ヤンデレのお兄さんに死ぬほど愛されて眠れないイギリスの話/05
放った精でぬるぬると滑る性器を擦り上げられ、苦しい気持ちとは逆に馴染んだフランスの手の感触に身体は熱を孕んでいった。
敏感な肉襞は体内に収まっている彼の熱が脈打つ感覚までも伝えてくれる。
無理矢理開かれた後孔はフランス自身をきつく締め付けながら、めいっぱい広げられた内部が少しでも楽になるようにと忙しなく収縮する。
フランスとのセックスは恋人として付き合い始めてから数え切れないくらいあったけれど、今までこんなに性急に貫かれたことはなかったからイギリスの身体はまだ、彼の熱をすんなり受け入れられるほどの準備が出来ていなかった。
それなのにフランスはイギリスの身体が落ち着くのも待たずに、左右に広げた両足を押さえつけたまま大きく腰を引いて抽送を始め、中を満たしていた熱が一気に引き抜かれる感覚で全身に痺れるような快感が突き抜ける。
そしてすぐにまた奥深くまでえぐるように突き入れられ、痛みと快感の混ざり合った強烈な刺激に一瞬で意識が飛びそうになった。
「あっ、ぁ、…やだっ、フランス、いやだっ」
「嘘。こんなに俺のを締め付けてるくせに……ほんっとやらしい身体してんのな」
「ばかぁっ、……そ、んなことっ…! …ぁ、あーっ…」
強く腰を打ち付けられるたびに痛みに内包された鋭い快感が全身を巡り、びくびくと身を震わせてイギリスは掠れた声でないた。
こういうとき、いつもなら優しくキスをして焦れったくなるくらいにゆっくりしてくれるのに、少しもイギリスの身体を気遣うことなくただ彼のしたいように乱暴に中を掻き回される。
今受け入れている凶暴な熱塊はフランスのものだとわかっているのに、触れている相手を確認するように固く閉じた瞳を開けると、涙の滲んだ霞む視界には妙に無表情なフランスの顔が映る。
わずかに呼気を乱して頬を上気させていたが、イギリスと視線が絡むと彼はかすかに唇を笑みの形に歪め、また同じ科白を繰り返した。
「…言えよ、……俺のことが好きだって…」
熱っぽく囁く声音も酷く冷たく感じられ、イギリスは泣きたいような気持ちになる。
イギリスが好きだという言葉を口にすることは確かに少ないけれど、フランスはちゃんと自分の気持ちを理解してくれているはずだった。
こんな行為まで許して、なんの効力もないとはいえ婚姻届にサインまでしたのに、どうしてわかってくれないのだろう。
するとイギリスから望む言葉が返らないことに苛立ったかのように、フランスは小さく舌打ちし足を押さえていた手が外された。
その手はイギリスの首に緩く巻き付けられ、指先に徐々に力が込められていく。
「っ、……ぁ、…くっ…」
フランスの指はイギリスの喉に食い込んでいき、呼吸をすることさえままならない。
「言えよ、……早く。あいしてる、って言わなきゃ………………殺す」
その言葉を聞いて、絞め付けられている喉がひくっと引き攣る。
霞む視界にぼんやりと見えるフランスは、千年の長い付き合いの中でも見たことのない酷薄な表情を浮かべていた。
何百年も前に本気で殺し合ったときだって、こんな感情のない表情はしていなかった。
…どうしてこんなばかなことを望んでしまったのだろう。
どんなに愛されていたって、自分の気持ちを信じてもらえないのは苦しいだけだ。
セックスのときに少し乱暴に酷くされることも、いつもの優しいフランスにして欲しかったのだと今さら気が付いた。
そんなことを考えていると、ふいにぽろりと涙の粒が頬を伝い、強く絞められている首よりも心の方がずっと苦しくて痛い。
結局自分はばかみたいに優しくて、恥ずかしいほど甘やかしてくれるフランスが好きなのだ。
ただひとこと、 「たまにはもっと激しくしてもいいんだぞ」 とかなんとか本人に直接言えば済んだことなのに、たったそれだけの科白さえ羞恥心が邪魔をして言えなくて、安直に奇跡の力に頼ったからこんなことになってしまった。
くそ、調子に乗りやがってこのばか、元に戻ったら覚えてやがれ、と内心で毒づくが、それを言葉にする余裕もなくゆるやかに意識が薄れていく。
身体からも力が抜けていき、フランスと繋がったまま死ぬなんてどんな羞恥プレイなんだよ、とわずかに残った意識の片隅で思ったそのとき、ふっと首を絞めていた彼の指から力が抜けた。
そのままフランスの手が首から離れるとようやく呼吸が楽になったが、一度にたくさん空気を吸ったせいか激しく咳き込んでしまう。
「おい、大丈夫か?!」
すぐに焦りの滲んだフランスの声が聞こえて、おそるおそる目を開けて彼を見上げると、情けなく眉尻を下げてこちらを見下ろしているフランスと目が合った。
「……フラン、ス…?」
「うん、……ってか、えっ、なに、なにこの状況?!」
フランスは室内を見回しここがイギリスの部屋だということには気が付いたようだが、なぜベッドでイギリスと抱き合っているのかは理解できていない様子で、動揺と焦りと戸惑いが全部混ざったような複雑な顔をしている。
まだ奥までフランス自身を咥え込んでいたためか、フランスが声を上げると振動が腹に響いた。
「あっ、で、でかい声出すなっ…ばかっ」
イギリスが小さく身を揺らすと彼は 「あ、ごめん」 と呟いて慌てて動きを止めた。
それから裸のイギリスを組み敷いて、自らの熱が根元まで深く繋がっているのを見て頬を染める。
「なんかよくわかんないけど、……きもちいい」
フランスはイギリスの身体をそっと抱き寄せ、によっと笑ってそう言った。
今自分を見つめているフランスは、さっきまでの冷たい表情をしたフランスとはまるで違う。
どうやら奇跡の力の効果が切れたらしい。
本来ならイギリスが効果を消さなければ元には戻らないのだが、やはり遠距離で使うと奇跡の力は不完全のようだ。
そのことにイギリスは全身から力が抜ける感覚がして、ほーっと安堵の息を吐く。
それでもまだ疑う気持ちは完全に晴れず、彼の頬や髪を両手でぺたぺたと触ってフランスの反応を確かめようとした。
「どうした? …ちゃんとお前のお兄さんだよ?」
苦笑して言ったフランスの反応を見るに、奇跡の力の効果が出ていた間の記憶はないようだが、イギリスが今一番欲しい言葉をくれたことがなにより嬉しかった。
やっといつものフランスに戻ったことに安心しきって、胸にはなんとも言えない感情が溢れ出し、イギリスは彼にぎゅうっとしがみついた。
「わ、なに? なんだよ、……お兄さんこの状況に全然ついていけてないんだけど…?」
「うるさいっ、……ばか!」
腕だけでなく両足までフランスの腰に巻き付けてぎゅうぎゅうと思いきりしがみつくと、まるで現状を理解できていない彼はそのらしくない反応に驚いたように瞳を見開き、しきりに首を傾げている。
ただごとではないイギリスの態度に、フランスはうろたえながらもまなじりに溜まった涙の粒を指先で拭い、そっと髪を撫でながら言った。
「…なぁ、俺家で夕食食べたあとの記憶が全然ないんだけど、……もしかして俺、イギリスに酷いことした? っていうか…してる、のかな?」
別に酒に酔っているわけでもないのになぜか突然記憶が途切れて、気が付いたら海を越えた隣国の自宅の寝室にいて、ベッドで恋人と強引に繋がってしまったであろうことは、涙を浮かべたイギリスの瞳と下肢にある感覚だけで推察できたと思うが、フランスにしてみればこの状況はまったく意味不明のはずだ。
けれども心配そうにイギリスを見つめる彼を見て、これは本当にいつものちょっとへたれで優しいフランスなのだと実感できて、彼の問いにぶるぶると首を左右に振った。
「ひどいことなんかしてねえよっ、……いいから、つづき……しろよ」
「いや、でも…」
きちんと状況を説明していないのだから当たり前だが、フランスはまだ戸惑ったようにイギリスを見つめていたので、彼の背に回した腕に力を込め肩口に顔を埋めて頬を擦り寄せる。
すると彼はイギリスの身体を抱き返し鼻先にキスをすると、ゆっくりと腰を揺らし始めた。
めずらしくねだるような言葉を口にし、甘えた態度を見せたせいか、フランスはなんだかよくわからないが言うとおりにした方がいいらしいとでも思ったようだ。
しかし今日はあまり慣らさないうちに入れられてしまったので、まだ少しだけ苦しい。
は、は、と短く荒い呼気を漏らすと、フランスは無理に動くのではなく自身の熱がイギリスの中に馴染むまで待ってくれた。
その間もまぶたや頬にキスをされて、その温かな感触にわずかに強張っていた身体も弛緩していく。
いつもどおりの優しい触れ方に安堵したことで、肌はじっとりと熱を帯びあわだった。
やがて内部の肉壁が柔らかくうごめき始めたことで、フランスがゆるやかに腰を動かし浅い抽送を繰り返すと、イギリスは身体の芯にじくじくと快感混じりの疼きが生まれるのを感じた。
「は、…ぁっ…」
「もう、いい…?」
咥え込んだ熱を絡みつくように締め付ける解けた肉襞の熱い感触に、フランスも余裕のない声を漏らす。
そうして馴染んだ熱でゆるゆると奥まで掻き回され、そのもどかしい刺激では物足りず、イギリスももう我慢の限界だった。
「いいっ、いいから、……もう、動けよっ、ばか!」
たまらず声を上げたイギリスを愛おしそうに見下ろし、薄く笑ったフランスが oui、 と短い返事を返した直後、すぐさま強く腰を打ち付けられた。
激しい律動に合わせてベッドがぎしぎしと軋み、イギリスの痩せた身体が大きく揺さぶられる。
「あ、ぁっ、…フランス、フランス…!」
何度も彼の名を呼んで縋り付くと、フランスも優しく髪を撫で、啄むようなキスを繰り返した。
彼の手のひらから感じるぬくもりにたまらなく幸せな気持ちになる。
「うん、…いい? イギリス」
フランスの問いに、イギリスは必死に頷いた。
いつものお前がいい、と言葉には出さなかったが心の中で強くそう思いながら、明日朝一の仕事があることなどすっかり忘れて、ひたすらフランスの熱を感じることに夢中になった。
**********
お互いに何度目かの熱を放ったあと、イギリスはフランスの腕に抱かれたままぐったりとベッドに身を沈ませていた。
身体は酷く疲れて、うとうととまぶたが重くなってくる。
寝る前にシャワーくらい浴びないと、と思ったとき、ふいにフランスが首を傾げて言った。
「あー……やっぱり思い出せないんだよなぁ…。なんで俺、こんな時間にイギリスんちにいるの?」
不思議そうに呟く彼に、イギリスは素っ気なく答える。
「……知るか。酔ってたんだろ」
「今日飲んでないけど?!」
「うるせえな、お前の頭は年中ワイン漬けじゃねえか。ここにいてなんか都合悪いことでもあんのかよ?!」
奇跡の力でイギリスの願望に合わせた性格に変えたせいだ、なんて本当のことが言えるわけもなく、イギリスはごまかすように怒ったような声を上げた。
本当のことを言えば、奇跡の力を使うことになった理由まで言わなければならなくなる。
一体どんな顔をして 「ベッドでもっと意地悪なプレイをして欲しかった」 などと言えというのか、否、そんなことは絶対に言えない。
半永久的にからかわれること間違いなしだ。
イギリスの言葉に、フランスはまだ納得いかない様子でまだしきりに首を傾げている。
「都合は悪くねえけど……なんか泣かせちゃってたみたいだし。普通気になるだろ」
「…………」
なぁ、お前なんか心当たりない、と続けて訊かれたが、余計なことを言うと墓穴を掘りそうな気がしてイギリスは目を閉じて口をつぐんでいると、何度訊いても答えが返らないことでここにいる理由を探ることをあきらめたのか、フランスは小さく溜息を吐いて身を起こした。
「ま…、いいけど。先シャワー借りていい?」
「……勝手にしろ」
彼がベッドから降りようとサイドテーブルに手をついたとき、かさ、とかすかな紙擦れの音がした。
サイドテーブルに置いてあったその紙を手に取ったフランスは、それを見て盛大に吹き出した。
「…? なんだよ?」
フランスの妙な反応に振り返ると、彼の手にあるものを見てイギリスの表情から一瞬でさぁっと血の気が引いた。
フランスが持っていたのは、さっき仕方なく書いた婚姻届だったのだ。
あとで処分しておこうと置いたままにしていたことを思い出し、慌てて取り返そうと手を伸ばすが、ひょい、と上に持ち上げられて届かない。
「なんだよ、なにこれ? なんで婚姻届に俺とイギリスのサインがしてあるのかなぁ?」
フランスはニヨニヨと恐ろしくだらしなくゆるんだ顔をしてからかうような口調で言った。
青ざめていたイギリスの顔は今度はかーっと真っ赤に染まる。
「うるせえっ、返せばかっ!」
「やだね。お前もほんとに素直じゃねえよなー、こんなものこっそり書くほどお兄さんと結婚したかったなら、そう言えばいいのに。しないけどな!」
「バッカじゃねーの、こっちだってお断りだ!!!」
「じゃあこれはなんだよ?」
ひらひらと目の前に婚姻届をちらつかせたフランスに、本当のことを言うに言えず言葉に詰まる。
それはてめえが無理矢理書かせたんじゃねえか、と言ってしまえるならどんなに楽だろう。
つくづく奇跡の力に頼るんじゃなかった、と後悔したが、今さらぐだぐだ言い訳をしても仕方がない。
全部自業自得なのだ。
「おーいイギリス、これどう見てもお前の字だよなー?」
鬼の首でも取ったかのように、嬉々とした口調で言うフランスをぼこぼこにしてやりたい衝動に駆られたが、イギリスは頭から毛布をかぶってまたも彼を無視した。
再び貝にでもなったようにイギリスの反応がないことに、フランスは 「なんだよー、照れ隠しか?」 とおめでたいことを言って、毛布の上からイギリスの頭を撫でる。
けれどもやっぱり反応がないことがおもしろくなかったのか、彼は溜息を吐いてシャワーを浴びるため寝室から出て行った。
フランスがいないうちに婚姻届を処分してしまおうと、イギリスはがばっと起き上がってサイドテーブルに置いてあったそれに手を伸ばす。
広げた婚姻届を破ろうとした手に力を込めるが、二人の名前が並んで書かれているのを見て、思わず手が止まった。
少し悩んだが婚姻届は破らずに小さく折りたたむと、フランスが絶対に手に取らないであろうイギリス料理のレシピ本に挟んで、それを大切そうに本棚にしまいこむ。
今思うと強引で乱暴なフランスも新鮮で悪くなかったけれど、結局自分はいつものフランスが好きなのだと改めて実感したイギリスは、わずかに頬をゆるませてベッドに潜り込んだのだった。
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タイトルの元ネタのCDは聞いてません。ものすごく怖そうでとても聞けそうにありません…!!!!!
ヤンデレはもっと研究が必要だと思いました。