◇ 異世界から来た新しいシバと、影サタン様のある日の一コマ。 ◇(↑new old↓)


◇ 成長推測編 ◇

 またもクローゼットにこもっているらしい影サタン様。
 そうそう服装に凝るたちでもないのに、と訝ったシバがふと歩み寄ってみると、真剣な顔で姿見をのぞき込んでいるサタン様の姿が。
「‥‥どうかしたのか?」
 と声をかけようとして、シバは思わず目を丸くした。
 鏡の中に映っていたのは、現実のサタン様よりかなり成長した、おおよそ二十歳ほどの姿だったのだ!
「ああ‥‥もう少し成長が進んだらどんな感じかと思ってね」
「‥‥そうか」
 こんな感じになるのか、と思いつつも、ここまで成長するのにあと何百年かかるのだろう‥‥その頃まで自分の寿命が保つのだろうか、とちょっと目眩がしなくもない。
 しかしその様子に気付いたらしく、サタン様が笑って言った。
「心配しなくとも、君の寿命も僕と同じになったんだからね?」
「? 同じとは‥‥」
「この世界を作った時、君に僕の寿命を分けただろう? あれ以来、君は僕と同じペースで歳を取るようになっているんだよ」
「ということは――」
「ほら、こんな感じだよ」
 と、指された先の鏡の中には、サタン様同様5~6歳ばかり年を重ねた風の、ちょっとだけ渋くなったシバの姿が。
「でも、結局君との見た目の歳の差が縮まらないのはどうしたものやら」
「縮める必要があるのか?」
 そもそも見た目がどうであれ、実際はサタン様の方が数百年単位で年上なのである。 何を今さら‥‥と思ったシバに、サタン様がちょっと拗ね気味に言う。
「だって君は本来、こんな子供の身体より、ちゃんと育った方が好みなんだろう?」
 ‥‥何を突然言い出すかと思えば。
「せめてもう少し成長ペースが早ければよかったのに」
 絶句したままのシバに、サタン様はちょっと溜息をつき、心底残念そうに呟いた。
「――‥‥‥‥」
 少しの間の後、シバはふっと苦笑して、サタン様の肩を抱き寄せた。
「いや‥‥これはこれで」
「いいのかい?」
「お前なら、それで」
「‥‥うん」
(2007/10/20日記)01-02

◇ 柱の傷編 ◇

 広いウォークインクロゼットの奥で、何やらごそごそしている影サタン様。
 気付いたシバが近寄ってみると、柱に寄りかかるように立ったサタン様が頭頂に手を当てて言った。
「少し身長が伸びたような気がするんだよ」
 よく見ると、そこにはいわゆる「柱の傷」が。
 こんなところにこっそり身長を刻んでいたのかと、サタン様の意外な子供っぽさに微笑ましく思いつつ、シバが刻み目を見てみると、確かに二センチほど伸びている。
 が――前回の日付をよく見ると、何と五十年ほど前ではないか。
 改めて見やったサタン様の外見は、人間ならおおよそ14~15歳というところだが――
「どうだい?」
「‥‥伸びているな」
 としか言えないシバ。
「じゃあ、新しい印をつけてくれないか」
「ああ‥‥」
 渡されたペンで線と日付をカリカリと書き込みながら、
『サタンは一体どのくらいのペースで成長しているのだろう‥‥』
 とか、
『次はやはり五十年後なのだろうか‥‥』
 とか、何だか複雑な気分になってしまったシバなのだった。
(2006/11/14日記)01-01