しんと静まり返った室内に秒針の規則正しい音だけが響く。 ベンチに拘束されてからどのくらい時間がたったのだろうか。 1時間たったら外してやると言われたが、トレーニングルームの薄暗い闇に目が慣れたところで掛け時計はちょうど死角の位置だ。 為すすべもなく、ただ待つ。 不自然に上げたままの腕が痺れないように、真田はゆっくりと肩をずらした。 ガムテープがこんなに丈夫にできているとは、ついぞ今まで知らなかった。自分の腕力にも関わらず幾重にも巻かれたテープは破れる気配もない。 無駄な努力とわかってはいるが、もう一度腕を強く引き寄せてみる。しばらく力をいれてみたものの、手首に端が食い込み、テープが伸びて捩れただけだった。 落胆とともに頭を振ると、勃ち上がったまま根元を止められた陰茎が目に入る。 ただ犯されるだけならばまだしもこのような仕打ちを受けるとは思ってもいなかったが、テープを用意していたからには始めから考えていたに違いない。 彼の考えることは、真田にはわからないことばかりだった。 手荒く扱ったかと思えば不思議なくらい優しかったりもする。 そして『自分は異常なのだ』と彼は言った。 正常と異常のラインをどこで引くのかわからなかったが、もしも男相手に欲情するのが異常だと言うのなら、それに応えている自分もまた異常なのだろう。 どちらにせよ、彼の告白を受け入れたときに真田は思考を放棄することを選んだのだ。 いまさら、どうする気もない。 そのとき、人の声が聞こえた。 まだ変声期前の高い声。複数だ。 ボランティアで来ている一年生の見回りである。 次第に近づく足音に、真田は身を強張らせた。 室内は電気がついていないとはいえ、ドアが開けられれば廊下から射し入る明かりで自分がいることはわかってしまう。そしてこの格好を見られたら、どうすればいいのか… しかし、足音は止まることなくトレーニングルームを通り過ぎていく。 ふぅ、と安堵のため息が漏れた。 あとどれほど待てばいいのかわからない。 下半身の重苦しい熱とともに、真田は目を閉じた。 |