後編
「ああっ、もうしとうなったわぁ……していいよね?このチンポ、私のオメコが食っちまう、で……っ」 葉子の声が、股間からゆっくりと上がっていった。柔らかい躰が、この暗い部屋の色々な部分に擦れる音がする。美知恵に続き、葉子が、郁夫を「食う」気なのだ。 「……な、なあ、葉子さん」 その艶かしい摩擦音を、若々しい声が遮った。 「……もー、なんね栄子さん。こげん時にい……」 「あの、な……街に買いもんに出かける時、私がいっつも車出しちゃりよんやん」 「……それがどげえしたんね」 「な、だけん……順番、代わらん?」 「……そげなぁ!」 「な?な?これからも免許取る気ねえんやろ?なら、ほら……なぁ?」 「……もうっ! 今度は少し荒く、床擦れの音が響く。 「にゃはは、ありがとなぁ……」 宴会の時一番積極的に郁夫に迫った栄子。その少し弾んだ声が、郁夫の躰の上に登って来る。美知恵ほど肉感的ではないが、弾力のある素肌の女。 「さあ佐藤さん、念願の若いオメコでぇ……たっぷり楽しんでな」 「いらんこち言いなさんな……そげえ変わらんわ」 美知恵の声。実際郁夫は、若いからどうだなどと考えている余裕は無い。 また、女に無理矢理させるのか。麻利がどこでどうなっているのか、分からない状況で……。 熱く震え続ける先端に、女の肉の接触を再び感じた時、郁夫の両腕が、動いた。 「あら、なんね……あ、分かったー。おっぱい触っちくれるんやね?」 伸びてきた郁夫の両手に、栄子が鼻を鳴らせて喜んだ。 「ん?……でも手が動かせるっちゃ、ゴマジの効き目が弱いん?」 美知恵も疑問の声を上げる。その間も、ゆっくりと栄子の揺れる裸体に近づく手。 「……やんっ!」 弱々しい動作ながら、郁夫の手は栄子の腰に添った。 本能に任せて、腰を突き上げてくれるのか。栄子の、そして他の女2人の願いとは裏腹に、郁夫の手は深い突入よりも肉体同士の乖離を望んでいた。 「ちょ、ちょっと佐藤さん!……せっかく挿れちゃったに、もしかしち抜こうとしちょるわけ?」 少し慌てた風情で、栄子が必死に男の体に向け自重をかける。しかし、郁夫は腰にあてがった手の力を抜かなかった。 「こげないい女がオメコしちゃりよんに、嫌がるちゃどげんことね……あきらめちもっと気持ちようなろうえ、な……?」 まだペニスをくわえ込んでいる腰をくいくいと揺さぶり、栄子は男の抵抗を弱めようとする。 男なら誰もが堕ちるであろう淫乱な動き。だが、何かを決心した郁夫には通じない。 「……もうっ、どげえなっちょんのかえ!」 明らかに不機嫌になった栄子は、淫躍動を止め組み敷いた郁夫を睨む。 「今までこげんことなかったになぁ……ゴマジの効きがたまたま悪かったんか、それとも」 葉子と顔を見合わせて不思議がった美知恵の言葉。それとも、の予感は的中する。 「く、うっ……もう、たくさんだっ……どけ、どけっ……ま、麻利、麻利はどこだっ!」 それはもはや、全身の自由が利かない男が上げるような声ではなかった。暗い部屋を揺るがし、裸の女3人の心をざわめかせるのに十分な迫力だった。 そして、訪れる奇妙な沈黙。 「……へえ。大したもんやねぇ。奥さん、麻利さんのことが心配で心配でたまらんじ、ゴマジん効き目が弱っちょんのやぁ 」 静かに語り出した、美知恵。落ち着いたその口調にそばの葉子も、郁夫の上の栄子も顔を向けた。 「……佐藤さん、そげえ麻利さんが気になるんかえ?」 力のこもらぬ手で必死に栄子の体を押し返しながら、郁夫は何度も頷く。事実、今の郁夫はそれのみが関心事だった。 愛する麻利は。 いったいどこでどんな辱めを受けているのだろうか? 「……なら、教えちゃんわ。大切な大切な、愛する麻利さんがどげえしちょんか……静かにしちゃんけん、まず耳を澄ましたらええよ」 笑うでもなく怒るでもなく、美知恵は淡々と語った。栄子も葉子も、それに従い声を潜めた。 無音。 自分の鼓動だけが耳に届く空間で、郁夫は集中する。そして、その音は、確かにどこかから唐突に聞こえた。 「ま、麻利……い」 郁夫は,小さく唸るしかなかった。 微かに聞こえる音、いや声。それはまさしく、ここ数年間ずっと近くで聞いてきた人物のものだった。 「まり、麻、利……っ」 愛する妻の声が微かに聞こえた事で、郁夫の感覚は真実を求めるため急激に鋭くなる。この真っ暗な空間の中、音がしたほうに必死に頭を向ければ、少し離れた場所にある障子が視界に捉えられた。わずかに模様が浮かんで見えるくらいの状況だが、郁夫はその建具の向こう側に、確かに愛する妻の気配を感じた。 「そう……気づいた通り、あん向こうに麻利さんはおるで。そん代わり……佐藤さんが思っちょんような麻利さんかどうか、知らんよー?」 美知恵は、そう言って微笑む。その表情を見て、栄子と葉子も同じように微笑する。 「じゃあ、音だけじなく、姿も見せちゃらないけんな……いいんかえ?本当に麻利さんの姿、見てん……」 熟れた裸体をゆっくりと起し、美知恵は郁夫を中心とした淫猥な輪から離れた。 郁夫は、背後からさえも見える繊毛も隠さない美知恵の辿り着く先を、目で追う。 暗い闇に霞む、恥に悶えているであろう妻を隠しているはずの、障子を見つめた。 「なあ……おるんやろ、あんた」 障子に緩く手をかけながら、美知恵は夫に小さく呼びかける。 麻利がいる同じ部屋に、田中も、いる。 「……どげえしたんか?」 「んー?……佐藤さんがどげえしてん麻利さんを見てえっち言うけん、そろそろご対面させちゃろうかと思っち、な。うふふっ」 「……そげえか」 麻薬のような物を盛るという卑怯な手段を使っているはずなのに、田中とその妻の会話は、嫌に落ち着いて聞こえた。 「ふーん。まあ、そろそろやとは思うちょった……さっきからそっちが騒がしかったけん、それん事で盛りあがっちょったんやな」 次に聞こえた声は、田中のものではなかった。栄子の夫、酒屋の飯干だ。 ああ。 飯干も、そして田中も、麻利と一緒にいるのだ。 郁夫は考えたくもない光景を妄想する。自分と同じように、「ゴマジ」なる怪しい薬に肉体の自由を奪われ、恥辱に塗れたまま田中や飯干そして他の男衆達に裸の全身を弄繰り回され、そして……貞操を奪われているかもしれないのだ。 「麻利、麻利い……っ!」 再び、暗い部屋で愛妻の名を呼ぶ。決して大きな声ではないが、少なくとも障子の両端にいる人物達には届くであろう声。 妻 麻利の清純さが汚されるのを、必死で阻止しようとする、あがき。 「……じゃあ、開けよ。愛し合う夫婦の、ごたいめーん……!」 夫と妻を暗黒の中で別っていたその障子は、思っていたよりあっけなく開いた。美知恵の艶やかで肉感的な腕が、力を込めた先に見えた光景は。 「麻、り……っ」 自分がいる部屋より、僅かに明るい場所。どうやら奥に蝋燭が灯されているらしい。闇を揺らぐ奇妙な光。 まだ慣れていない目で郁夫が捉えたのは、その蝋燭台のこちら側にある黒い塊だった。その黒い塊は、いくつかの連続音を発しながらもぞもぞと蠢いている。 「あ、う……ま、りっ」 白く薄い布が、その黒塊からはみ出し畳の上を緩く擦っている。郁夫は思わず悲痛な声を漏らした。 その布は、あの居間で見た、女衆が身に纏っていた薄く透けた物だった。美知恵、栄子、葉子はもうそれをどこかに脱ぎ捨てて、郁夫の哀れな怒張に群がっている。そして、その3人の他にあの着物を身に着けていたのは。 「なあ佐藤さん、見えたかえー?……あんたの奥さん、そこにおるんで。うふふふっ」 意味ありげな声で、美知恵が告げる。 愛妻を探して叫んだ。しかし美知恵が言う通り、目が闇に慣れていく事への恐れも感じている。あの黒い塊が、白く薄い布が、麻利とどう関わっているのか。 黒い塊が僅かに陰影を持ち始め、やはりそれが数種の激しい運動体である事が分かってきた事に、郁夫は恐怖していた。 「う、んん……っ」 ああ。 障子を開ける前に耳に届いていた微かな女声が、再び聞こえた。大きさはあまり変わらないが、ぞっとするほど生々しく。 声だけではない。もっと直接的な感覚が郁夫を襲う。ますます慣れてきた視界は、薄白布以外のものも次第に捉えていく。 「あ……あ、うっ」 肌色と、薄桃色と、肌色と。 黒い塊は、あまり喜ばしくない色に変化していく。常に緩く動く白布はろうそくの灯りの中で、内に隠した薄桃色の肌を見せていく。ああ、肌色に、挟まれている。 「うわあ、そげんカッコでしよんのな……あんたら、相変わらず激しいなえ」 久々に聞こえた、栄子の声。多分自分の夫に向けられたそれは、郁夫の股間をまさぐりながら発せられる。麻利がひどい格好で拘束されているかもしれない中、栄子の指の中の自分が相変わらずエレクトしていることを感じ、恥じる。 「男んしはすぐおなごを挟みたがるねえ……佐藤さんは違うんやろ?私らおなごに、麻利さんと同じように優しく愛してくれるんよなぁ。うふふっ」 「なあに言っちょんのなえ、あんたもようする格好やん。どっちかっち言うと好きやろがえー」 叫びが止まったのをいいことに、栄子と葉子は再び郁夫の男を貪り始める。黒い塊に視線を集中させる男の勃起を掴み、擦り、摘み、撫で、捻る。 そんな色に狂った者たちでさえ、囃さずにはいられない体勢。犯されているという以上の光景を邪推し、郁夫は自らの脳裏をちりちりと灼く羽目になる。 上下に、挟まれている、麻利。 「……まだそこまでしちょらんぞ、栄子さん。楽しみはまだあとに取っちょかんとな。弄くっち、いい具合にした後じゃ」 「俺はほぐれる前でん、このこんめえ穴にくじり挿れたくちしょうがねえんやけどな……ヒヒヒっ」 否定されたからといって、安堵などできようはずもない。それどころか「近いうちに、いずれ、される」と汚らしい男たちに宣言されているのだ。 「ま、麻……利いっ」 夫である自分が触れたことさえない場所に、「くじり挿れ」ようとしているのだ。 「ほら。佐藤さんのリクエストどおり、早う麻利さんのケツんす悦ばせるためにようほぐしちゃらんか」 「まあ待っちょけっちゃ。そげえ時間が経たんずくケツんすも拡げちみせんけん、田中さんはオメコに集中しちょきよえ」 秘めたる場所を、ひどく猥褻に響かせる方言が鼓膜を揺らす。 郁夫は気づく。淫乱な女どもが、自分に向かって何度も聞かせ続けた言葉。 「オメコ」……。 行為自体であり、女性器自体でもある言葉。 麻利は、すでに、そこを。 「麻利……ま、りっ!」 「あ、あ……あ、なたぁ……っ」 夫の悲痛な叫びが、初めて誰かの声が呼応する。 だから、郁夫は決意する。どんな手段であっても、愛妻を救い出しここから出て行かねば。 この弥ヶ江村という場所から、出て行かねば。 「でもなぁ……佐藤さん、どうもまだ物足らんようなんよ。やけん……もっと見せちゃろうえ。麻利さんの、本当の姿を……」 美知恵が開けた障子から少し進み、黒い塊のすぐそばにゆっくりと座る。いや多分、黒い塊などではなく、田中と、飯干と。 「ほら、よう見ちょきよえ佐藤さん……あんたが心から愛しちょん、麻利さんを」 ろうそくのオレンジの光は、美知恵の白く艶やかな肌も照らす。そんな肌に反射して、白い薄布に包まれた場所も、少しずつ露わになっていく。 布がない場所も。その布が捲り上げられている、場所も。 そこは僅かに濡れ音を発しながら、ろうそくと同じ色に光っていた。何かを激しく呑み込みながら、テラテラと光っていた。 「あ、んん……っ。あな、たっ、あな……くう、んんっ!」 大きくはないが、麻利の声ははっきりと郁夫の耳に届き始めた。 妻も助けを求めている。卑怯な男どもに躰を挟まれながら、あらぬ肉の責めを受けながら、夫である自分を呼んでくれているのだ。 「ほら、見よんかえ……?麻利さんのオメコに、うちん人んちんぽが入っちょんの。こげんぐちょぐちょに濡れちから、ダンナんやねえちんぽを美味しそうに喰っちょんので……うふふっ」 なのに美知恵は、悪魔のような笑みを浮かべた美熟女は、振るわれ続ける夫の逞しい尻肉にその指先を触れさせ、更にあの薄光った部分にその手を滑らせ、ぐいと開く。 暗くても。 ますますその場所のリアリティが、郁夫の視界に飛び込んでくる。 美知恵の言う通り。 ぐちょぐちょに濡れたそこが、男のモノを。 「な?な?……だけん、麻利さんは田中さんに任せちょって、私らと楽しんじょこうえ……な?せっかくいいおなごが、3人も相手しちゃるっち言っちょんのやけん」 葉子が囁き、摩る。そして多分栄子が、舐める。 鈍い電流が、また分身から湧く。身体を蕩かせてしまいそうな、性的愉悦。 しかし、だからこそ。 郁夫は耐え、またのどの奥から鋭い声を吐き出す。 自分も犯された。多分麻利も犯されたに違いない。 これ以上この村の者たちに汚される前に、2人揃って逃げ出すことができれば、きっと。 「は……離れ、ろ……麻利から、離れろお……っ!」 それは確かに美知恵にも、そして麻利のいる黒い塊にも届いた。 美知恵は意味ありげに笑い、黒い塊は動きを止めたからだ。 「……なんな?今のは。なあ……美知恵、もしかして」 「そうなんよ……なんかどうやら佐藤さんずーっと勘違いしちょるみたいで」 勘違い、だと? 怪しげな薬を使い、暗い部屋に大人数で押し込め、そして男2人の肉で猥褻に挟み込んでいる。そんな状況で、何を勘違いだと言うのか。 「だけんさ……飯干さん、もう麻利さんのケツんすに、チンポ挿れちゃりよ。そげえしたら佐藤さんも分かっちくれると思うで」 「そうやの……佐藤さんにも分かっちもらわんと、今後困っちくるけんの。んじゃあ、遠慮なく……クククっ」 停止していた物が、わずかな蝋燭の灯りの中で、上に持ち上げられる。 「あ、ひい、んん……っ!」 麻利の声が、跳ねた。 「よおし、当たったのお……麻利さん、そんまま挿れちゃるけんの……おお、おおおっ」 「う、あ、あっ……き、つ、いい……っ!」 麻利の声が、糸引いた。 「やめ、ろ……っ、麻利、いっ」 股間に女が2人張り付いていても、郁夫は必死に妻の名を呼び、力のこもらぬ手を動かした。 「よい、美知恵……ちょっと蝋燭持っちこい。んで、佐藤さんにオメコんとこよう見せちゃれ」 田中の声の意図をすぐ理解したのか、美知恵は部屋の奥で3人を黒い塊として照らしていた蝋燭台を持ち、そのままゆっくりとこちらへ向かってくる。 「なあ、佐藤さんよい……」 田中の囁きと、美知恵が灯りを交接部に下ろしたのは、ほぼ同時だった。 「……こん格好が、無理矢理オメコしよんように見えるかえ……?」 郁夫の視界が蝋燭の光と、美知恵の意味ありげな微笑と、見たくもない男女の濡れた接触部を捉えた時。 「う、そ、だ……」 その視界のすぐ外で、見えてしまった物。 淫裂に差し込まれた男根。それが振るわれる鍛えられた男の尻。そして。 その尻にきつく回された、女の。麻利の、両脚。 「ああ、あな、た……っ!」 麻利は、郁夫の名を呼んだ。しかし郁夫は、妻に呼ばれた喜びよりも、心の痛さを感じる。 視界に捉えたままの麻利の尻は。 上から、下から、グロテスクなモノに貫かれている真白い妻の尻は。 まるで、もっともっとと甘えねだるように、くねくねと淫らに揺らめいていた。 「な……よう見えるやろ?麻利さんは、ずっとずっと私ら村んもんと、こげなふうになりたかったっちゅうことよ……うふふっ」 美知恵は更に蝋燭の光を結合部に近づけて、郁夫の思考をかき乱す。 そんなバカな。叫びたいのは山々だった。しかし、それはできなかった。 事実、麻利を無理矢理陵辱しているはずの男2人は、今全く動いていない。ただひたすら、女の白い尻肉がゆらゆらと上下しているだけだ。 「……まあ、納得いかんならしばらくそこで見ちょきない。ちゃんと説明しちゃんけん……な?」 「……ひいっ!く、来る、うううっ!」 麻利が、叫ぶ。視界にある肉ばかりの光景が、突然激しく動き始める。 「あん、やんっ……激し、いいいっ!佐藤、さ、んん……っ!」 悲しいことに、慣れたくもない目が暗闇にますます慣れてくる。 液を滴らせた秘裂に、田中の太く黒く長いモノがズボズボと往復している。 下の飯干はほとんど動かないが、ヴァギナで繰り広げられる躍動の余韻で、麻利のアヌスをゆっくりと味わっている。 乳房、腰、首筋、太もも……田中にも飯干にも愛撫されている全身の肉が、揺さぶられながら跳ねている。 そして。麻利の両脚は相変わらず、田中の逞しい腰に強く強く巻き付いて縋っている。 「……麻利さんがこん村に初めて来たんは、4年位前やったかな。結婚どころか、まだ学生さんやったはずや」 郁夫の顔などまるで見ずに、田中は多分麻利の顔に熱い息を吐きかけながら語る。もちろん、その最中も麻利の膣内を深く蹂躙しながら。 「昔から村ん風習みたいなのを調べるのが好きやったんやな?でたまたまこん弥ヶ江に来た……なあ、そうやろ?え?麻利さん」 「は、はっ、はいい……っ!学生、でっ、山村民俗学、が……あくうっ……専門、だった、から……ひい、いいんっ!」 「……俺らは最初警戒しちょった。まあよそ者やし、あんまりおおっぴらにしたらいけん話もあるしな……でもあんたは、遠慮なく村中を聞きまわっちくれたわ。クククっ」 麻利が息絶え絶えに身悶えしているのに、田中は余裕綽々の口調で郁夫に語りかけ続ける。 それだけでも腹立たしいのに、そんな声に別の音が混じる。 それは、液体の音。にちゃにちゃと性器がぶつかり合う場所から漏れ出る、いやらしい濡れ音。 「仕方なく、村ん年寄り連中が話し合っち、麻利さんと話すことになった……秘密厳守やっちゅうことで、な」 「うんっ、うん……っ!聞いた、のっ……おじいちゃんたちが、んあっ……丁寧、にっ、村の、しきたり、をっ……ああ、んっ!奥、おく、うう……っ!」 「……何日もの間、年寄りらは話して麻利さんは聞いた。そしたら麻利さんは……こん村の決まりごとに感動しちくれたわけや」 しきたり?決まりごと? 麻利は確かに学生時代から、郁夫と同じように現地でのフィールドワークを何よりも大事にしていた。 麻利が感動したという弥ヶ江村の決まりごと……それを妄想して、郁夫の心は寒くなる。 「なあ……佐藤さん」 股間から、声がする。栄子の声だ。郁夫の怒張に熱を持った息がかかる。 「……あん時んことは、よう覚えちょんよ。私が結婚しだちで、村んしきたりとか覚えよん頃やったけん。同じように麻利さんとゴマジんこととかよう聞いたんで……」 「そう、んで……じいちゃんたちが許したけん、村ん人たちも麻利さんに親切になった。自分らが普段夜とかにしよんこととか、私たちが直接教えたりしたんでぇ……?」 股間にますます寄せられる柔らかい肉。続けて発せられた葉子の言葉と、今自分に起っている現実に、郁夫はますます絶望する。 純真であるとずっと信じてきた妻 麻利が、自分と結婚する前から、この村で、この淫猥な連中と、ずっと、ずっと。 「……安心しよ、佐藤さん。あんたが思っちょんみたいに、麻利さんはオメコしまくりやねえよ」 まるで郁夫の心を全て読んだように、美知恵が見つめる。艶っぽい、しかし冷たい微笑を湛えながら。 「よそから来たしにそげなことしたら、おじいことになるやろ?麻利さんはうちらのこと分かっちくれたし、こっちもあんまりやらしいことはせんかった……だけん、安心しよ?」 美知恵は、そう言いながら蝋燭台をその場に置き、再び郁夫のほうへとゆっくり近づいてくる。熟れまくった肉体を、一切隠すことなく晒しながら。 「そ、そう、なの……っ!わたし、そんなんじゃ、ないの……はう、あうっ……あな、たぁっ……いいっ、深いいいい……っ!」 「そうや……それは信じちゃってあげな。こん村から帰る時、麻利さんが何ち言ったか知っちょんかえ?『私を信じてくれる人を見つけたら、ここに戻ってきます』……っちな」 なん、だと? 麻利に向かって荒々しい腰遣いを繰り返す田中が、奇妙な言葉を語った。 「そう、そう……っ!あなた、ならっ、んひ、ひいっ!……分かってくれると、んっ、思った、からぁ……はう、んんっ!……奥、が、いいのっ、あな、たぁ……っ!」 「そうっちゃ……あんたと一緒にここに来たんは、あんたを信じちょんけんや。愛しちょんけんや。だけん、俺らは麻利さんを信じて待った。仲間が帰ってくるっちいう気持ちでな……まあ、今日はもうみんなでしまくっちゃったけんど。うひゃひゃ」 飯干が下世話に言い放った中に含まれた『愛してる』……つい数時間前までの清純な麻利が、幸せな日々の中で郁夫に何度も微笑みながら囁いてくれた、『愛してる』……。 この奇妙極まりない猥褻な儀式を、麻利は受け入れ。 その上で私と愛を紡ぎ、やがて結婚し。 そして、この村へと戻って来た。郁夫と一緒に。 「九州の弥ヶ江村って所がいいよ」……。 あの日、麻利は、純真極まりない笑顔で、俺にそういった。 俺を、信じていたから……? 俺を、愛していたから……? 怒りの眼差しだけではない視線で、郁夫は再び麻利を見つめた。 「あな、た……っ!愛してる、のっ……はあ、ああっ……ここで、一緒に、ずっ、と……生きて、んあっ……生きていきたい、からぁ……っ!ひいいっ、あそこ、が……あそこの、奥、がぁっ……ん、来る、来るっ!……あ、ひいいいいいっ!」 田中の黒く太いモノが出入りし続ける、濡れ濡れの蜜壺。 飯干の長くグロテスクなモノが挿し込まれている、歪んだ形の菊門。 わずか10数センチの中に、この世の淫猥さを全て詰め込んだような麻利の、場所。 異常なほどの愛液を塗れさせそこは光り、ぬめる。 明らかに、自ら進んでその場所の白い肉を振りたくりながら。 だが。 「愛して、るっ……あなた、愛して、るううっ……!はあ、ひいっ……来る、来るっ!田中さん、飯干、さんっ……麻利っ、あそこ、がっ……すごいの、来、るっ……んあっ、はああっ!あな、たああああ……っ!」 夫ではない2人の男に前後を深く深く貫かれ、高らかに絶頂の到来を恥ずかしげもなく叫ぶ美しい妻 麻利は。 来る、来ると赤い唇をよだれに濡らしながら。 しかし郁夫の、愛する夫の顔をじっと見つめながら。 愛してると。愛してる、と。 「……ま、り……っ!」 異常な状況の中で、見つめあった2人。眼差しだけ切り取ったのなら、それはまさに愛し合う夫と妻のそれだった。 しかし。 「……ふふっ。そげなわけやけん、愛する奥さんのことは向こうの男らに任せて、こっちはこっちで楽しもうえ……な?おっきいチンポ持ちの、佐藤さん……はあ、んっ!」 涙で潤みそうになっていた視界は、黒い茂りに囲まれた熟れ肉の圧によって塞がれた。 むせ返るような牝臭と共に、美知恵が顔面に騎乗してきたのだ。郁夫がそうしたいかどうかなど、まるで無視して。 「じゃあ……私も約束どおり、オメコしよっと。佐藤さんのすごいチンポ、オメコで喰い尽くしちゃんけん。うふふっ……ああ、はあっ!やっぱ、思ったとおりイイわぁ、こんチンポ……っ!」 栄子もまた、愛し合う夫婦の心からの邂逅など気にも留めず、ただひたすら郁夫の男根のみを、自らの陰唇で味わい始めた。葉子も自分が乱れる順番を心待ちにしながら、郁夫のさまざまな場所を愛撫し続ける。 「んなら、こっちもそろそろ仕上げちゃろうえ……さあ麻利さん。すごいのいかせちゃるけんな……おお、まだ食い締めんか。奥に、たっぷり出しちゃんけん……おお、おおっ! 「は、い、はいっ……すごいの、来ます……っ!田中、さんっ……あう、あうっ、ああ……いく、あそこがっ、いく、のおお……っ! 「こっちも出すで……あとからまたオメコにも出しちゃんけん、まずはケツんすで悦んじょきないえっ……おおっ、チンポから、出る……っ! 「はい、はひいいっ!お尻の穴にも、飯干さんのっ……いっぱい下さいっ!はあ、んんんんっ!お尻も、イイっ!あそこでも、お尻の穴でもっ……いく、いくっ……いくう、うううううっ!」 急激に高まる放出感。栄子の若々しいヴァギナを、精で満たしてしまうという予感。 もう郁夫には、愛する妻 麻利の姿を探す余裕は一毛もなくなっていた。 愛してる、の言葉を捜す必死さも、蝋燭の光だけが照らす暗い部屋の闇に、消え失せていった。 ―この村には、はるか昔から『助け合い』という言葉では言いつくせない行為が村人たちによって行われてきた。きっかけは室町時代の大洪水であるとか、江戸末期の飢饉であるとか諸説あるが、結局のところ確かなことは分からない。市の図書館で調べても、結果は芳しくなかった。 集落を構成する一軒一軒が、家族のように助け合い、与え合う。古い地域では全国どこでも少なからずある事例だ。しかし、弥ヶ江の人たちは今もそれを尋常ではないほど濃厚に行っている。 災害で家を失った人たちを、何の見返りも求めず自分の家に受け入れる。 戦で家長を失った未亡人や子供たちを、集落全体で保護する。 跡継ぎのいない家に、自分の子を養子として与え、縁談相手さえも世話する。 現代でさえ、村に至る道も細く険しい。昔は、言うに及ばずだろう。大雨が降り崖が崩れれば、道は閉ざされただろう。戦乱の世では野盗のような敵対陣営から姿を隠さなければならなかっただろう。 隔離された場所で、ひっそりと村人たちのみで生きていかなければならない。貧しきものには分け与え、子が尽きそうな場合は、他の女が産み育てるのだ。 食物も、財産も、男、女でさえも、弥ヶ江では共有されている。そもそも弥ヶ江(Yagae)という地名も、住居をすぐに移す意味の「家替え」だとか、立場を自由に変えられる「身代え(Migae)の読み変換」だという説があるほどだ。 今この原稿を書いているすぐ隣の部屋で、そういった行為の一つが行われている。そしてこのパソコンのすぐそばで、近所の奥さんたちが私と妻の子をあやしている。プライバシーや閉鎖的な環境などの諸問題を全て受け入れる事ができれば、この村はまさにパラダイスなのかもしれない。 受け入れる事が、できれば。 モニタに映し出された原稿。もちろんこんなものを、編集に送るわけにはいかない。編集者や読者は、郁夫がこの村で体験した事を具体的に知りたいと思うだろう。無邪気に。 だから、この原稿は送れないのだ。 「……なあ、佐藤さんっちゃ。まだ、せんのぉ……?」 小さな布団ですやすやと眠る赤子の寝顔を眺めながら。目の前の豊満な女は、白い肌を全て露出した女は、ぐちょぐちょに濡れた自分の割れ目をこちらのほうに向けている。 「ほらぁ……隣ん部屋じゃ麻利さんが、うちん人やじいちゃん連中と楽しくやりよんで。だから、ほらぁ……」 よりにもよって、女はそこを指で拡げる。どろどろと、男を奥深くまで呑み尽そうと光蠢いている。 郁夫も、全裸だった。モニタをうつろな視線で見つめてはいるが、入力作業に入る前にすでに女に服を脱がされていた。 悔しいけれど、勃起していた。 「まだ、こん村の決まりに慣れんかえ……?むずかしく考えんで、オメコ楽しんだほうがいいで。ほら、麻利さんみたいに……フフフッ」 その声に従ったわけではない。しかしなぜか、その艶っぽい女の声のとおり、蜜の溢れた淫裂に体を向ける。 それなのに。逆の方向を向いたはずなのに。 自分の背後にある障子の向こうから、悩ましげな声が聞こえてくる。もはや、抑えるつもりのない女の声。 「ん、ああっ……すご、いぃ、奥まで、はう、うんっ……来てる、のっ!」 夕食時まで、リビングで笑顔を湛え、聖母のような表情で乳飲み子をあやしていた女は。 夫の好物を食卓にめいっぱい用意していた女は。 「いいや、もうちょい奥に挿れちゃるで麻利さん……俺んチンポの長さ、知っちょろうがえ」 「ああ、んっ……もっと、もっとオメコの奥に……来る、う、あ、はああっ!」 「そうやそうや。あんたのすけべえなオメコが、田中さんのチンポをどんどん咥え込んじいっちょんで……いい眺めや」 「んん、ああっ!……いい、の、もっと……見て、見てぇっ……う、んんっ、キツ、いいいっ!」 姿は見えないが、生々しく想像できるほどの喘ぎ、悶え。 多分女は、愛する妻 麻利は、あの夜と同じように田中の怒張を奥深くに呑みこんでいるのだろう。 上に跨っているのか、下に組み敷かれているのか。すでに何度も見せ付けられているので、今更思い入れなど得られはしなかったが、だからこそ見えないはずの妻の表情が脳裏に妄想として浮かんでくる。 「うん、うんんっ……ああ、熱、いいっ、田中さんの、チン、ポぉっ……いい、のおっ!」 「あんたもええぞ麻利さん……締まるだけのオメコやったけど、どんどん具合ようなりよん……」 「ほおお、ケツんすも相変わらずえーらしくヒクつきよんぞ……こりゃすぐに挿れちゃらないけんなぁ……ヒッヒッヒッ」 麻利の甘く響く声。 猥語を当たり前のように吐く男。 老人特有の粘つくトーン。 また麻利は、上下の穴をみっちり塞がれるのだ。ケツんす、とやらを満たすのがどの老人かは分からないが、もはや誰であろうと一緒だった。 「よしよし……じゃあ挿れちやるかな。麻利さんのケツに、ジジイんチンポを……お、お、おっ」 「あ、くうう、んん……っ、来、た、あああっ……すご、いっ、いっぱ、いっ!」 村の老人たちは、麻利のアヌスに執着して日替わりのようにそこを貪り、貫いた。もちろん前の穴を塞ぐこともあったが、どちらかといえば若い男衆に遠慮しあえて菊門を選んでいた。 −汁が薄くなっちょんけん、しょーわねえわな。 麻利の尻穴につばを吐きかけほぐしながら、どこかの老人は郁夫に確かにそう言った。 そう。 ゴマジの儀式は、もはやこの村の習慣と言っていい行為は、種付けの儀式なのだ。 互いの妻を交換し、抱き、精を放ち、孕ませ、やがて生まれた子を村の皆で育てる。 狭く閉ざされた場所で、村を維持していくための、必要な習慣。 「いい、いい……っ!どっちのチンポ、もっ……ね、ねっ?もっと、してっ……もっといっぱい、して……っ!」 麻利が求める声を聞き、郁夫は無言で体を一歩進める。 「ああっ……しちくるるんやね佐藤さん。ほら、こげえやらしくなっちょんオメコに、早く挿れちっ!んで、佐藤さんの汁いっぱいいっぱい中に出しち、孕まし、ち……っ!」 麻利は、孕んだ。郁夫の子供であるか、それとも田中か、他の男の種か。まだ清純な麻利の姿を消し去れていない郁夫は、弥ヶ江の性のしきたりにわだかまりがある。 だが。 「あう、はう……っ!たな、か、さんっ……チンポの汁、出してっ!熱くて、気持ちよくてたまらない、そのチンポの汁出して、出してぇっ……!」 「そげえ欲しいんか、麻利。俺んチンポん汁が……よし、いっぱい出しちゃんけんまた孕めよ。俺の、俺のチンポ汁での……くっくっく」 嫌な響きがこもった田中の言葉は、果たして郁夫の耳に届いただろうか。 勃起したペニスをすぐに味わいたいと、熟れた女の、美知恵の巨尻が迫って来る。そして、すぐに目的のモノを支え、食いつき、呑み込んでいった。 だから郁夫は、しきたりの中に存在する哀れな精放出装置となって、美知恵のオメコに奉仕し始めた。 「麻利さんも来たし、あんたのダンナみたいなのが書いちくれる『田舎大好き』みたいな記事んおかげじ、若い人らもたまーにこん村に来ちくるる。そんで、可愛い娘ごも生まれる……弥ヶ江ん村もしばらくは安泰じゃ……おおっ、ケツがイイぞっ」 老人が、笑いながら悶える。 「そうじゃ……こんオメコに種蒔いち、そんでこんオメコから娘をひりだしたんじゃ。もうしばらくは麻利んオメコで楽しんじ、10年そこらじ娘も食っちゃらんと、な……ほら麻利、俺んチンポん汁が欲しいんじゃったら、もっとオメコ締めんか……出すぞ、よいっ」 恐ろしいことを、田中が勝ち誇るように叫んでいる気がする。 「うん、うんっ……!オメコ締めるから、田中さんのチンポ汁ちょうだ、いっ!娘が育つまでで、いいけんっ!そしてまた孕む、けんっ!麻利のオメコに田中さんの、村のみんなのチンポん汁、出して、注いで、えええぇ……っ!」 麻利の、愛妻の幸せ極まりない喘ぎが、耳に届く 幸せならば。 この村で生きていくことが、幸せならば。 |