円堂&エドガー[ゲーム設定]
ミスターK×ルシェ
二階堂×豪炎寺+虎丸[特殊仕様]
円堂×風丸






 引き抜きで、イギリス・ナイツオブクイーンのエドガー・バルチナスが仲間に加わった。
「宜しく」
 挨拶はとてもシンプルであり、ある意味彼らしい。



円堂&エドガー[ゲーム設定]



 イナズマジャパンのキャプテンである円堂は、新しいメンバーに宿舎内の案内と施設の説明をする。
「そこが食堂。それで二階に上がると部屋があって……エドガーは、ここの部屋だ」
 宿舎の個室は日本らしく、畳が敷かれ、座布団と敷布団が部屋の隅に用意されていた。
「ふむ。確か、布団というものを敷くんだったな」
「ああそうさ。実践するから見ていてくれよ」
 円堂が布団を持ち上げ、敷いてエドガーに見せる。
「ふむ……」
 腕を組むエドガー。いまいち理解できないらしい。
「わからない事があったら、なんでも聞いてくれ」
「わかった、キャプテン」
「キャプテン?」
「そうなんだろう?エンドウキャプテン」
「え、ああ。なんだかくすぐったいな」
 ついこの間まで対戦チームだったキャプテンに、キャプテンと呼ばれるのは照れ臭く、認められているようで誇らしげな気分にもなる。


 エドガーはサッカーの実力面では問題は全くなく頼もしいが、生活面では日本のルールがわからず、困ったような素振りを見せていた。円堂は気がかりな思いを残して夜を過ごし、朝が開ければ真っ先に彼の様子を見に行く。
「おはよう!…………あれ?」
 エドガーの部屋には彼の姿はなく、布団は不器用ながらも畳まれていた。
「朝の練習にでも行ったか?」
 下の階へ降りていくと、廊下を通り過ぎる木野に出会う。
「おはよう円堂くん。朝食の準備、エドガーさんが来てくれて助かっちゃった」
「エドガーが?」
 木野と共に食堂へ行くと、エドガーが各テーブルに食器を並べていた。
「ああエドガー。こんな所にいたのか」
 エドガーは二人の元に歩み寄り、木野の持っていた荷物を受け取る。手に提げていたので円堂からは見えなかった。
「さあレディ、私がお持ちしますよ」
「有り難うございます」
「キャプテン。起きたのなら君も手伝いたまえ」
「わ、わかった」
 慌てて食器を持とうとする円堂だが、手をぴしゃりと叩かれる。
「まず洗って、身だしなみを整えるんだ」
「ごめん」
 しゅんと俯き、そそくさと手を洗いに向かう。


 朝食の準備はエドガーと円堂の二人が加わり、予定よりも早く済んだ。
 他のメンバーが降りてくる頃には二人は向かい合って席に着き、仲間を待っていた。
「よう、早いな」
 綱海が感心とばかりに声をかける。
 仲間が揃い、食事が始まったがエドガーは箸の使い方が慣れないらしく掴むので精一杯の様子であった。
「エドガー、フォーク持ってこようか」
 円堂が伺う。
「結構だ。しばらく見苦しい姿を見せるが、使いこなしてみせる」
「そっか。俺さ、お前をチームに入れて良かったって思う」
「なんだ急に」
「思った事を、思った時に言ったまでだよ」
「そうか。君はそういう人だったな」
 軽く息を吐き、エドガーが口の端を上げた。







ミスターK×ルシェ



 唐突に、少女はフィディオに言う。
「ねえフィディオお兄ちゃん。ニホンゴ、出来る?」
「え?」
 思わずフィディオは目を丸くさせた。
 イタリアのとある町の公園のベンチで、ルシェにサッカーのルールを教えている最中の出来事であった。
「どうしたんだい。今はサッカーの得点の仕方を説明している最中だったろう?」
「ごめんなさい。急に、思い出したの。Kのおじさんは日本人だったって」
 Kのおじさん――――KことミスターKは、盲目だったルシェの目を治し、負傷した足まで治す金額を払ってくれていた。彼女にとってミスターKは恩人であり、大事な存在である。けれどもミスターKは既にこの世にはいない。遠い国へ行ってしまったと、フィディオは半分だけ嘘を吐いた。
「私、サッカーをフィディオお兄ちゃんに教わっているって、Kのおじさんにお手紙を出したいの。ニホンゴで書いたら、吃驚させちゃうかもって」
「そうだね。吃驚するよ、きっと。俺は日本人のキャプテンから少しだけ教わって、マモルからも教えてもらったから、少しの少しだけ、出来るかな」
「凄い!ねえ、字は書ける?」
「うーん、待っていてね」
 ルシェにとってはサッカーとKのおじさんは同じくらい大事なものであり、ミスターKの話題になるとサッカーと話がごちゃまぜになる癖があった。そして今はすっかりKのおじさんの話になってしまっている。
 フィディオはベンチ横に置いた鞄から、筆記用具を取り出して膝の上にノートを広げて見せた。
「本当に、少しの少しだけ、だよ。まず、ルシェって書いてみる」
 ノートにたどたどしい字で“ルシェ”と書く。
「これが私のお名前……!」
 ルシェは目をくりくりさせてノートの文字に注目する。
 フィディオはあまり上手ではないのを自覚しているので、やや気恥ずかしく思う。
「次にミスターKの名前を…………ミスターKはね、日本では“カゲヤマ”って呼ばれていたんだ」
「かげ、やあ?」
「か、げ、や、ま」
「かげやま」
「そう。それをね、感じで書くと……」
 バランスがとれず、文字が大きくなるが“影山”と書いた。
「なんだか、綺麗な名前だね」
「綺麗?」
「うん、綺麗。頑張ってKのおじさんの名前を書くんだ」
 ノートから顔を上げ、フィディオの瞳を見据えてくるルシェ。
 純粋な眼差しに真実が引きずり出されてしまいそうで、ふとフィディオはサングラスが欲しいと思う。ルシェと接していたミスターKのサングラスの奥の瞳が頭に浮かんだ。






※はじめに
・ゲーム設定です。
・選手は女体化です。
・女体化の名前設定をしておりませんので、虎丸は宇都宮呼びとなっております。



二階堂×豪炎寺+虎丸



 イナズマジャパンはイナズマジェットを乱用し、ライオコット島と日本の行き来を繰り返して各地の学校と対戦をしてチームを強化していた。この日の相手は木戸川清修であり、そこで起きたのだ――豪炎寺と二階堂の小さな小さな事件が。


「わあー!二階堂選手だああ!」
 宇都宮が二階堂を見るなり、はしゃいだ。身近で見る元プロの存在に浮かれてしまっていた。
「サインくださいっ!」
 マネージャーのノートを勝手に奪って二階堂に差し出す。
「宇都宮さん、それは駄目よ。別のにして!」
「宇都宮、二階堂監督にご迷惑だろう」
 木野と豪炎寺が慌てて止めにかかった。
「はは、サインは構わないけれど、なにに描くかはまだ時間もあるし、ゆっくり考えなさい。俺は逃げないから」
 二階堂は笑いながら、三人をなだめる。
 練習試合を行った後は合同練習を行う事となり、合間の休憩時間に宇都宮はベンチで二階堂にしきりに話しかけていた。
「二階堂監督、申し訳ございません。なにか失礼な事を言いましたらすぐに連れて行きますので」
 宇都宮の隣に腰掛け、詫びる豪炎寺。
「豪炎寺、俺は構わないから。あー、宇都宮さんは小学生なのか。中学生に混じってやるなんて、凄いじゃないか」
「えへへ……」
 二階堂に褒められ、宇都宮は照れ笑いを浮かべた。
「そうだ、二階堂せん……監督は、子供とかいるんですか?子供にもサッカーを教えるんですか?」
「いやぁ、子供も結婚もしていなくてね」
「じゃあ彼女とかいるんですか?」
 二階堂と豪炎寺が同時に固まり、悟られないように愛想笑いをする。
 二階堂の彼女は宇都宮の隣に座る豪炎寺なのだ。だがしかし、世間的に明かす事は許されない。
 嘘も方便だ。しかし、豪炎寺としては存在くらいは匂わせて欲しいと願わずにはいられず、二階堂の反応をじっと伺う。
「彼女は……いるよ」
 豪炎寺からの痛いくらいの視線を受けながら、二階堂は彼女の存在を認める。
「どんな人なんですか?年上?年下?」
 無邪気なのは恐ろしい。宇都宮はさらなる質問をしてきた。興味本位なのだが、二人にとっては肝が冷える。
「年下。若い娘なんだ」
「この中で、誰に似ているとかあります?」
「だ、誰って。彼女と生徒を重ねた事なんてないよ」
「そうですよね。どんな性格なんですか?」
「うーん……年齢よりも大人びていて、気遣いの出来るいい子だよ」
 豪炎寺は一人ほんのりと頬を染め、二階堂に柔らかに笑いかける。二階堂は恥ずかしい事を言ってしまった気がして、つい口を滑らせる。
「でも年相応で子供だし、短気ですぐ怒るんだよ」
「大変ですねぇ」
「そうなんだよ。頑固で意固地だし……」
 話の途中で染岡が宇都宮を呼び、彼女は行ってしまう。


 残された二階堂は、豪炎寺からの鋭い視線にそっぽを向くが、宇都宮がいなくなったスペースに寄ってきて逃すまいとくっつく。
「監督。随分と言いたい放題でしたね、彼女さんに」
「ええと……」
「監督だって、頑固で、素直じゃないし」
 唇を尖らせ、俯く豪炎寺。
「悪かったよ。すまない、言い過ぎた」
「…………………………」
「どうすれば許してくれるんだ?」
「……監督はおわかりでしょう?」
 ふー。二階堂は息を吐き、豪炎寺の頭にぽんぽんと手を載せる。
「いいのか?」
「はい」
 豪炎寺は二階堂の言葉を待つ。
 ――――この後、泊まりにおいで。
 という誘いを。






 回る回る景色。目の前の、君を中心にして回る。



円堂×風丸



 ナニワランド地下の修練場で特訓に励む雷門イレブン。
 今日の特訓メニューをこなし終え、部屋を出た円堂に待っていたかのように風丸が声をかける。
「よ、円堂。お疲れ」
「風丸も、お疲れ」
 笑みを交わす二人には疲労の雰囲気が漂う。
「なあ、この後シャワーで汗流したら、上に行かないか?」
 この上はナニワランド、遊園地がある。つまり、風丸は遊ぼうと誘ったのだ。
 ――――それは駄目だって。
 断りの返事を脳裏に浮かべる円堂ではあるが、なぜだか声にはならなかった。返事に詰まり、考える素振りを見せてから首を縦に振っていた。
「…………そうだな」
 声を潜めて言う。もしも他の仲間が通った時、聞こえないように。
「じゃ、決まり。行こう」
 風丸も細く答えていた。
 こうして二人は、シャワーを浴びてから外へ上がった。


 時刻は夜を回っており、真っ暗な闇をナニワランドの色とりどりの鮮やかな電灯が照らしている。遊んでいる客も円堂たちのような学生はおらず、年上のカップルたちが目立つ。
「なにに乗る?それとも食べる?」
 辺りを見回し、円堂は問う。
「円堂、あれに乗りたい」
 風丸が指差す先にはコーヒーカップがあった。
「いいよ、乗ろう」
 二人は走ってコーヒーカップへ向かう。本当は走るのはいけないが、空いているからぶつかる心配もない。悪さをしている顔を見合わせてニヤリと口の端を上げていた。
 カップの中に入ると、動き出す。いるのは円堂と風丸の二人きりで、他人の話し声はなく、機械音が擦る中でカップたちは回った。
「円堂」
 円堂と向き合う風丸が、じっと見据える。
「断られるのかと思った」
「俺も、断ろうかと思っていた」
「あー……そうだろうなぁ、やっぱり」
 くすりと風丸は微笑む。
「なんで、一緒に来てくれたんだよ」
「なんでだろうなぁ」
 円堂はカップに寄りかかり、身を遠心力に任せる。
「たぶん、風丸だからだ。風丸は、俺がどうするかわかっていそうだから」
 一息間をおいて、円堂は続けた。
「風丸こそ、どうしてだ……?」
「なんでだろう。円堂の反応を確かめたかったのかな。断られて、明日も頑張ろうって思いたかったのか……」
 風丸はポニーテールを手で軽く流し、息を吐く。
「だけど、OKされてしまった……。俺は戸惑っている訳よ」
「なんだよ、さっきは笑っていたくせに」
「おっしゃる通りで」
 二人口を閉ざし、やがてコーヒーカップは動きを止めた。だが、二人はなかなか立ち上がろうとしない。
 遊園地に来たのだから、もっと楽しい会話をするつもりだった。また来たい、なんて言っても良かった。けれども二人には言えなかったのだ。なまじ付き合いが長く、相手の心情がわかってしまう。
 先に立ち上がったのは円堂。続いて風丸も立ち上がり、遊具から出た。
「な、風丸。なにか食べてから戻ろうか」
 円堂が振り返り、誘う。一方的に誘われるだけではなく、誘い返した円堂らしさに、風丸は目を細めて微笑む。
「円堂が決めてくれよ。円堂はどうしたい?」
「うーん、じゃあ、あれ」
 円堂が食べたがったのはポップコーン。購入してベンチに座り、二人で一つを食べる。黙々と摘まみ合っていた。けれども先ほどよりは硬くならず、楽しんでいる雰囲気を醸し出している。これを食べ終えたら修練場に戻らなければならない。気持ちを落ち着けた今なら、ベンチを立ち上がった時に言えそうだった。
 ――――また、来たい。と。







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