あらすじ
不動峰中の伊武と桜井は仲間たちに秘密で、関係を結んでいた。
俗に呼ぶ恋人であり、後ろめたい気持ちはあるものの甘い日々を過ごしていた。
だが、関東大会立海大付属との試合で橘が負傷し、入院する事によって彼を尊敬していた伊武の情緒は不安定になり、関係に亀裂が入ってしまう。
大会で桜井と対戦をした柳生は、たった一回の試合ではあるが桜井に惹かれていた。あまりにも遠く、絶望的な想い。たった一回のはずなのに、忘れる事など出来ず、募っていく。立海の部長幸村も橘と同じ病院に入院しており、柳生と桜井は偶然再会を果たした。
桜井他不動峰テニス部二年は立海との因縁の他に、過去の経験から橘以外の上級生に不信感を抱いており、柳生に敵意を剥き出しにする。
しかし柳生は毅然とした態度で桜井の怒りを静めた。
互いの部長が入院している間、二人は道をすれ違い、少しばかりの言葉を交わすようになっていく。けれども、名前を呼んではくれなかった。
その中で、桜井は柳生が自分の事を好きなのかもしれないと感付き始め、とうとう告白をされる。
告白に対して桜井は男なのにと相手にしない態度を取ろうとするが、それでも柳生は真っ直ぐに想いを伝えた。
返事は曖昧のまま、橘が退院し、桜井は柳生を初めて名前で呼んで別れを告げて病院へは訪れなくなる。桜井には伊武がいた。伊武を愛していた。だが柳生を忘れられず、桜井の心に揺れが生じ始める。
柳生はというと、桜井との接点を失い、踏み出せぬまま迷う。しかしダブルスパートナーであり友人である仁王に背中を押され、想いを貫こうと決意をした。
関東大会閉会式で桜井は柳生を探すが、出会えずに途方に暮れ、己の行動は伊武への裏切りだと悔いる。伊武は桜井の様子の変化には気付くが、理由はわからず不安に駆られ、桜井を疑う自分を責めて一人苦しみを負っていった。
閉会式から全国大会までの日々の間に、柳生と桜井はまた出会い、桜井は安心感を覚える。
全国大会での不動峰敗退後にも出会ってしまい、桜井は柳生への想いを自覚する。
伊武の事、柳生の事を整理できぬままに仁王は桜井と伊武の関係を知ってしまう。だが柳生には告げられず、自分の胸だけにしまった。
桜井を想い続け、不安に駆られ続けた伊武は潰れてしまいそうになり、桜井と別れを告げる。
伊武は桜井を愛していた。だがそれだけではどうしようもなく、自ら身を退いたのだ。
別れて改めて襲い掛かるように知る己の愚かさと、伊武への愛に、桜井は深く傷付き心は滅入ってしまう。橘の引退も重なり、拠り所を失い、桜井の心は闇の底へと落ちていった。
柳生は遠くても、会えなくても、桜井を想い続ける。変わらず、何も知らないまま、愛し続けていた。
雨の日、柳生は桜井と出会う。東京ではない、神奈川の地であった。
どこか暗さを漂わせる桜井をそのままに出来ず、たまたま家族が出ていた家へ柳生は連れて行く。けれども桜井が泊めて欲しいと頼み、断りきれずに一夜を共にする事になる。
二人きりの中で、桜井は伊武との関係を打ち明けた。衝撃を受ける柳生ではあるが、彼の選択を待つと決める。
伊武は桜井と別れたものの、一歩も進めていない自分に気付く。
偶然か、いつか気付く必然か、登校中に駅から出る桜井を見かけてしまう。伊武に問い詰められた桜井は、とうとう柳生の存在を明かしてしまう。伊武は動揺し、恐れさえも抱くが勇気を出して、桜井に別れを告げた屋上で桜井と柳生の関係を聞く。
桜井は柳生との仲を話し、伊武も自身が抱く想いを打ち明ける。前へ進むことを告げ、桜井にも共に歩もうとすすめた。
桜井の決断は――――
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