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#046.うそつき
夜神月は嘘つきだ。


「竜崎、好きだよ」

嘘。

「大好き」

嘘。

「……愛してるよ」

全部、嘘。



言葉を全て否定され、彼は切なそうに訴えた。
「どうして信じてくれないんだ?」
私は答えた。
「君が嘘つきだと知っているからです」
彼は目を伏せて、否定するように顔を振った。
「嘘だなんて……」
私は理由を述べた。
「私を騙そうとしても無駄です。
これでも様々な犯罪者と対峙して来たので、嘘は全て見抜けます」



そう言うと、彼は眼を伏せて悲しそうな表情をした。
長い睫が細かく震え、まるで泣くのを堪えている様だった。
これも嘘。作りもの。



「竜崎なんて嫌いだ」

……。

「大嫌い」

……?

「……憎くて仕方ない」

……嘘だ。



私は嘘を全て見抜けるはずだった。
「月くん、何故今度も全部嘘なんですか?」
彼は答えた。
「何を言ってるんだ?先刻のが嘘ならこれは真実だろう?」
しかし私の今までの多数の経験が示しているのだ。
「全部嘘です。何故?」
私の問いに彼は笑って言った。
「……僕が嘘つきだからだよ」
その笑顔が嘘か私には分からない。



「月くん。分かりません……月くん」
 私の声はまるで彼に縋るようだった。
そんな私を見守るように穏やかに彼は笑った。
「全部嘘だから」
 そうして酷く優しいキスを彼は私の唇に落とす。



何が真実で何が嘘なのか私にはもう分かりません。月くん。

月→L?切ない系?






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