◇ カイロとZIPPOとiPod ◇
ずっとしまい込んでいたZIPPOのオイルを久々に神無が持ち出してきて、居間で何やら作業中。
そこに双魔が通りかかり、
「? 禁煙したんじゃなかったの」
「禁煙したからだ」
言って神無はテーブルを指差した。
視線の先に置かれていたのは、横70mm×縦100mm×厚さ10mmほどの、四角い金属の塊だった。
表面はステンレスらしき銀色で、のぞき込んだ顔が映り込むほどにピカピカだ。
「‥‥ipod?」
「違う」
よく見ろ、と神無がまた指差すと、そこには「ZIPPO」の刻印が。
「何これ、ライター?(にしては巨大だなあ‥‥)」
「(んな訳あるか)使い捨てじゃない本物のカイロだ」
「え、カイロってこういうのが本物なの?!」
「らしいな。子供の頃は使ってたって親父が言ってた」
「そういえば『使い捨てカイロ』って言うからには、使い捨てじゃないカイロがあるってことで‥‥うわあ!!」
「‥‥そこまで震撼するほどのことか?」
怪訝に眉をひそめながらも、オタクに知識で勝つと何となく嬉しい。
とか思いながら、神無はパカリとキャップを開けて見せた。
「元祖のハクキンのはベンジンを使うらしいが、これはZIPPOのオイルが燃料なんだ」
「燃料」
「イオスのせいで否応なしに禁煙したからな‥‥それでライターのオイルを持て余してたんだが、これ見掛けて思い出したんで買ってきてみた」
言いながら、計量カップで量ったオイルをカイロの注油口に注ぎ込む。
「バイク乗る時にも、使い捨てより断然暖かくていいって話だ」
「そうなんだ‥‥」
しばし珍しげにそれを見ていた双魔が、何か思いついて首を傾げた。
「それ、どうやって暖かくするの?」
「ここの金具をライターなんかの火で焙ると、発熱反応が始まるらしい」
「ライター要るんだ‥‥」
「? ああ」
「で、燃料式ってことは、使い捨てよりずーっと長く使えるってことだよね」
「ああ。ライターと同じで、点火パーツ変えれば半永久的に使える」
「じゃあ今は余してるオイルも、無くなったらまた買って来なきゃならないんだ?」
「? だから何だ」
「うーん‥‥エコだし格好いいし、ちょっといいなって思ったんだけど、 僕が使うにはまずZIPPOのライターとオイルを買ってくるところから始めなくちゃいけないのかと思って」
「‥‥別にライターはZIPPOじゃなくてもいいし、100円ライターとベンジンと元祖のハクキンカイロでもいいんだぞ」
「どっちにしろ微妙にかさばるなあ‥‥」
「‥‥お前は黙って使い捨て使ってろ!」
(2012/02/01日記)
以前、友達が購入した初代ipodを見せてもらった時は、リアルで「何そのハクキンカイロ」と言ってしまいました。
※参考リンク
「ハクキンカイロ 非公式ファンサイト」
「ケータイwatch」スタパ齋藤の「週刊スタパトロニクスmobile」
チョー寒い冬を乗り切る「ZIPPOハンディウォーマー」
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「ハクキンカイロ 非公式ファンサイト」
「ケータイwatch」スタパ齋藤の「週刊スタパトロニクスmobile」
チョー寒い冬を乗り切る「ZIPPOハンディウォーマー」