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円堂×風丸
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二階堂×豪炎寺
円堂&風丸[ストライカーズ]
大会に向けて特訓に励む円堂率いるメンバー。
この日、キャプテン円堂は風丸と一緒に"タイヤパンチ"を行うことになった。
吊るされたタイヤを前に二人並んで風丸が言う。
「円堂、頑張ろうぜ。二人でやれば競争心も燃えて効率が上がるかもしれない」
「おう、そうだな」
円堂はグローブをはめ、気合十分でタイヤを押し、遠心力で迫ってきたところへ狙いを定め――――。
「おらあああああああああっ!!!」
ドゴッ!円堂の隣で風丸が咆哮し、タイヤを力の限り拳で撃つ。
タイヤは見事に吹っ飛んでロープさえも切れて、遠くへ飛んでいった。
「よしっ。もう一丁!」
風丸は軽くステップを踏んでジャブをし、身体を温めながら仲間たちがタイヤの二つ目を固定するのを待つ。
「風丸さーん、準備整ったでやんす」
「そうか!ありがとな!じゃあ行くぜ!!どらあああああっ!!!」
ガスッ!ドカッ!バシッ!
風丸はテンポよく打撃を食らわせ、タイヤはドーナッツのようにポンポン遠くへと飛んで行った。
隣の円堂はというと、ぽかんと口を開けて硬直してしまい、我に返るとポスポスとタイヤを殴る。とても風丸のようにタイヤが飛ぶわけもない。
「円堂どうだ調子は?」
風丸が汗の雫を飛ばしながら円堂を見た。
「あ、うん。大丈夫」
こくこくと頷く円堂。
「なぁ風丸、爆裂パンチとか覚える気ないか?」
「いやー、俺は駄目だよ。全然腕力がないし、お前とは比べ物にならないよ」
「そうかな、才能あると思うんだけど」
「いやー、無理だって無理」
会話を交わしながら、風丸はタイヤを飛ばしていく。
こいつとは殴り合いの喧嘩はしない。そう心に誓った円堂であった。
二階堂×豪炎寺[ストライカーズ]
ある日の夜。豪炎寺が憂鬱そうな顔で二階堂の家をたずねた。
「こんばんは、監督」
彼の胸にはピンクの兎のぬいぐるみが抱かれている。
「やあ豪炎寺。よく来たな、入りなさい。可愛い兎だなぁ、まさか俺に?なんてな」
「嫌、ですか?」
玄関に上がった豪炎寺の瞳が二階堂を捉えた。
「嫌とかじゃないが……いきなりどうしたんだ」
「…………………………」
俯く豪炎寺。悩みを持つと閉じこもりやすい彼の癖だった。
二階堂は豪炎寺をソファに座らせ、飲み物を用意して隣に座る。
「さて、どうしたんだ」
「実は」
豪炎寺は重い口を開いた。
なんでもピンクの兎は妹の夕香への土産で買ったらしい。
しかし、先週夕香が自宅に友人を招いた際、兄に買ってもらったぬいぐるみに随分驚かれて恥ずかしい思いをしたとかで、今まであげたぬいぐるみは返され、ピンクの兎さえも受け取ってもらえなかったという。
「…………………………」
豪炎寺の背にはどんよりとした陰鬱な空気が漂っている。妹を大切にしてきた彼にはさぞかしショックだっただろう。
「ピンクのクマとカメは一旦、部室に置かせてもらいました。けど、ピンクの兎までとはいかないと思って」
「その、豪炎寺。妹さんも年頃なんだよ」
「…………………………」
二階堂の慰めに豪炎寺は黙り込む。豪炎寺も豪炎寺で年頃なのだ。
扱いに困りながら、二階堂は豪炎寺の抱くピンクの兎の頭を撫でる。
「豪炎寺の選ぶぬいぐるみは可愛いと思うよ。俺に可愛いって言われても嬉しくないだろうが」
「そんな、事ないです。少し自分のセンスに落ち込んでいたものですから」
顔を上げる豪炎寺。ぎこちなくも口元を綻ばせる。
「妹さんの機嫌が直るまで、俺が預かってもいいか」
「は、はいっ」
「今夜は豪炎寺も預からなきゃな」
なんてな。照れくささに一言付け足して、二階堂はピンクの兎のぬいぐるみと豪炎寺をまとめて抱き締めた。
「兎は淋しいと死んじゃうって言うよな」
「監督は俺になにを言わせようとしているんです?」
二人は顔を見合わせて、くすりと微笑んだ。
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