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#01.TPO



「竜崎、頼みがあるんだけど」
「なんですか?」
「いい加減呼び名を統一してくれないか?」


 月の言葉に少し首をかしげて一言。
「私のですか?なら無理ですよ」
 それを聞いて、ふうと息を吐く。
「違うよ、僕の呼び名」
 初めて会った時は夜神くんだった。
その後、捜査本部に出入りするようになると月くんと呼ばれて
大学では夜神くんと使い分けた。
 だが監禁から一緒に暮らすようになってもLの呼び方は固定されない。
捜査をしている時は基本的に夜神くん。普段は月くん。
ずっと一緒にいるんだから使い分ける必要も何もないはずなのに。
しかも呼び方が何故か逆転しているし。
「親しくなるにつれて呼び名が変化すると言うのは普通だと思いませんか?
はじめ名字で呼んでいたのがだんだんと名前になる。
普通の変化でしょう?」
「それは夜神くんが月くんになった理由としては納得の変化だけど。
捜査中とで呼び方が違う理由にはなってないじゃないか?」


 そう言うとLは至極真剣な表情で話しはじめた。


「月くん。例えば同じ職場にとても仲睦まじい夫婦がいたとして、
彼らが職場で『ダーリンv』『ハニーv』などとハート飛び交う感じで
呼び合っていたらどうでしょう」

「はぁっ?」

 月は思わず口にした。
いきなり始まったよく分からない例え話に着いて行けないでいる。
しかしLはそれに構わず月に問いかけた。

「職場では家庭と区別をつけ名字やさん付けで呼び合うのが良いと思いませんか?」

「まぁTPOに合わせて場に合わせた呼び方をするべきだと思う……けど」

 Lの言葉にとりあえず同意した月を見て、にっこりと笑う。

「そうですか。私もそう思います」
 Lは機嫌良く笑って言うが、そう言われても月としては
だからなんなんだとしか言い様がない。
「話が見えてこないんだけど」
「TPOに合わせた呼び名の話ですよ」


だからそれが月の呼び名にどう関係するかが分からないのだが……


悩む月を後目にLは力強く拳を握った。


「私は職場と家庭はしっかり分ける主義なんです」



 妙にきっぱりと宣言されて月は戸惑った。
結局呼び名の謎は分からなかったが、Lの妙なこだわりだけはよく実感した。




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分かりにくい話ですね。
仕事『月くん』プライベート『夜神くん』が
仕事『夜神くん』プライベート『月くん』に変化してるって話。
呼び名変化の謎を自分なりに解明。




#02.冬期限定



「ちょっとこれは嫌すぎるんだけど」

「何故です?」


とにかく通りかかる人の視線が痛い。
久しぶりに外に出たいと言ったのは自分だけど。
これはあまりにも酷い仕打ちじゃないか?


「だって手錠外す訳には行かないじゃないですか」

相変わらず月の不満を正確に読み取ってLは話す。

「これだったら手錠のがましなくらいだよ」





マフラー




「なんなんだよ、このマフラー」

「冬期限定外出用手錠です」

「手錠じゃないよ、これ」

「手錠じゃ目立つので代用品です」



大きいため息が1つ。
早朝で人がほとんどいなくても、通りかかる人がすべて変な顔で見てくる。
せめて散歩したいなんて言うんじゃなかった。


「もう、帰ろうか」
「いえ、もう少し歩きましょう」


はじめは朝早くに散歩なんてと嫌がってた癖に、今は上機嫌で歩いている。


「人に見せつけるのが楽しくて仕方ありません」



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デートですね。デート。
マフラー萌えです。

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