第二回絵チャログ
左から、うた子さん、砂樹さん、潤也さん
<<イラストに合わせてSS大会ーー!>>
(梨依)
どうしよう僕…
変態なのかもしれないって、ずっと思っていた
お店の前を通るたび、人とすれ違うたび、いつも気になってドキドキして…
そして今日、ついに、ついに、買ってしまったんです…
サングラス…っっ!
今までは目が悪いからなんて嘘をついて眼鏡を買っていたけれど、
今日は初めて憧れのサングラスを買ってしまったんだ
「どうしよう…すごくドキドキするっ…」
目の前に並べたさまざまな眼鏡に、僕の心臓がドクドクと高鳴っていく。
僕っておかしいのかな
こんなに眼鏡にドキドキするなんて…
どうしよう…
見ているだけでこんなにドキドキするんだもん、触ったらどうなるんだろう…
そっと買ったばかりの眼鏡の袋を開け、中身の眼鏡ケースを取り出した。
この中にサングラスが…。
そう思うだけで、指先が震えてしまう。
パカッ
開けた瞬間、その存在感にドクンと心臓が飛び跳ねる。
ついに、ついに、サングラスが僕のものに…っ!
恐る恐る手で触れると、それは思っていたよりがっしりしていてひんやりして気持ち良かった。
何度も手で撫でて、撫でているうちに、思わず口に含みたくなって…。
パクン
思わず口に入れてしまったんだ。
思った以上にフレームは固くて、口の中で圧倒的な存在感でもって僕の中にあって。
どうしよう、すごく…すごく気持ち良い。
くいくいとサングラスを動かすと、今までどんな眼鏡でも得られなかった快感がゾクゾクと広がっていく。
舌先に、硬口蓋に、フレームの固い感触が心地良くて。
僕は、僕は…。
思わず上がっていく息を抑えるべく、そっと口から眼鏡を取り出した。
僕の唾液で少しだけ濡れたフレームが、テカテカ光っていやらしい…。
どうしよう、どうしよう。
僕はサングラスと一緒に入っていた眼鏡吹きで涎を拭き取り、それを仕舞いこんだ。
こんな変態…誰かに見つかったらどうしよう。
そう思うのに、身体のほてりは消えてくれなくて。
僕は、僕は。
どうなっちゃうんだろう…っ。
(さとるさん)
教師なんていう職業についたのは季節の変わり目にある長期休暇と残業が無いという好条件、それだけだった。
早熟な高校生は一々本気になってきて面倒くさい、だから生徒に手は出さない、それが俺のやり方。
適当に愛想笑いであしらって、夜は綺麗どころと一夜の遊び、それでうまくやってきたはずなのに。
「先生、ここ教えてください」
「なんだぁ、こりゃ、物理じゃないか。専門家に聞けよ」
「でも、だって」
「うるせぇ、男だろ」
俺は一喝するが、こいつの事情が分かってないわけでもない。男の癖に生まれる性別を間違えてきたとしか思えないこいつはどういうわけか大人をその気にさせる雰囲気があるのだ。
「はい、分かりました・・・もう少し、自分で頑張ってみます」
笑顔は作るけれど少し青ざめた顔は、たとえ課題を落としても物理教師のところには行かないと言う意味だ。なんで俺がこんなことまで気にしなけりゃならないのかは甚だ疑問だが。
「だから、この前言っただろ、基本はベクトル分解だ、で、ベクトルは必ず真下」
「あの、そこは分かったんですけど、でも箱が動くかどうかが」
それを聞いた瞬間、俺は思わず持っていたノートを丸めて彼の頭を叩いてしまった
「馬鹿か、お前? もしかしなくても摩擦係数が二種類あるって分かってないだろ」
「2種類?」
「もういい、見てやるから後で俺の研究室来い」
「はい、ありがとうございます」
ッたく、だからなんでそんな顔で笑うんだよ、男が。大体どうして学校指定のシャツのはずなのに上から見ると胸元が覗くんだ、こいつは。
「じゃあ、後でな」
ふと、見えてしまった他とは違うほのかな色付きに俺は慌てて背を向けようとする、すると、
「あの」
背中にあいつの声が聞こえた。
「なんだよ」
「えと、その古典も、分からないところがあって」
俺はお前の家庭教師じゃない。
一体どれだけその言葉を叫びたいと思っただろうか、いい加減いつもの作り笑いすら消えている俺の顔。それでも、
「古文は○×社の教科書ガイドだけ見ておけば何とかなる、それよりなぁ」
「はい?」
「数学だろ、お前! 俺をなんだと思ってるんだ」
「えっと、先生?」
「担当教科は?」
「数学です」
分かってるならどうして一々俺に聞くんだ、確かに俺は一応副担任やらされてるが担任の女教師なら襲われる心配も無いんだぞ。そう、心では思うのに、
「凄いですよね、でも何でも知ってるから」
こんなにキラキラした目で尊敬されたら怒鳴れないだろうが!
「高校は卒業してるからな」
「でも、凄いです」
あー、こいつと入ると調子狂う。
「もういい、全部後にしろ」
そう言って、俺は初めて出会う道の存在から何とか逃げ出した。
彼といて調子が狂う理由をまだ知らないまま。
(蛍さん)
黒い闇の奥、蒼の双眸が俺の事を見つめてくる。
その視線から逃げようと俯けば、彼が跪きながら腕を取ってきた。
「どうか、しましたか?」
解っているくせに、何をいうんだと言ってやりたい。
言ったところで、どうせまた軽くかわされるのだろうから言わないけれど。
そうして黙っているのをどう受け取ったのか、掌の下にある指がそこをなぞるように蠢いて、びくりと体が震えてしまう。
突然の事に手を引こうとするのを見越してか、それまで静かだった彼の手に力が入り、俺の手が絡め取られる。
逃がしませんよという、自分勝手な囁きと共に。