◇ 天野家の新たな日常編 ◇



※イオソとネコの存在&正体が父バレした後の日常のひとコマ。
※時系列的にはもしかしたら新世界編かも。
自分の息子達に寄生しているのが人外の存在だと知った後。
意外というか予想通りというか、父の態度はほぼ変わらなかった。
イオスとソードという名を聞いてからも、ソードのことは「頑丈な方の双魔」と呼び、イオスを「真面目な方の神無」と呼ぶ。
覚えられないのかそもそもどうでもいいのか、その辺りは未だ判然としないが、天魔と双子・四人の意見は「多分両方だろう」ということで一致した。
ついでに父はコウモリネコのことも、魔物であると知って尚、「会話が出来る便利な猫」としか思っていない節がある。
つい今し方も、二人(正確には一人と一匹状態だったが)でテレビを見ていた時、
「ナナ~、この新製品の猫缶はどうかな、今度買ってこようか?」
「ネコ友の評判によるといまいちっぽいニャ。あちしはそれよりささみスティックのスモーク味が気になるニャ~」
「じゃあ今度それを買ってくるからね~」
などとCMを見ながら語らっていた。
「悪魔のくせにネコ餌のリクエストしてるんじゃねーよ!!」
思わずソードが激昂して詰め寄ったが、しかし。
「な、なんニャいきなり?!」
「そうだよ~、ナナが美味しいっていうんだからいいじゃないか~」
「やぱりお父さんは優しいのニャ~。ソードとは大違いニャ」
気の抜けたことを言いながら、ネコと父が互いに庇い合ってふるふる震えている光景に、ソードも逆上とげんなりの狭間で拳のやり場を失った。
「―――あのクソネコ、もうすっかりただのイエネコじゃねーか!」
「元から大して悪魔らしくなかったですしねえ‥‥そもそも使い魔としても微妙な働きしかしていませんでしたし」
何度目かの八つ当たりをぶつけてみても、イオスの反応もやはり鈍い。
「今は微妙どころじゃねーだろ! 完全に無駄メシ食いのペットじゃねーか!」
「まあ、当のコウモリネコがそれでいいならいいのでは‥‥というか、まだ使い魔としての働きを期待しているんですか?‥‥アレに」
アレ、と向けられた視線の先を、ソードも釣られて見てみると、
「―――ん~、もうちょっと上かな~」
「この辺ニャ?」
俯せに寝た父の背にネコが乗り、四つ足でムニモニと踏み歩く、肉球マッサージを施していた。
「アレは‥‥ヤツなりに使い魔の仕事をしてるつもりなんじゃねーか? 知識は間違ってるけど」
「でもアレ、普通の猫とか犬がやっているのをテレビの投稿動画なんかでよく見ますよ‥‥」
「‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥」
‥‥そして沈黙が広がってしまった。

中からそれを見ていた双魔が後から一言。
「ソードさんって、意外とナナちゃんに悪魔っぽさとか、使い魔としての素養を求めてるんだね‥‥」
(2015/04/24日記)

(もしかしたらイオソは元の身体を取り戻した後も、天野家に遊びに来た時はどっかに身体を置いて、手乗りサイズ魂だけでパタパタしたり、原作時期みたいに神双に憑依したりしてるのかも、という疑惑が浮かんでいる昨今)