第九回絵チャログ


左から井上潤也、緋峰さん、水倉さん



宵宮暁:井上潤也
目の前には少し雲に覆われた青い空、晴れた日は嫌いじゃない。
体を動かすと気持ちがいいし、何より曇りや雨だと薄暗くて気が滅入る。
俺は大きく伸びをして愛用のスエットに着替えた、せっかく何の予定もない休日なんだ、少し体を動かそう。
水色のパンツに黄色いウインドブレーカーは幼馴染の常陸が選んでくれた。家が近所で長い付き合いになる常陸は自分は服装に無頓着なくせに俺の事にはよく口を出したがる。
まぁおかげで選ぶ手間が省けて楽って言えば楽なんだけど、この取り合わせは少しはでだったかもしれない。
とりあえず近くのかわらまでジョギングしようとすると何人かの人が振り返って俺を見た。
自意識過剰か?
まぁ、長身で女受けのいい常陸と一緒に動いてる所為で普段から視線にはなれてるから問題ないけど。
美女のならともかく、野郎が男を振り返って何が楽しいんだ。
まさか、ファッションの参考にしてるわけでもないだろうし。
もやもやと悩んでいたらすぐに川原についてしまった、でも残念なことに今日は混ぜてくれそうな草野球のチームもフットサルもない。
最初から常陸を誘ってくればそう悩む必要はなかったのは分かってるんだけど、
最近様子がおかしいあいつと話すのが、少し怖かった。
別に俺の事を避けてるわけじゃないけど、どうも一緒にいるときに距離をとられてる気がする。
言いたい事があるならはっきり言えって言うんだ。
あー、考えたらむしゃくしゃしてきた。
「仕方ない、走るか」
それを発散するためにも、俺は単純明快に限界まで体を動かすことにした。
走りやすいコースがあるせいでランナーが多いのが玉に瑕だが風を受けて走るのは気持ちいいし。
このまま東京湾まで出てしまおう。
俺は腕時計でタイムを決めると、少し本気で走り出した。
けれどすぐに汗をかいた額に髪の毛が張り付いて少し気持ち悪い。何とか耳にかけようとするけれど中途半端な長さの前髪はうまくかからなくて少しイラつく。そして、
「本当嫌味な奴」
俺は結局パーカーのポケットに手を突っ込んだ。ポケットの中にはこれを買ったときに常陸が買ってよこしたものが入っている。
似合いそうだからと臆面もなく一緒に買ってくれたそれは花飾りの付いたピン。俺は女じゃないって怒ったのに家に帰ったらいつの間にかパーカーのポケットに入れられていた。
でもそれがこんなところで役に立つとは。
どうせ俺なんて誰も見てない。
背に腹は変えられず、俺はピンで前髪を留めた。
よし、これなら快適だ。
「はぁ、はぁ、はぁ」
走っているとだんだん頭が真っ白になってくる、それから、まるで空の上を歩いているような少しふわふわした快感。
ランナーズハイ。
頭が冴えてきて、嫌な事が全部吹き飛ぶ。
緑、青、白、それからビルの灰色。
同じようで違う景色がぐんぐんと左右を流れていく、滲み始めた汗を風が攫っていくのが気持ちよかった。 
けれど空気は次第に少しべたついてきて、風には海の匂いが混ざり始める。
ゴールは近いか。
俺はラストスパートをかけてスピードを当てた、そして。
「海だ」
いつもの事ながら五キロ以上離れたここまで来ると妙な達成感がある。
今日は少し暑くて、せっかくだからテトラポットに降りてみることにした。
冷たい水に足を浸したら気持ちいいだろうか、幸いタオルは一応巻いてきているし。そんな事を考えながら海を眺めていると。
「かにか」
小さなカニが見える、少しハイになってる所為かつい子供っぽい考えが浮かんできた。
「そうだ、これで常陸を驚かせてやろう」
いきなりカニを差し出されたら、あの鉄面皮も崩れるだろう。家に帰るまでには距離があるけど、濡れタオルに包めばその位は持つだろうし。
「ようし」
俺はテトラポットの隙間に手を伸ばした。
「後、・・ちょっと。・・ん・・この」
けれどカニは意外とすばしっこくて中々捕まらない。
「もう、少し」
俺は必死になって奥まで手を伸ばして、
「痛」
慌てて引っ込めた、忘れてたカニには爪がある。
これ以上いたい思いをするのも馬鹿らしいな、帰ろう。
俺は急に気持ちが沈む気がして立ちあがった。
「うわ」
そういえばひりひりすると思って頬を擦れば泥が付いていた。みればパーカーも少し濡れてるし、このまま帰ると母さんに怒られそうだ。
と、なると。
「カニはないけどしょうがないか」
常陸の家ならこの時間は大人は居ないし、着替えも貸してもらえるだろう。
そうと決まったらさっさと済ませてしまいたい。
俺は行き以上のスピードで来た道を戻って、常陸の家を目指した。

 

 インターフォンを鳴らすと、なぜか常陸は出てこなかった。
「おかしいな」
見上げれば二階の常陸の部屋の窓には確かに人影が映っている。
窓際にあるのはベッドだから、寝てるのか?
ドアの鍵は開いてるみたいだからこれってちょっと危ないんじゃないのか。
もう子供じゃないんだし勝手に家に上がるのは気が引けるけど、起こしてやるか。
そうしたらついでに服も借りられるし。
俺は寝るなら鍵を閉めておけと一言言うために、常陸の部屋に向かった。

でも、あれ

ドアの向こうから物音が、聞こえる気がする。
でも起きてるなら普通インターフォンにでるよな、結構大きい音で部屋にも聞こえるはずだし。
さて居留守か。
カニはないがいい機会だ。
復讐も兼ねて驚かせてやろうと、俺は勢いよく扉を開けた。
「常陸、服貸せ」
そして俺が見たものは、呆然とした常陸の顔と、中々お目にかかれないような立派な。
「うわぁああああ」
扉を閉めることも忘れて俺は叫んでしまう。
「それは、俺の台詞だ」
常陸がブランケットで体を隠しながら低い声で淡々と言う。
確かに覗かれたのは常陸の方だ、でもやっぱり
「俺だってショックなんだよ、お前の、そんなところ」
「男なんだ、当然だろ」
常陸はしれっと言う、でも時間はまだ昼間、三時にもなってない。
「明るい内からすることじゃないだろ」
窓の外を指しながら俺は言う、カーテン越しで随分弱くなっている光を見ながら常陸は何も言わなかった、その代わり俺を見ると。
「そのパーカー、似合ってる」
「ッて言うか、悪ぃ濡らしちまったから代わり貸して」
「濡らって」
常陸は何故か顔を赤くして言葉に詰まるけど、俺はお構いなしにパーカーの前をあける。
「あ、汗かいたからついでに下着も借りていいか?」
止まりに来た人間用に常陸の家がそう言うものも常備してる事は知っている。後で代わりを買って返せば問題ないだろう、俺は軽い気持ちだったのだが。
「馬鹿」
何でそんなに慌ててる
んだろう、別に珍しいことじゃないのに。
「お前今日おかしいぞ、あ、もしかして俺に変なとこ見られて興奮でもした?」
「なっ」
ありがちなからかい文句に過剰に紅くなる常陸。図太い奴だと思ってたけど結構可愛いところもあるのかも知れない。よしこれをネタにからかってやろう。
俺は頭の後ろに両手を回して、意地の悪い笑みで常陸に近づいてやった。すると、パーカーの前が開いて当たる風が気持ちいい。
「知らなかったな、常陸が見られて感じる奴だったなんて」
そんなわけないと、すぐ否定すると思ってた。
そうしたら駆る愚痴を叩きあって、いつものように少しじゃれて遊ぼうと思ってた。
なのに、
「・・ぃう・・えはどうなんだよ」
今までに聞いた事がないくらい暗い声だった。
「ん? 聞こえないぞ」
俺は耳を澄ますようにして常陸に近づいていく、そして。
「酷い、男だ」
なんか、まずい気がする。明らかに常陸は俺を責めてる。
「もしかして、俺のこと同じ目にあわせようと思ってるのか。冗談じゃない、人前でマスをかくなんて、そんな恥ずかしい真似できるか」
一瞬創造してしまって、俺は紅くなりながら後ずさる。
「そんな事はしないさ」
常陸はそう言う、けれどその目が完全に据わっているのは絶対気のせいなんかじゃない。
まずい、常陸が冷静になるまで逃げよう。俺はドアの方に向こうとして。
「わ」
引き倒された。
背中があたったのはベッドの上だから痛くない、でも狭いベッドの上。こんなに常陸に近づいたのは久しぶりだ、だから。
「捕まえた」
最近常陸が付き合ってくれなくなったスキンシップをここぞとばかりにしてやる。
「何、す」 
おお、慌ててる慌ててる。
「最近お前が付き合い悪いからだよ」
俺は唇を尖らせてここぞとばかりに文句を言ってやった。それは俺達のあいだでは全然珍しいことじゃなかった、筈なのに。
「ん」
なんだ、なんなんだ、この状況は。
口が塞がってる、体が身動きできない。
常陸が俺の事を抱きしめてキスをしているときが付くまでに、かなりの時間が必要だった。
冗談にしてもやりすぎだ、そう、怒りたかったのに。
「ん・・・ふぅ・・は・・ひた・・・んん」
開いた唇がまた強引にふさがれて舌が進入してくる。
熱い、ざらざらとしたそれは俺の歯列を、頬の裏を辿った。少しくすぐったいようで出も唇の間から流れ落ちる唾液が気持ち悪くて。
「ゃ・・・離・・ん」
止めさせたいのに何故か力が入らない、その上酸欠になったのか、頭がくらくらしてきた。
「響」
ぼんやりとした、俺の頭に流れ込んでくるのは耳に心地のよい俺の名前。常陸の声だから安心して、俺はつい目を閉じてしまう。
なんだか眠たくなってきたんだ。なのに、
「痛」
常陸の手が、強く俺の両腕を掴む。可と思うとその顔が首筋に近づいてきて。
「あっ」
歯を立てられると、何故かジンと全身に痺れが走るようだった。なんか、物凄くやばい。
止めなければと思うのに、
「ん・・ぁ・・や」
胸を、舐めないで欲しい。手でそこをつままれると何故かビクリと体が跳ねる。
体が熱くなってくる、変になりそうだ。
これは、もしかして感じてるのか。
常陸は幼馴染で、何より男なんだぞ。
俺はホモじゃない。
「止め、・・・駄目だ」
正気に戻った俺は必死に抵抗した。
でもジョギングの疲れもある体は思った以上に力が入らなくて、
「無駄だ」
悔しいけど、常陸の言う通りだ。
という事は、俺はこのまま男に犯られてしまうのか。信じてた常陸に、こんないきなり事故的に。
「お願い、・・・だから」
そんなのは嫌だ、俺は本気で常陸に懇願する。けれどそれが聞き入れられることはなくて。

 

「どうして、なんだよ」
全てが終わって、ボロボロの体を抱えながら、俺は呆然と呟いた。全身触られて、恥ずかしいところまで全部舐められて、何度も突き上げられて。腰はもう感覚を失ってる。
「好きだ」
始めて告げられたその言葉は、到底信じられるようなものではない。
「俺は、男だぞ」
その俺を好きだなんてありえないという抗議に。
「女みたいな顔、口さえ開かなければ騙されるって、皆言ってたぞ」
常陸は憮然として応えて、それから『でももう俺のものだ』と言って横たわる俺の体を抱きしめる。
悔しさではない涙が、頬を伝った。
痛いからじゃない、嫌悪からじゃない、自分でも理由の分からない悲しみが胸を支配する。
「濡れタオル、持ってくるから」
何も応えない俺に、常陸はそれだけ言うと部屋を出てしまった。
一人残されて俺はそっとカーテンの隙間から窓の外を見る。 
いつの間にか、空は薄暗く曇っていた。




宵宮暁:緋峰さん
 その部屋に光はなかった。
 飼われている美獣がいつでもまどろめるよう、薄い照明だけが辺りを照らしている。
 じゃらりと壁に打ちつけられて鎖が音を立てる、獣が目覚めたのだ。
 薄闇の中で碧玉の双眸が露わになる、獣は物憂げに辺りを見回すと月光のように白い手
をゆっくりと動かした。彼が触れたスイッチは明かりをつけるためのもの、白い壁に反射
した光は色白の肌をより際立たせる。
 獣の正体は美しい青年だった。
 漆黒の髪に切れ長の瞳に血のように赤い唇、今にも折れそうな細い首にはとげのついた
いかつい首輪がはめられている。けれど、青年はそれを気にした様子もなく近くにあるペ
ットボトルを手に取るとミネラルウォーターを口にした。
飲み込みきれなかった透明の液体は赤い唇を更に紅くそめ、鎖骨の浮き出ている胸元へと
流れていく。
 シャツ一枚羽織っただけの姿は、どういうわけか裸体よりも余程艶かしく見えた。
「メシ」
 耳障りのよい声の第一声はそれ、青い瞳は真直ぐに監視カメラのほうを向いている。し
かしその望みは叶えられることはなかった。
『働かざるものは、食うべからずだろう?』
 スピーカー越しに聞こえる無機質な声、青年はそれに不敵な笑みで答えると、
「いいぜ、来いよ」
 薄い唇を赤い舌でぺろりと舐める、挑発だった。
『くっ』
 まんまと引っかかった監視者が思わず声を詰まらせる、おかげで客の情報を聞き損ねた。
滑らかに見えた壁の一部に隙間が出来てドアが開く。
「ようこそ、裁きの部屋へ」
 茶番だと分かりながら演じる、偽りの断罪者。人の罪をその身で贖うなんて、そんな都
合のよい存在をよくも考えたものだと思う。けれどセックス三昧の日々は青年にとっては
好都合なものだった。
「私は、私は」
 感極まったように男は青年を押し倒した、飲みかけのペットボトルが倒れて床を濡らす。
「ん・・はぁ・・ぅん」
 時々離れて唇を舐めては口腔を蹂躙していく男の熱い舌は一方的で、少し気持ちが悪い。
「もっと、気持ちよくしろよ」
 美獣はそう言って牙を剥いた、白い歯が相手の首筋を甘噛して浴情を煽る。
「おお、おおぉ」
 それに刺激されたのか男のモノが固くなって太ももに当たるのがわかった。そこを青年
にこすりつけながら、つんと尖った乳首に吸い付く。
「ん・・ぁあ、あ。ん」
 鼻にかかったような甘い声が自然と口から漏れでた、弄りつくされて開発されたそこは
立派な性感帯なのだ。
「胸を弄られて感じるのか」
 興奮気味の男の声がそう言って爪でカリカリとそこを刺激してくる。
「ひぅ・・・ぁあ」
 同時に乱暴に膝で硬くなり始めた分身を押し込まれると悲鳴のような声が上がった。
「ぁん・ふ・・ぅあ・・ぁあ」
 ぐりぐりと無節操に刺激してくる中心への愛撫は意図がない分もどかしい、マーキング
のように男が付けるうっ血の後で白い肌が染まっていく。
「ほぉら、ご奉仕もして見せろよ」
 髪を鷲づかみにして引かれた、そして目の前に貧相な男の一物が差し出される。舐めろ
なんていう指示は待たなかった。
 動かせない顔の代わりに下を差し出して、先端に触れさせる。形を変えているそこは既
に先走りの液で苦かった。
「ふぐ・・・ん・・ぅ」
 大きく口を上げて、のどの奥まで男の欲望に付かせる。自分の中でビクビクと跳ねては
粘つく液を滲み出させるそれはまるで独自の生き物のようだ。
 硬くなるにしたがって出てきた先端のつるつるした部分を舌先でつついて、唇で竿を擦
る。
「いい、いいぞ、はは」
 狂気が走り始めた男の声、まるで挿入を楽しむかのように腰を振り回してくる。
「あっ」
 乱暴な動きに、唇から赤黒いそれが零れ落ちた。青年は白濁に濡れは舌を出したまま無
感動な瞳でそれを見つめ続ける。
「そうか、入れて欲しいのか」
 何も応えないのに納得した男が青年の下肢を割り開いて奥を露にさせた。
「使い込んでいる割に、綺麗な色をしてるじゃないか。さぁ、準備しろ」
 言って、男は青年の手を取る、舐めさせて自分の指でほぐさせる。そんな屈辱的な行為
を青年はやはり無感動に言われるままに実行して。
 赤い内壁をめくりあがらせながら小さな穴をひくつかせた。
 その淫猥な光景に、男は我慢できなくなったのかすぐに自らの欲望を突き立てる。
「ぁああ、ぁ・・ひ・・ッ」
 録に準備も整っていなかったところをいきよいよく穿たれて、流石の青年の眦にも涙が
浮かんだ。
「ぁ、ぁん。あ」
 けれどすぐに腰を揺らすと、自分のいい処に男のものを上げようと動き出す。
「ふぅ、ふぅ」
 荒くなる男の息遣い。青年は収縮を繰り返す内壁でそれを更に煽る。
「ぁああん」
 甲高い声だった。奥に欲望を吐き出されたその独特の感覚に反応して、青年の中心から
白いものが飛び散る。
 そしてそれを目にすると、すぐに身を乗り出して彼は自らのものを舐め始めた。
 それから、まだ少し硬さの残る男自身に吸い付いて、最後の一滴まで搾り取る。
「くはぁ」
 なれない快感と、四つん這いになってみずからの精液を舐める美しい青年の卑猥な光景
に男の目がイきかける。
 男の意識が持ったのはそこまでだった。
 たった一回の絶頂で彼は使い物にならなくなってしまう。
「足りない」
 ぼそりと呟いた美獣台詞を、監視者の設置したマイクが拾った。
『仕方のない奴め』
 そんな言葉とともに、たくましい男達が一斉に入ってきた。そして今度は青年に奉仕し
始める、唇に奥孔に自らの欲望をつきたてて、性感帯を舐る。
「ぁあ・・ぁああ・ぁん」
 快楽の限りが青年に与えられた、それなのに彼はまだその瞳に理性の色を残していた。
そして、
「あんたは、俺を楽しませてくれないのか」
 カメラ越しに監視者を睨みつける。
 三人、四人、五人とこんなに沢山の男を相手にしているというのに。
「もっと、本気で犯れよ」
 満たされない熱は、体の奥に燻り続けたまま。
 美獣は精を貪り続ける。



花月梨依:水倉さん
「ねぇ、エッチって美味しいの?」
唐突な台詞にグラスに入った、コーラを吹き出していた。
「な、何を突然」
近くに置いておいたテッシュを取り、口元とローテーブルの上に吹き出したコーラを拭き取っていく。
向かい側にいる巧は、少しだけ頬を膨らませてこちらを睨んでいる。
「エッチって美味しいのって聞いてるんだよぅ!」
隣の家の巧(たくみ)の相手をするようになってもう二年が経つ。
浪人生活も二年目に突入した俺だったが、巧が可愛くて仕方なくて、予備校もサボって今日も一緒に遊んでいたところだった。
「お前、どこでそんなこと」
「えっちゃんがね、エッチって美味しいって言ってたの」
「えっちゃん?」
えっちゃんとは、巧の会話に良く出てくる、学校の友達らしい。
そいつがどうしてエッチが美味しいなんて言い出すんだ。
そもそもお前達、まだ小学生だろ。
「美味しいって、エッチって食べ物じゃないぞ?」
「じゃあ何?」
「何って」
エッチを説明しろというのか?
俺にとってそれは、下手な数式よりも難しい。
何故なら俺は、今だ童貞なのだ。
「ねぇ、むっくん」
巧は俺の名前を呼ぶと、そのまま俺に飛びついてくる。
「うぉ、いきなり飛びつくなっていっつも言ってるだろ」
「ごめんなさい」
飛びついた格好のまま、巧がシュンといじける。
その俯いた表情が、可愛い。
「でも僕むっくんに教えて欲しくって」
「何で俺なんだ?」
「えっちゃんが、好きな人に聞きなって言うんだもん」
今度は倒れるかと思った。
だって、俺が童貞な理由は。
「僕、むっくんのこと、好きなの」
俺が男好きだからだ。
「お前…っ」
しかも最近のお気に入りは巧で。
小学生だって分かってるのに、犯罪だって分かってるけれど、それでも止められなくて。
それが何だ。
今、もしかしてこれって据え膳?
俺の息子が、勝手に暴走して硬くなってしまう。
けれど巧は全く気が付いていない様子で。
「…巧」
「何、むっくん」
「お前、本当に俺のこと好きなの?」
「うん、大好き!」
屈託もなく純粋な笑顔でもって巧が答える。
釣られて俺も、好きだと言いそうになるのをぐっと我慢した。
「それってどういう好きだよ?」
尋ねる意味が分からないのか、巧はう〜んと首を捻った。
「むっくんのこと考えると、じ〜んってするの。少しだけ胸が痛くなるの」
「…」
それって。
俺と同じ好き?
「…エッチ、教えてやろうか」
「うん!」
すぐさまぱぁっと顔が明るくなる。
巧は本当に分かりやすい。
そして俺も、本当に流されやすい…。


「これでいい?むっくん」
裸になってこちらに向かってくる巧に、どくんと胸が高鳴る。
初めて見た巧の裸体は、思っていたより小さく可愛らしかった。
それにあそこも…まだピンク色で被ったままだ。
「エッチって裸じゃないと出来ないの?」
「そうだよ」
言って巧の裸姿をしみじみ見遣っていると、突然巧が俺のズボンに手を掛けた。
「うわっ!」
「むっくんも脱いでくれないと駄目じゃない」
「俺は、待て、ちょ…っ」
巧は無邪気に俺のベルトを外し、そのままズボンのファスナーに手を掛け…。
「あれぇ?」
俺の息子の異変に気付いてしまった。
「おちんちん、硬くなってる」
「…お前っ」
言葉の一つひとつに裏なんて無いって分かっているのに。
その全部で俺を掻き乱していく。
「エッチ、教えてやるから、まずはこっちな」
巧の手を退け、そのまま自分でパンツと一緒にズボンを下ろす。
ぷるんと飛び出したそれは、もうすでに大きく上を向いていた。
「うわぁ!」
それに驚いたのか、巧が声を上げて俺のを見詰めてくる。
「僕のと全然違うね、おっきいね!」
「…っ」
見られている、と思うだけで、興奮する。
むくむくと大きくなっていく自身のそれが、更に熱を帯びていくのが分かる。
「あ、何か出てきたよ!むっくん」
言われて見遣れば、先端からは透明な先走りが流れ出してきていた。
「…むっくんの、すごいね…」
「…っ、巧」
耐え切れなくなって、俺は巧の肩に手を置いて、目の前で自慰を始めてしまった。
「むっくん、おちんちん、触ってるの?気持いいの?」
「あぁ、気持ち良い…っ」
「すごいね、先っぽからいっぱい出てきたよ…あ、少し白い…!」
それじゃあ言葉攻めだ、と思うけれど、今はもう弄ることしか考えられなくて。
「っ、巧…っ」
巧の裸を見ながら、その身体に弄ることも考えたけれど、それはさすがにやりすぎな気がして。
俺は自身のそれを勢いよく扱き上げた。
「っ、あ…く」
「むっくんの、すごいよ…全体にぬるぬるしてきた。おしっこしたいの?」
「違うよ、エッチがしたいんだよ」
「エッチ?したいとこうなるの?」
「そうだよ」
扱きあげる手の動きが早くなる。
呼吸が上がって、巧のいうところの白いのが大量に溢れ出す。
「っ、あ…やべ…っいきそー…っ」
「何?むっくん?」
「ティッシュ取って…っあぁ!?」
限界の近い息子に、あろうことか巧の手が添えられる。
「むっくんのここ、なんか可哀想だから触っててあげるね」
言うなり巧の指先が俺を掴むと、そのまま上下に動き始める。
「駄目だ、そんなことしたら」
拙い動きで快感なんて全く紡ぎださないはずなのに、それが良くて。
「駄目…離せ…っ!」
もう限界でその手を、身体を引き離そうとした。
なのに、
「やだ、もっと触る…っんあ!」
「んぅぅっ!!」
巧はそのまま触り続けて、俺はその身体目掛けて吹き出してしまっていた。
「んあ、あ…っ」
「ひぁ、何これぇ!」
独特の匂いのあるそれが、巧の身体一面に掛かってしまう。
やばい、いくら感じたからってこの量は尋常じゃない。
「ごめ、巧」
謝ってすぐさま拭き取ろうと思った瞬間、おもむろに巧はその一部をぺろりと舐めとった。
「巧?!」
「…美味しくなぁい!」
「当たり前だろ」
「でもエッチは美味しいって言ってたっ」
巧はまたしてもぷくっと頬を膨らませる。
あぁ、何でこう可愛いんだろう。
「だってこれはエッチじゃない…って、巧っ」
「じゃあエッチしてよ。エッチ!」
寸止めしてやろうと思ってたのに、巧は人の気も知らないでそう言うと、そのまま身体をこすり付けてくる。
「…っ!!」
理性なんていう枷は、すぐさまどこかへと消えてしまっていた。
「巧、どうなってもいいんだな?」
「エッチしてくれるの?」
「してやるよ、でも最後までやめさせないぜ?」
「うん、してして〜!」
無邪気に笑う巧に良心が痛むけれど、それ以上に巧が可愛くて。
「それじゃあ覚悟しろよ?」
「うん」
巧の言葉に誘われるように、俺はその身体に唇を這わせた。




水倉さん



花月梨依:水倉さん
「はは、すっげぇ締まり」
「ひ…ぐっ」
「ほら、こっちもちゃんと舐めなさい」
夕闇に包まれ、誰もいないオフィスに、自分と男たちの喘ぎ声だけが響く。
「早乙女。お前も段々善くなってきたんだろ?もうビンビンじゃないかよ」
後ろから突き上げるみたいにして犯している考の声が、耳に木霊する。
「まだ二…三回目だろう?もう後ろで感じるようになったのかい?だとしたら素晴らしい逸材を発見したなぁ、考」
早乙女と考の上司でもある佐伯は、至極嬉しそうな声でそういった。
自らもまた早乙女の口腔に自身のそれを含ませているのに、それを微塵も感じさせない口調で。
「そうですよ、こいつは本当に淫乱なんです。清純そうなのは顔だけで、後ろも前もぐちょぐちょだ」
床の上に直に四つん這いにされて、後ろから前から責められる。
「あ、ふ…ぅん」
考の突き上げが激しさを増し、早乙女の後孔が悲鳴を上げる。
もう三度目になるそれだというのに、慣れることなんて出来ない。
…はずなのに。
「はっ、自分でも腰振ってんのかよ」
侮蔑的な考の声に、早乙女の顔が瞬時に羞恥で赤くなる。
そうなのだ。
慣れてなんてないはずなのに、気持ちなんてないはずなのに、すごく良くて。
自分を裏切るようにして、身体だけが暴走する。
「ほら、まだ触ってもないのに、前なんかもういきそうなんじゃないのか?」
考の声に、自分のそれがビクビクと痙攣していることを意識させられる。
まだ童貞だというのに、女を抱いたことなど無いのに、こうして強制されて男を受け入れさせられてもう一週間になる。


事の発端は、些細な出来事だった。
「早乙女、今日残業頼めるか?」
「あ、はい。大丈夫です」
入社してまだ間もなく、仕事慣れしていない早乙女にとって、残業は当たり前だった。
皆が帰ってしまってから、密かに一人残って仕事に励む。
そんなある日、先輩に呼び出し残業を頼まれてしまったのだった。
今年の新入社員は自身を含めて、わずか3人。
入社倍率250倍という超難関であるこの商社に入れたのは、本当に運が良かったとしか言いようが無い。
けれどそれは同時に苦労の始まりでもあった。
経済学部に籍を置いていたといっても、専門的知識はあれど実践などしたことがなくて。
とうとうお説教かな、と思ってその日は一日気分が重かった。
そして夜。
オフィスに二人きりになったところで、早乙女は僅かに異変を感じた。
せっかく直属の上司である考が教えてくれているというのに、エクセル画面上の文字が霞んで見えるのだ。
霞む、どころの騒ぎではない。
ほとんど見えなくなっているのだ。
おかしい、と思い、いつもかけている眼鏡を外し、瞳をごしごしと擦ってみる。
「どうした?」
「いえ…別に、ちょっと目が」
「なんだ、眠いのか?だったらコーヒーを」
言って、考が先ほど入れてくれてもう若干冷め始めたコーヒーを更に飲めと勧めてくれる。
それを煽って、早乙女はもう一度画面に向き直った。
その時だった。
「んぁ?」
画面が大きく揺れた、と思った瞬間、床がドアップになった。
「え?」
倒れたのだ。
やっと理解出来た時、咄嗟に身体を動かそうと思って腕に力を入れるのに、それは叶わなかった。
「早乙女?」
背後から教えてくれていた考の声がする。
「せ、ぱ…」
声を出そうにも、何故か喉が掠れて上手く行かない。
「大丈夫か、早乙女」
オフィスに一人横たわった早乙女の身体に触れるようにして、考が言う。
大丈夫だと言いたいのに、唇が震える。
そして何故か、触れられた部分から熱が巡るようにして身体中を犯していく。
「な、これ…おかし…」
視線でもって考の表情を読もうとすると、そこには見たことがない笑みを浮かべた彼がいて。
「そろそろいいか」
「…え?」
問いかけに答えなどなく、そのまま何故か、考の手が早乙女のネクタイに掛かり、そのまま上着やシャツを一気に剥ぎ取られてしまう。
「せ、ぱ…何?」
混乱と恐怖と疑問で、硬直する身体を任せるがままにしていた早乙女に、考はにやりと口元を歪ませる。
「これから犯してやるよ、お前のこと」
言うなりそのままパンツと下着を一気に剥ぎ取られ、呆気に取られている早乙女を尻目に、考はそのまま身体を弄り始めたのだ。
「や…め…ぁ」
乳頭を摘まれたと思ったらそのまま一気に口に含まれてしまう。
舌先で転がすように嬲りながら吸い上げられる感覚は初めてのそれで、早乙女はビクビクと震えた。
オフィスで全身裸にされて、なすがままにされている。
学生時代、細く小さいとはいえ、これでも柔道をやっていたのだ。
特に寝技は得意だった。
なのに今は指の一本も自分の意思で動かすことは出来ない。
羞恥に悶える早乙女の脳裏に、快感が走る。
その衝撃に視線を向ければ、考が早乙女自身を握って扱き上げていた。
慣れた手つきのそれは男のポイントを得ていて、イヤだと思うのに声が荒くなっていく。
「思い出すなぁ」
ふいに、考が言った。
「俺もこうやって新人の頃は、先輩に犯されたんだぜ」
「な、に…を…?」
「ま。慣れだよ、慣れ。新人の通過点だとでも思えばいいさ。お前もあと二、三年すればヤル側になれるさ」
言うなり考の手が伸び、あらぬ場所に触れる。
「ひぅ」
「ガチガチだな、お前…薬のせいもあるから仕方ないか…」
言って考の手が全裸の早乙女の足を左右に大きく広げた。
だらりと力を失って広がったまま固定されてしまう自分の身体が疎ましい。
「潤滑剤使ってやるよ」
ポケットからなにやらチューブらしいものを取り出し、それを掌に押し出し広げると、そのまま考は早乙女の秘部に塗りつけた。
冷たい感覚のそれは、無意識に身体を跳ねさせた。
「へぇ、動けないはずの身体なのに、こういう時だけは敏感なんだな」
「…っ」
言い訳も出来ない。
苦しくて、苦しくて。
早く終われば良いとだけ思っていた。
「こっち、使ったことないだろう?」
ぐにゅっと音がしたんじゃないかと思うほど、それは奥深くまで突き入れられた。
自分の内部に、考の指がめり込んでいる。
信じられない出来事だった。
出口だと信じていた部分に、指が入り込んで、しかもそこからジクジクと染み入るような快感が迫ってきて。
「…ぁ…っ!」
ある一部を擦られた途端、身体が勝手に跳ね上がっていた。
「お前の善いところ、発見」
言うなり指先がそこばかりを攻め上げ、早乙女は動かないはずの身体を何度となく跳ね上げさせた。
「はは、まな板の上の鯉ってこういう感じ?」
言いながら考は何度となく早乙女のポイントを突き上げ、ついには指を二本へと増やしていた。
「だいぶ解れたな」
考の指が抜け出し、そこに僅かに変異が起こっているのを感じた。
ヒクヒクと動くそこが、まるで抜け出した指を名残惜しむようにしているなんて。
「なんだ、もっと欲しいのか」
揶揄されて、羞恥と絶望に顔が染まる。
「これからやるよ」
ガチャガチャという音と共に、考の下半身が剥かれていく。
「あ…」
そこには自身と同じ、雄である証明のそれがあって。
「ひ」
ぴたりと合わされたそれに、考の熱を感じて息が詰まる。
「力抜けよ…って薬じゃどうにもならないか」
笑うみたいにして言われた言葉と共に、考が中へと侵入する。
「んあぁ」
それはまるで、侵略だった。
受け入れたくも無いそれが、徐々に内部に入ってくる感覚。
気持ち悪い。
なのに。
「お前の前、すっげぇビンビン。本当は初めてじゃないんじゃないのか?」
言われるとおり、自分のそれは天を向いたまま、先端からは先走りが溢れているほどで。
「このまま滅茶苦茶に犯してやるから」
言うがままに、腰を突き入れられて、仰け反る。
「はは、お前最高」
考の突き上げに、早乙女はただただされるがまま、流されるのみだった。


パンパンと音がするほどに、考が腰を打ち付けてくる。
「んあぁ、あぁ、あ」
片手は早乙女の後頭部を掴んだまま、考は激しく突き上げを繰り返す。
時折内部を抉るみたいにして腰が回される度、その勢いに持っていかれそうになって、早乙女は必死に顔を歪めて抵抗する。
けれど今日は薬も何も使われていない。
素面だというのに、二人には敵わなかったのだ。
それは力で、ではない。
気持ちで、だ。
「それじゃこちらも、そろそろいかせてもらおうかな」
佐伯は言うなり早乙女の顔を掴むと、強く突き入れ始める。
喉の奥を刺激されて、吐き気が襲う。
どうしようもなく気持ち悪いはずなのに、けれどそれは嫌悪ではなかった。
「ふぐ…ひ…んぐぅぅ」
善くて、善くて。
本当にどうしようもなく、気持ち良くて。
初めては強姦だった。
あれは事件だったのだと、言ってしまえばそれまでだ。
けれど今は違う。
薬も何も使われてはいない。
ただ、自身を捕らえているのは快感で。
あの時知ってしまった快楽が、今も身体に焼き付いて離れない。
「彼のも、もういきそうだよ」
くすりと笑う声と共に、佐伯の視線が自身に注がれているのを感じた。
咄嗟に隠そうと試みるものの、肌蹴たシャツ一枚ではどうにもならない。
「とんだ淫乱だよ。なぁ、早乙女」
そう、彼の言う通りだ。
自分は、本当にとんだ逸材だった。
男に犯され、男に迫られ、こんなにも勃たせてしまう。
どうしようもない淫乱なんだと気が付いてしまった。
「いくよ」
言葉と共に佐伯が口腔から抜け出すと、顔にびしゃりと生暖かいそれが掛けられる。
その衝撃にさえ感じてしまって、ビクビクと痙攣してしまう。
「佐伯さんの掛けただけですっごい締め付けですよ…くっ」
後ろで考もまた、激しい追撃の末、その内部で果てた。
自身の最奥、その柔らかい粘膜に掛けられることなどまだ片手に数えられる程度だというのに、早乙女はその衝撃でもって自身を弾けさせていた。
「ひあぁぁ!」
「うわっ、もういきやがった」
「早乙女くんはそんなに後ろがいいのかい?」
クスクスと二人分の笑い声が降りかかる。
こんなの、みっともない。
恥かしい。
思うのに、分かっているのに、身体は正直で。
「善かったかい?」
「…っ、は、い…っ」
「素直でよろしい。僕はそういう子大好きだよ」
「俺も嫌いじゃないぜ、お前の身体」
小さくなった考のが出て行き、その衝撃にまた小さく身震いする。
そんな様子に頭上で二人がくすりと笑った。
「本当にどうしようもない子だね、これじゃあ今度の会議で全員にされるの我慢出来るかな?」
言葉は、すぐに理解出来なかった。
「え…?」
「部長、それはまだオフレコでしょ」
「しまった。…つい、ね」
「何…ですか、それ」
「新人のお披露目だよ。…もう分かるだろう?どうするのか、どうすれば良いのか。」
見上げた先、笑った佐伯の口元はにやりという風に歪んでいて。
あぁ、僕は…。
「あ、また勃たせてやがる。どんだけ好き者だよ」
「今日は新人会議に向けて、更にレッスンしてあげるとしようか。考」
「そうですね」
頭上で二人が笑うのに、早乙女は身体が熱くなるのを止めることはできなかった。