◇ ネコと双魔と家ネコと編 ◇
いつもと変わらぬ学校の帰り。
双魔は行く先の路上に寝そべる、飼い猫らしきブチ猫を見つけた。
「あ、猫。おいでおいで~」
手入れの良さそうな毛艶と首輪に、人慣れを期待してそっと近寄り、話しかけながら手を伸ばす。
自宅に猫的なものがいるにはいる。
が、いかんせん、コウモリネコは飽くまで悪魔で、人間界のリアル猫とは違う。
意思疎通が可能という特典は大きいのだが、たまには普通の猫と遊んでみたいのだ。
しかし、ソードやネコといった魔族の匂いがするのか、単に警戒心が強いのか、猫はビクリと身じろぎし、伸ばした手から後ずさって逃れた。
じり、と距離を詰めると同じだけ後ずさり、どう見ても逃げるタイミングを伺っている風情だ。
「うーん、駄目かなー」
まあ仕方ないか、と諦め気味に双魔が溜息をついた時、
「―――どうしたのニャ、双魔」
飛んでいたのか塀の上を散歩していたのか、コウモリネコがシュタリ!と降り立った。
「あー、うん、久し振りに本物の猫を見掛けたんだけど‥‥」
かくかくしかじかと事情を話すと、
「ニャるほどニャ~」
コウモリネコはふむふむと頷き、くるりとブチ猫に向き直った。
え、と見ている双魔の前で、四肢を踏みしめて「シャー!」と一喝!
するとブチ猫はビクゥ!と震え、ぼわりと毛並みを膨らませながらも、コロリと腹を出して寝転んだではないか。
「え? ど、どういうこと?!」
「この辺のイエネコはみんなあちしがセイアツしたのニャ」
セイアツ。‥‥あ、「制圧」ね、とワンテンポ遅れて脳内変換しつつ、茫然と猫とネコを見やる双魔に、ネコは得意気に胸を張って言った。
「今や町内にあちしに逆らえるイエネコはいないのニャ。だから好きなだけモフモフするといいニャ!」
「あ、うん‥‥す、すごいねナナちゃん‥‥」
強張りつつもプルプルと震え、ボス猫(?)の命令に従うブチ猫を、どうにもぎこちなく撫でながら、
(いや、ナナちゃんは一応悪魔だから、普通の猫より強いのは当たり前―――とは言わない方がいいんだろうなあ‥‥でもこれってある意味パワハラだよね‥‥いいのかなー‥‥何だかあんまり嬉しくない‥‥)
と、何とも微妙な気持ちになってしまう双魔であった。
(2014/02/23日記)
(コウモリネコはコウモリネコで、人間界における勢力基盤を着々と固めているようです)
(その人脈(ネコ脈?)を、いつ・何に使うつもりなのかは謎ですが)
(その人脈(ネコ脈?)を、いつ・何に使うつもりなのかは謎ですが)