◇ 双魔のささやかな対策編 ◇



※ 真贋取り混ぜて昆虫ネタ注意 ※

 ・
 ・
 ・

 今日も今日とて双魔の部屋には、理解不能なガラクタが転がっていた。
「‥‥なんだこりゃ」
 ソードが指先で摘まみ上げたものは、一昔前に流行ったような、平たい棒付きの「芋虫入りキャンディ」だった。
 手乗りサイズの魂双魔がコウモリ羽でパタパタと飛んできて、
「あ、それね。虫入りキャンディ」
「見たまんまじゃねーか」
「中のもの出した時に落としちゃったのかなあ」
 などと双魔が呟いて、
「あと、他にこういうのもあるよ」
 と、引き出しを開けさせて出てきたものは。
「‥‥何なんだ、これは!」
 さすがにソードが引き気味に叫んだ。
 円柱形のガラス瓶の中は、半分がた土で埋まっていた。
 そして土の上の空間には――よくよく見ると土の中にも埋もれて――色とりどりの昆虫が、ガラスに張り付いて詰まっている。
「土のところがクラッシュのビタークッキーで、虫は全部グミだよ。ムカデとか赤いのがイチゴ味で、黒いのがコーラ味。芋虫っぽいのがミルク味で、緑色のが――」
「味の解説はいい! 何に使うんだ、こんなもん」
「‥‥七海ちゃんが引き出し開けた時対策に」
「あー‥‥」
「朝から押しかけてきて布団剥がれたこと、ソードさんもあったでしょ?」
「あったな‥‥」
「その勢いで勝手にゴミ捨てられたり、ベッドの下とか引き出しチェックとかされたりするんだよね‥‥これ入れとけば、その下のものは掘り出されずに済むから」
「あいつ、虫触れないのか」
「うん。そんなとこだけ普通の女の子で大助かり」
「‥‥‥‥」
 ソードがそこらを見回すと、今ひとつ趣味の悪いエロ同人誌が至極無造作に転がっている。
 その無防備さとは裏腹に、こうまでして死守する引き出しの奥には、一体何が隠されているのか――
 ‥‥見ないことにしよう、と心に誓い、ソードは元通りガラス瓶をしまい込んだ。

―――

「あ、でもこれ、子供の頃に買ってもらったやつだから、十年単位で賞味期限切れしてて食べられないよ」
「そんなこと気にしてる訳じゃねーよ!」
(2012/11/23日記)

死守されているのは、きっと「開けると呪われる」という噂の、封印付きのオカルト本とかですよ。