※分岐型ssです。選択を誤ると最初に戻ります。



ナイトメア



 ポタッ。
 落ちてきた雫に二階堂は傾きがちだった首を起こす。
「おっと、いかんいかん」
 頭を振るい、はーっと息を吐く。目の前には揺らぐ湯と自分の裸の足が見えた。つい風呂の心地良さに眠りかけてしまった。
「眠ってしまったら、あいつを待たせてしまうからなぁ」
 “あいつ”とは今夜家に泊まりに来た元生徒・豪炎寺だ。
 二階堂と豪炎寺は監督と生徒という壁を越えて深い仲になり、都合の合う機会に一人暮らしの二階堂の家で二人きりの時間を過ごしていた。
 豪炎寺は二階堂より先に風呂に入り、寝室で眠っている。けれども、起きていてくれているのを二階堂は察していた。


 豪炎寺は二階堂の大きなワイシャツを借りて、脱衣所から出てきた。
 彼が二階堂のワイシャツを借りるのは、密やかな"セックスをしよう"という合図である。
 二階堂のワイシャツは豪炎寺には大きく、尻まですっぽり隠れるが、あの中にはなにも着ていない。下着さえも。すぐに情事が交わせるように、豪炎寺なりの誘いなのだ。
「……………………………」
 まだ眠気の残る意識の中、二階堂は豪炎寺の淫らな姿を妄想が浮かんでくる。
 初めて豪炎寺を抱くまでに至る葛藤は悩みに悩んで、今も尚これで良かったのかと後悔する事があった。けれども一度抱いてしまえば、体格差があるのに二人の相性はとても良く、深みに嵌っていく。二階堂は豪炎寺を抱くのがとても気持ちがいいし、豪炎寺は幼くして肉欲の快楽を知ってしまったせいか欲望が我慢できずに情事に夢中になっている節がある。普段は大人しく落ち着いているが、いざ情事になれば乱れて貪欲に求めるスキモノと化す――――。
 豪炎寺はきっと、二階堂を待っているであろう。そして二階堂もまた豪炎寺を求めている。
 ――――今夜はどう、豪炎寺を抱こうか。
 思いを過ぎらせると、胸の奥がどきんと高鳴り、どろりとした欲情が疼きだす。
 次の日は二人とも休みなので、たっぷりと甘い時間は用意されている。そのせいだろうか、今夜はなぜか制御が利かなそうな予感がした。
 豪炎寺に負担や不安をかけさせまいとする"たが"が緩む。意地悪をしてやりたくなったり、滅茶苦茶にしてやりたくなってくる。痛みや恐怖さえも超えた快楽に善がる豪炎寺の姿を想像するだけで、ぞくぞくした。
 まるで悪魔が、剥き出しの欲情を晒せと囁きかけるように、二階堂を誘惑してくる。

 >激しく豪炎寺を抱きたい
 >いっそ、焦らしてみようか
 >豪炎寺に酷いことなんて出来ない










【激しく豪炎寺を抱きたい】

 風呂から上がって寝巻きに着替えた二階堂が寝室に入ると、ベッドの布団が膨らんでいる。
 そっと布団を持ち上げて隣に眠れば、豪炎寺の瞼がひくりと震えた。
 二階堂は豪炎寺が目を開けてくる前に、豪炎寺に口付ける。
「…………んっ!」
 二階堂の目の前で、豪炎寺の目が丸く見開かれた。先制をしかけるつもりが二階堂に先を取られ、驚いているのだろう。
「ん…………う、ん!あぅ」
 舌を挿入させ、くちゅくちゅと豪炎寺の口内を犯しながら、無防備な手首を捉えてシーツに押し付け覆い被さるように組み敷いた。
 唇を解放させ、二階堂は威圧的に豪炎寺を包み込み、見下ろす。
「はぁ…………はぁ………」
 豪炎寺は口の端に唾液を伝わせ、のぼせたように肌をほんのりと上気させていた。
 二階堂が捉えた手首を強めに握れば、びくんと肩を震わせて反応する。
「っ」
 空いた手で、豪炎寺のワイシャツを裂くように引っ張った。
 ぷちぷち、とボタンが数個はじけ飛ぶ。首にかけられたペンダントが薄暗い空間に鈍く煌く。
 目をぎゅうと瞑り、開いた目元を濡らす豪炎寺。
 瞳は不安そうに二階堂を伺ってくるが、彼の大きな手が首筋から胸の間を撫でてくると、色に染まって熱い息を吐く。
「…………あ……っ………」
 片胸に手を置き、親指の腹で色付いた突起を押し付けて弄れば、甘い声で愛おしい名を呼ぶ。
「あっ………!かんと、く……!」
「驚いたか?」
 こくん、と頷く豪炎寺。
「怖かった、か?」
「少し。でも、今はないです」
「相変わらず、お前は正直だな」
 口元を綻ばせ、目線を下肢へ向ければシャツ越しにテントを張り、染みを作っていた。
「俺がいきなりしたから、勃っちゃったのか?」
「吃驚して、どきどき、しました」
 股を閉じ、はしたない主張を隠そうとするが、シャツをめくられて暴かれてしまう。
「二階堂監督……いきなり……どうしたん、ですか?」
「そういう日も、あるよ」
 手を離し、手首を開放させれば、豪炎寺は二階堂の顔を引き寄せるように首元へ腕を伸ばす。
「豪炎寺を、滅茶苦茶にしてくなるような、さ」
 低く囁きかけると、豪炎寺の顔が真っ赤に染まった。
「か、監督は、いつもお優しいですから、吃驚しますが、そ、そういう、監督、も。いいと、思います」
 視線をそらし、ぼそぼそと話す豪炎寺。
 そんな彼に不意打ちを仕掛けるように、二階堂は大きく股を開かせた。
「ひあ!?」
「豪炎寺。失言だったな。俺は調子に乗るぞ」
 豪炎寺の足を腰に絡ませ、なにかを言いかける豪炎寺の唇を口付けで塞ぐ。


 二階堂は乱暴な手つきで豪炎寺を愛撫し、性器を強引に突きたてて掻き乱した。
 ベッドはぎしぎしと軋むものの、豪炎寺の甘く激しい喘ぎでかき消されそうになる。
 いつもとは異なる過激な夜に、二人は酔いしれた。

 










【いっそ、焦らしてみようか】

 風呂から上がって寝巻きに着替えた二階堂が寝室に入ると、ベッドの布団が膨らんでいる。
 そっと布団を持ち上げて隣に眠れば、豪炎寺の瞼がひくりと震えた。
 二階堂は知らぬ振りで目を瞑って、寝息を立ててみせる。
 すると、豪炎寺は身を起こして二階堂の顔を怪訝そうに見詰めだした。それでも起きる気配を見せない二階堂に、肩を揺らして起こそうとしてくる。
「二階堂、監督?あの……監督……」
「どうした豪炎寺?」
 眼を開き、とぼけてみせた。
 肉体関係を持っても“セックスしよう”などとは直接言えず、豪炎寺は言葉を濁しながら意思を伝えようとしてくる。
「あの、監督」
 纏う二階堂のシャツを引っ張り、これを着ている意味を示してくる。
「うん?」
「…………………その、かんとく」
「んー?どうしたんだ?言ってくれよ」
 豪炎寺は俯き、瞳を彷徨わせた。シャツの裾を掴み、言葉に迷う。
「……………………………」
 黙りこんでしまう豪炎寺。
 そろそろ意地悪をやめた方が良さそうに思えてくるが、さらに悪戯をしたくなる欲求も疼きだす。
「豪炎寺、言えないのか……?」
「……………………………」
「用がないなら寝るぞ」
 目を瞑る二階堂に“あ!”と声を上げる豪炎寺。
「だ、抱いて、ください」
 早口で告げた。
「抱く?」
「セックス……です……」
「セックス、好きなのか?」
 声色を低め、色を含んで囁きかける。
「はい……」
「どうされるのが好きなんだ?」
「二階堂監督に触れられたり、抱き締めてもらうのが、好きです」
 己を抱き締め、もどかしそうに答える。下肢をもぞつかせ"あと"と言いかけて口を閉ざした。
「かん、とく」
 やや拗ねたように、けれども瞳を潤ませて、ねだるように二階堂の上着を引く。

 >そろそろ意地悪はやめよう
 >もっと焦らそう










【豪炎寺に酷いことなんて出来ない】

 風呂から上がって寝巻きに着替えた二階堂が寝室に入ると、ベッドの布団が膨らんでいる。
 そっと布団を持ち上げて隣に眠れば、豪炎寺の瞼がひくりと震えた。
 ゆっくりと開かれる瞳に、二階堂は目を細めて微笑む。
「おはよう、豪炎寺」
 とぼけて見せる二階堂に、豪炎寺は顔を寄せて啄ばむような口付けを落とす。
「本当に、眠りかけました」
 豪炎寺の小さな手が二階堂の頬を包み込み、さらなる口付けを施す。こそばゆさに二階堂はぶるりと身震いするものの、胸の内はぞくぞくとしたときめきに駆られている。
「くすぐったいよ」
 二階堂が豪炎寺の腰へ、シャツの隙間に入り込ませて回した。やや下へ下ろしていけば尻の丸みに到達する。
「あ」
 豪炎寺の動きが停止し、尻の肉をふにふにと揉みこめば二階堂に抱きついてくる。
「あっ………あうっ………」
 胸と胸が合わさり、びくびくとした震えが伝わってきた。
「可愛いなぁ」
 髪の中へ手を入れ、頭を撫でる。
「その言い方、嫌だって言ったじゃないですか」
 豪炎寺は子ども扱いを嫌がり"可愛い"という表現には過敏になった。
 ムッとさせて見上げてきた豪炎寺の額に、二階堂は口付けを落とす。
「可愛いは、駄目なのかぁ?本当の事なのになぁ?」
 尻を揉む手を両手にして悪戯をする。
「やっ…………やめ、てくださいっ」
 身もだえする豪炎寺の股は自然と開いていき、二階堂は尻から太ももを捉え、さらに大きく開かせた。
 豪炎寺は羞恥に身を焦がして視線をそらすが、その奥に悦びを感じているのを二階堂は見通している。
「嫌なのかぁ?可愛い顔を向けてくれよ」
「俺を、からかわないでください」
「すまんすまん」
 二階堂が詫びると豪炎寺は瞳を向けてきて、こくんと頷く。
 合図を受けたように、口付けを交わす二人――――。


 ゆったりとベッドが軋む音の中に、切なくも甘い息遣いが響いていた。

 










【そろそろ意地悪はやめよう】

「豪炎寺」
 二階堂は豪炎寺をぎゅうと抱き締め、詫びた。
「意地悪、ごめんな」
「……ホント、ですよ」
 肩口に顔を摺り寄せ、素足を絡めてくる。
「じゃあ豪炎寺のしたい事、しようか。お洋服を脱ぎなさい」
「はい」
 ぷちぷちぷち。ワイシャツのボタンを外し、脱いで全裸になる豪炎寺。
「いっぱい触ろうなぁ」
 手で豪炎寺の素肌を摩り、愛撫を施していく。優しくもいやらしい手つきに、豪炎寺は身もだえをしたがるが、二階堂が逃してくれない。囚われいじられるのを望むように、豪炎寺は甘く喘いだ。
「んっ………ああ、………んあっ………」
 ぴくぴくと震えて善がる愛らしい姿に、二階堂は口付けを施し、舌と舌を絡めた。
 くちゅくちゅと唾液の絡んだとろける接吻に酔うと、豪炎寺は頭の位置を下げて、二階堂の性器を取り出してくる。
「うん…………くぅぅ」
 己の性器と擦り合わせ、腰を揺らしだす。
 体格の異なる二人は、性器の大きさも差があり、豪炎寺の幼いそれは自らが攻めたのに二階堂のそれに押され気味にぷるぷる震えて勃ち上がっていた。
「豪炎寺は我慢できるかな?」
 茶化すように擦り合わせる手に二階堂が重ねてきて、強く擦り付ける。
「ひぅっ!!」
 豪炎寺は堪らずに性器から白濁を散らし、勢いと量に二人の手や腹をどろどろにさせた。
 二階堂は隙を与えず、豪炎寺の手首を掴んで後ろを向かせ尻の割れ目に性器を突きつける。硬く熱い先端が窄みに触れれば、物欲しそうにひくつく。
「相当なスキモノだなぁ」
「ちが、いますっ。監督、だけです」
 もう片方の手で腰を掴み、窄みを挑発するように軽いノックを繰り返す。豪炎寺はその度にびくびく奮える。
「欲しい、って言ってごらん?」
「欲しいです、くださいっ!監督ので俺に、して!ください!」
 豪炎寺は羞恥を捨てて、涙を零しながら哀願した。
「でもこのままだと入らないし、痛いだろう?」
 二階堂は自らを扱き、精を豪炎寺の尻にかける。
「ひああっ?」
 吃驚して目を丸くさせた豪炎寺に、追い討ちをかけるように白濁を潤滑油代わりに窄みへ指を押し付けた。ぬるぬると入り込む感触に、豪炎寺はシーツを噛んで耐えようとする。
「ん、くっ…………!ふぅっ!」
 息をくぐもらせる中、豪炎寺は指の侵入を受け入れ、貫かれる時を待った。

 










【もっと焦らそう】

「豪炎寺……随分としたいようだが、あいにく俺は今夜眠くてな」
 ――――絶対に嘘だ。豪炎寺は当然悟っていた。
「二階堂監督……いい加減に、してください……。俺、そろそろ、怒りますよ」
「怒ると言われてもなぁ……」
 豪炎寺の困惑――ささやかな怒り――恥じらい――それらは二階堂の欲情をくすぐり、胸の奥にある悪魔が淫猥で下劣な策を囁きだす。
「じゃあ豪炎寺――――」
 二階堂は身を起こし、シーツの上で座る体勢を取った。
「俺をその気にしてみたらどうだ?」
 自らズボンをまさぐり、性器を取り出す。
 豪炎寺はすぐさま察した。二階堂は“しゃぶれ”と言っているのだと――――。
「今夜の監督、おかしい……ですよ……?」
 二階堂の性器を凝視しながら言う。
 性器への愛撫は、二階堂を気持ち良くさせようと豪炎寺が自らしたがる行為であった。しかし普段の二階堂は嫌がり、はしたないと叱っていたのだ。二階堂からの発言に、豪炎寺は矛盾を感じずにはいられない。
「良いんですか……?」
「ああいいよ。しゃぶってごらん」
「で、では」
 豪炎寺は四つんばいで二階堂の股に近付き、頭を下げて腰を上げて尻を突き上げ、真っ赤な舌を性器につけた。


 ぴちゃ。
 唇特有の音が鳴り、唾液の絡む音が響く。
「は………………」
 熱い息がかかった。
「ん、はぁ」
 まずは性器の先端に舌をつけてからの口付け、次に裏筋へ口付けを落としていく。
 舌で舐め上げ、咥えようとするものの大きくて入らない。
 唾液でべとべとにしてから、指で扱き出す。
「んっ…………ん……、ふぅ」
 むくむくと質量を増していく二階堂の性器に頬を高揚させ、目頭を熱くさせて涙を滲ませた。
 先端からにじみ出る蜜を舌で掬おうとするが、口からは唾液をとろとろと流して体液が混ざり合っている。
「か、んとく」
 はっ……はっ……。飢えた獣のように息衝きながら、顔を上げて二階堂を見上げた。
「俺、うまく出来ています、か?」
 涙を零し、問いかける。
「……………………………」
 二階堂は唇を動かさずに生唾を飲んだ。


 この表情が、たまらなくそそる。


 豪炎寺の口での愛撫の心地良さは、表情や仕草によるものが大半を占めていた。
 彼自身のテクニックは上手くはない。寧ろ、下手であった。
 自覚はしているらしく、一生懸命に舐る姿が健気で征服欲をくすぐった。
 ――――さて、どう返事をしようか。
 舌なめずりをして、二階堂は回答を選択する。

 >上手だよ、と褒めてやる
 >下手だと伝える
 >答えず、髪を掴んで咥えさせる










【上手だよ、と褒めてやる】

 二階堂は手を伸ばし、豪炎寺の頭を撫でた。
「上手だよ、豪炎寺」
「本当、ですか?」
「ああ、本当だよ。気持ちいい。もっとしてくれないか?」
 疑う豪炎寺であったが“もっとしてくれ”という二階堂の願いに、嬉しそうに微笑む。
「は、はいっ」
 豪炎寺は大きく口を開け、二階堂の性器を咥える。
「むぅ……!」
 大きさと身を焦がす昂りに、涙がさらにぼろぼろと零れだした。
「おい、無理するなよ?」
「は………いしょうふ、でふ……」
 顔を埋め、頑張って二階堂の性器をしゃぶった。
 じゅるじゅる、ぐぷぐぷと音を立たせながら、唾液を流してシーツに染みを作らせる。
「ぐ…………んぅっ……!」
「く……」
 たまらない刺激に二階堂は身体をびくつかせ、口を押さえて声を殺す。
 高まる射精感に豪炎寺を離させようと肩を揺らす。
「ご、豪炎寺……だめ、だ。離れなさい……!」
「ふぅ……!ん………!………っ……ん!」
 動いてくれない豪炎寺に、二階堂はとうとう達してしまった。
「あ………っ……!ああ………!!」
 二階堂の性器から放たれる白濁は、豪炎寺の口内に注がれる。
「!!!」
 豪炎寺は口を離し、苦しそうに咳き込んで白濁を吐き出す。
「げほっ…………ごほ………!ひぅっ………あぐ……」
「豪炎寺、大丈夫か……?俺が気持ち良くたって、お前が苦しむのはいけないんだぞ」
 背をさすって慰める二階堂。豪炎寺の顔は涙と唾液と白濁でくしゃくしゃになっていた。
「く、苦しくなんか、ない……です」
 二階堂に抱きかかえられ、ティッシュで顔を拭いてもらいながら豪炎寺は強がる。
 彼の下肢はしっとりと湿っており、太ももから白濁を流していた。
「お前もお楽しみだったのは、わかるけどな……」
 ワイシャツの裾をめくり、射精して萎えた豪炎寺の性器を晒す。
「っ!」
 真っ赤になって股を閉じる豪炎寺を、二階堂は思い切り抱き締めた。

 










【下手だと伝える】

「豪炎寺」
 豪炎寺の瞳をじっと見据え、二階堂は放った。
「正直に言えば、下手、だ」
 目の前で豪炎寺の表情がありありとショックへ変わり行く。
「ごめん………なさ……い」
 詫びて頭を下げようとした豪炎寺の顎を捉え、親指を口内に入れた。
「あ?」
「もっと、口を大きく開けてごらん」
「あ…………」
 限界まで口を開けようとする豪炎寺。
 真っ赤な舌が真っ暗な口内に浮き上がる。より赤々と燃えているようだった。
「そのままで、咥えてごらん」
 自ら性器を持ち、豪炎寺の唇へ向ける。
「は……………む」
 先端を銜え込まされる豪炎寺。
 二階堂に直接下手と告げられ、凹んだ雰囲気が漂う。
「そこから、吸ってみてくれないか」
 豪炎寺は二階堂を見上げたまま、先端を吸う。
 ちゅる、と音が立った。
「そう、そうやって吸って、ここの裏筋を舐めてくれ」
 瞼を瞑って返事をして、豪炎寺は二階堂に従う。
 ちゅる、ちゅぱ。高い水音を立てて、豪炎寺は二階堂を気持ち良くさせようと舐る行為に集中する。
「うん、そうだ。上手い……ぞ」
 二階堂の息遣いが乱れだし、心地良さそうに目を細めて髪を撫でた。
「本当、ですか?」
 蜜を、唇をすぼめて吸いながら問う豪炎寺。
「ああ、本当だよ。そろそろ出そうだから、口を離してくれ」
「は………い」
 大人しく口を離す豪炎寺。そうして目を瞑り、ねだった。
「二階堂監督、俺に……ご褒美……ください」
 二階堂は豪炎寺の顔の前に性器を向け、白濁を放つ。
「ん!」
 二人の声が重なった。
 ぱしゃ、と豪炎寺の顔は二階堂の白濁でどろどろになる。
「あ………りがとう……ございます……」
 瞼を開ける豪炎寺の瞳は恍惚に染まっていた。

 










【答えず、髪を掴んで咥えさせる】

 二階堂の手が豪炎寺へ伸びる――――。
 彼の瞳は自然と手を追っていた。
「……あっ?」
 手が髪を掴むと目を丸くさせ、強引に唇に性器を押し付けられて口内に咥えこまされれば、さらに目は見開かれる。
「あっ!!」
 ずちゅ。酷い音がした。
 二階堂は豪炎寺の頭を動かして、口内で性器を扱かせた。
 豪炎寺は声が出せず、喉奥に性器が届く嘔吐感に堪えながら、歯を立てまいとする。
「………っ!っ!……っ!!……っ!」
「うっ!くぅ……ふぅっ……!」
 やや腰を浮かせ、揺らして二階堂は呻く。
「ひぐっ!」
 豪炎寺の苦しそうな音にも貸さず、夢中で揺らす。
 快楽は急速に駆け抜け、二階堂は達した。
 彼の精は豪炎寺の口内へ容赦なく注がれる。
「ぐ!むぐぅっ!」
 豪炎寺はたまらず口を離すが、頬を膨らませ唇を震わせながらも硬く閉ざしていた。
「…………う………うぅ………ううぅぅ……」
 目をぎゅうと瞑り、肩を竦ませ、顎を上へ向ける。
 ごくんっ!
 喉がひくつき、口内の精を飲み込んだ。
「ふ……ぅ……」
 眼を開ければ、二階堂が優しく抱き締める。
「ごめん、な。今夜は、お前に……酷い事をしたい気持ちが治まらない」
「かん……とく……」
 豪炎寺はやんわりと二階堂の腕から逃れ、彼の性器に付着した白濁を指で掬って舌で舐め取った。
「お掃除、しますね」
 二階堂の股に顔を埋め、残りを拭い取る。
「あの、二階堂監督……」
 顔を恐る恐る上げて口元の唾液を拭い、話しかけた。
「酷い事って、どんな、事、ですか?」
「豪炎寺に意地悪したり……苦しい思いをさせる事だよ」
 頬を撫でながら、ゆっくりと語りかける。
「今夜の監督は……確かに、変です。けど」
 膝立ちになり、自らワイシャツの裾をめくりあげた。
「俺はそれでも、好き、みたいです」
 昂った己の性器を見せ付ける。
「こっちにおいで、豪炎寺」
「はい」
 豪炎寺は近付くと向きを変えられて後ろから座り込み、背中から抱きすくめられた。


「豪炎寺、俺は調子に乗るぞ?」
 二階堂は豪炎寺の性器に手で触れ、指先で裏筋をなぞる。
 ぴく、と性器とワイシャツを持つ手が震えた。
 性器はぱんぱんに膨張し、今にも射精寸前。豪炎寺は我慢出来なさそうに、じっと己の性器を凝視して身体を強張らせていた。

 >豪炎寺に扱かせる
 >焦らしながら抜いてやる










【豪炎寺に扱かせる】

「豪炎寺、早く出したいか」
「は…………」
「出したいなら、自分でしてみなさい」
 豪炎寺が返事をする前に放つ。
 彼は薄く唇を開いたまま、言葉を詰まらせていた。
「出来るだろう?」
 ワイシャツを掴む豪炎寺の手を解かせ、代わりに捲し上げてやる。
「いつもしている事をしてごらん。俺が見ているから」
「し、しかし……」
 困惑し、泣き出しそうな顔になる豪炎寺。
「出来ないのか?オカズがここにいるのに?」
「かんとくの、ばか」
 唇を尖らせる豪炎寺。
 豪炎寺が自慰で使うのは主に二階堂が多かった。いつかの日、二階堂に自慰の最中を見られてしまった事があり、内緒にして欲しいと約束をしたのだ。
「内緒って、言ったじゃないですか」
「誰にも話してないよ。俺たちだけの秘密だ。あの時は豪炎寺が俺をどうオナニーに使うのか聞かないでおいたが、やはり知っておきたいしな」
「監督の裸や……抱き締めてもらう、妄想をするくらいです」
「それだけ、か?」
 低められた甘い囁きに豪炎寺はびくっと肩を揺らす。
「それなら、今日はお前を抱っこするだけで終わるぞ」
 ――――いいのか?潜めて追い討ちをかける。
 もう一方の手で豪炎寺の太ももを撫で、股の間へ這わせていき、窄みに指の腹を当てた。
「ここ、は欲しくないのか?」
「欲しい、です……」
「どんな風に、欲しい?」
「監督に優しく抱き締めてもらいながらされて、けど、時には思い切り……」
「思い切り?」
「無理やり、監督に犯されるような……」
 ごめんなさい。呟くように豪炎寺は謝った。
「酷いな、俺はさすがにそんな真似はしないぞ」
「ですから、ごめんなさい。監督が絶対にしないからこそ、考えてしまって……」
「それでいいから、してごらん?」
「……………………………」
 後ろめたい気持ちを曝け出してしまえば、豪炎寺は二階堂の話を聞かねばならなくなる。
 恐る恐る己の性器に手で触れ、扱き出した。


 くちゅ。
 自ら立たせる水音は、二階堂にしてもらうよりも淫らで恥ずかしい。
 普段は一人きりでする秘められた行為を、二階堂に見られながら行う。
「う…………はぅ」
 くちっ、くちっ。
 手の動きは緩やかであるが、豪炎寺は興奮に息を荒くさせる。
 一人でするよりも興奮するのだ。恥ずかしくてたまらないのに、興奮が治まらないのだ。
 頭の中では二階堂の視線を意識しながら、この後どう責められてしまうのかを考えていた。体位は四つんばいで、後ろから激しく何度も何度も突かれて、獣のように鳴く己の姿が過ぎる。たぶん、一回射精させただけでは許してもらえない。容赦なく責められてしまう。
「ひぁっ………かんと、く」
 感情が昂り、目元に涙をためて二階堂を求める。
 期待に窄みがきゅうきゅうと疼いた。二階堂に抱かれてからというもの、豪炎寺のそこは二階堂の侵入が大好物になってしまった。
「かんとく……出ちゃ、います……」
 口をぱくぱくとさせながら、二階堂に射精の許しを請う。
「ああ、出してごらん。見ていてあげるから」
「ああっ………はぁああっ……!」
 びゅっ!豪炎寺の精がはじけた。
 羞恥に身を焦がしながら、見られる快感に酔いしれて白濁を吐き出す。
「ん………はぁ」
「こんなに可愛いと、お前を一人でさせられないな」
 身体を包み込むように抱き、豪炎寺の額に口付けを落とす二階堂。
 その下では窄みに指をくにくにと出し入れさせて弄っていた。
 尻の割れ目まで伝った白濁でしっとりと湿っており、緩やかに呑み込んでくれる。
「豪炎寺。俺の前で、一人で出来たなら、慣らすのも一人で出来るよな?」
「や…………監督、もう………勘弁してください……」
 断ろうとする豪炎寺だが、二階堂は彼を寝かせて膝裏を上げさせ、窄みを丸出しにさせた。
「や、嫌、です……!」
「出来るだろう」
 足を下ろし、片手を取って窄みへ触れさせる。
「!」
 窄みの欲しがるひくつき様に、身体の動きを一瞬止めた。
「凄いだろう?豪炎寺はこうやっていつも俺を欲しがっているんだ」
「こ、わい、です」
 自分でも気付かないどろどろした欲情に直接触るような感覚に、豪炎寺は恐怖する。
「俺がいるから。ほら、指に力を入れて挿れてみるんだ」
「ひ」
 第一関節を挿れると、ぞくりと背筋に寒気が通った。
「身体の力は抜いておくんだぞ。痛くないから、気持ち良いって、知っているだろう?」
「……………ぅ……ふぅ…」
 豪炎寺は硬い動きでありながらも己の窄みを解しだした。


 窄みは豪炎寺の指が入り込むと広がり、抜くときゅうと締まる。
 その出し入れを眺める二階堂は、性交時を想像して興奮を覚えていた。豪炎寺も二階堂に見られる興奮に慣れてきたのか指の動きも早まり、恍惚とした表情で喘ぐ。
 既に窄みには三本の指が入り込んでいた。見せ付けるようにぐちゅぐちゅと音を立たせ、二階堂を誘い込む。
「二階堂監督……いかが、ですか?」
「うん……そろそろ、いいかな」
 二階堂は窄みを指で押し広げ、具合を確かめる。
「では、してください……」
 豪炎寺が股を開き、二階堂がしたように自らの窄みを広げて見せた。
「ああ」
 二階堂は豪炎寺の顔の横に手をつき、征服するように覆い被さる。
 二階堂自身も焦らされており、豪炎寺を貫きたい欲求は限界まで高められていた。

 >ゆっくり抱く
 >激しく抱く








【焦らしながら抜いてやる】

「随分と、元気なものだなぁ」
 指の先で裏筋を行ったり来たりさせてくすぐる。
「!」
 豪炎寺は震えるだけでなにも言わない。
 二階堂は羞恥を煽るように性器をじろじろと眺め、そっと手で包み込む。
 は――――っと、豪炎寺が息を吐いた。
「もう、出ちゃうか?」
 こくん、と頷く豪炎寺に、性器の根元を掴む。
「まだ早いぞ」
「あ、あぅ」
 豪炎寺はシャツから手を離し、二階堂の性器を捉える手に指を這わせた。
「も、もう、駄目です。出させて、ください」
「言ったろう?今夜は酷い事、したいって」
「お、お、おね、お願い、です」
 豪炎寺の射精感はもうかなり限界のようで余裕が無い。
 危うさを抱きながらも、二階堂は最後に一押しをする。
「お願い、か。じゃあ、この手を離すかわりに、豪炎寺は俺の言う事をなんでも聞くってのはどうだ?」
「なん……でも?」
「そうだよ……豪炎寺にいやらしい事や、恥ずかしい事をたくさんするぞ」
「たく……さん」
 豪炎寺は期待と不安にぞくぞくして身震いした。
 いやらしい事も、恥ずかしい事も、思春期であり二階堂に求められたい豪炎寺には欲情を暴走させる。
「奴隷、ですか?」
「奴隷とは人聞きが悪いな。けど、そうだな……エッチな、奴隷だ」
「俺、なります。監督が俺に何をしてくるのか、俺、知りたいし、やってみたい、です」
 こういう時の豪炎寺は素直すぎて、壊してしまわないか脆さに恐怖してしまいそうになる。
「なら、決まり、だな」
 二階堂が手を解放させると、豪炎寺の性器は勢い良く白濁をはじけさせた。
「はあ………あ、あっ…………」
 びゅ、びゅ、と射精をすれば、とろけた表情で脱力して二階堂にもたれかかる。
「いっぱい出したな。気持ち良かっただろう」
 抱き締めてくれる二階堂の腕に己の手を絡め、豪炎寺は摺り寄せるように頷く。
「さあ豪炎寺、約束だ」
「はい…………」
 最初の願いを聞き逃すまいと、豪炎寺は大人しく二階堂の言葉を待つ。
「奴隷は、服を着ちゃ駄目だ」
「はい…………」
 豪炎寺は頬をほんのりと染め、ワイシャツのボタンに手をかけて外しだす。
 ぷち、ぷち、と外していくのを、二人はこれから行われる過激な悪戯に胸を高鳴らせて待っていた。

 










【ゆっくり抱く】

「豪炎寺、挿れるぞ」
 豪炎寺の腰を捉え、自らの腰を静める。
 窄みが指とは異なる質量の二階堂の性器を受け入れた。
「あっ………!」
 待ち焦がれた性器の挿入に、豪炎寺の身体は快楽で意思とは無関係にびくりと震える。
 二階堂は味わうように一回一回ゆっくりと、そして深く貫く。
「あっ…!…………あっ!……あっ!」
 突かれる度に豪炎寺は甘く鳴く。
「か、んとくっ!いつも、と、ちがう………!」
「たまには、いいだろ………?」
「これ、らめ、ですっ…………変に、なぅ………!」
 奥底まで届く感触は脳まで揺さぶり、とろけさせた。
「ひぁ、ぅ!ひぁっ!」
 豪炎寺は聞いた事のない声で喘ぐ。シーツをやんわりと掴み、ぐずぐずのワイシャツはボタンが数個外れて胸の突起をチラつかせている。そっと摘まんでやれば身体を跳ねさせた。
「あ!」
 性器を奥深く沈めたまま、両胸を指先で転がしてやる。
「い、あ!ああ!」
 ぴくぴくと震えて善がり、きつく摘まんでやると、窄みをきゅうきゅうと締め付けてきた。
 突起をぴんと勃たせ、じんじんと充血させて"やめてください"と哀願する。
「嫌なのかぁ〜」
 からかうような口ぶりで背を屈め、胸に顔を押し付けさせた。
 豪炎寺は胸元の布を噛み、二階堂の射精に耐える。
 白濁のどくどくと注がれる感触に、幸福が満たされゆく。
 射精が終わると二階堂は性器を引き抜こうとするが、豪炎寺は腰に足を絡めて離すまいとする。
「まだ、駄目です」
「豪炎寺…………」
「抜いたら、出ちゃい、ます」
 けれども二階堂は性器を引き抜いてしまった。ずるりと抜かれ、ぽっかりと開いた窄みから、とぷとぷ精が逆流して流れ出す。すぐにきゅうと締まるが、こぽりと零れていく。
「ああ…………」
「また、すればいいだろ?」
 豪炎寺を抱き寄せ、頭を撫でてやる。
 豪炎寺が腰を浮かせれば、二人は唇を這わせながら口付けに酔いしれた。
 性器も擦り合わせ、再び高め合う。


「あ………ああ……っ」
 二階堂が豪炎寺の腰を撫でながら二度目の挿入を試みる。ぴったりとパズルが組み合うように、しっくりと収まる。二人の体の相性は抜群だった。
「はっ………!」
 二階堂の上に豪炎寺が座る形で、下から上へ突き上げられる。
 今度は豪炎寺が感じる様を間近で晒された。
 重心でより奥深く二階堂の性器は豪炎寺を貫く。
「あっ………んあっ………ひぃん……!」
 離れまいと豪炎寺はしがみついて揺らされる。
 いくら耐えようとしても涙と唾液が零れてしまい、豪炎寺ははしたない気持ちになるが、この体位だと二階堂の感じる様もよく見えた。
「監督、とってもすけべな顔してる」
「お前だって、凄いぞ。くしゃくしゃにして」
 くすくすと笑い合う二人であるが、息遣いはすぐに淫らなものに変わっていく。
 貫き、貫かれるだけ二人は愛し合い、夜は更けていった。

 >エピローグ










【激しく抱く】

「豪炎寺、挿れるぞ」
 豪炎寺の腰を捉え、自らの腰を静める。
 窄みが指とは異なる質量の二階堂の性器を受け入れた。
「ああ………っ!ふああああっ!」
 待ち焦がれた性器の挿入に、豪炎寺の身体は快楽で意思とは無関係にびくびくと震える。
「あっ!!ああっ!あっ、あっ」
「ん、くぅっ。ふぅ」
 容赦のない激しい突きに豪炎寺はシーツを掴んで身体が動かないように留めようとした。
 膝裏を上げられ、がくがくと揺らされる。性交時特有の肉のぶつかる音に、耳にまで快楽が流れ込んでくる。
「かん、と…………かん、とく、かんとく!」
 二階堂の性器は豪炎寺の内でいっぱいになり、愛される悦びもいっぱいになる。
「ひぁっ!ああ!」
 体位を変えられ、四つんばいで後ろから突かれるが、肘が立たなくなって上半身がぺしゃりと低められた。腰だけを上げられた体勢でずぷずぷと二階堂の性器が突きつけてくる。
「うう、あ!」
 ぶるりと震える二階堂。豪炎寺の内へ白濁が注がれた。受け止めきれなかった分を結合部から溢れ出し、ずるりと引き抜けばさらに流れ出す。
「もっと……」
 甘えておねだりする豪炎寺。
 今夜は色々と酷い事をしてしまったというのに貪欲に求めてくる。二階堂は敵わないとドギマギと胸を高鳴らせた。一度吐き出して萎えた欲望はすぐさま蘇り、豪炎寺のおねだりをたっぷりと聞いてやった。

 










【エピローグ】

 カーテンの隙間から朝日が差し込む。
「……………ん…………」
 二階堂は喉を鳴らし、重い瞼を開けた。
「朝か」
 肩に重心を感じ、見てみれば豪炎寺が眠っている。
 くったりと二階堂にもたれるように寝息を立てていた。
 寝顔を眺める二階堂は、昨夜の情事が脳裏に過ぎりだす。
 随分と、かなり酷かったと自覚していた。夜が明ければ、なぜあんな事をしてしまったのか自分の行動が理解できない。まるで悪魔に操作されたかのように、豪炎寺が嫌がる事ばかりをしてしまったような気がする。全て自分のせいなのだが、後悔に胸が痛む。
 きっと豪炎寺は疲れてしまっているのだろう。
「……………………………」
 豪炎寺が瞼を震わせ、開いて二階堂を見詰めた。
「二階堂監督、おはようございます」
「おはよう豪炎寺。その……身体は大丈夫か?」
「身体………?はい、昨日は凄かったですね……」
 目を細めて微笑む豪炎寺。
「すまない……昨日はどうかしていたみたいだ……」
「俺、昨日言いましたよ、それでも好きですって。ですから、後から謝られるのは嫌です」
 二階堂が豪炎寺に向き合うように身体を横に向け、抱き寄せる。
「けど、本当に大丈夫だったか?無理やり、お前が嫌がる事ばかりをさせてしまった」
「二階堂監督…………それを言うなら……」
 豪炎寺は二階堂の胸に顔を埋め、くぐもった声で言う。
「嫌な事も監督とすると、嫌じゃなくなります。気持ち良くなります。責任、取ってください」
 どくん。二階堂の胸が大きな高鳴る。音はきっと豪炎寺の耳に届いているだろう。
 夜はまだ遠い。けれども訪れてしまったのなら、また今夜も悪魔の誘いがやって来る予感に魂が震えた。

 END