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俗慣習
冷たい窓ガラスに耳を当てる。
聞こえる音はなく暖房設備のモーター音が振動として月の耳に伝わるだけだ。
「除夜の鐘聞こえないね」
「遠いですし防音処理をしてますしね」
都会の真ん中に立つ捜査本部のビルでは聞こえないのも道理だ。
「ごめん。こんな風にして良い立場じゃないのにね」
キラ容疑者である事、キラ捜査員である事から月は苦笑した。
「息抜きも必要です」
Lのフォローの言葉に小さく笑う。
「竜崎は去年のお正月どうしてた?」
「キラ捜査……ですね。去年は今回ほど余裕がなかったので」
そこでまた「ごめん」と言いそうになる月の唇に、Lは人さし指を押し当てて黙るように促す。
「ですから今年は日本のお正月というものを色々体験したいですね」
「お正月を?」
「そうです。料理とか風習とか」
 その言葉に月が悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「2人で父さんにお年玉でもねだってみる?」
「良いですね。あとお正月と言えば何を食べる物ですか?」
「お節料理……かな?
さすがにお節は作れないけど、お雑煮くらいなら作っても良いよ」
「本当ですか?」
 月の言葉にLが本当に嬉しそうにする。
それを見て自分がお節も作れたら良かったのにと本気で思う。
甘い味付けの多いお節料理はこの男の気に入る所だろう。
「あと気になるところでは……『ひめはじめ』とかですね」
 Lがお節料理と同じくらい自然に出したその言葉に月は顔を紅潮させた。
「なっ何言ってるんだっ!?」
「別に暦上の普通の言葉ですよ」
 何ともない様に言った後にLは月の耳もとに直接吹き込むように囁いた。
「それともいやらしい事、想像しましたか?」
「言葉の派生はともかく……今は俗語だ」
 羞恥心を煽るLの言葉にもうこれ以上ないくらい顔を赤くさせた月が必死に言い訳をする。
「第一お前だって俗語の意味で使っただろ?」
 気丈に睨み返して言う月に向かってLはにやりと質の悪い笑みを浮かべた。
「正解です」
 そこで唐突に手錠の鎖が引っ張られた。
不意打ちのそれに月は身体が蹌踉けてベッドの方に流される。
体勢を立て直す前にベッドに押し倒されて、2人分の体重にスプリングが跳ねた。
ベッドがぎしりと一度軋む。
 抵抗しようとした両手をLに手錠の鎖でぐるりと一つにまとめあげられてしまった。
動き難くくて両手がLの左手だけで押さえ付けられてしまう。
「ちょっ……やめ」
「やめません」
 講議の言葉を封じるように月の唇を奪う。
舌先で歯列を押し開いて月の舌をからめ取るように動く。
「んっ……あっ」
 唇を嬲る間にLの膝頭が月の中心を撫でるように触れてくる。
激しく蹂躙される口内と優しく愛撫される中心とのギャップに月の息が荒くなっていく。
緩やかな膝の動きに焦らされて、月の腰がLの足に押し付けるように動く。
無意識であろうその行動にLは褒める様に膝をぐっと動かす。
月の身体がびくりと大きく跳ねた。
「っ……はぁっ」
 存分に荒らしたと満足したのか月の唇からLが離れていく。
同時に下半身への動きも止まったので、月の身体が物欲しげに揺れた。
「少し、大きくなりましたね」
 月の股間を見つめてLが笑う。
その視線と羞恥に月の中心がまた一度震えた。
下着ごとズボンを剥ぎ取られて、その様子を直接Lの眼に晒す。
すでに勃ち上がったそれには先走りの液が漏れ伝っている。
溢れ出た水を掬い取るようにLの指先が動いた。
「あっ」
 直接触れられた事に声をあげる。
「触って欲しいですか?」
 小さく首を振って肯定する。
Lは絡み付いた鎖を外して月の両手を自由にする。
ずっと腕を上に上げていた体勢が辛かったのか、ぐらりと腕が垂れ下がってシーツに倒れる。
「抵抗しないで下さいね」
 耳もとで囁いた口をそのまま月の中心へと這わせる。
口に含んで舌で形をなぞる様に動かすと少しずつ質量が増していった。
Lの口の中で先走りの液とだ液とで月の中心が濡れる。
「ふぅっ……うっ」
 びくびくと痙攣するように身体が震えて、どろりとLの口の中に苦い味を広げた。
少し粘り気のあるそれを手に向けて吐き出す。
 指先に絡み付いたそれを月に見せつけるようにして掲げた。
「これじゃ足りなそうですよね……まぁ物は試しです」
 濡れた指が月の後孔を探る。
窄まりに触れると月の身体が逃れるように浮いた。
「動かないで下さい」
 Lの言葉に従おうとシーツをぎゅっと掴んで異物感に耐える。
中に指が入り込み解すように動いた。
「痛っ」
「やっぱり水分足りないですね」
 それでもかき回す指は止まらない。
月は身体をよじってベッドサイドの引き出しを開けようと手を伸ばした。
「結構積極的ですね」
 月の指が引っ掛かり少しだけ開いた引き出しの中から、Lはローションのボトルを取り出す。
ボトルを開けて中のとろりとした透明な液体を後孔に垂らす。
 ローションで水分を増して、指で解された後孔にL自身の猛りを当てがう。
「うっ…あぁっ!」 
 押し入る行為は強引だった。
ぐりぐりと中を掻き回して、その度に月の口から荒い息が漏れる。
「月くん。飛馬始め知ってますよね」
「っだから?」
「体位変えません?」
「馬乗りになれって?」
 月の背に手を回してぐっと持ち上げる。
身体が起き上がりLの上に座り込む形になる。
「いっ」
「動いて下さい、月くん」
「最悪」
 Lの言葉に悪態をつきながら弱々しく動く。
上下に振れる月を見ながらLがにやりと笑う。
「良い風習ですよね……」
「こんなの風習じゃないっ……」
 しみじみと呟くLに抗議する。
その間もLの熱い猛りは月の中を蹂躙していて声が震えた。
「名前が付いているくらいなんですから立派に風習ですよ」
「んっ、ちがっ」
 激しい突き上げに月の言葉が途切れる。
 ぐちゅぐちゅと接合部が水音をたてるのを聞きながら、月は身体を押し付けるように動く。
より深く繋がれて月の内壁がさらに強く締め付けるような動きをする。
それがますますLを追い立てた。
「こうした行為にまで名前をつけるなんて、とてもエロティックで典雅な趣味です」
 ぐっと一際大きく上に突き上げるように動かす。
それに反応して月の腹にぐっと力が篭った。
「ひっ……っあぁっ!」
「くっ」
 月の喘ぐ声とLの小さな唸り声と共に、体内外に同時に白濁液が飛び散る。
ぜいぜいという荒い呼吸の中でLはそっと月の唇を奪った。







「起きて下さい月くん」
「……なに?」
 少し嗄れて低くなった声で月は答えた。
後始末もそこそこにそのまま蒲団の中に潜り込んだ月は、仮眠としか言えない時間程度の睡眠で起こされた事に少し苛立ちを見せる。
 まだ窓の外は暗い。
部屋の明かりも消されている為、自分の周囲しか見る事が出来ない。
「もうすぐ日の出なんです。初日の出、見ましょう」
「初日の出……そう言えば僕もずっと見てないや」
 Lに引っ張られながらシーツに包まって窓辺まで歩く。
窓の向こうではビルとビルの隙間から見える地平線のあたりが薄らと白みはじめていた。
床に直接座り込んでビルの隙間から差す光を見つめる。
「楽しいですね。お正月」
「昨日のはお正月の行事と認めないけど」
「頑固ですね」
 白々とし始めたビル群を見ながら少し寒さを感じてLに寄り添う。
近付いて来た月の肩をLは抱いた。
「あとお雑煮作ってくれるんですよね。楽しみです」
「父さんにお年玉ねだるのもね」
 上り行く太陽を見つめながら酷く穏やかな時間をふたりは貪った。
「だらだらしてるね」
「これも一種の寝正月でしょうか?」
 そう言って月ごと時分のシーツでくるむ。
光があたりを包み込んで、暗かった部屋は太陽の明かりを得て良く見えるようになった。
「明けましておめでとうございます……って言うんですよね」
「うん。明けましておめでとう……竜崎」
エロをやると宣言したので。本当にやってるだけ。
どうせならと季節物にしてみました。




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