いつから
いつからだろう。
“違う”なんて意識をし始めたのか。
たぶん、あの時――ダークエンペラーズの一件からかなとは思うけれど、気の迷いって思い直そうとした。
けれど、思っても思ってもどうにもならない。
あいつが、一之瀬が、気になる。
今まで気にならなかった様々な事が気になってくる。
あいつの事が、好きかも、しれない。
前から好きは好きだけれど、その好きとは、ちょっと違う。ちょっと、やばい感じの好き。
うん。俺、やばいんだよ。おかしい。変だ。
なにやってんのって自分でも思うし、わかってる。
一之瀬は友達だし、一個上の兄貴みたいなもんでもあるし、それに男だし。一之瀬を好きな女の子だっているし、アキだって女の子だし。
なに考えてるんだろう。気持ち悪い。ありえないし。
でもどうしよう。頭の中は一之瀬の事でいっぱいになってる。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
あれから、よく会うようになったし。
あの一件から、一之瀬と会うようになった。
いつもは土門とアキと四人で会っていたけれど、二人きりで会う機会が多くなっていった。
一之瀬といるととても楽しい。あっという間に時間が過ぎる。
お前を見ていると、胸がどきどきしてニヤニヤしてしまう。
俺、やばすぎるよ。
こないだなんて、一之瀬が缶ジュース飲んでる首筋が気になって。
エロいなって。いけない気持ちになってる。
本格的にやばいよな。
それにこんな気持ち、絶対言えないし。これからも、一之瀬と、土門と、アキと仲良くしていきたいし。
ありがちな、関係壊したくないって奴。まさか相手が一之瀬だなんてね。
人生、本当にわかんないや。
おかしいな。
ふと、そう思うようになった。
あいつの、西垣の事を考える気持ちが、以前とは違う。
あいつが、エイリア学園に襲われて入院してから、心配でたまらなくなった。
あいつ、西垣と土門とアキだけには、俺と同じ目に遭って欲しくない。
西垣が落ち込んでいるの、よくわかっていた。だからどうしても事故経験がある俺が励ましてやりたかった。俺の手で、どうしても。
この違和感は、その時の気持ちは西垣が退院しても、エイリア学園がなくなっても続いている感覚というか。
なあ、おかしいよな。
誰かに聞いて、確かめてもらいたい。でも聞けない。わかってる、俺が一番わかってる。
西垣は俺にとって弟みたいなものだっていうと、本人に怒られる。
だから言わないようにしているけれど、俺の意識は変わらない。そう思っていたのに。
俺はいつからか西垣と二人で会いたいと思うようになっていた。二人で会うのは俺がたぶんわかっていたから。
俺はいつからか西垣といると、可愛がりたい気持ちになった。口に出したらきっと怒られるだろう。
傍にいて存在を感じたい。西垣が笑うと俺も笑いたくなる。
俺は西垣が好きなんだろうなって思う。
まるで他人事みたいに、そう思う。
なあ好きなんだよな。
それって、そういう事だよな。
きっと、そうだって。
自分に何度も気持ちを確かめようとしている。
気の迷いさ、なんて冷めた話は無しで。
言えばいいのに。やってみろよ。
まるで他人事みたいに、そう思う。
言ってなにがしたいんだ、なんて冷めた話は無しで。
見えない意識の手が、俺の背中を押そうとしている。
大きく手を広げて、じっと構えている。
背中で感じて、緊張している。
たぶん押されたら、俺は前のめりになって西垣にもたれて、二人は倒れて、そのままどうにかなる。
あー、エロい事考えたね、俺。
俺は倒れまいとじっと足に重心をかけた。
それは理性でも友情でもなんでもない。
ただのプライドなんだろう。
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