円堂×風丸
霧隠×風丸×霧隠[ゲーム設定アニメ性格]
二階堂×豪炎寺[豪炎寺視点]







円堂×風丸

 昼休み。出会うなり円堂は風丸に言って来た。
「風丸。夢にお前が出てきたんだ」
「はぁ……」
 反応に困る。風丸はなんとなく前髪を弄った。
「授業中、眠っていた俺を……」
 授業中かよ。円堂の振る話題はときどき突拍子の無いものがある。いつもの事なので、風丸は突っ込みたい気持ちを抑えて耳を傾けた。
「木野や鬼道たちが起こそうとするんだよ。でも俺は全然起きなくって。とうとう風丸が“円堂!なにやってるんだ!”って叱るんだよ。そこで俺は飛び起きたんだ。効果テキメンだったよ」
「はぁ」
 俺はそんなに怒ると怖いのだろうか。風丸はいい気持ちがしない。
「俺の目覚まし時計、録音機能があるんだ。風丸の声を入れてもらおうかな」
「やだよ。そんな怒り役」
「今度、サッカーの試合が深夜にやるからさ、朝ヤバそうなんだ」
「自分で起きろ」
「ちぇっ。厳しいの」
 円堂は肩を竦めた。あれで厳しいのだろうか。風丸は己の言動が不安になってくる。
「円堂。俺って怖いか?」
「いや?優しいよ?」
「ホント?」
「う〜ん……」
「どっちだよ」
「嘘嘘。優しいよ」
「………………………円堂」
「やっぱ怖い」
「……………………………」
 風丸がジト目になり、円堂は震える素振りをした。


 そんな彼らの元へ、偶然壁山がやってくる。
「キャプテーン。風丸さーん」
「ん?」
 振り返る二人。張り付いたような笑顔を浮かべていた。
「なんか怖いっすー!」
 逃げ出された。
「風丸。俺も仲間入りだ」
「嬉しくねーよっ」
 肩に手を置く円堂に、風丸は逆手突っ込みをする。
 通りかかった二人組みの女生徒がくすくすと笑う。急に気恥ずかしくなり、円堂と風丸は黙り込んだ。







霧隠×風丸×霧隠

 この日は温かかった。天気も良く、窓から差し込む日差しが気持ち良い。
「あふ」
 窓際の席に座る風丸は欠伸をかみ殺し、眠たそうに半眼になって授業を受けていた。
 夢と現実の狭間を擦れ擦れで泳ぎながら、終了のチャイムが鳴る。


 眠気を醒ましに気分転換で席を立とうとする風丸だが、強い力が両肩に圧し掛かった。
「風丸!」
 耳元で聞こえた大きな声に、思わず目を瞑る。
 この声はよーく覚えていた。つい先日、雷門サッカー部が引き抜いた戦国伊賀島の霧隠だ。ちなみに二つ隣のクラスだったはず。忍者は神出鬼没であった。
「重い。離れろ」
 肩を竦めて離させ、不機嫌そうに振り向く風丸。対して霧隠はニタニタと嫌な笑いを浮かべていた。
「なんだその顔は」
「だってオレ、見ちゃったんだ」
「何を」
「風丸が居眠りしかけていたの。いっけないんだー」
 霧隠の声はよく通り、クラスメイトが数人振り返るのが見える。風丸の頬が上気した。
「忍者なら少しは声を控えないか」
「だってオレ、選手としてここに来たし」
 ああ言えばこう言う。口が減らない。
「だいたい、なんで知ってるんだよ」
「そりゃあ覗いたからさ」
 一歩下がり、顔の前で手を望遠鏡のようにしてみせる霧隠。忍者の言う事なので冗談めいたものでも信憑性が高い。
「俺なんか覗いたってつまらないだろ」
「詰まらないか、面白いかはオレの勝手」
「……………………………」
 もはや言葉も無い。風丸はただただ呆れるばかりだ。
「仕方ないな。風丸も俺の事を覗いて良いぜ」
「霧隠、俺にそんな趣味は無い」
 ぽつりと返すと、霧隠は声を上げて笑い出す。
「何が可笑しいんだ」
「今日やっとオレの名前、呼んでくれた」
「え」
 反応する間もなく、霧隠は教室を出て行ってしまった。
 いつもああやって現れて、いざ気を向けると逃げてしまう。
「変な奴」
 出てきた声は、思ったよりも明るかった。







二階堂×豪炎寺

 貴方は春の陽気のように優しい。
 貴方は夏の日差しのように暑い。
 貴方は秋の紅葉のように変わる。
 貴方は冬の風のように冷たい。


 そんな貴方を一言で表すのなら“好き”だと、俺は答える。
 どんな季節も一つの変わり目でしかないのなら、貴方の様々な面も貴方を映す一面でしかない。


「……………………………」
 豪炎寺は素早く瞬きをして我に返る。視線の先には教科書の文字だらけの詰まらないページが映っていた。耳には教師の声と、チョークで書く音、生徒たちの書き取る音が入り込む。今は社会の授業の真っ只中。ノートに黒板の内容を書き取ろうとペンを取るが、指の間から滑って落ちる。
 こんな集中できない姿をクラスメイトに見られれば“フットボールフロンティアに向けての練習で忙しいんでしょ”と思われるだろう。確かに全国行きが決定して練習にも気合が入る頃だが、不意にこうして上の空になるのは別の理由があった。
 この先、雷門が勝ち続ければ、かつて在籍していた木戸川清修にあたるだろう事だ。
 豪炎寺はサッカーごと木戸川との思い出を捨てて、雷門へ来た。正直、気まずい。
 しかし、もしかしたら“あの人”に会えるのかもしれないと嬉しく思う自分がいる。浮き沈みする心に、気分が悪くなった。
 全て、捨ててきたつもりだったのに。サッカーを再び始めると、あの時の想いも蘇ってくるのを感じていた。虫が良すぎると己を叱りつけるが、気持ちはどうも上手いようにいかない。


 サッカーが好きだったように。
 あの人の事もまだ好きなのだ。


 豪炎寺は思う。
 もしまた出会うのなら、きっと笑顔で迎えてくれるのだろうと。
 俺は優しさに甘えて、温もりに浸り、唇だけが凍えるのだろう。
 そんな自分を想像すると反吐が出る。
 木戸川には多くの言葉を置いてきた。溜め込んで、整理のつかない、都合の悪いものばかりを。
 昔の仲間たちは恨んでいるだろう。許されるつもりはない。罵倒は受けるつもりだ。
 いっそ、あの人にも嫌われれば良いのにと思う時がある。そうされた方が、吹っ切れるような気がしたからだ。
「………っ…………………」
 喉から音が漏れて、豪炎寺は咳払いをして誤魔化す。
 思うだけで、本当は無理だし、立ち直れないだろう。深く傷付く自分を想像して、心の奥底に沈殿した愛に気付く。


 二階堂監督。


 唇だけを薄く動かし、心の中で呼んだ。


 貴方をまだ好きでいる事を、どうか許さないでください。
 もう、貴方の元には俺は戻らないのだから。


 頬杖を突くような動作で頬に手をあて、指で片目を隠す。
 たまたま窓を見るついでに豪炎寺を見たクラスメイトは、なんだか彼の横顔が泣いているように感じた。







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