未来は僕らの手の中/06
フランス自身がすべて体内に収まると、繋がったところから感じる熱さにそこから身体が溶けていってしまうような錯覚に陥った。
フランスのものを咥え込んだ肉壁が不規則に動き、その刺激に息を詰めてやり過ごしながらしばらく互いの体温が馴染むのを待って、フランスはゆっくりと腰を使い始める。
「ん、あッ」
狭い内部を強引に開くように突き入れた熱で肉壁を擦ると、たっぷり塗り付けられたクリームのおかげか挿入はいつもよりだいぶスムーズだった。
少しだけ中を突く角度を変えると全身に電流が流れたかのように、イギリスは喉を反らせて身体を震わせた。
「フランスっ、…ぁ、んっ」
指で穿たれたときと同じ…、否、それ以上の快感が全身を巡り、意図せずイギリスの後孔がきゅうっと絞られる。
それは痛みによる硬直とは明らかに違っていて、いきなりきつく締め上げられたフランスも浅く息を吐いた。
「久々なのに、……くそっ」
余裕のない熱のこもった掠れた声を漏らした直後、フランスは大きく腰を動かしイギリスの中を激しく突き上げ始めた。
思い切り揺さぶられて、シーツには皺が広がり乱れていく。
熱く火照った全身は甘い疼きに飲まれていて、イギリスの肉襞はフランスが出入りする動きに合わせて蠢動する。
「あっ、あ、んっ…やだ、まだっ…」
与えられる大きすぎる快感に、イギリス自身もまた張り詰めて先走りを溢れさせていた。
零れ落ちた白濁が後孔を濡らし溶けたクリームと混ざり合い、奥まで突き入れられるたびにいやらしい水音が響いて聴覚をも侵していく。
内部を擦るフランスの熱がますます速度を増すと、イギリスの頭の中は快感を追うことでいっぱいになり何も考えられなくなっていく。
理性などとっくに溶けて、自ら腰を揺らしてフランスを求めていることにも気付かない。
「ァッ、…ひ、……はぁっ、フランス、…ッ」
声を抑えることも忘れ(覚えていてもきっとそんな余裕は残っていないだろうが)、イギリスはフランスの背に回した腕に力を込めてきつくしがみついてくる。
すっかり熱く熟れた後孔は何度も奥まで貫く熱を柔らかく受け入れた。
乱れた呼吸に混じってフランスはイギリス、好き、と囁く吐息で彼の耳元をくすぐる。
「ん、フランスっ…、…俺も、……」
続く言葉は声にならなかったけれど、代わりにイギリスの唇がフランスのそれに重ねられた。
キスをしたまま自身の熱で彼の中を抉るたびに抑えようもない快感の波が迫り上がってきて、それは自分の意志で止められるものではない。
欲望のままにさらに力強く腰を打ち付け、乱れる呼吸と早まる心音で互いにもう限界が近いことがわかる。
零れる声も酷く甘い、濡れた響きを含んでいた。
「イギリス、…」
「はッ、…ァあ…!」
ぐ…、と中の柔肉を押し上げるように最奥まで貫いた瞬間、イギリスはぶるぶると内股を微痙攣させて達し、どろりと吐き出した精を下腹に散らす。
いったばかりで白く霞む意識の中でも、すぐ後にフランスが息を詰めたのに気付いて彼は慌てて声を上げた。
「フランスッ、…中に、…」
後始末に手間がかかるのは避けたかったので中に出すなと言いたかったのに、言葉の途中で唇を塞がれイギリスの真意はフランスに正確に伝わらなかった。
「………!」
再び奥深くまで突き入れられ、フランス自身が体内で弾けると同時に熱い飛沫が腹の中にぶちまけられる。
イギリスはひくひくと身を震わせ、フランスが放った精がすべて中に注がれるのを見ていることしか出来なかった。
蕩けた肉壁にフランスの白濁が染み込んでいく生々しい感覚に、薄れかけていた意識が戻ってくる。
荒い呼吸も整わないままどうにか身を起こしたイギリスは、力の入らない手で拳を握りグーでフランスの後頭部を思い切り殴り付けた。
「痛い!」
「何で中に出すんだ、てめえは! 後始末が面倒だろうがっ!」
「え?! イギリスが中に、って言ったんじゃねえか!」
「違うっ、中に出すな、って言おうとしたんだよ! 人の話も最後まで聞かねえで、このバカ!」
顔を真っ赤にしたイギリスに何度も殴られるが、脱力しているらしい身体には力が入らないのかあまり痛くはない。
それにしても付き合い始めてしばらく経つが、ようやく可愛いことをねだるようになったもんだと思ったのに、どうも違ったらしい。
後始末は面倒なことになってしまったがもう手遅れだ。
「さっさと抜けよ、変態野郎」
素っ気なく辛辣な言葉は、少しも抱き合ったあとの余韻に浸らせてくれない。
その変態野郎にいれられて散々いい声でないてたくせに、という科白が喉まで出かかったがなんとか飲み込んだ。
「…イギリス…、自分で誘っといてその態度はねえだろー。ほんっとかわいくねえなぁ」
「っ、誘ってねえ! その髭むしるぞ!」
言いながらイギリスは短くて掴めない髭の代わりにフランスの髪を引っ張る。
やっぱりあまり痛くはなかったが、それよりも彼が動くたびにまだ中に収まったままの性器が締め付けられるので、このままだとまたおかしな気分になってしまいそうだ。
上体を起こして自身をゆっくりと中から引き抜くと、ぬるりと滑る感覚にイギリスは眉根を寄せて息を吐くが、出ていくフランス自身を惜しむようにきゅうっと締め付けられる。
「おーい、そんなに締められたら抜けねえぞ」
「う、うるせえな、わざとじゃねえよ!」
腰を引いて完全に中から引き抜くとフランスを咥え込んでいた入口はひくひくと収縮し、そこに大量に吐き出された白く濁った精液がトロリとシーツに零れ落ちた。
「あーあ、もうどろどろ……」
「てめえのせいだろうが! どうすんだよ、シーツまで汚しちまって…」
「まぁ、夜中みんなが寝た頃にこっそり風呂場で洗うしかないんじゃないの? 文句ばっか言ってんじゃねえよ、俺にいれられて気持ち良かったくせに」
ニヨニヨ笑ってからかうように言うと、イギリスは顔から火でも噴き出しそうな勢いで頬を朱に染める。
「そういうことを言うなっ、バカ!」
事後はやたらと口数が増えるのは照れ隠しの一つなのだろうが、いつもに輪をかけてかわいげのない口を利くのでついフランスもからかいたくなってしまうのだ。
フランスの手で強烈な快感を身体に教えられたイギリスは、男としての矜持を曲げてもそれを受け入れたいと思ってしまうほどの抗いがたい感覚を覚えていた。
触れる相手が自分だから余計にそう感じるのだろうに、それを素直に認めるのがしゃくでつい憎まれ口を利いてしまうのだとフランスは知っている。
それ以上からかうのはやめて、額にキスをして彼の乱れた呼吸が整うのをゆっくり待った。
「着替えのシャツ出そうか?」
「ん、……それより隣の奴らにバレてねえだろうな…」
声を抑えろと言ったのに、結局堪えられずに声を上げたことを忘れているのだろうか。
「さあな。我慢しろって言ったのに、でっかい声出したのはお前だろ。お兄さんこれでも手加減したんだぜ? そこまで面倒見れねえなぁ」
「うっ、嘘吐け! まったく余裕なんかなかったじゃねーか、てめえも!」
イギリスも人のことは言えないが、フランスだって普段より早かったのだ。
それなのに手加減したとはよく言う、と彼は眉をつり上げて声を荒げる。
「あれ、イギリスは俺を甘く見てるみたいだなぁ。ほんとに余裕がないか試してみようか?」
ぎし、とベッドを軋ませて、再び上にのしかかってきたフランスを見上げ、イギリスは己の失言に気が付いたらしい。
「明日も研修だから加減してやったのに、そんなこともわかんないのかー」
肩を押し返すイギリスを無視して、フランスは呆れたように溜息混じりに言う。
イギリスにしてみれば思い切り中に出しておいてどこをどう加減したのか説明して欲しいところなのだろうが、今この状況でそれを問うほど彼も間抜けではない。
「ふ、フランス! わかった! お前の本気は十分わかったから、…」
たどたどしく制止の言葉を紡ぐ唇は、フランスの唇で塞がれた。
フランスの手のひらが汗で湿った全身を這い回ると、イギリスの身体はあっというまに熱を帯びる。
再び身体の芯に灯った疼きはフランスの手で解放されなければ収まらないことはわかっていたし、何よりイギリス自身もこれだけでは足りないと感じていたらしい。
結局合宿初日の晩から互いの欲望をぶつけ合い、後始末まできちんと済ませてから二人が眠りについたのは、空が明るくなり始めた頃だった。
**********
翌日の起床時間は七時だ。
生徒たちはすでに全員起き出して朝食を摂るため食堂に集まっているのに、フランスとイギリスはまだ部屋から出てこない。
「にほーん、おっさん二人がまだ来てないぞ」
朝の点呼の時間を過ぎ、未だ現れる様子のない二人の姿を探しながらアメリカが日本に声を掛けた。
「フランスさんはともかく、イギリスさんまで遅れるなんて…。なにかあったんでしょうか?」
「まったくしょうがないな。俺が見てくるよ」
「ええ、お願いします」
アメリカは肩をすくめて大きな溜息を吐くと、イギリスとフランスの部屋に向かった。
イギリスが寝坊なんて本当にめずらしいな、と独り言を言いながら二人の部屋に辿り着いたアメリカは、ドンドンと大きくドアをノックして中に声を掛けた。
「おーいイギリス、フランスー、もう朝なんだぞー。もうみんな朝ご飯食べてるぞ! 研修が時間どおりに進まないと困るのはイギリスじゃないのかい」
その声とノックで目を覚ましたイギリスはすぐに起き上がろうとしたが、身体がだるくて言うことを聞いてくれない。
今何時かと慌てて枕元に置いていた携帯を開くと、すでに起床時間の七時はとっくに過ぎていてアラームが鳴ったことにも気付かなかった。
とにかく返事だけでもしようと口を開きかけたとき、二段ベッドの上に寝ていたフランスがひょい、と飛び降りてドアを開けた。
「よ、アメリカ。おはよう」
「やあ、おはようフランス。どうしたんだい? 二人揃って遅刻なんて」
「悪いな。イギリスが気分悪いって言うから、もうちょっと寝かしてやってよ」
「えっ?! 大丈夫なのかい?」
「研修初日だってのに昨日はずいぶん頑張ってたからなぁ。ま、少し寝てりゃ良くなるだろうから、心配ねえよ」
そう言ってちら、とイギリスの方に目線を向けたフランスは薄く笑みを浮かべていて、頑張ったのは練習ではなく昨夜の行為を指しているのだと気が付いてかぁっと頬が熱くなる。
これ以上勝手なことを言わせてたまるか、とイギリスはベッドの柵に掴まり身を起こすとアメリカに向かって声を掛けた。
「アメリカ、俺なら大丈夫だ。すぐに行…」
「もう少ししたら行くから、朝飯も研修も先に始めてて」
「じゃあ今日は自由研修にしてもいいんじゃないのかい? 体調悪いのに無理することないんだぞ。みんなには俺から言っておくから、イギリスはゆっくり休んでるといいよ、永遠に!」
「なんだとてめ、…!」
アメリカは上機嫌にははは、と笑って、イギリスの言葉を遮るように部屋の扉は閉められた。
心配してくれてるのかと思ったのに、そんなわけはなかったとがっかりと肩を落とす。
フランスは室内に戻って、ベッドから身を乗り出したイギリスの額を軽く人差し指で弾くと、真面目な顔と口調で言った。
「今日は大人しく寝てろよ。少し寝ただけで起きれるほどぬるいやり方した覚えはねえぞ」
「全部てめえのせいだろばか! これじゃ研修に来た意味がねえだろ…」
「誘ったのはイギリスの方じゃねえか。全部俺のせいにするのはずるいんじゃないの」
「誘ってねえよ!!!!! こうなったのは最初にお前が余計なことしたからだろうが! …さっさと寝ちまえば良かったのに」
イギリスは羞恥で上擦った声を上げ、上体だけ起こしてフランスの耳を引っ張った。
しかし結構強く引っ張っているつもりなのにまだ指に力が上手く入らないのか、フランスは痛みを感じていない平然とした様子で答える。
「なんだよ、余計なことって?」
「俺が寝てんの邪魔しただろ…」
「あぁ、そのこと。俺だって寝るつもりだったのに、イギリスが下手な狸寝入りしてるからさぁ」
フランスは言いながら耳をつねっていたイギリスの手をやんわりと解き、ベッドの端に腰掛けた。
「今日はもう自由研修になっちゃったみたいだし、俺たちは部屋でのんびりしてようぜ」
「…アメリカの奴、勝手なこと言いやがって。つーか…お前もみんなと一緒にどっか行けよ」
少しだけ不満げに顔をしかめ、こちらに目線だけ向けて言ったイギリスの肩を静かに押してベッドに寝かせてやると、フランスは彼の髪に指を絡ませながら優しい口調で言う。
「いいからもう少し寝てろって。お兄さんが一緒にいてやるから」
「何だそれ、偉そうに……そんなこと頼んでねえよ」
口では不機嫌そうに言ったが、イギリスは耳まで赤くして顔を背けた。
言うことは素直じゃないのに、こういうところは本当にかわいい反応だとフランスは小さく笑う。
「おやすみ、……イギリス」
優しい声音で囁き軽く唇を重ねると、イギリスは安堵したように穏やかな笑みを浮かべてそっと目を閉じた。
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これを書き始めた頃にちょうどカイジ(アニメ)が始まったので。<タイトル