クリスマス・24・アワーズ/04


フランスのものが少しずつ浸蝕していくと、イギリスの狭い内部はそれをきつく締め付けてしまい、彼が息を詰めるのが聞こえた。
それでも一気に無理矢理貫くのではなく出来る限り緩やかな動きで中を開いていき、切れ切れに短く息を吐くイギリスの頬を撫でてくれる。
宥めるように全身のあちこちに愛撫を与えながら、ようやくすべてイギリスの中に収めきったフランスはしばらく混ざり合う互いの熱と、脈打つ肉襞が絡み付いて締め上げてくる感覚を確かめるように静止していたが、それも長くは持たなかった。
絶え間なく忙しなく収縮を繰り返し、咥え込んだものを締め付ける刺激に堪えきれなくなったらしく、その熟れきった柔肉を思う様擦り上げ始めた。
最初は緩やかで規則的な動きだったのが、段々と勢いを付けて腰を打ち付けられ、イギリスは喉を反らせてその激しい抽送を受ける。

「あっ、ァッ…、そんなにしたら、やだ、ふらん、す…!」

「ん…? なんで? たまにはやだじゃなくて、もっとって言って欲しいなぁ…」

「ぅ、……ぜっ…、てえ言わ、ねえっ……」

もう自分の中は心も身体もフランスでいっぱいなのに、これ以上ねだったら確実に許容量オーバーでおかしくなってしまいそうだ。
もっと、なんて一度でも口にしたら、際限なく求めてしまうのはわかりきっているので口には出せなかった。
フランスもそれがわかっているから、イギリスの矜持を保ってやるために言わせることを強要しない。
これが何回目になるのかも覚えていないくらい肌を重ねてきたのに、我ながらつまらないプライドに拘っているとも思うけれど、今はこれでいいのだ。
本心を余すところなくさらけ出さなくてもこうしてフランスと気持ちいいことは出来るし、自分自身を全部彼に明け渡すのはまだ先でいい。

これまでに何度も彼の熱を受け入れた後孔は念入りに解されたおかげか、力強く突き入れられるフランスのものに形を合わせるかのように蠢いて、腹の中を灼くそれをねっとりと包み込む。
イギリスの中は自分でも信じられないくらい柔らかく熱く蕩けて、内部を出入りする肉塊はさらに速度を上げていき、濡れた音を響かせてイギリスの肉壁を擦り上げた。
その少し乱暴とも思える律動に、イギリスはどうすることも出来ず彼の背に縋り付くように両腕を回し、がくがくと身体を揺さ振られるだけだった。
深いところまで抉るように貫かれるたびに全身を支配する快感が大きくなっていき、フランスを咥え込み締め付けている肉壁もきゅう、と柔らかく波打つ。
やがてフランスの呼吸も次第に荒く乱れ、奥まで受け入れた彼自身の先端から溢れた先走りが内壁を濡らして、イギリスはフランスも限界が近いらしいと感じた。

「…フランス、っ……ぁ、…お前の、出てるっ、…」

「…うん、…ほんとにもう出そう……イギリスの中、ずっとこうしてたいくらい、きもちいいよ…?」

「いちいち言うな、ってんだろっ……ばか…!」

そんな恥ずかしい科白を吐かれるのは毎度のことだが、こんな言葉はいくら言われても言われ慣れることなんてない。
イギリスは羞恥に目を伏せるが耳元で囁くその声にさえ下肢が甘く疼いてしまい、酷く過敏になった肉壁を擦り上げながら出入りするフランス自身をもっと奥まで飲み込もうとする。
それに応えるかのようにフランスの抽送はますます速く激しいものになって、与えられる刺激だけを追うとあっという間に絶頂へと導かれていった。

「…、ぁん、っ、……あっ、…もう…俺、…ふぁっ!」

ひときわ深く最奥まで捻り込むように突き入れられた瞬間、イギリスはびくびくと全身を震わせて達すると、自分の腹の上に快感の証を飛び散らせた。
その直後、イギリスの中でフランス自身も弾けて、ぐずぐずに蕩けていた内部に染み込むように彼の熱い精液が吐き出され、それをすべて受け止めたイギリスは重い身体を投げ出し濡れた吐息を零す。

「……ってか、やっぱり最終決戦でそのエロい格好はおかしいって、……でも一人でしちゃうくらい溜まってたんだもんなぁ、要するに俺に手を出して欲しかったんだ?」

「……どんだけおめでたいんだよ、てめーは…」

「俺の前にそんな格好してきて、結果がどうなるかなんてさ、…お前が知らないわけないだろ? 長い付き合いなんだから」

そんなくだらないことを言って笑ったフランスの髪を思い切り引っ張ると、すぐに 痛いですすいませんでした と情けない声が聞こえた。
掴んだ髪を放した途端、脱力した彼の身体が上にのし掛かってきて、互いの心音が重なり合う。
その何とも言えない心地良さに目を閉じると、フランスに汗ばんだ身体を抱き寄せられ唇にそっと口付けられたのを感じながら、イギリスの意識はすぅっと薄れていった。


**********


目が覚めたのは、行為が済んでから二時間ほども経った頃だった。
イギリスは身を起こすとまだシャワーも浴びていないべたべたの身体に顔を顰め、何度も己の精を飛ばして汚れたエプロンを外し、ベッドの下に落ちたシャツを羽織る。
今日は各所で暴れ回ってフランスも疲れたのだろう、めずらしくすっかり寝入っていた。
フランスの頭についたままのねこ耳をふわふわと撫で、さらさらと流れる柔らかな髪を弄びながらじっと彼を見下ろし、イギリスは小さく嘆息した。
本当に顔だけは無駄に整っていると思う。
髭がなければ昔と同じで綺麗なのにな、と思いつつ、でもこれはこれでいいよな、うん、とざらざらとした髭を指先でなぞる。
つまりはイギリスはフランスの顔が好きで、髭があろうとなかろうとどっちでもいいのだ。
それにしてもなんで今日みたいな日に一緒にいるのがこいつなんだろうな、と彼の寝顔を見つめたままぼんやりと考えた。

気が付いたらキスをして肌を合わせる関係になって、今は互いに憎からず思っているし、若干不本意だけれど一応恋人と呼べる関係に落ち着いたのだが、自分たちに限っては世間で言うところのそれとは少し異なる。
イギリスにとってフランスとの関係は恋人と言うには酷く温くて、やけにさっぱりしたものだった。
常にべたべたくっついているのはなんだか落ち着かないし恥ずかしいので、これくらいの付かず離れずなゆるい関係でちょうどいい。
普通の恋人同士みたいに、わざわざ予定を合わせてクリスマスだとかそういうイベントを一緒に過ごしたりなんてしないし、フランスが余所で女性を口説くことも勝手にすればいいと思っている。
結局なんだかんだで今日のように、最後に彼が来るのは決まってイギリスのところなのだ。
会う約束なんてしなくても、フランスが自分のところに来ることは何百年も前から知っているから、イギリスも彼が来るのを何も言わずに待っている。
フランスと会う理由なんて、最終決戦だろうとなんだろうと、どうでもいいことだった。
一緒にいれば寂しさは紛れるし、いつも美味しいご飯を作ってくれて、ときどきはばかみたいに優しく甘やかしてくれるのは、照れくさくて恥ずかしいけれど嫌じゃない。
抱き合ったときの熱や快感が忘れられないくらい強烈に全身に残ることも、嫌だと思ったことはなかった。
それでもお互い今さら素直になるには、長い年月反目し合っただけに難しい。
だから今はまだこの関係のままでいいと思うし、フランスとの恋愛にいつでも本気になれるくらいの情熱も、イギリスの中に確かにある。

そのときふいにぎゅる、と腹の音が鳴り、イギリスの考えはそこで中断された。
性欲が満たされると今度は腹が鳴るだなんて、どこまでも本能に忠実な身体だと苦笑する。
食事の用意が途中だったのを後回しにさせたのは自分だし、フランスが先に作ったスープもとっくに冷めてしまっただろう。
もう少しこうして触れ合う肌の熱を感じていたかったが、勝手なことだとは思うが空腹も限界だった。
キスをしたら起きるだろうか、とらしくないことを考えて顔を赤くしつつ、どうせ起きやしないと開き直ると、眠っているフランスの頬を撫でて唇に軽く口付ける。
案の定目を覚ますどころかまったく反応がなかったので、イギリスはいつも通りに彼を起こすために思い切り耳を引っ張った。

「おいフランス起きろ、いつまで寝てんだよっ!」

手加減なしに引っ張ると、フランスはその痛みのせいか小さく唸りながら顔を顰めてゆっくりと目を開け、耳を摘んでいたイギリスの手をやんわりと解いて身を起こす。

「なにすんだよ、いってーなぁ…。もっとさぁ、キスとかで優しく起こせないのかよ?」

「なっなんで俺がお前にそんな不気味な起こし方をしなきゃならないんだよ!」

本当は耳を引っ張る前にキスはした。
それで起きなかったのはフランスの方なのだから、耳くらい引っ張られて当たり前だ、とイギリスはそっぽを向く。
否、起きるわけがないと思ってしたのだから逆にあれで起きられたら恥ずかしすぎて、とてもこうして平静に会話なんて出来ていないと思うが。

「いいから早く飯作れよ、腹減った」

「えー…? 作ってる途中だったから、出来上がるまでまだ時間掛かるぜ?」

「なんでそんな時間掛かるようなもん作ってんだよ! 使えねー奴だな!」

「なんでって……クリスマスだからって言ったじゃん。それにお前俺のベッドの上でかわいいことしてるし、イギリスだって昨夜は飯どころじゃなかったんだろ?」

「うううううるさいっ!!! お、俺は別にしたいとか思ってなかったのに、お前が勝手に続きをしてやるとか言い出したんだろーが!」

「ふーん…? まぁイギリスがそう言うならそうなんだろうな、そういうことにしといてやるよ」

なにがそういうことにしといてやるよ、だ、偉そうに……とイギリスは顔を顰めるが、フランスの言ったことは間違っていないので、下手に反論すれば不利になるのは自分の方だ。
目線を落として口を噤むと、フランスはベッドを下りて着替えを始め、なんだかんだ言って遅くなった夕食の支度をするつもりらしい。

「飯作るのはいいけどさ、ほんとにまだ時間掛かるけどいい? あ、先に昨日作っといたスープ温めるか?」

「……じゃぁ、今日は簡単なのでいい。作りかけの料理は明日の分にしろ。仕方ないから食べてから帰ってやる」

「あれ、なら今日泊まってくんだ?」

「文句あんのか? 別にお前のためじゃねーぞ、作りかけの料理がもったいないだけだからな!」

「あー、そうね、もったいないもんね。イギリスが食べてってくれないと、俺も一人じゃ食べきれないし」

「そ、そうだよっ泊まっていくのは料理のためであって、断じてお前のためなんかじゃないんだからな! 大体女に振られて惨めなお前に付き合ってやったんだから、ありがたく思えばかっ!」

フランスの髪の毛をぐいぐい引っ張りながらそんなことを言っているうちに、ぐんぐん頬が熱くなった。
自分の方が我慢出来なくなって、フランスと抱き合うことを望んで自ら彼に縋り付いて受け入れたくせに、何を言ってるんだ俺は、と恥ずかしくなったのだ。
イギリスは女性に振られたわけではないけれど、一緒にクリスマスを過ごすような仲の良い友達なんていないので、一人きりだったのはフランスと同じだ。
フランスの方こそ友達のいない惨めなお前に付き合ってやったんだからありがたく思え、などと考えているのかもしれないが、彼はニヨニヨ笑ったまま何も突っ込んでこなかったので、イギリスは無理矢理話を元に戻した。

「…明日はクリスマスの仕切り直しするからな! 手抜きしないでめし作れよ」

「お兄さんが料理に手抜きなんかするわけないでしょ。そうだなぁ、一日遅れになるけど、明日はクリスマスケーキも焼くかなー。シャンパンで乾杯しようぜ」

「シャンパン? わざわざ買いに行くのか?」

「いや、クリスマス前に用意しといたのがあるから、………あっ、今のなし! 何でもない!」

そこまで言って、フランスは急に慌てた様子で自分の口を押さえた。
彼がクリスマスにイギリス以外の誰かを誘うつもりだったのはわかっているし、それならシャンパンを事前に用意していても何もおかしいことはない。
結果振られてしまったけれど、クリスマス当日に女性と一緒にいたのは事実なのだし。
今さらシャンパンを用意していたことを隠す必要なんてないだろうに、今の反応はなんだ、とイギリスは少しだけ驚いてフランスを凝視する。
するとフランスは真っ直ぐ向けられたイギリスの視線に、ますます焦ったようにこう続けた。

「別にお前のために用意してたとかじゃないから! まぁ、そのー…、見ればわかるから先に言うけど、前にお前が飲みたいって言ってたシャンパンがたまたま手に入っただけで、…ほんとに偶然だからな!」

余計に墓穴を掘っていることに気付いているのかいないのか、フランスはクリスマス前にイギリスの飲みたがっていたシャンパンを用意していたことを自ら暴露した。
たまたま、なんて言っているけれど、そうじゃないことは彼の不自然すぎる態度を見れば丸わかりだ。
どうやらフランスはクリスマス当日になって女性に振られたから、惰性でイギリスのところに来たわけではなかったらしい。
もちろん振られることを前提に女性を誘ったわけではないだろうが、そのシャンパンはイギリスのために用意したものに違いなく、きっとフランスは後日自慢の料理と一緒にそれを振る舞うつもりだったのだろう。
結局女性に振られたことでその計画はクリスマス当日にスライドし、イギリスはフランスが初めから自分に声を掛ける予定があったのだということを知って、確かな約束などなくても彼と繋がっているのだと思うと少し嬉しかった。

「えーっと…あのー…イギリス?」

何の反応も示さないイギリスに、フランスは恐る恐る目線を上げてこちらの様子を窺う。
頭に付けたねこ耳までしょぼんとしているように見えて、なんだかおかしかった。

「……しょーがねえから、シャンパンも飲んでやる。早く飯作れ!」

そう言ってやるとフランスは青い瞳を見開いて目線だけこちらに向けたかと思ったら、すぐに僅かに目元を赤く染めて笑う。
そしてずっと付けたままだったねこ耳をようやく外してイギリスに向き直ると、ついさっきまでその表情に浮かべていた柔らかな微笑みは、昔よく見た不適な笑みに変わっていた。

「言っとくけど、来年のクリスマスこそ決着つけるからな。覚えとけよ」

「そりゃこっちの台詞だぜ。逃げんじゃねーぞ」

「お前がな!」

額を突き合わせて睨み合った後、二人は互いに吹き出した。
酷く遠回しな、甘さの欠片もない誘いだったが、今はこれでいいのだ。
来年のクリスマスもまたこいつと過ごすことになっちまったな、と思いつつ、なんとなく温かい気持ちになり、イギリスもベッドを下りてフランスとともにキッチンに向かったのだった。





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ねこみみ×裸ウェイターはまた書きたい。