円堂×風丸[ゲーム設定]
立向居×春奈
尾刈斗×木戸川
二階堂×豪炎寺[微スカ]






 静寂の中に息衝くように聞こえる波の音。
 押しては引きを繰り返す。



円堂×風丸[ゲーム設定]



 イナズマジャパンがライオコット島で過ごす宿舎は二人部屋だ。
 裏手には海があり、見晴らしにばらつきがある事から、二日おきにくじ引きで部屋割りが決まる。
「ふーぅ」
 夜。風呂から上がった円堂は浴衣姿で部屋に戻った。そうしてすぐに窓の方へと向かって景色を眺める。今回は海がよく見える部屋にあたった。海を眺めるだけで気持ちが安いらいでいく。
 ぱたん。後ろで音がする。相部屋の人間が入ってきたのだ。
「円堂」
「うん」
 呼ぶ声に、声だけで応える。
「まだ起きているのか?」
「いや、もう寝るよ」
「明かり消すぞ」
「うん」
 カチ、と音がして部屋が暗くなる。唯一の明かりは窓から差し込む月明かりのみになる。
「海、見ているのか」
「うん」
「隣、いい?」
「うん」
 円堂が返事をすると、隣で相部屋の人間――――風丸が膝を折って座った。
 下ろされ、洗われた艶やかな髪から、ふわりとシャンプーの香りが鼻孔をくすぐる。
「海か……キャラバンで全国を回っていた頃は海に行かなかったな。お前は沖縄に行ったんだっけ?」
「ああ。綺麗だったよ。あの時も、夜は波を見てた」
「そっか……」
「あの時、俺はどんな気持ちだったんだろう」
「忘れたのか?」
「少し、な」
 円堂は喉で笑い、濡れた前髪を指で避ける。
「だってさ、もう考えたくないよ。お前たちがいないなんて。今思うと、俺は無茶していたみたいだ」
「お前は無茶しすぎだよ。俺たちがいつもハラハラしているの知らないだろ」
 風丸がくすりと笑い、円堂を見た。彼がきょとんとする顔を予想して。


 しかし、外れた。
「そんな事ない」
 見詰め返す円堂が、風丸にぐっと顔を近づけて放つ。
「風丸たちの気持ち知ってる。だから俺、応えたいんだ」
「そっか。そうだよな。それでこそ俺たちのキャプテン。さて、じゃあ寝ようか」
「ああ」
 二人は立ち上がり、それぞれの布団の中に潜る。
「な、風丸」
 円堂が布団から顔を出して言う。
「ちょっとだけ、近付けてもいい?」
「なんだよ。ホームシックか?」
「そうかも。俺、案外寂しがり屋なんだぞ」
「ええ?」
 意外な発言に驚く。円堂はもし寂しい時、我慢してしまう性格だと風丸は思っていたからだ。
 布団同士を寄せ合って、くっつけてからもう一度潜る。
「少し、吃驚だ。円堂の口から、さ。その、変だとは思っていないから」
「良かった。初めてなんだ、言うの」
「え?」
 またも意外な発言に、風丸は動揺しすぎて頬が上気した。
「そんなに驚くなよ〜」
 円堂が布団で口を隠し、もごもごと声をくぐもらせる。
「ごめん」
「謝らなくていいって。今日、風丸と一緒の部屋で嬉しいよ。じゃ、おやすみ」
 背を向けるなり、寝息が聞こえた。早いものである。
 一方、風丸は妙に身体が温まってしまって、寝付けなくなってしまった。
「円堂お前。ちょっと、ずるいぞ」
 風丸も背を向け、ぎゅうと瞼を瞑る。
 波の音は心安らぐのに、円堂の寝息は心を乱した。







立向居×春奈



 自分だけの必殺技を編み出そうとする立向居の特訓で、意気投合した一年生たちの絆は深まった。
 彼らは一年生。そして学生であり、勉強もサッカーと同じくらい頑張らなくてはならない。
「一年生たちで、勉強会しようでやんす」
 ある日の練習後、栗松の提案に皆が乗った。
 勉強会は壁山の部屋に、栗松、木暮、立向居、音無が集まる。
「こんな大人数は初めてっスね」
「なにから始める?」
 机に筆記用具を開いて、壁山と立向居は周りの反応を伺う。
「まずどこまで進んでいるか、でやんすか?」
 勉強は監督の久遠からドリルを受け取り、各自こなすという形式なので個人にバラつきが生じた。
「えーと、じゃあまず皆の成績から、どう補おうか決めましょう」
「!!?」
 唐突な音無の発言に、男子たちに衝撃が走る。
「せ、成績ってなんだよお!」
 真っ先に木暮が悲鳴を上げた。
「たまたま勉強会の話を冬花さんに言ったら、久遠監督が来て、せっかくだからって皆の成績グラフを出力してもらったのよ」
「なんだって!」
 驚愕の事実に衝撃のニ波が訪れた。
「プライバシー侵害でやんす!」
「皆の事を知らなきゃ進歩は出来ないでしょ。えっと、そう言う栗松くんは成績上がってるじゃない。壁山くんも上がってるし、木暮くんはキープかな……私はちょっと上がってる……」
 ホッと安堵の息を吐く、壁山、栗松、木暮。呼ばれていない立向居は姿勢を正しながらも、もじもじ揺れる。
「おっ……俺、は?」
「立向居くんは……下がり気味ね。練習に根詰めたからじゃないかな」
「立向居、わかんなかったら俺に聞くでやんす」
 栗松が胸を張って立向居の肩に手を置く。
「栗松は風丸さんに教わったから成績上がったんじゃないっすか?」
 横槍を入れる壁山。
「壁山だって、基山さんに教わってたでやんすっ」
「木暮くんはお兄ちゃんが勉強教えていたわね。私は木野先輩が教えてくれるんだ」
「………………………………」
 皆の話を聞く立向居は青ざめていくのを感じていた。
 皆、わからない事があったら上級生から教わっていたのだ。
「……立向居くん?」
 黙りこんでしまった立向居に音無が問いかける。
「俺、一人でやってた……」
「気にすんなよ立向居。こいつらは一人じゃ出来ないから教えてもらってただけだって。うしし」
「こいつらじゃなくて、俺たち、でやんす」
 訂正させる栗松。
「立向居くん、皆でやればわかんない事もわかるから、一緒にやろうよ」
「うん!」
 微笑みかける音無に、立向居も笑顔で応えた。


 こうして五人は共に教え合いながら問題を解いていく。
 落ち込み気味だった立向居も打ち解けていく内に元気を取り戻していった。
 勉強会は順調だったのだが、終了間近に難題に当たってしまう。
「うん、ここは調べたり聞いた方が良さそうね」
「印つけておくでやんす」
 栗松は付箋を取り出してページに印をつけた。
「俺にも付けて欲しいっす」
「俺もー」
「持って来いでやんす……」
 ジト目になりながら、壁山と木暮の分も付箋をつける栗松。
「あの……俺も……」
 言いかけた立向居だが、丁度なくなってしまう。そんな彼に音無が助け舟を出す。
「私のあげるね」
 音無の付箋はいかにも女の子らしい淡い色合いをしていた。紙切れ一つだけで、立向居のドリルは花が添えられたように色付く。
「有り難う、音無さん」
「可愛いっすね。音無さんも女の子なんすねー」
 またもや横槍を入れる壁山。
「あったりまえじゃない」
 ムッとしてみせる音無だが、立向居の持ち物に彼女の付箋は浮いており、気恥ずかしさがこみ上げた。
「じ、じゃあ、これで今日はおしまいね。成績アップ目指そう。おー」
 誤魔化すように音無は話をまとめて、逸早く荷物を持って部屋を出て行ってしまう。残った男子たちも一言二言言葉を交わして解散した。
「じゃあなー」
「ばいばいでやんすー」
 立向居が自室へ戻ろうとした時、廊下の横で音無を見つける。彼女の前には円堂、染岡、風丸がおり、帰る途中で出会ったのだと察した。
「へえ、一年で勉強会ねえ」
 染岡の声が立向居まで届き、なんとなくどんな話をしているのかそっと聞き耳を立てる。
「ええ、そうなんです。それでどうしてもわからない所があって〜」
「わかんない?どこが。見せてみろよ」
 円堂が言い、音無がドリルの付箋のついたページを開いた。
「あ〜、ここはさ」
「円堂が教えている!」
「円堂、出来たのか!」
 外野の風丸と染岡が乾いた拍手を送る。
「失礼な奴らだなぁ。俺だってこれでも二年生なんだから一年生の問題くらい……」
「わあ、有り難うございます。円堂キャプテン」
 礼を言う音無に“二年なら出来て当然の問題だからな”と茶々を入れる染岡に頷く風丸と、四人は盛り上がっていた。
 聞いていた立向居の荷物を持っていた指先は冷えて感覚を失い行く。
 二年生なら出来て当然なのかもしれない。わかっている事なのに、胸が痛んだ。
 下が向けなかった。音無の付けてくれた付箋が見えてしまいそうだったからだ。今は、今だけは見たくはなかった。







尾刈斗×木戸川



 尾刈斗中部室。そこでは監督の地木流がホワイトボードの前に立ち、部員に向けて手を叩く。
「さあ皆さん静粛に。今日はお知らせがあります」
 しん、と私語をやめる部員に彼は放つ。
「木戸川清修さんとの合同合宿が決まりましたー!」
 地木流が拍手をすると部員も拍手をし、口笛を吹く。異様な盛り上がり方だ。
 なぜなら、彼らは合同合宿が大好きだった。
「フヒヒヒ……カモが盛りだくさん……ウヒヒ」
 さっそく気色の悪い野望に胸を躍らせる者が現れた。
 初々しい初心者を怖がらせるのが楽しみで仕方がないのだ。
「監督、場所はどこなんですか?」
「まだ決まってません。自然がいっぱいある所にしようとは話をしていますよ。皆さんは何かご希望ありますか?」
 ばばばっ。複数の挙手が上がった。
「お寺がいっぱいある所がいいです!」
「湖とか最高です」
「樹海!樹海!!樹海!!!」
 地木流は候補をホワイトボードに記していく。
「参考にさせてもらいますね……と、他には?」
「ここでも良いんじゃないでしょうか。ここでも」
 ふふふ……。怪しげな笑みに同調するように、他の部員も薄暗い笑みに喉を鳴らす。
「肝試しじゃないんですから、ほどほどに可愛がってやってくださいよ」
 苦笑を浮かべながらも、地木流自身、企んだ笑みを浮かべている。
「ミステリーサークルに連れて行ってやりたいなぁ」
「一緒にわら人形作って木に打ち付けたい」
「解体ごっこしたいなぁ」
 合同合宿をしたら一緒に何がしたいかを話し合う部員たちを地木流は微笑ましく眺めていた。


 一方、木戸川清修では二階堂が暗い影を背負って部員の前に出る。
「えー、皆。今日は知らせたい事があるんだ」
「辛気臭い顔ですね、人妻でも孕ませて子供でも出来たんですか」
 部員の痛軽いジョークを流し、二階堂は放つ。
「尾刈斗中との合同合宿が決まった」
「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」
 しん、と静まり、一斉放射並みの一斉突っ込みが炸裂した。
「はあっ!?」
「……先生も、そう思う」
 背を向け、壁にゴツッと頭をぶつける。
「ちょ!マジでありえないし!」
「断ってくださいよ!ロクでなし!」
「俺ら生贄ですか!」
 容赦ない非難に、ぎぎぎ……と二階堂は振り返り、諦めてくれと言わんばかりに頷いた。
「お前らの気持ちはよくわかる。先生だって断りたかったよ。でもそこは事情というものがあってだな」
「そんなの知らないじゃん!」
「一緒に、地獄に落ちよう、な…………」
 ははは……。乾いた二階堂の笑みに部員たちは頭を抱えた。


 こうして、楽しい楽しい最悪の合同合宿が始まる――――。







二階堂×豪炎寺



 豪炎寺が木戸川に在学していた、ある暑い日の出来事。
 一人残って特訓し、部室隣に設置されたシャワー室で汗を流していた。
 シャワーは個室であり、運動での熱と元からの気温の暑さもあり、冷たい水で身体を流す。その時、不意な衝動が豪炎寺を襲う。
「!」
 ぶるり、と身を震わせ、腹を押さえた。
 冷やしたのか、急な尿意に襲われたのだ。
 トイレへ向かうには、まず水を拭き取り、着替えて行かなければならない。面倒で、そんな余裕もない豪炎寺は、一人なのを良い事にある手段に出た。
 シャワーの水を止め、性器に触れる。そのままこの場所で用を足してしまおうというのだ。
 周りの気配や物音を気にしながら、下腹部に力をこめる。
「…………ん」
 低く喉を鳴らせば、性器の先端から小水が漏れだす。緊張か、勢いが無く足を濡らすが、その内に足にはかからなくなる。
 タイルに小水がはじけば独特の音を放ち、アンモニアの匂いも漂い、豪炎寺は一人頬を染めた。
 出すものを放てば気持ちは緩み、注意が散漫になる。だから気が付かなかったのだ、近付いてくる気配に。
「おい」
 突然、近くから聞こえた声に、豪炎寺は大きく肩を揺らす。
「ああ、豪炎…………」
 戸締りの確認をしにきた監督の二階堂がシャワー室に入り、扉上の開いている隙間から個室の中を覗いてきたのだ。
 二階堂の目には全裸で用を足す豪炎寺の姿がばっちりと映ってしまい、豪炎寺は羞恥のあまり全身を染めた。しかも小水は止まらず、振り向けない。
「みっ…………み、見ないでくださいっ!」
 怒鳴りに近い声で荒げた。
「わかったよ」
 二階堂は、驚きはしたが大した動揺はない。彼は背を向けて豪炎寺に話しかける。
「そんなに恥ずかしがるなよ。一人きりだとよくやっちゃう子がいるからさ。相手が豪炎寺だってのは驚いたが」
 豪炎寺は小水を出し切り、シャワーで排水溝へ流して身体を軽く流し、個室を出て弁明をしようとした。
「あの、これは、急にお腹が」
「だから気にするなって」
 二階堂は豪炎寺の頭をぽんぽんと、柔らかく手を置く。
「タオルも巻かないで、そんなに言い訳したかったのか?」
「!!!」
 豪炎寺は慌てて中に戻り、二階堂は笑いながら外で待っているから早く出なさいとシャワー室を出ていってしまった。それから三日ほど、豪炎寺は二階堂の顔を見られなかった。


 それから時は流れ、過酷な運命に揉まれたものの、結果として豪炎寺は二階堂と深い仲になり、ときどき彼の家へ訪れる日々を過ごしていた。
 その泊まりに来たある日。気温は熱く、豪炎寺は二階堂に家に入るなり、彼からジュースを多く飲まされる。それから二人でソファーにくっついて座り、映画のDVD鑑賞を楽しむ。
「………………………………」
 映画は面白く、見入ってしまうが途中で豪炎寺は尿意を抱く。しかし、丁度いいシーンなので目が離せない。もう少し、もう少しと我慢してしまう。シーンは盛り上がる一方で、惜しいがもう限界であり、席を立とうとしたその時だった。
 二階堂の曲げた肘が偶然、本当に偶然、豪炎寺の下腹部を突く。
 スイッチを入れられるが如く、豪炎寺の中で耐えていた何かが切れた――――。
「………っ……」
 じわりと股間が濡れて、温まる。熱はすぐに冷め、下着とズボンを濡らして貼り付き、気持ち悪い感触が襲った。
「………………………………」
 豪炎寺の異変に二階堂も気付く。彼の股が濡れだして、どんどん染みていくのだから。ズボンの隙間から流れた水は床に水溜りを作っていく。
 ジュースが原因だとすぐに察した。豪炎寺は二階堂と視線を交差させるが、放心して言葉を発せず、ぱくぱくと唇を開閉させていた。
「豪炎寺、ああ…………」
 二階堂は豪炎寺の頭を撫でてから、彼を立ち上がらせる。そうして漸く、彼は言葉を発した。
「かんとく、ごめんなさい……」
「ジュース、飲みすぎちゃったんだなぁ。まずほら、脱いで。洗ってしまおう」
 こくん、と豪炎寺は頷き、二階堂に言われるままにズボンを脱ぎ、下着も下ろす。確か以前も、小水を出すところを彼に見られたという記憶が蘇り、羞恥が追い討ちをかけた。
 上着の裾は短く、性器も双丘も丸見えになった。性器のまわりと太ももはしっとりと濡れてしまっていた。
「豪炎寺、トイレ行かなくてもいいか?」
「え」
 二階堂からティッシュを受け取り、まずは性器の周りを拭こうとした豪炎寺の手が止まる。
 ぽた。先端から、雫が床に落ちた。
「あっ…………」
「ほら、行ってきなさい」
 豪炎寺はすぐさまトイレへ行き、その間に二階堂は豪炎寺の衣服を洗濯籠に放り込み、ソファーのカバーを取り替える。
「監督、申し訳ございません」
 詫びる豪炎寺はティッシュで床の水溜りを吹き始めた。四つんばいになって一生懸命誠意を表す。
 だが、下半身は靴下のみを履き、手を動かせば腰が揺れる。
 不謹慎ではあるが、淫らで眺めは絶景だった。
「そんなに気にするなよ」
「でも」
 頭の位置を下げれば、腰を突き出した体勢になる。だが、漸く気付いたようで、豪炎寺はその場に座り込んで上半身を起こし、背中をぴんと伸ばした。双丘を隠すように衣服を引っ張るが、そうすると性器がより曝け出され、へそまで見えてしまう。
 困っている豪炎寺に、二階堂は衣服を貸してやりたいところなのだが、彼が頼んでくるまで待っていたい悪戯心も囁く。豪炎寺の羞恥は愛おしいと思えば思うほど、甘い毒を芽生えさせた。







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