鍵
家に帰ると母が苦い顔をして出迎えてくれた。といっても母さんはあの勇敢な父の妻になれる程気丈な性格なので、表面的には少し心配した程度の表情しか浮かんでいない。
僕は友達の所に泊まったのだと言い訳をしたが、朝帰りどころか昼帰りでは不信の表情をいっそう強めるだけらしかった。
そして母の予想は当たっている。その想像とは相手の性別が異なるが。
思えば中学の頃の深夜帰宅の時もきっとこんな表情をしていたのだろう。
あの頃の僕はまだ今程人の表情を読めないでいた。母には心配を掛けていない。誤魔化しきれていると信じていた。
暢気だったな。と意味もなく感じた。
「ライト、その服はどうしたの?」
自室に向かおうと階段に足を掛けた僕に母が問いかけた。
昨日流河に買ってもらったその服は当然母の見知らぬものだ。
「友達の。借りたんだ」
母の表情は不信が色濃かった。
おそらく友人のと言うには真新しすぎるのが原因だろう。借りたと言うより買ってもらった感がある。
母の不安を無視して僕は階段を上った。心の中でごめんとだけ呟く。
部屋にはいると疲れていたことも有り、僕はベッドに転がる様に倒れた。
スプリングに柔らかく受け止められたがそれでも衝撃で身体の至る所が痛んだ。
『ライト、首に血が付いてるぞ』
リュークの指摘に僕は上半身を起こし首筋を触った。
手のひらに少しだが血が付いている。原因は流河の爪のようだった。
昨晩引っかかれたのだろう。他にも軽い傷や痣が至るところにある。
『ライト、あれも作戦なのか?』
リュークの問いに僕は軽く首を横に振った。
そんなはずがない。あんな事をしてもキラとして何も役にたたない。
「僕はキラになる前からあんな風にしてた。それと同じ理由だよ。流河としただけ」
リュークはあまり納得していない表情だ。流河もこんな顔をしていて、僕の話を信じているようには見えなかった。
キラだから、仕方ないのかも知れない。
『痛くないのか?』
「痛いよ」
『痛いと面白じゃないだろ?』
「そうだね」
痛いのが面白いはずない。マゾヒストでもないから当然気持ち良くもない。
ただ相手に流されるようにするのはいつもの事。言うなればその人によっての違いを愉しんでいる。
初めて同姓に告白されたのは中学二年の冬だった。まさか男に告白される事があるなんて、その時まで思ってもみなかった。
一般的な中学生の僕はそれを気持ち悪いと思い、優等生の僕はそんな事思っちゃいけないと自分を戒め、何にも囚われていない僕はそれを素直に嬉しいと思った。
しかし選んだ答えは一般的中学生のそれで、僕は告白してきた同級生を拒絶の言葉で返した。
でも彼はあきらめなかった。
しつこい。気持ち悪い。そう思う中に少しだけ好意的な感情が芽生える。
だって男に告白するなんてそれだけでも大変だ。
それでも僕を好きだと言って諦めない様が僕にはとても魅力に思えた。
結局僕は彼の告白を受け入れて、流れで身体を重ねた。お付き合いの範疇だ。
しかし何が悪かったのかその『お付き合い』は身体を重ねたことを切っ掛けに壊れていった。
どうしてそうなってしまったのか、原因は分からなかったが理由はなんとなく分かった。
彼は失望していたのだ。流河と同じように。
流河が何に失望していたか分からないから、僕には彼の気持ちを知る事は出来ない。
失望されるなんて僕はそれまで無縁だった。いつも僕は確実に人の期待に答えられる人間だったのに。
以来僕は同性とも身体を重ねるようになった。
そして大抵の人間が僕の何かに失望して関係が壊れていく。
悪化しかもたらさなかったのに、それでも人と肌を重ねたのは自分でも不毛だったと思う。
もしかしたら失望されるのが良かったのかも知れない。僕にとってそれは慣れない感覚だ。
しかしそうなると生まれるのは流河に対する矛盾だ。失望されていると分かった状態で行った行為。
今までのどんなものより不毛なそれを僕は求めた。失望されても嫌われても流河となら関係が変わらない。
それは他の人とした時の人間関係の変化によるストレスがないのは確かだ。
しかしそれは僕が積極的になる理由にはならない。そんな事自分でもちゃんと分かっていた。
行動理由が自分のことなのに分からない。
ただ流河と繋がる事は他の人間と繋がるのとは何かが違うのだと漠然と感じていた。
僕らしくない非理論的な話だ。
「リューク、僕は寝るから」
『ん、あぁ。わかった』
横になって疲れた身体を沈める。
ずきずきと身体中の傷が痛むのに気持ち良くはないが満足感はあるなと何とはなしに思った。
翌日大学に行ってまず行ったのは寺椅探しだった。
どうやらあのガサ入れに関する噂やニュースに寺椅に何かあったような話はない。
恐らく無事だったのだろうがこの目で確かめて様子を知りたいと思った。少し過保護かとも思ったが。
その寺椅はあっさり見つかった。
人に聞けば昨日寺椅自身が僕と流河を探していたらしい。今日もそれは同じだったようだ。
あっさりと見つかった寺椅は開口一番「よかった」と心底安心した表情をして言った。
寺椅のその様子に僕も安堵する。
「こっちも同じ気持ちだよ。心配した」
「俺のが心配した。無事なら昨日大学出てこい!」
寺椅の言い分はもっともで、しかも出られなかった理由が理由なので僕は口をつぐんでしまった。
「悪い」と一言だけ言うと寺椅は諦めのため息を付いた。追求はしないでくれるらしい。
「まぁ良かったよ。まさか警察が来るなんて思わなかったからなぁ……」
「僕は閉じこめられるとは思わなかったよ」
嫌味を込めて言ってやると寺椅は悪かったと頭を下げる。
軽い態度に本当に悪いと思っているのかと訝しむが深く追求はしなかった。
寺椅はそういう人間だし、悪いと思ってはいなくても反省はしている様なのでもうしないだろう。
「しかし問題はコレだよな」
言って取り出したのは鍵だ。僕や流河を閉じこめたあの部屋の。
「持ってたのか?」
「返せないだろ〜?タイミング的に」
しかしそのまま持っていたのは幸運だ。
もし警察にコレを持っていることを知られれば面倒な事になっていただろう。
寺椅は知らないのだろうが、何せ麻薬があった部屋だ。
「それは僕が預かるよ」
「夜神が?どうすんの」
「父さんに頼んでみる」
父の職業を知っていたらしい寺椅は一気に安堵の表情を見せた。
恐らく父に頼めば何とかなるだろう。もしそれが駄目なら少し釈だが流河に頼めば良い。
借りを作るのは本来なら御免蒙るところだが、寺椅のためだと思えば腹もたたない。
「サンキュー。今度借り返す」
寺椅の手から鍵を受け取る。金属音の響きとともにふと思っていたことが口を付いて出た。
「名前が分かればな」
「名前?」
唐突なつぶやきに当然寺椅は疑問の表情を浮かべた。
口に出してしまったのはキラとして犯罪者への裁きを考えた言葉だったが、僕はその台詞自体を誤魔化す様な真似はしなかった。
「あぁ、犯人の名前が分かれば父さん達の役に立てるだろう?」
「あぁ……なるほどね。お前本当に真面目なんだなぁ」
寺椅は呆れているようだった。普通そんな事考えないだろうから仕方がない。
くそ真面目な優等生というレッテルが貼られたのを感じたが、そういうイメージがあるからこそ犯罪者の事を気にしても怪しまれない。
しばらく考え込むようにした寺椅はぼそりと僕にとって意外な言葉を言った。
「まぁそういう事なら俺が調べても良いけど」
「寺椅が?」
「柄悪いの2、3人に聞けば割りとすぐに分かりそうだ」
そんな事をして大丈夫なのかという不安が表情に出たらしい。僕の不安を消すように寺椅は軽い調子で笑った。
「危ない事はしないって」
懲りたからという尤もな理由に僕は押し黙った。
それに寺椅なら危ないと判断したらさっさと逃げてしまうタイプだろう。
そしてちゃんと逃げ切る事が出来る人間なのは一昨日の出来事が証明している。
「それで貸し借りチャラな」
「寺椅がそれで良いなら」
僕の了承の返事に寺椅は金が浮いたと喜んだ。
何か奢ってくれるつもりだったのかと思うと同時に、寺椅にとってそういった人間の名前を手に入れることは何かを買うよりた易いという事実に軽く驚いた。
人脈が広いのが寺椅の売りだとは知っていたが、そういった柄の悪い連中にまでその手が伸びているとは思わなかった。
「なぁ夜神」
「何」
「怒ってない?」
「は?」
唐突な話題の変換に僕は間抜けな声を出して答えてしまった。
寺椅は構わず口を開く。
「俺、夜神の事閉じ込めたりしたじゃん。怒ってない?」
最初会った時の軽い口ぶりとは違う真面目な態度に驚く。そして彼も真剣になるときがあるのだとかなり失礼な事も思った。
「怒ってないよ」
それは僕の本心からの言葉だった。
正直まったく気にしていないといったら嘘になる。
けれど珍しくも寺椅が殊勝な態度に出て謝ろうとしているのだ。それだけで溜飲も下がる。
「友達?」
「うん。当然だろ」
断言すると背後で死神が『くさい』というコメントを発した。真面目なやり取りに対して失礼な奴だ。
寺椅は僕の言葉を本心からだと確信したのか安堵の笑みを表情に出した。
「ありがとう、夜神。じゃあ犯人の方は任せてくれ!」
「あぁ、頼んだ」
寺椅はにこにこと笑いながら自分の科の校舎へ向かって帰っていく。
その上機嫌な様子に僕も自然と気分がよくなった。それを見て背後の死神が笑う。
『嬉しそうだな』
「寺椅が嬉しそうだからね。善意ある人間が幸せに暮らす事は僕の目的でもある」
『友情ドラマみたいで面白かったぞ。お前にもそんなの残ってたんだな』
そんなもの―――友情がないと見なしているような言葉に僕は眉を寄せた。
「失礼な奴だな。半分くらいは本気で思ってるよ」
『半分かよ!』
結局もう半分はキラとして寺椅の情報網が欲しかったと言うのがある。
寺椅は役に立つ人間だ。利用価値がある。
『ライト悪役だな』
「悪役じゃないよ。まぁ寺椅には悪いけどね」
悪いと思う程度には友誼を感じている。その程度だ。
それまでおとなしく話を聞いていたリュークが突然黒い翼をはためかせてふわりと飛んだ。
唐突な行動に僕は疑問を浮かべる。
「どうした?」
『いつもなら流河がこの辺で来るだろう?なかなかこないと思ったらあの寺椅とかいう奴と話してる』
高いところから見下ろすようにしている。その角度に意外と近いのかとリュークの向いている方向を盗み見る。
確かにそこには後姿の寺椅と見間違えようのない流河の顔がある。
一瞬の出来事だったが流河と眼が合ったような気がした。本当に合ったかは定かではない。
やがて見物を終えたリュークが僕の横に降り立った。
「流河が他人と話すなんて珍しい」
『あの寺椅って奴はあいつと話してキレないのがすごいな』
僕はその言葉に普段の流河を思い出す。
あの男は僕以外の人間とはほとんど口を利かない。
話を聞いていているのかさえ定かではなく、時折適当であろう合図地を打つ程度なのだ。
傍から見ているだけの僕でさえ気になってしまう態度。それを物ともしないのは確かに寺椅のすごい所といえるだろう。
「流河と本当に仲良くなるかもな、寺椅」
皆に友人と思われている僕は実際にはそんなものではない。
もし本当に寺椅と仲良くなれば寺椅は晴れて流河の大学での初の友達となる。
そんな事を考えながらも絶対にそんな事はありえないだろうと確信している自分がいた。
仮にもキラ捜査の為にここにいる流河が友人など作るはずがないと。
そう確信しているのに、流河が本当に寺椅と友人になってしまったらどうしようと思う自分もいる。
そんな事になったらどうしよう。
本当はどうするもこうするもない。
ただその時その時にあわせて流河が気に入るように行動を取ればいいだけの話だ。
それなのに不安を感じる自分を僕は首を振って振り払おうとした。
最初の講義が少し過ぎた頃、教授の遅刻への咎めの言葉も気にせずに流河は教室に入って来た。
教授が横柄な態度の遅刻者を咎めようと口を開いたが、結局何も言わずに閉ざしてしまう。
それを当然だな、と僕のように流河の表情を見る事の出来た人間は思った。
いつも飄々とした態度を崩さない流河が異様に険しい表情でいたからだ。
流河の意外な姿に皆不安を感じたのか見ない振りを決め込んだ。
のそのそと歩いてきた流河は当然のように僕の横に座る。
確かにおかしい。
流河はいつも授業中、講義を聞いているのはポーズだけで僕の監視を行っていた。
しかし今日は僕の方を見ない。もちろん講義を聞いているわけでもなく、流河はやけに周囲を気にして警戒しているようだった。
まるで物陰からスナイパーにでも狙われてるみたいだ。
本来なら馬鹿馬鹿しい表現だがこの男の場合それも本当にありそうで笑えてくる。
もちろん本当に笑ったりなんてしないが、それは流河の表情があまりに真剣で茶化せる雰囲気でもないのが理由の一端でもあった。
妙に真剣に周囲に気を払っている。
講義が終わっても流河はなかなか動かなかった。
いや、たぶん待っているのだ。講義室にいる全員が外に出るのを。
それが終わるまで動くつもりはない。
僕の予想は当たっていたらしく、僕らが教室に残された最後の二人になってようやく流河は腰を上げた。
それと同時に僕の手を掴む。
「流河?」
どうしたんだと問いかける前に流河が足を進める。
手を引かれて歩く羽目になり僕はそのまま人の往来の激しい廊下に出る事を羞恥から躊躇った。焦って流河に声をかける。
「流河、手を離してくれ」
ぎょろりと濁った眼が僕を見た。今日会ってからまともに見られたのはこれが初めてだった。
流河はあっさりと手を離して、その代わりに耳元でささやく。
「話があります」
「喫茶店?」
話があるといえばそこしかないという思考からいつもの場所を提示するが、それに流河は首を振る。
「今すぐが良いです」
「なら校舎裏……」
言っておいてこれは断るだろうと僕は思った。
あの場所は流河にとっては思い出したくもない場所だろう。事実流河の表情が不機嫌そうに歪む。
しかし少し逡巡してから流河は「行きましょう」と了承の言葉を返した。
明らかに嫌だと思っているのが分かるので違和感が募る。流河は嫌な事は嫌だとはっきり否定するタイプだ。
木が目隠しになっている校舎裏はあの時のまま何も変わっていない。
流河は今度は地べたに座ったりしなかった。座ったらまたあの時のようになると警戒しているようだった。
もうしないと言ったのに。
「流河、話って?」
「はい。単刀直入に言います」
いつも単刀直入の流河が態々前置きをして言った。
「今後一切寺椅に近付かないでください」
唐突なそれに言葉を失う。
流河の表情は相変わらずののっぺり顔だが冗談を言っているわけではないらしい。大体こんな冗談おもしろくもない。
ついさっきまで流河は寺椅と話していたようだが、それが原因なのだろうか。
「どうして」
「どうしても何もありません。直接会うことはもちろん電話等で連絡を取る事も禁じます」
何故お前がそんなに僕の行動を制限できるのかと声を上げて抗議したかったが、反論したところで流河は決して譲らないだろう
流河の言葉には必ず意味があるはずだ。
僕と寺椅が友人関係にあることでの流河のマイナス要素。
例えば僕は寺椅の交友網に目を付けているが、それを封じたところで違う手段を利用するだけだ。わざわざ言う必要もないだろう。
事実僕もそこまで有力な手段とは考えてはいないのだ。言うなれば何かあったときのストック用。
流河は本来キラである僕を泳がせたいだろうから、わざわざ行動を制限するくらいの明確な理由があるはずだ。
しかしこれといって思いつけないでいる。
流河の為に今後一切寺椅には近づかないというのも一つの選択肢だったが、それをする訳にもいかない。
寺椅に頼んだ犯罪者の件をそのままにしておくわけにはいかない。
「僕が誰と一緒にいようと君には関係ないだろう」
「ありますよ。私の知らないところで何か相談されては困ります」
「全部報告する。だったら?」
寺椅に犯罪者の名前を教わろうとした事を知られるわけには行かなかったので、それは売り言葉に買い言葉の安易な反論だった。
しかしその言葉に一瞬、流河の表情が硬くなる。付け入る隙を感じた。
「それでも駄目なのか?」
流河は黙った。何か吟味するようなその仕草に辛抱強く次の言葉を待った。
流河の表情は苦吟を見せている。監視という建前を否定するような事は言ってはいけないはずだからだ。
だが僕は肯定する事を期待した。流河がLとしての枷を外してしまう事を望んだ。
流河の唇がそっと開いた。
小さく震えている様を感じ取って僕は自然と口端を上げて薄く笑みの形を作った。
「駄目です」
期待した言葉に僕はふっと息を吐く。
あぁ、この男はLである以上に優先する僕への何かを持っているのだ。
とても気分が高揚した。まるでデスノートを拾ったときみたいに、何かが啓けて思考が軽くなる。
こんな感情を流河から感じるなんて思わなかった。
妙に満足感を感じる僕を見て流河が訝しげにする。自分でも分からない感情だから、流河がそれを疑問に思うのは当然だろう。
「夜神くん、駄目ですよ」
不信感から発せられた流河の念押しの言葉に、権力者である自分が下手に出ているのだから言う事を聞くのは当然だろうという考えが透けて見えた。僕はその思考を鼻で笑う。
「嫌だね。僕の行動は僕が決める物さ」
吐き捨てるように言った僕は流河に背を向けて植え込みを乗り越えて校舎裏から抜け出した。
捨て台詞のような言葉に呆然とした流河の顔が浮かぶ。
どうやら僕は流河の中に生まれた僕への何かを留めて置きたいと思っているらしかった。
それがどんな感情なのかもどうしてそんな事を思うのかも何も分からないけれど。
『ライトLにあんなこと言って良いのか?』
媚を売らなくて良いのかとリュークが訊いてくる。
たしかに流河のご機嫌取りは今の僕には欠かせない重要事項であることは明白だ。
だがそれ以上に今の僕には流河の気持ちへの理解不能の期待とそしてキラとしてのやるべき事がある。
その為には寺椅からの情報だ。
「犯罪者を一掃してやりたいからね」
ポケットの中に放り込んである寺椅から受け取ったあのビルのあの部屋の鍵を僕は布越しに撫でた。
自分ではあまり意識していなかったのだが、流河の要望を拒否するというその選択は僕が流河をLとして認識していないことの証明だった。
流河の思うとおりの行動を選択しなかった時点で、僕は流河をLとして扱う事を放棄している。
僕もまた持っていたのだ。キラである以上に優先する流河への何かを。
その時はまだ何も分かってはいなかったのだけれど。