ゆっくりと腰を動かし中をかき回すと、日に焼けることのない白い身体が、ひくりと痙攣する。
 まるで誘うように上下する、眼下の咽喉隆起。
 そっと口付けを落とすと、組み敷いた身体が再度震えた。
 顔を上げると、艶やかな表情を見せる白い悪魔と視線が合う。
 胎内を暴かれる快感と苦痛に微かに眉を寄せ、その美しい真白の瞳に貪欲な劣情を滲ませ、こちらを見ている。
 シーツに落ちた柔らかな髪が、まるで天使の羽のようにふわふわと揺れているのがあまりに美味しそうで。
 まるで、かつて彼の背にあった翼のようだと、思った。
「……甘そうだね」
 鷲掴み唇を寄せて囁けば、低い笑いが返る。
「食べてみるかい?」
 誘われるまま、その髪を咥え、歯で撫でるように梳く。
 鼻腔を突く嗅ぎなれた香りに、頭の芯が痺れるような快感を覚える。
 まるで、媚薬のようだ。
 尽きることのない欲望を、魂の内から引きずり出される。
「美味しいかい、リコリス?」
 問う微笑みは、いつもの余裕を装っているが、不満が隠しきれていないのが良くわかる。
 この程度では、足りないだろう?と言いたげで。
「ふふ。今日は随分と機嫌が悪いね、シロ。
 そんなに、私がシャ……」
 言葉の先は、口付けに飲まれて消える。
 激しく求めるように蠢く舌が私の舌を捉え、引きずり出して彼の口内へと連れ去る。
 拒否する理由も無く好きにさせると、先端を軽く噛み千切られた。
 溢れる血が、唾液と共に口端から零れ落ちる。
 それすら構わず、互いに存分に口内を貪りあって。
 ようやく唇を離すと、淫靡な仕草で悪戯な舌が垂れた雫を舐めとった。
「その名前を呼ばないでもらおうか…………貴方を食い殺したくなる」
 激しい怒りを伝えてくる、低く落とされた声。
 必死に耐えているのだと、訴えてくる。
「構わないよ」
 どんな形であろうと、半身に求められるのは、嬉しい。
 珍しく、満たされた愉快な気分で私は嗤う。
「君に食われるのなら、私は喜んでこの身を捧げよう。
 ……代わりに、君を頂くけれどね」
 私の言葉に、この世の何よりも美しい悪魔は、ほんの少し溜飲が下がったような、子供が安堵したような表情を見せて。
 瞬きほどの間で、いつもの狂気の滲む穏やかな微笑にそれを変化させた。
「ならばまず、貴方が魔王陛下の忌々しい側近から与えられた、快楽の残り香を全て搾り取ろう」
 言うや否や、結合したままの私の一部を、柔らかな襞が締め上げる。
 中へと誘われるままに、私は最奥部に身を沈めた。
 グリグリと奥を突くと、表情を甘く歪める愛しい悪魔。

 その耳元に、私は。

「どんな淫魔相手よりも、君とするのが一番気持ちがいい。
 満たされる端から、飢えていくほどに……ね」

 そう、本心を注ぎ込んだのだった。


end



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