気、真奈美ちゃんの躰に汚い所なんてないさ」

 学は真奈美の返答も聞かずに、いきなりピンクのヴァギナに舌を這わせた。  

「ああああんっ……!」   

 真奈美が声高に喘いだ。学はかまわず、淫裂の下から上に懸命に舌を使う。  

「うあっ、はあ……はああんっ!」   

 学の舌の動きに合わせて、真奈美は悩ましく悶える。セックスの相手の女がこんなにも激しく反応するのを、学は経験したことがなかった。彼女とのセックスも、その他の相手との行為でも、いつも躰をつなげること=かけ引きの手段となってしまっている。こんなに素直に、快感に身を委ねている真奈美がさらに愛しく思えて、舌の愛撫をさらに巧みにした。  

「うああ……う、はあっ、ああっ、先生……」   

 真奈美の声が高くなるのにともなって、学の舌の這う地帯が段々と潤ってくる。十二歳の少女の躰も、男を迎え入れるために自分から準備を完了するのだ。  

「……真奈美ちゃん、気持ちイイ?」   

 真奈美は無言でうなずく。  

「真奈美ちゃんのココは、もう準備ができたよ……」  
「準備が、できた?」  
「うん。真奈美ちゃんのココは、もう僕のオ○ンチンを入れられるようになったんだ」  
「……嬉しい」  
「本当?」
「うん」   

 躰中に感激の電流が駆け巡る。学は完全に、この可憐な少女の虜になっていた。真奈美の一つ一つの言葉・動きが学の心を有頂天にさせる。   
 学はもう一度真奈美のピンクの唇に口づけ、そして躰を離した。挿入の体勢に入るためだ。   
 ソファーの上の真奈美の裸体を、学はもう一度見つめた。長い黒髪・潤んだ大きい瞳・愛らしく膨らみつつある胸・くびれてはいるがまだ幼児期の面影を残したウエスト・きっと自分を満足させてくれるであろう無毛の淫裂・子鹿のような両脚・ぬけるような透明な肌……。どの部分を見ても、真奈美は恐ろしいほど美しかった。
(この娘は、天使の生まれ変わりなんじゃないか……)学はそう思わずにはいられなかった。  

「真奈美ちゃん、入れるよ……ちょっと痛いかもしれないけど、力を抜いて、大丈夫……」   

 自分のペニスを持った学は、躰の下で小さく震える真奈美に優しい言葉をかけるのを忘れなかった。その真奈美は、学の言葉に何度も無言でうなずいた。   
 ゆっくり、なるべくゆっくり力を込めながら、学は分身を真奈美の体内に埋めていった。  

「う……あ……」   

 眉を歪め、真奈美はうなる。。やはり、この上ない痛みが肉体を襲っているのだろう。  

「真奈美ちゃん、大丈夫……?そんなに痛いの?」  
「ううん……」   

 真奈美は首を振った。  

「大丈夫だから……お願い、先生……」   

 痛みをこらえたまま、真奈美が言う。学の心がまたときめいた。  

「もうちょっとだから、もう少し我慢して……ね?真奈美ちゃん」  
「うん」   

 学は真奈美の気持ちに応え、さらに優しく腰を進めた。やはり処女の内部は狭く、筋肉が緊張している。しかし、この行為の完遂は、真奈美も望んでいることだ。ためらいながらも、学は狭道を進んでいった。   
 ペニスが少女の膣に完全に収まりきった時、学はこの上ない感動を覚えた。  

「入ったよ……真奈美ちゃん。ちゃんと、入ったよ」  
「うん……先生のが、入ってるんだ……私、うれしい」  
「……僕のが入ってるの、分かる?」  
「……さっきの熱いのが、私の中に入ってる。ものすごく、熱くて……」   

 真奈美は、自分の躰の中のモノをどう表現していいのか迷っている。  

「まだ、痛い?」  
「……ちょっと」  
「じゃ、ゆっくり動いてあげるね」   

 学はそう言うと、埋まっている分身を少し引き抜いてみた。  

「はあっ」   

 真奈美が悶える。今までの声とは明らかにトーンが違う。まだ、痛みが残っているはずだが、女の躰は少しづつ性感を高めようとしているのだ。  

「真奈美ちゃん、気持ちよかったの?」  
「……まだ、わかんない」   

 そう真奈美は答えたが、その言葉は少し乱れていた。やはり自らの膣感覚で快感を感じ始めているようだ。   
 学は真奈美の態度に少し安心し、少し引き抜いていたペニスを押し込み、また引き抜く。優しくいたわりあるピストン運動が始まった。
 
「くっ……ふっ、ふうん」   

 真奈美の唇から、甘く切ない声が発せられる。まだ、痛みを含んでいるその声は、逆に学にさらなる性感の昴ぶりを与えていた。  

「ああっ……真奈美ちゃん、真奈美ちゃん!」   

 少女の肉体によって、学は素晴らしい感覚を味わっていた。相変わらず優しい抽送だったが、次第に腰をふる間隔が速くなる。  
 急激に高まる快感に、学の忍耐は限界を迎えていた。躰の芯から、熱い激流が登ってくる。  
(これ以上、我慢することはできない!)学はそう思って、抽送をさらに速めた。  

「真奈美ちゃん、僕イクよ……」  
「ふっ、んっ……はうう」   

 学の言葉は、もう真奈美には聞こえていなかった。痛みと快感両方に、真奈美の思考能力はどこかへ飛んでいってしまったのだ。  

「ふあ……んっ、はああっ!」  
「うあああっ、イクっ!」   

 バルブが開かれ、学のスペルマが十二歳の肉体に注ぎ込まれた。  

「ふううん……ふあ、あっ、はあああ……」   

 ドクドクッと、熱い精液が流れ込んでくると、真奈美も躰をケイレンさせて、果てた。   
 ソファーの上の破瓜の証明をティッシュで拭き取りながら、真奈美は上気した顔を学に向けた。  

「また、来てくれますよね?」  
「う、うん……」   

 服を着終わった学は、曖昧な返事をした。真奈美との交歓は感動的なものであったが、あくまで自分は調律師であり今日は仕事で来ただけなのだ。また、たとえ本人に望まれても十二歳の少女を毎日のようにむさぼることなどできない。  

「あ、あのさ真奈美ちゃん……」   

 言いかけると、真奈美は突然、どこかへ走っていった。しばらくして、真奈美は小さな茶封筒を持って戻ってきた。  

「先生、はい」   

 その茶封筒には『謝礼』と書かれてある。  

「真奈美ちゃん、これ……」  
「今日の調律のお礼です」  
「だって、さっきどこかにいっちゃったって……」  
「うふふ、実は私が隠してたんです」  
「どうして……?」  
「うーん……どうしてだったかなぁ」   

 真奈美は微笑みながらそう言うと、またどこかへ走っていってしまった。あっけにとられていた学であったが、手の中にあるそこそこの厚さの茶封筒に、真奈美への追求の気など忘れてしまった。  

「まあ、いいか」   

 学はそう言うと腰を上げて道具カバンを持ち、玄関へ向かった。   
 真奈美は、玄関にいた。あの白いドレス姿で無邪気に微笑んでいる。  

「それじゃあ、元気で」  
「先生も」  
「うん」   

 淡々としたやりとりに、学は少し期待はずれな感じがしたが、とりあえずドアを開けた。  

「じゃあ……」  
「先生、バイバイ!ママによろしくね!」   

 学の背中に、真奈美は元気な声を投げかけた。   
 自宅に戻った学を、父の再婚相手である、今の母が迎えてくれた。  

「学さん、今日は遅かったんですね」  
「ええまあ……親父は?」  
「二階に休んでいます」  
「ああ、そうですか」   

 学は、食事をとろうと食卓に座った。義母が、前の椅子に座る。

「どうでした、きょうのお仕事?」
「え、まあ……ふつうです」

 義母が仕事のことを尋ねるのは珍しいことだ。

「……誘惑って」

 なにか義母が言いかけた時、傍らの電話が激しく鳴ったため、学にはその言葉がよく聞き取れなかった。義母が立ちあがって、ゆっくりと受話器をとる。  

「……学さん、坂上さんって方から」   

 義母は意味ありげに微笑みながら、受話器を学に渡した。すれ違う瞬間、また学の耳もとでささやく。

「誘惑って、素敵なことですよ。フフッ……」  

 その言葉に振りかえる前に、受話器から少女のハスキーな声が聞こえてきたので、学は義母に反応できなかった。

「はい、もしもし」  
「あっ、先生!」   

 真奈美の、嬉しそうな声がする。  

「真奈美ちゃん、どうしたの?」  
「実は……またピアノの調子がよくなくって……また明日、家に来てくれますよね?」   

 真奈美の甘えた声が聞こえ終わると、今度は背後から義母の声が聞こえる。  

「ふふふ、学さんすっかり真奈ちゃんにすっかり気に入られたみたいね……」   

 義母の笑い声は、真奈美そっくりだった。   
 学はその時、全てを悟った。真奈美が別れぎわ言った言葉。
『ママによろしく』……。ああそうか。そういうことか。俺も親父も、クモの巣に誘い込まれたんだ。妖しくも恐ろしい女郎蜘蛛の巣に……。

『天使のたわむれ』 完

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