一之瀬、土門、木野は西垣を呼んだ四人で海へ遊びに行った。



夏が来た!



 眩しい太陽、青い空、青い海――――天候に恵まれた最高の海日和だった。
「いやっほー!」
 歓声を上げて三人の少年たちは砂浜に飛び出て、その後ろを紅一点の少女はついていく。
「泳ぐぞーっ!」
 日の光を下に履いた黒い水着が吸収して暑い。一之瀬は着ていたTシャツを脱いで素肌を露にする。続いて土門と西垣もTシャツを脱いだ。
「いい天気で良かったね」
 木野もシャツを脱ぐ。白い水着が眩しく反射した。
 すると、少年たちは口笛を吹いて彼女を絶賛しだす。
「アキ、可愛いね」
「アキ、似合ってるよ」
「アキ、色っぽいよ」
「もーっ、からかわないでよ」
 木野はほんのり頬を染めて脱いだTシャツを抱き締めた。
 この彼女の照れた顔が一番の見物であると少年たちは熟知している。


 一之瀬と西垣が海に入って水の掛け合いっこをする姿を、土門が砂浜に座って笑いながら見守っていた。
 後ろから気配がするもの、じっと耐えて待つ振りをすれば冷えたペットボトルを頬にあてられる。
「はいどうぞ」
 あてた張本人――木野の声で彼女が微笑んでいると察し、振り返る土門も微笑んで見せた。
「どーぞ」
 軽く自分の横の砂を払って平らにし、木野を招く。
「有難う」
 隣に木野が腰掛ける。四人以外の人はまばらで、一之瀬と西垣のはしゃぐ声が目立つ音だった。
「とっても久しぶりだね、四人でこうするの。まるでここが日本じゃないみたい」
「はは、そうだな。アキには海が良く似合うね」
「ねえそれ、秋にも冬にも春だって言ったよ」
 どれを信じたら良いの。木野は相変わらずの土門に苦い笑みを浮かべる。
「そうだったっけ?俺、忘れっぽいから」
「その割には私たちの誕生日、ちゃーんと覚えていてくれるよね」
「数字に強いんだよ」
「あら良い事聞いた。今度、部の会計をお願いしてもらおうかな」
 土門を見て、試すような視線で悪戯っぽく首を傾げる木野。
「一本取られた」
 対して土門は“ははっ”と口で笑って眉を下げた。


「土門〜、アキ〜」
 一之瀬と西垣がずぶ濡れの姿で二人に手を振る。
「二人で何話してるんだ〜?」
「うん?土門くんが今度、雷門サッカー部の会計係になりたいって」
 にっこりと放つ木野に、さすがに土門はギョッとして、慌てたように両手を振るう。
「いや、それは……!」
「土門まさか立候補?やっるー」
「頑張れよ〜」
 ニヤニヤと口元を緩める一之瀬と西垣。
「アキ〜、勘弁してくれって」
「残念だな。アイスで許してあげる」
「降伏します」
 彼女にはかなわない。二本も三本を取られてしまった気がする土門であった。







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