「…………………………………」
丸くした瞳を瞬きする豪炎寺。
目の前には、四人の二階堂がいた。
白い夢
「監督?」
「なんだ豪炎寺」
同じ声、同じタイミングで返事をする二階堂たち。
「いったい、どうしちゃったんですか」
「俺にもわからないんだよ。豪炎寺は俺が四人だと不服か?」
「いいえ……」
「じゃあ、いいじゃないか」
「はい……」
こくんと頷く。
場所を見回せば、ここは豪炎寺の家でも二階堂の家でもない、真っ白な部屋。五人は大きな大きなベッドの上に乗っていた。衣服は普段着で状況もわからない。
「豪炎寺」
二階堂の一人が豪炎寺を抱きしめ、もう一人の二階堂も横から抱いてくる。
――――なんて呼べばいいんだろう。
戸惑う豪炎寺に、ある閃きが過ぎる。部室で暇をしていた時、半田がやっていた携帯ゲームを思い出した。同じ姿の複数の敵に、アルファベットがつけられていた。
――――今抱きしめてくれている監督は二階堂監督A、その隣の監督は二階堂監督B……。
自分の中で、二階堂ABCDと名付けることにした。
「豪炎寺、やっぱり嫌か?」
「嫌じゃないです」
落ち込む二階堂Aに豪炎寺は頬に口付ける。
「豪炎寺、俺にもくれよ」
「はい」
二階堂Bにも口付けた。
「豪炎寺」
「俺たちにも」
顔を寄せてきた二階堂CとDにも口付ける。
四人の二階堂に囲まれて見詰められ、豪炎寺は照れくさくなり俯く。
「!」
二階堂Cが豪炎寺の胸に触れた。
「心臓、凄いな」
「どれどれ」
パーカーを捲し上げられ、素肌が露出して、突起が姿を現す。
二階堂Dが片胸の突起を指で円を描いてから、優しく押してくる。
「んっ!」
ぴくんと震えて、身体を硬くする豪炎寺。
「豪炎寺、いつもより興奮してないか?」
二階堂Aが豪炎寺の耳を甘く噛み、二階堂Bが首筋に指を這わせながら頬に唇を押し付けた。
二階堂Cがジャケットを脱がし、パーカーも脱がそうとすると豪炎寺は抵抗を示す。
「や、いや、です……」
けれども顔は真っ赤で、二階堂に触れられる度に身体をひくひくと震わせている。
「こんなの、恥ずかしいです」
大好きな二階堂にたくさん愛されるのは嬉しいが、羞恥も何倍にもなった。
「なんだよ今更」
二階堂CとBが二人掛かりでパーカーを脱がし、二階堂Dがズボンの金具をカチンと外す。
豪炎寺の高ぶった自身がチャックを下ろして下着越しから主張する。
「俺にたくさん恥ずかしいところ、見せただろ?」
「ひっ」
包まれるように触れられれば、先端が濡れて下着を汚す。
二階堂AとBに腕を上げられて膝立ちにさせられ、二階堂CとDが下着の両端に手をかけた。
「やだっ、やだっ」
頭を振る豪炎寺の瞳は羞恥で薄い涙に濡れている。
「嫌だ!」
下着を下ろされ、張り詰めた性器を二階堂四人に注目された。
「いやです……!」
顔を背け、目を硬く瞑る。けれども目を閉じていても感じる視線に、自身はびりびりと淡い電流を走らせた。
「…………っ……………!」
歯も硬くかみ締めるが、既に遅い。豪炎寺は二階堂たちに見詰められる羞恥だけで、達してしまった。
下ろされて、シーツに顔を埋めて蹲る。感触で精液がズボンを濡らしてしまったのがわかった。
「ごめんな、豪炎寺」
優しく頭を撫でられ、素肌の肩も撫でられれば、身体の緊張が解れていく。
「かんとく」
頭を上げれば、二階堂Aが膝枕をしてくれた。二階堂Bも片手を捉えて、指先に口づけをしてくれる。
心地良さそうに豪炎寺が目を細め、体を横に倒せば、二階堂Cがズボンと下着、靴下も脱がして、豪炎寺をペンダント以外全裸にさせた。
「ほら、よしよし」
二階堂Aが豪炎寺を抱き上げて、身体をもたれさせるように再び膝立ちにさせる。自然と腰を引き出させる体勢にさせ、二階堂Cが双丘に触れてから、その肉をわけるように窄みを露にさせた。
豪炎寺は吃驚するが、二階堂Aに抱きしめられているせいか、声は上げなかった。
「豪炎寺の気持ちいいこと、いっぱいしような」
二階堂Aの首に腕を回し、身を委ねる豪炎寺に、二階堂Bが頭を撫でてくれる。
豪炎寺を安心させてから、二階堂Dがどこからか持ってきたローションで指を絡めて、窄みに触ってきた。二階堂CとDの二人に秘められた箇所を見られているのを感じ、豪炎寺は二階堂Aにきつくしがみつく。
「う………んっ!」
窄みは触れられれば奮え、指を抜き差しされればローションがくちゅくちゅと音を立てる。内側はきゅうきゅうと締め付けて二階堂を誘い込む。慣らされてくれば二階堂Cも指を入れてくる。二本の指は音をより大きくさせた。ただでさえ二階堂の指は太く、刺激が強い。二人掛かりでは動きにまとまりがなく、豪炎寺の内を乱した。
「……いっ………ああ……」
二階堂Aにしがみつく腕が震える。
「豪炎寺、我慢しなくて良いんだよ」
「…………、ふぅっ…………ううっ」
豪炎寺の呼吸が濡れだし、腰が揺れだす。二階堂Bも彼の背後に回って眺めれば、DとCが指二本を交互にさせて、実質四本が窄みを弄っていた。
「豪炎寺の、凄いひくついてるな」
Bも窄みに指をあて、入りやすいように拡張させる。そうして、もう片方の手が前の、豪炎寺自身を包んできた。
「また、こんなになって」
指で輪を作り、根元を押さえ込む。
「あ!」
豪炎寺は何をされたのか本能的に察した。射精を塞がれたのだ。
「あっ……!うぁ……っ!」
口をぱくぱくと開閉させて、何かを言いたそうに、けれども言い出せずに動かす。
二階堂の指は豪炎寺の内を擦り付け、かき乱す。どうしようもない快楽が思考を支配し、快感を求めようとするのに出来ないでいる。
「豪炎寺」
豪炎寺と気持ちを繋いだような甘くとろけた瞳で二階堂Aが視線を合わせた。
「して欲しいことあるんだろう?言ってみなさい。さあ」
――――修也。
唇の動きは確かにそう呼んでいた。
どくん、と豪炎寺の胸が大きく高鳴る。こんな時に呼ぶなど卑怯なのに、高鳴りは隠せない。
「修吾、さん……」
はっ、はっ、はっ…………飢えた獣のような呼吸をして、豪炎寺は二階堂の名前を呼ぶ。
「修吾さん……」
呼ぶだけで先が続かない。
「わかってるよ。意地悪はやめにする」
押さえ込んでいた指を解放させ、豪炎寺に欲望を吐き出させる。
「ん、ああっ」
窄みから指を引き抜かれ、豪炎寺は二階堂たちによって横に倒された。
「はぁ…………はぁ…………」
身体をうっすらと染めて胸を上下させて息をする豪炎寺。だんだんと二階堂が四人という状況に慣れてきたのか、一人一人の顔を眺めていく。
「豪炎寺、俺も気持ちよくさせてくれるか」
二階堂Aが座り込み問いかければ、こくんと頷いた。二階堂Aはズボンと下着をずらして自身を取り出し、自ら持って豪炎寺の口元へ持って行く。
「…………は……」
大きく口を開け、歯を立てずにぱくりと咥え込んだ。
ちゅ、ちゅく……。片手で包みながら舌と唇を使い、二階堂Aの性器を愛撫する。
「ん」
不意に二階堂Cによって、腰を引き寄せられ、喉がひくつく。
二階堂Cは豪炎寺の股を割らせて腰に固定させ、自身を窄みへ沈めていった。慣らされた窄みは快楽だけを与えて二人は一つになる。
「…………く、……ぅん……!」
揺らされて喉を鳴らす。
「豪炎寺、俺も頼むよ」
二階堂Bも性器を出して豪炎寺の空いた手に握らせた。
「ん、ぅ………ふ……」
二階堂Aの性器を握り、口で咥えて愛撫をし、もう片方の手では二階堂Bの別の性器を扱く。
下肢は二階堂Cの性器を窄みで受け入れ、突かれれば愛撫の手は止まり、甘い声が漏れる。
「あっ………!」
けれども、また咥えこみ、手を動かそうとするいじらしさに、二階堂Aは豪炎寺の髪を優しく撫でながら性器を口の奥へと沈めさせようとする。ぐちゅ、と唾液と蜜が絡み、豪炎寺が思わず目を瞑れば涙が零れた。
強引な欲情に振り回されるも豪炎寺自身は悦びを感じており、突起は淡く色付いてぷっくりと勃ち上がっている。二階堂Dはそっとそれを舌先でなぞってから口の中に含んで吸い付けた。
「……………は…………っ!!ああ」
びくんと跳ねる身体。性器も欲望が尽きること無くはちきれんばかりに高ぶっており、大きな手で包まれるなり射精をしてしまう。勢いはおさまらず、間を空けずに再び血液を集めだす。
「豪炎寺、可愛いよ」
二階堂Cが腰を掴んで、一回一回味わうように自身を打ち付ける。結合部は唾液とは別の卑猥な水音が鳴り、肉と肉がぶつかって響く。
「子供扱い、やめ、やめて、ください」
唇の隙間から、子ども扱いを嫌がる。豪炎寺にとって二階堂の“可愛い”は子供扱いにしか聞こえず、二階堂もわかって彼をからかってくる。
「そこが可愛いんだよ」
二階堂Aが自身を豪炎寺の口から引き抜き、顔に白濁の欲望を吐き出した。続いて二階堂Bが髪に吐き出す。
「んんっ……!」
ぎゅう、と構えて身体を強張らせれば、二階堂Dが豪炎寺の内に精を注ぎ込む。
「ふぁ、ああ……」
二階堂たちの精でどろどろにされて、豪炎寺の瞳は恍惚そうに細められる。けれども宴はこれでは終わらない。
「豪炎寺、次、いいかな」
二階堂Dが二階堂Cと交代し、性器を窄みにあてがう。既に二階堂Cによって精を注がれた窄みは敏感にひくつき精を零すのに、新たな精を求めていた。
「奥まで挿れような」
二階堂Aが豪炎寺の上半身を起こして背後から抱きしめ、二階堂Cと向き合わせる。BとDが足を大きく上げさせて、秘部を丸出しにさせた。服を脱がす時はあれほど恥らっていたのに、抵抗を見せるどころか二階堂にすっかり身を任せている。
「力、抜いて」
じゅ、くちゅ、と卑猥な音を立てて二階堂Dの性器が窄みに沈められていく。他の三人の二階堂が手伝い、より奥深くへ誘おうとする。
「あっ、あっ、あっ、あ、んあ、あっ……」
二階堂が豪炎寺の中へ入ってくる。これまでのどの性交よりも、二階堂が豪炎寺の深みへ侵入してくる。
二階堂の手によって腰を揺らされ、深く心地よく豪炎寺は二階堂に突かれた。声を抑えず、快楽のままに鳴けば、二階堂もより快感を示してくれて、お互いの愛を深め合う。
「かんとく、もっと」
二階堂が代わる代わる豪炎寺を抱き、残った二階堂は豪炎寺の身体で扱いて精を肌に吐き出させる。どれだけ射精したのかわからない。豪炎寺は内も外も二階堂の精で満たされていった。
「……………………ん?」
豪炎寺はうっすらと眼を開ける。
目の前には二階堂の手があって、指の一つが口内で唾液にまみれていた。
意識がはっきりしてくると、豪炎寺の身体は二階堂の精に濡れておらず、二階堂も四人ではなくて、二人衣服を着てベッドの布団に包まっているのが見えてくる。
あれは、夢だったのだ。ようやく豪炎寺は気付いた。
「!」
無意識にしゃぶってしまった二階堂の指をそっと口から離そうとするが、二階堂が起きてしまう。
「なんだ?」
寝惚けた二階堂でも、指が濡れているのに気付く。
「おしゃぶりしていたのか?赤ちゃんみたいだなあ」
子ども扱いを通り越して赤ん坊扱いをされた。しかし反論の資格もなく、後ろめたさに頬を染めて堪える。
「監督の、夢を見ていたんです」
「奇遇だな。俺も豪炎寺の夢を見ていたよ」
「え」
目を瞬かせて二階堂を見詰めた。
「俺が家でラーメン食べていると、豪炎寺が寄ってきてさ、一人二人増えて、三人の豪炎寺が俺にまとわりつくんだよ。それで俺のラーメン取ろうとして、次第に豪炎寺同士で喧嘩を始めて、ニャーニャー言い出したら猫になって。変な夢だよ」
「俺の夢の中の監督も増えていました」
「へえ、増えた俺はどうしていたんだ?」
「…………え」
言葉を詰まらせる豪炎寺。まさか四人の二階堂とセックスしていたなど言えない。
それもこれも元はといえば、こうして泊まりに来て二人きりなのに、今夜は何もないからなのだ。気恥ずかしさ故の責任転嫁か、二階堂に不満を抱きだす。
「監督がいけないんです」
「なんだよいきなり」
拗ねたように背を向ける豪炎寺。子供っぽい仕草で自己嫌悪が過ぎるが止まらない。
「なんなんだって」
後ろから二階堂が豪炎寺を抱きしめる。
すると、豪炎寺が二階堂の手に自分の手を絡めてきた。
その仕草に、彼の言いたいことはだいたい察してしまう。
「ん。あんまりしすぎるのも、お前に負担かけるって思っていたんだけどな」
衣服の中に手を入れると豪炎寺はひくんと震えるが、抵抗は見えない。
二階堂は慣れた手つきで布団の中で豪炎寺の衣服を肌蹴させていき、向き直らせる。
「ごめんなさい」
豪炎寺は呟いて、二階堂の首に腕を回す。
「違うだろ」
「好き、です」
「うん」
ちゅ。唇と唇で音を立てさせ、深夜にも関わらずベッドは軋みだした。
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