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「ごめん、タカ。大丈夫か?」
「……なんで、こんなに、慣れてるんだよ」
オレはまだ呼吸が整わないのに、キヨは涼しい顔。なんか口惜しい。
「キヨくん、欲求不満かい?」
「ばっ……ちげーよ!」
「あははははっ」
友達の茶々で誤魔化されてしまったけれど、きっとキヨは女の人との経験も豊富なんだろう。
何度か、そういう噂を聞いたことがある。
……男としても、なんだか口惜しいなぁ。
「それに比べて、タカくんは初々しくて可愛いネェ」
「どーせオレは童貞だよ! いいんだよ、まだ高校生なんだから!」
「おっ。開き直ったゾ」
「キヨ、報復だ!」
「おうッ」
友達にからかわれ、イイコイイコされて、オレはキヨを伴って枕投げの報復に出たのだった。
「あー、クソッ。もう、絶対あいつらは泊めねぇぞ」
翌日。
ペットボトルやお菓子の屑が広がる惨状を片付けた後。
駅まで送ってもらいながら、キヨは隣でまだ文句を言っていた。
オレは、そんな情けないキヨが楽しくて……可愛くて、笑ってしまう。
「薄情だよね」
「全くだぜ。ふつー、片付けぐらいしてくだろーに」
頷けば息を荒くするキヨに、オレはさらに笑みが深くなる。
今日、みんなは昼に起きると早々に帰っていって、結局残って後片付けしたのはオレとキヨだけだった。
片付けはめんどくさくて大変だったけど、ずっとキヨと一緒にいられたのはよかったかな。
それに。
「楽しかったよ」
「あー……まぁ、な」
オレの言葉に苦い顔をするのは、王様ゲームを思い出したからだろうか。
まぁ、男同士でキス……それも、ディープだから、嫌な記憶でも仕方ない。
気持ちよかったと……嬉しく思うオレのほうが、おかしいんだ、きっと。
「ごめんな、タカ。気持ち悪かっただろ、アレ」
ほら、ね。
だけど、気持ちよかったなんて言えないから、オレは笑って誤魔化す。
「キスのこと? 別に、平気だよ」
「調子に乗りすぎた。悪ィ」
「いいって」
我が儘だとはわかっているけれど……謝らないで欲しい。
じゃないと、自分が可哀想に思えてくるから。
謝らないで。
「あのさ、キヨ」
駅は目の前。笑ってお別れしたい。
明日、学校であった時のためにも。
これからのためにも。
「また、泊まりに行っていい?」
笑顔で聞いたら、苦笑いが返ってくる。
「今度は、お前だけで来いよ。もう、あんな片付けはごめんだ」
嬉しい言葉。
ソウイウ意図はないとわかっていても、緩んでしまう笑顔。
キヨもつられて笑ってくれるから、嬉しい。
「了解っ。
それじゃ、またね」
「あぁ。気をつけて帰れよ」
「うん。ありがと」
手を振ってホームへ向かうオレに、キヨは大きく手を振ってくれた。
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