「もっと、ちゃんと考えて。あなたは私の連れ………かま、なんだから。それとも、違うの?あなたはそう思ってくれないの?」
 クローディアはジャンの方を向き、じっと見据えた。無表情ともいえる静かな面持ちの中に、瞳は強い意思を持ち、訴えかけてくる。
「あなたがわからないわ、ジャン」
 目を細め、視線を逸らした。
「あなたと旅をして、随分経つわ。でも、今でも私が知っているのは、あなたがジャンという名で、帝国親衛隊の一人だという事。それだけだわ。あなた、お喋りなようで肝心な事は何一つ言ってくれない。私が、馬鹿みたいだわ」
「馬鹿だなんて、クローディアさん。そんな事…」
 ジャンが声を上げ、やや強めの口調で否定してくる。
「ほら、わからない」
「………………………」
 クローディアの口の端が、自嘲気味に上がった。特に見ずとも、ジャンの困惑した顔などわかっている。
 私は、あなたに会いたくて、あなたと話をしたくて、あなたを知りたくて、あの日メルビルへ行ったというのに
 思い出すのは出会った頃の事。未だに、この想いは叶っていない。ただ、知りたい。それだけの事なのに。いつか、知る時は来るのだろう。このまま、共に旅をしていけば。





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